倉本千奈のSTEP3と名前すら与えられなかった生徒の話
※この記事は、倉本千奈のSTEP3コミュを読んだうえでの否定的な読後感を整理した個人的な感想である。
※キャラクターそのものよりも、物語構造や価値観の置き方に焦点を当てている。
※結論としては厳しい内容になるためその点を理解したうえで読み進めてほしい。
まず倉本千奈という少女について
千奈ちゃんこと倉本千奈は倉本グループという巨大財閥の孫娘である。
つまり大金持ちだ。
お城のような邸宅に住み、多くのメイドに囲まれて暮らしている。
しかもそのメイドの中には千奈ちゃんと同年代の少女(香名江)がいる。
信じられないが公式設定である。
現代日本でこれが大丈夫なのかは一旦置くとしても、初星学園という世界が現実倫理から大きく乖離していることはよく分かる。
さらに言えば千奈ちゃんの祖父は初星学園学園長・十王邦夫の古くからの友人であり、十王邦夫の孫娘である十王星南とも千奈ちゃんは幼い頃からの顔馴染みだ。
金と権力と血縁。
またしてもズブズブの匂いがする。
それでもSTEP2までは千奈は「成立していた」
とはいえ倉本千奈というキャラクター自体は金持ちであることを鼻にかけない、天真爛漫で天衣無縫な「愛されキャラ」として描かれている。
金持ちだからこそ出来るアイドル活動――例えばコネクションによるテレビ出演なども千奈ちゃんの元には舞い込んでくる。
だが千奈ちゃんはその「金持ち特権」すらも軽やかに使いこなし、嫌味にならない形でアイドル活動を続けてきた。
これは彼女の力だと思う。
少なくともSTEP2までは、自分はそう感じていた。
STEP3 ─ 生徒会長選挙という地獄
STEP3で物語は一気におかしくなる。
千奈ちゃんはPの提案もあり生徒会長に立候補する。
そして無事に生徒会選挙に勝ち、無事に生徒会長になる。
対抗馬は普通科の生徒だったようだ。
だったようだ、というのは名前すら出てこないためこの人物がなんだったのか最後までわからなかったからだ。
初星学園の生徒会選挙は選挙活動としてライブを行い、生徒の心を掴んで票を稼ぐ仕組みになっている。
この時点でかなり狂っているが、この制度を作ったのは現生徒会長・十王星南らしい。
相変わらずアイドルの力で全部を解決しようとする人だ。
血筋によって約束された生徒会長
ここで少し設定を整理しておく。
初星学園にアイドル科が出来たのは、公式パンフレットによれば2010年ごろとされている。
学マスのリリースは2024年。
プロフィール通り星南が17歳(高校3年生)だとすると生年は2007年。
……もう分かるだろう。
なぜ学園長・十王邦夫が初星学園にアイドル科を作ったのか。
もはや自明の理である。
生徒会長になることすら星南は血筋によって約束されていた。
(※ここは完全に個人の憶測なので注意されたい。)
「公平」を装った残酷さ
話を千奈ちゃんの選挙に戻す。
さすがに対抗馬である普通科の生徒が不利すぎると判断したのか、星南・雨夜燕・姫崎莉波(現生徒会の3年生)はその対抗馬の応援ライブに回ることを決める。
そしてもう一度言う。
倉本千奈は生徒会長に立候補し、
無事に生徒会選挙に勝ち、
無事に生徒会長になった。
星南たちは「こうなることはほぼ分かっていた」と言い千奈ちゃんを祝福する。
STEP3はここで終わる。
最後まで対抗馬だった普通科の生徒には名前すら与えられなかった。
高橋さん(仮)に思いを馳せてしまう
自分はこの対抗馬だった普通科の生徒のことを考えずにはいられなかった。
仮に、彼女の名前を高橋さんとしよう。
千奈ちゃんが初星学園への熱い思いを演説したように高橋さん(仮)にも初星学園への思いがあったからこそ立候補したはずだ。
(明らかに内申点狙いであれば燕あたりが止めていたと思う。)
千奈ちゃんは選挙活動の仕組みすら知らずに立候補した。
だが高橋さん(仮)はさすがに知っていただろう。
圧倒的に不利な条件の中でそれでも立候補したのだ。
そこへ知らせが届く。
現生徒会長であり“一番星”でもある十王星南が雨夜燕と姫崎莉波と共に応援してくれるという知らせだ。
一瞬、勝機が見えたはずだ。
だが結果は落選。
しかも応援してくれた星南たちは当選した千奈ちゃんを祝っている。
高橋さん(仮)は困惑しただろう。
そして落胆しただろう。
ただ負けるのと、希望を見せられてから負けるのは全く違う。
「他人のことを何も考えていない」世界
ここで自分は改めて思った。
「学マスのキャラたち、内輪以外のことを何も考えていなくないか?」
アイドルの道は厳しい。
他人を蹴落とすこともあるだろう。
だが、ここでこんなやり方をする必要が本当にあったのか?
アイドル志望ではない普通の高校生を欺き、敗北させる意味はあったのか?
正直自分が高橋さん(仮)だったら、インスタに長文のお気持ちストーリーを上げスクショし暴露系インフルエンサーに渡し拡散させる。
“学園”アイドルマスターという呪い
ここがアイドルマスターブランドの中でも
“学園”アイドルマスターであることの歪さなのだと思う。
彼女たちの目的は「在学中にアイドルになること」であり「アイドルになって人を楽しませること」ではないのだ。
「アイドルである」ことは前提ではない。
「アイドルになる」ことが最終目標なのだ。
だから人が踏み台になる。
だから世界が内輪で閉じる。
そんなことを倉本千奈のSTEP3を読んで思った。
こんなに世界観が狂っていたら家の中に10代半ばのメイド(就学しているか不明)がいてもおかしくない。
明日からまた倉本千奈、そして篠澤広のガシャが始まる。
二人がこれからどんなコミュを新たに展開し、どんな価値観を正解として提示し、どんな地獄を見せてくれるのだろうか。
初星学園という箱庭は今日も何事もなかったかのように回り続ける。
「ままならない」思いをしている生徒は、初星学園にはたくさんいるのかもしれない。


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