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「いかないで」が言えなくて/Novel by 白群

「いかないで」が言えなくて

10,914 character(s)21 mins

「言えなかったし言わせてもらえなかったので実力行使に出ました」

カルデアマスターがどうしてもエミヤを返したくなくて駄々こねる話です。槍弓要素はエッセンス程度。匂いだけ。
何がなんでも来たる大晦日のある時間までに書き上げなくては……!あれ待ってねえ今日って何日(2017/12/31)と追い詰められて書きました。
寝ます。おやすみ。表紙とタイトルは起きて何か閃いてたら直します。
一部でエミヤがちょっと痛い目にあったり、槍弓以外の英霊が出たりします。
わたしの趣味です。うちのスタメンです。ちなみに某バーサーカーニキは出るまで回しました。
いやー……、大変だったなぁ…………。

戦闘シーンが書きたい〜。
どなたかー。FGOでゴルゴーンをサポート編成に組んでて、フレンド枠余ってる方いらっしゃいません?
全力状態の彼女が大暴れする某星欠片の分岐ルートが書きたい〜。けど、資料が集まらなくて書けない……。

Twitterとかで募集すればいいのかな?
もしよければ誰か〜。フレンド募集中です〜。

※12/31 17:00
 ちょっとだけ加筆しました。
 会話文ばっかりです。

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「これほど長く居座ることになるとは……。いや、世界を救った偉業を思えば短すぎるくらいか……」

 静寂に包まれた薄暗い食堂を見渡して思わず言葉が漏れ出してしまった。
 大きなひとりごとだが、最後くらいはいいか、と慣れ親しんだ厨房のカウンターからテーブルの並ぶスペースへと足を運んだ。一瞬振り返った厨房は明々と光る照明に照らされながら油ハネの汚れも、水垢すらも見えない。我ながら満足のいった仕事に少し笑う。

 わたしの役割は終わった。
 人理修復は一人の少女と数多の英霊たちの手によって既に成し遂げられた。 
 だからわたしがここに留まる理由も、もうない。

 ひとり、また一人と英霊たちは去っていった。
 英霊は過去の存在。事を成し遂げた今、未来を作る彼女たちには必要のないもの。まして魔術世界において強力過ぎる我々が彼女を苦しめる材料にならない為にも、早急に立ち去らなくてはならない。世界を守る為に戦った彼女に待つのは、人間たちとの醜い争いだ。英霊たちには手が出せない領分だが、きっと彼女ならば。ずっと彼女を見続けてきた彼らならば、きっと乗り越えられる。
 そう信じることしか、わたしたちにはできないのだ。
 既に去ったサーヴァントたちは盛大に別れを惜しむ情の深い者もいれば、いつの間にか姿を消していた薄情な英霊もいる。

 そんな中わたしは何も言わずに消える薄情者の一員になろうとしているわけだが。

「戦闘に出ていた時間と、ここに居た時間とどちらのほうが多かったのだろうな……」

 ちょっとだけ遠い目をしそうになったが、まあどちらでもいいだろう。
 橙色と桃色の少女たちは作り手ががうれしくなる見事な食べっぷりだった。他のスタッフたちも、本来は食事なんて必要のないはずの英霊のたちもまたわたしの作る料理を喜んで食べてくれた。わたしはここで彼女たちの健康を維持し、空腹を満たすことができた。
 何より誰かの為に食事を作るという行為は、こんなにも楽しいものだったのだと思い出すことができたのだ。
 照明の消された薄暗い食堂を進み、いつも彼女たちが座っていたテーブルのをそっと撫でる。
 最初はうまく箸の使えなかった彼女もどこの日本料亭に連れていっても恥ずかしくないほど上達した。上手な箸の持ち方グリップを投影した甲斐もあったといものだ。
 やむ終えずに投影して使用していた調理道具やパーツの類は全て発注し直してもらった正規品と交換したが、彼女にあげた箸セットはどうしようか。

