彼は去った
どうも、です
世界を救い、数多の英霊に出会った【人類最後のマスター】
彼は本当にあのままカルデアで過ごすのか。いやいや、彼とて元は民間人。辞めたいとも思うはず
といった具合に誕生した、立香がカルデアを去り英霊の皆が彼に戻ってきてほしいと願う話、です
いかせん彼だって望んで戦ってるわけではありませんからね、辞めたいと思うだろうと書きました。あまりこういう話は得意ではありませんが、心の中で書きたい衝動にかられたので2日で仕上げました
楽しんでもらえるとうれしいです
アポクリファのガチャが来ましたが、正直自分としてはアキレウスさんとケイローン先生が実装されるのを心からお待ちしています
ぶっちゃけ自分のランサー最大戦力はヘクトールじいちゃんなので、アキレウスと組ませてみたりしなかったり
それでは皆さん、どうぞごゆっくり
- 3,838
- 3,845
- 92,843
「俺は、ここを去るよ」
カルデア。デミサーヴァント。レイシフト。人理修復。英霊。
そして、マスター。
数年に渡る戦い。数十に及ぶ生死の危機。数百を越す冒険に死闘。
いい加減、この人生に歯止めをつけたい。
そう願った彼、藤丸立香は突然として自身の後輩に告げました。目の前では久しぶりに一緒にお茶でもしないかとコップに紅茶を注いでくれたマシュがいますが、突然の告白にコップを手から離してしまい、床に当たって砕けました。紅茶が床の四方に広がっていきます。
「せ、先輩………いま、何て?」
「去る。カルデアから出て行くよ」
「そ、それは休暇としてですか? それとも協会に呼び出されて?」
慌てて椅子に座っている立香に駆け寄るマシュ。
彼は以前としてすました顔で、
「いや。令呪をカルデアに返却して、文字通りマスターを辞める。元いた日本に帰るよ」
そう冷たい言葉を投げ返して来ました。
「ど……どう、して?」
「人理修復したし、意識不明になっていた他のマスター候補生の皆も意識を取り戻した。カルデアの設備もだいぶ治ったみたいだし、そろそろ引退どきかなって」
「で、ですが先輩。まだ不安定な特異点が−−」
「それは他のマスター候補生に任せればいいよ。人数も多い。近々、魔術協会から派遣されるマスター候補もいるしね」
「でも先輩、あの方々はまだ未熟でレイシフトは初体験になります」
「トレーニングルームがあるでしょ? 何事も経験だよマシュ、経験。俺だっていきなり実戦に放り込まれてここまで来たんだ。何人かは無事さ」
まともな返しにマシュは顔を歪ませました。
ええ知っています。他の誰よりも辛く酷い状況下でマスターになった立香に比べれば、他のマスター候補生たちの状況はとても優しく親切です。
ですが、逆に立香の成し遂げた偉業は素晴らしいものであり、彼のサーヴァントを指示する能力は今後登場することは無いでしょう。
なにより、
「ダヴィンチちゃんが許可しないはずです!!」
「……」
これまで何度も魔術協会からの無理難題の要求を誤魔化しなどでやり通して来た彼女もとい彼。
職員への対応。カルデアの設備完備。立香の存在証明に力を尽くすなど、誰よりも立香の立場を守って来たダヴィンチちゃんが許可するとは到底思えません。
何故いきなり帰るなどと言い出すのでしょうか。マシュは心底驚き、泣きそうになりました。
「先輩は今やカルデアを代表する偉大なマスターです。人理を修復し、数ある特異点を駆け抜け、あらゆる英霊の皆さんと絆を深めた唯一のマスターです。いくら魔術協会が先輩を引きずり降ろそうとしているとはいえ、先輩が諦めてはダメです!!」
「……マシュ」
「もしかして協会に脅されているのですか? なら皆さんと一緒に訴えましょう。アルトリアさんや円卓の皆さんが協力してくれるはずです!!」
「…マシュ」
「先輩は私たちにとって大切な人です。今はサーヴァントとしての能力は出せませんが、このマシュ・キリエライト、先輩の盾となり必ず守ります!!」
「マシュ」
「元気を出してください先輩、ここには皆さんがいます。誰も先輩を見捨てません。ですから−−」
「マシュっ!!」
「っ!?」
我慢ならない。そう示すかのように立香は叫びました。
マシュは怯え、彼から少しだけ距離をおきました。立香はそんなマシュに対し、怒りでも無ければ悲しみでもない目を向けます。
「もういい……もういいんだ、マシュ。俺は役目を終えた。人理を修復した。数え切れないサーヴァントの皆と出会って話をした。指示もし、歴史に名が残せないと知っても人を助けて来た………そして、悪夢にうなされるほどの地獄を見て来た」
「………先輩」
「十分すぎるほどの冒険をした。だが立ち止まるわけにはいかなかった。あの時、あの当時、あの場には“俺”しか戦う者がいなかったからだ!! 嫌々ながらモンスターや兵士を殺した!! 助けを乞う人を我慢して無視した!! 自分の命が危険に晒されても尚、戦うしかなかった………だけど今は全てを終えた。世界には俺よりも優秀な魔術師がいる。天才なマスターもいる。俺が必要とされている時期は、既に終えたんだよマシュ」
「そ、そんなの………おかしいです!!」
彼女は悲しみで顔を歪ませながらダヴィンチちゃんに通信を入れました。
このカルデアを事実上仕切っているダヴィンチちゃんに叱ってもらう。それか、彼女の言葉で思いとどまってもらう。彼女は天才です。立香を思いとどまらせる台詞など沢山思いつくでしょう。
マシュの立香に離れてもらいたくない感情が最優先で働く中、彼は申し訳ない表情でこう言いました。
「残念だけど、既に遅いよ」
ダヴィンチちゃんに繋がり事情を話し終えたマシュでしたが、次に彼女を待っていたのは残酷な知らせでした。
『マシュ………先ほど魔術協会から連絡があった。本日付を持って、藤丸立香はマスターとしての全権をカルデアに返却。翌日、日本に帰国する……』
「なっ!? 向こうにその強制執行する権利はないはずです!! 一体どうやって−−」
『どうも何も。立香くんがその手続きをしたんだ……本人の意思によるマスター辞退。私もついさっき通知が来たばかりだ。こればかりは、どうしようもない』
「そんな………」
マシュは愕然として立香を見ましたが、彼はただ黙って床に散らばったコップの欠けらを拾い始めました。
ぐだにとってはサーヴァントに嫌われていた方が気楽のような気がする。「好き」ということは執着心を上昇させちゃうから、マスターを辞めたくてもそうさせてくれない。