訳のわからない文面の契約書、小さなナイフ、禍々しい色をした宝石のようなもの。
それらを前にして俺、『藤丸立香』は過去のことを思い浮かべる。
今になってみればそれなりに色んな場所へ行って来た。
フランス、ローマ、オケアノス、ロンドン、アメリカ、聖地、メソポタミア。
どこへ行っても死ぬような思いをしてきたが、それを嫌な事だと思わない。
頼りになる後輩ーマシュ・キリエライトは常に俺を守り、そして支えてくれた。旅先で出会った頼れる仲間に助けられてきた。
ゲーティアを倒す時、俺一人の力ではとても立ち向かえなかったが、仲間の力を借りて何とか倒すことができた。
これはその代償
魔術協会の使節団から言い渡された命令。
令呪を他のマスター候補に譲渡する事。
カルデアから退去する事。
そして
完全に魔術と関係を絶った上で『事故死』する事。
これが『カルデア前の俺の周りの人間に害が及ばない』唯一の方法だった。
曰く、魔術協会としても俺の周りの人間に害を及ぼすのは本意ではないと。
魔術というなの『神秘』は秘匿とされて初めて成立する概念だ。それを行使して一般人に害を加えるのは不可能ではないが、避けたいとの事だった。
目の前の調査官は笑おうとする表情筋を必死に抑えて笑いをこらえている。
どれだけ取り繕おうとしても下卑た笑みと薄汚い思惑は隠せない。
その顔は俺がここに来る前から嫌っていたもので、嫌という程見てきたものなのだから。
だが、何を考えようがこれからすることに変わりわない。
カルデアの仲間たちは大切な存在だが強い。そこらの魔術師では手も足も出ない程に。
だが俺の両親や友人たちは?
顔もよく覚えていないがそれでも見捨てる事は出来ない。『可能性の話だとしても殺す事は出来ない』のだ。
後悔は1つだけ。
マシュ・キリエライト。君の望んだ願い。
『これから先の未来を共に過ごす』
それを出来ない事だけが悔やまれる。
そして俺はすべての契約を果たすために動き。
魔術協会の揃えたこの上なくくだらない建前の元。
「それで彼らを救えるのならば」
そう言い残した俺はトラックに跳ねられ、ぐちゃぐちゃの肉塊になってこの世を去った。
英霊が、狂乱する、0秒前