「まぁ、あのくらいならいいか」

 きちんと箸の使えるようになった彼女には不要なものだ。もしかすれば既に捨ててしまっているかもしれないし、わざわざ聞くようなものでもない。

 これで心残りもなくなった。彼女たちに挨拶をしないで立ち去るのは自分で決めた事だが、わずかに後ろめたいのは情を割きすぎた報いか。

 直に日付も変わる。片付けをしながら感慨に浸りすぎてしまったようだ。
 消える瞬間にここを選ぶのだから、わたしも大概だな。
 瞳を閉じて息を吐きながら、固く編まれていたエーテルを解いていく。
 半受肉状態にあった肉体が端からさらさらと粒子に戻っていく感覚。
 ……消える。消える。消える。
 わたしという個が、荒廃した剣の丘へと帰還する。
 此度の召喚は、エミヤにとってかけがえのない記憶となるだろう。
 誰かと約束をした月の見える夜に、星の光を初めて目の当たりにしたあの瞬間に、忘れていた願いを取り戻したあの邂逅のように。
 この思いがあれば、また前に進める。

「あぁ……」

先に待つのが地獄だとしても。

「っふ、」
「―――!!!!」

 空耳かと疑うほど小さな、誰かの声。同時に噴出する威圧感と風を切る音。
 突如現れたそれに、まどろみへと溶けようとしていた意識が覚醒する。殺気、そして自分を狙う風切る凶器の気配。

「っく!」

 風が薙ぐ。一瞬前まで立っていた場所を閃光が通り抜けた。
 このカルデアでいったい何事か。そんなことを考える暇などなく、霊基に馴染んだ白黒の双剣を投影し殺気の放たれた方向から距離を取るために身を翻す。気が緩んでいたとはいえこれほど接近されるまで気が付かないとは不甲斐ない。……この感じは気配遮断を持つアサシンか。それとも特殊な礼装による効果か。

「何者だ!」
「……ないしょ」

 真後ろから囁かれた声が、敵を正面だと捉えていた自分の感覚を否定する。英霊の五感すらも惑わす洗練された気配遮断スキルの持ち主が発した、鈴を転がすような子供の声。
 そしてその声こそが暗闇に溶ける姿の見えない襲撃者の正体を知らせる。

「ジャック!!!」
「ちがうよ?」

 即座に振り返るがそこに少女の姿はなく、再び背後から、今度ははっきりと己の耳元で聞こえたのはよく聞き覚えのある子どもの声だ。木の実や花を摘んできては童話の少女といっしょにお菓子をねだりに来る、幼き姿をしたロンドンを代表する暗殺者。

「ふふ、」

 正面から腹部を狙って突っ込んできた塊を弾き飛ばす。甲高い音を立て、暗闇に火花が咲いた。
 軽い。軽すぎる。例え防がずとも致命傷にはならないと思うような、体重の乗らない一撃。しかし、それが侮るようなものではないことをわたしは知っている。

「ふふ、アハハっ!」
「…………っ、」

 即座に黒が跳ね、次の瞬間に舞い戻る。
 ……捕らえられない。闇に紛れ、床を蹴り天井を駆けてはこちらの死角を狙う彼女の動きに着いていくのがやっとだ。
 屋内戦は彼女の独壇場、四方を壁に囲まれた室内は小柄な体躯による身軽さと驚異的な瞬発力が最大限に発揮されるフィールド。天井も壁面も、テーブルや椅子に設置物の縁さえも彼女にとっては獲物を仕留めるための足場でしかない。
 ジャック・ザ・リッパーの真名を持つ彼女は英霊の中でも随一の敏捷性を誇る。吹き飛ばされた勢いをそのままに、受けられることを知りながら攻撃を仕掛ける少女は動きを繰り返す度に速度と威力を増していく。
 これ以上はまずい。

「待ってくれジャック!君がなぜわたしを狙う!?」

 真上から真っ直ぐに振り下ろされた刃を交差した剣で受けた直後、少女の足が振り子のように振られ合わさった互いの武器の重なりを引っ掛けるように空中で前転。大振りのナイフを手放しつつ体を押し出した少女の爪先が床へと着いた刹那、腰に下げられていた別なナイフを逆手に握り跳ね上がる。
 こちらが振り下ろす動きに対して鋭角に、接触する瞬間に手首をしならせ干将・莫耶を握る両手を狙い正確に叩き込まれたナイフの一撃。 

