EtherCATとTSNに関してよくある質問。
「TSNとEtherCATではどちらが優れているの?」
「TSNが来ればEtherCATの優位性はなくなるのでは?」
この質問の意図は、
「EtherCATはフィールドネットワークの中で1番速いと聞く。そしてTSNも速いと聞く。じゃあどっちが速いの?」
だと思います。
結論から言うと、この問い自体がズレています。
TSNとEtherCATをはじめとするフィールドネットワークとでは、そもそもレイヤーが違います。
TSNはIEEE 802.1の規格群で、標準Ethernetに決定性を追加するLayer 2技術です。プロトコルではありません。
EtherNet/IPやPROFINETの「TSN対応」というのは、TSNの上に自分たちを載せるという話です。なので比較するなら「EtherCAT vs TSN上のプロトコル」が正しいです。
「じゃあTSN上のプロトコルならEtherCATと同等になるのか?」
なりません。
スイッチを通るか通らないか。ここが全てです。
TSNの802.1Qbvはスイッチに時間窓を設けて、RTトラフィックを優先的に通します。非RTとの干渉は排除できます。
ただし、「フレームが各スイッチで受信 → キューイング → 転送」される構造自体は変わりません。ホップが増えれば遅延は累積します。
そしてここが重要で、EtherCATはそもそもスイッチを通りません。フレームがスレーブを通過する瞬間にASICがオンザフライで読み書きします。通過遅延は約1μs/ノード。「スイッチ遅延」という概念自体が存在しないんです。
時刻同期も同じ構造差から来ます。
TSNの802.1ASはスイッチ経由で時刻を伝搬するので、ホップ数に精度が依存します。EtherCATのDCはハードウェアで遅延補償して数十ns精度です。
つまり
・TSNは「スイッチの中でRTを優先する技術」
・EtherCATは「スイッチ自体を排除した技術」
よって、この差はTSNをいくら拡張しても埋まりません。