「それもないしょ」
「っぐ……!」

 握りを下から突き上げる打撃に耐えきれず一対の夫婦剣が手の内から滑り落ちた。
 黒の影は駆け抜ける。天地を逆さまに。天井へ足裏を置き短く息を吐いた少女の体がほんの一瞬弛緩する。この構えは、

「トレースっ」
「おそいよ」

 剣を作り出すよりも少女が己の胸に飛び込むほうが早かった。
 速度を上げるために高められた緊張状態から解かれ、緩んだ後により密度を増して再び練り上げられた魔力が乗せられた一撃。
 彼女の動きを遮るように構えられた己の両腕の間をすり抜け、鈍く光るナイフがみぞおちを貫通する。

「うごかないで、っね!」
「っが……!」

 息が、できない。
 背中からナイフを生やしたまま床へと押し倒され、まだ足りぬとばかりに追加のナイフが突き立てられた。両肩、そしてご丁寧にも手根骨を断ち切って打ち込まれてしまえば両手はしばらく使い物になりはしない。
 さすがは外科手術をスキルに持つだけあって、急所の狙い方が適格だ。花丸をあげて褒めてあげたいほどに。しかしどうして、
 
「ちょっとまっててね。エミヤおじさん」
「……ッ、ぁ」

 胸の上に馬乗りになった少女が愛らしい笑みを見せる。
 これまで彼女が行った行動は相手の動きを止めるための攻撃であって、殺すためのものではない。加えて彼女の言葉。「待っていて」?一体、誰を。

「っ……、ぇす、」
「なぁに?」

 とにかく、彼女が己を殺さず時間稼ぎのために現れたというならばそのシナリオに従う必要はない。
 貫かれている部分へ魔力を集中。イメージするのは己の内側から生み出される無数の剣だ。

「あっ、うごいちゃだめ!」
「ーーーオン!!!!」

 彼女が己の上から飛び退いた直後、鈍い銀の光が辺りを照らす。現れたのは無数の剣群。魔術による発動光を反射した剣が暗殺者が縫い止めていた肉体を切り開き、ナイフによる楔から身体の自由を取り戻す。投影を解き、内側から引き裂かれた痛みに知らないふりをして飛び起きれば悔しそうに頬を膨らますジャックがナイフを構えて跳んできた。

「もうっ!ずるいよそんなの!」
「生憎剣に貫かれることは慣れていてね」

 ーーー投影開始。
 身の丈を超える大剣が突進する彼女の眼前へ立ち塞がる。己を囲むように作り出した剣の檻。
 だらりとぶら下がるだけの手ではもう剣を握れない。敏捷は比べるまでもなく負けているし、満身創痍に近い状態で逃げ切ることは不可能だ。
 けれど、

「すまないがこれにてお開きだ。さようならジャック」

 座に還ってしまえば追いかけては来られまい。
 彼女のおかげでそれなりの負傷を受けたこの身は放っておけば魔力の流出だけで消滅するだろう。端の解けた肉体の枷を意識的に緩め崩壊させれば座への帰還は直ぐだ。

「そうはさせないさ」
「間に合った!お願いエルキドゥ!!」

 鎖が擦れ疾る音。

「あぁマスター。君の望むがままに」

 閃光、じゃらじゃらと響いた鎖の音と同時に食堂が光で満ちる。

「ッな!?」

 今にも消えようとしていた体が銀の鎖で縛り上げられた。神をもその場に留める鎖、突然現れたエルキドゥの操るそれは神性を持たぬこの身へ効果は薄くともほどけかけていた霊基を再び固定され、

「っ食らえぇええ!!!」

 細い人差し指に込められた魔力の塊が、この現界においてマスターと呼び従う少女の叫び声と共に炸裂する。
 巨大な体躯を持つ幻想種をもスタン状態にさせるマスターのガンドが打ち込まれ、肉体どころか魔力の流れ自体も麻痺させられたわたしは魔術の行使一つ、指一本すらも動かない。
 なぜ彼女が、なぜ彼女にわたしがガンドを放たれたのかまったくわからず駆け寄ってきた少女を呆然と見る。
 カルデア戦闘服姿の彼女の表情はなぜか怒りと、溢れんばかりの悲しみに彩られていた。

「マスター、なぜ」
「……すべての令呪を重ねて命じる!!『英霊エミヤはわたしが死ぬまで、』」

 掲げられた少女の右手が光を帯びる。令呪の発動光、自分を対象として発動されようとしているそれに、悪寒が走る。三角もの令呪を使いなにを、彼女は何をしようとしている!

「ッ待て!!やめろ!!!!」
「『わたしが死ぬまでアラヤの座へと還ることを禁ずる―――!!!!!!!』」

 赤い光、灼熱の業火にも似た莫大な魔力の渦がわたしと少女を包み込んだ。
 三画すべて使用すれば複数の英霊すらも完全に霊基を復元させるほどの魔力すべてがたった一つの命令の元に注ぎ込まれる。
 爪先から足を辿り、胴を這い上がり頭を撫でて、髪の毛の一筋までも覆い隠す。息が出来ないほどの魔力が、互いを結びつける呪いが雁字搦めに絡みつきその存在を縛り付けた。
 それは肉体を編み上げるエーテルを縛り、肉体を動かす意思を縛り、存在の核たる魂をも縛る赤い誓約。

 一秒か、それとも十分も経ったのだろうか。時間の感覚にすらも曖昧にする魔力がすべて消えた時、わたしの前には俯く少女が立っていた。
 令呪が発動したことで傷ついた肉体も修復されたのか、腹部の大穴やボロボロだった両腕からは痛みも傷もなくなっている。
 その事実に気づくよりも、少女の後ろに控える二人のサーヴァントに声をかけるよりも、口からは激情のまま言葉が出てしまった。

「マスターっっ!!君はッ……、君は自分が今何をしたのかわかって、」
「わかってるよ!!!!」

 勢いよく顔を上げた少女の怒鳴り声に一瞬怯んでしまう。記憶の彼女にそっくりの声に虚を突かれて一度瞬きをした。
 ーーーかちり。

「ほらほらマスター。日付が変わったよ?」

 その刹那の時間で白い道化が甘く嘯く。

「ありがとマーリン!!!これが、わたしの本気だからエミヤ!受け取り拒否は許さないよ!」
「っお、おい、まさか……!!」

 一日に一画分。日付の変更と共に特殊な支給される令呪。少女の手にもたらされた一筋の赤。

「さらに令呪を重ねて命じる!『英霊エミヤはわたしが生きている限りアラヤの座へと還ることを禁ずる!!!!!!!』」
「四画目の令呪、だと……!!!?」

 再現だ。もう二度と経験したく無いと思った呪縛の時間を一日に、いや、日を跨いで二度も味わうことになるとは、

「っき、君は……!」

 浴びた魔力が飽和して身体中が火照るような、上から加重が纏わりつくような不思議な感覚に足がふらつきそうになるのを額に手を当ててなんとか堪える。
 自分はともかく、彼女のほうは大丈夫だろうか。

「マ、」
「だって!!!!!!」

 マスター。そう呼ぼうとした声は遮られた。
 頭を一つ下から見上げる彼女の瞳は、鮮やかな緋色に燃えていた。きらり、きらりと輝く涙に覆われて。

「あなたを、わたしの正義の味方をっ!アラヤに渡したりするもんか!!!!」
「……マスター」

 まっすぐで、お人好しで、お調子者で。どこまでも人間らしいやさしさを持つ少女の激情が迸る。
 ……あぁ、そういえば。召喚されて随分経ったいつの日か。わたしの夢を、過去を、守護者としての役割に疲れ慟哭に咽ぶわたしの姿を見たと彼女は泣いていたのだったか。早朝に着替えもせずに食堂を訪れて、頼光殿にわたしが泣かせたのかと危うく三枚に下ろされるところだったんだ。

「渡すもなにも。わたしは元々アラヤの所有物(モノ)だ」

 ーーー君がそんな顔をする必要はないんだ。そう静かに告げながらぼたぼたと落ちる涙をそっと親指で拭い取る。

「君はやさしいから、そんな風に思ってしまったんだな」
「エミヤ……」
「大丈夫だよ。俺も頑張るって、約束したんだ」

 涙に濡れた頬へ手を滑らせると、嫌がるように顔を斜に傾けた彼女に手を掴まれる。

「……なんて言われても令呪はもう使っちゃったんだからね。撤回とかできないのはエミヤも知ってるでしょ」

 赤くなった目でじとりと睨みあげる彼女へやわく微笑みを返す。

「マスター、君はさっきこう言っただろう?『わたし(君)が生きている限り』、と」

 注がれた令呪のおかげで空だった魔力は溢れるほどに満たされていたい。

「浅はかだったな」
「おかあさん!」

 頬へ当てていた手の内が淡く輝く。戦闘服に覆われていない白い首筋に当てられた短剣の存在に控えていたジャックが飛びかかろうと動くのを、少女は片手をあげることで堪えさせた。
 こちらを見つめる橙色の瞳はただまっすぐにわたしを見据えたまま。

「エミヤにそんなことできるの?」
「できるとも。いつまでも子供の保護者をしている程暇じゃないのでね 」

 そう言って自分の出来うる一番悪どい笑みを浮かべたのに、

「はぁ……」
「無理だろ」

 なぜか返されたのは大きなため息と青い槍兵の姿だった。

「ランサー!?」

 あっ、と驚く暇もなく片手にゆるく握っていた短剣が奪い取られた。視界の端でマスターに飛びつくジャックと、それを受け止めて抱き返す少女は二人の姿が見える。

「っおい!貴様何をする!?」
「あんだけお嬢ちゃんに世話焼いてたお前がそんな真似できるかよたわけ。ンなことできるって言うならなぁ、もっとそれらしい顔をするんだな」
「なんだと!?」

 わたしの渾身の悪どい顔になんてことを!ばっ、とマスターとジャックに向けて首を振り否定の声を求めるが、なまぬるい視線と不思議そうな丸い瞳が返されるだけだった。なん、だと……。

「苦しくてたまらないのに無理矢理笑おうとして失敗したみたいなくっっそヘタクソな笑顔しやがって。このまぬけめ」
「っぐ」
「ねえエミヤ」

 ジャックを腰に引っ付けながら真面目な顔をしてマスターがわたしを呼んだ。 

「どうせ長くても八十年くらいだから。ここはもうきっぱり諦めて、わたしの保護者やる覚悟決めたら?」

 お願いエミヤ。そう言って差し出す彼女の手を、縋る気配を浮かべながら決して折れぬ強い意志をたたえた瞳を。

「……令呪は撤回できないんだろう?だったら、わたしに断る権利はないじゃないか」

 無下にすることなど、できるわけがないのだ。







 おまけ


「さて、明日はとうとう使節団が来てしまうな……。心の準備は済んだかねマスター」
「うん。それはもう大丈夫だけど……。みんなすごくピリピリしてるね……」
「これから来るのは人を人と思わない魔術師(外道)どもなんだぜ?」
「ダヴィンチちゃん……」
「ダヴィンチ女史の言う通りだよマスター。……それでは使節団とやらをもてなす準備をしようじゃないか」
「え゛。っちょ、暴力的なのは駄目だからね!?」
「?何を言っているんだマスター?当日の昼は立食形式がいいかね、それともワンプレートのほうが食べやすいだろうか?」
「アっ、そうでしたねすみません」
「尋問、いや査問があるのならばやはりここは丼物でいくべきか……」
「あっもしかしてカツ丼!!?うそ-ドラマみたい!!」
「っふ。思わず口を滑らせてしまうようなとびっきりのカツ丼を用意しよう」
「尋問で疲れ切ったところにエミヤのカツ丼が出てくるとか~~~!!わたしなんでも喋っちゃうよぉ~~~……!!」
「ふふふ……。表面はしっとり出汁の味が浸みこみながら噛みしめた瞬間のサクサクを保つ完璧な衣とやわらかでありながら食べごたえ抜群の肉厚なカツレツ。それを包み込む玉子と味付けもまさに究極の一品……!」
「あぁ……!明日のお昼が楽しみぃ……!!」
「嬢ちゃんと弓兵のやつ随分と盛り上がってんなぁ……」
「ほんと余裕だねえ……。羨ましいくらいだ。わたしもエミヤのカツ丼とやらが食べたい」
「んで?」
「おや。なんだいキャスターのクー・フーリン」
「実際どうすんだよ明日」
「どうしようねえ。表向きは英霊は人理修復と同時にすべて退去し、カルデアではバックアップのデータ採取すら不可能だったため再召喚は不可能である」
「……ということにしてあるが。実際はもちろん違う。君たちの霊基パターンはすべて解析済だから例え座に戻っても同じ状態で召喚は可能だ」
「ほう」
「だから、間違いなく君たちは嫌がるだろうけどここに残ることを選んだサーヴァント諸君には一度退居してもらおうと思う」
「まぁしかたね、」
「雪山に」
「……はぁ?」
「再召喚は可能だが、そのための魔力確保の都合がつかない。君たちはとんでもない大食漢なのを忘れてくれるなよ?一度現界していれば編みなおすのは簡単だが、座にある状態からから半受肉の現状までもっていかせるだけ膨大な魔力を食うんだ。そう簡単に出したりしまったりできるものか」
「なんだかとんでもなく嫌な予感がするんだが……」
「……ということで、今日から君たちは雪山キャンプ生活をしてもらうことになる」
「また野宿生活……」
「頼んだよキャスターのクー・フーリン!」
「はぁ?なんで俺が……。そういうのは保護者組の役割だろう」
「雪山キャンプに保護者組は行かないんだ。主に食事処の事情で。あぁ、もちろん普通の人間とまったく見分けがつかないように霊基を弄るから心配はいらないよ」
「そりゃぁ心配なんてする訳ないが……。って、食事ぃ?そんなの外から新しく人手が入るんじゃねえのか?」
「甘い!!!!!!保護者組、もといキッチンカルデアメンバーに餌付けされた我々は今更あの美食を手放せるわけがないだろう!!」
「っっンだそりゃあぁあ!!」
「エミヤ、頼光、ブーディカ、タマモキャットはカルデア残留だ」
「うそだろおい……。その四人がいなくて誰が飯の支度するんだ……」
「そもそも君たちはサーヴァントなんだから食事の必要はないだろう?雪でも食べてどうにかしたまえ。霊体化は使節団に気取られる可能性があるから絶対にしないように」
「タマモの耳と尾は……。アンタならどうにでもできるのか」
「もちろん!私は天才だからね!」
「さいですか……」
「さて、今日のうちにポイントを決めてかまくらくらいは作ろうじゃないか。ドアとはめ込み窓くらいは欲しいだろ?」
「それかまくら?」
「硝子の生成なんて簡単さ。第一窓がなくては家とは言えない!」
「そういう変な拘りあるよなアンタ……」
「あぁ、そうだ。クー・フーリン・オルタも残留組だからね」
「オルタ……。ハァアアアアア!!?!オルタだと!!?なんでよりにもよってオルタの俺なんだよおかしいだろどうすんだあのしっぽ!!!!」
「仕方がないだろう。うちの最高火力は彼なんだから、マスターである彼女の傍から遠ざけておくなんて真似はしないよ。相手がどう出るかわからない以上、何かあればすべてを捨てて強行突破することになる」
「……!!」
「君たちを座に返さない理由は、結局それだ」
「……マスターにそのことは?」
「伝えていない。すべてはわたしと、カルデアスタッフ全員で話し合った結論だ。査問なんて名ばかりで、目を合わせた瞬間自我を崩壊させるような魔術を行使される危険性も高確率である。……人類を救う、なんて所業を成し遂げてしまった彼女はもはや、只人ではいられない」
「ふぅん。それで食事もすべてこちらの手がかかったものを用意し、暗殺者の嬢ちゃんを常に霊体化させて側に置いてるって訳か」
「どれだけ万全に準備しても予想外の出来事は起こりうる。言っただろう彼はこのカルデアで最も戦闘力の高いサーヴァントだ。彼が屈すれば彼女を守れる存在はいない」
「っち。まあ、仕様がねえか……」
「ということで、いざ雪山キャンプ!」
「Good-by,やわらかくてあたたかい寝床……。Hello,冷たくて硬い寝床……」
「ねえエミヤ」
「なにかね?」
「いつもおいしいご飯ありがとね!」
「……当然だろう。わたしは君のサーヴァントだからな」

Comments

  • meichi
    June 23, 2018
  • 稚那
    December 31, 2017
  • ねこまる
    December 31, 2017
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