資金ゼロから奇跡の仲間と挑んだ『Jelly Troops』開発
任天堂から独立へ
自分はもともと任天堂で10年間プログラマーをしていました。
Pikminチームにいた頃、対戦モードの面白さをもっと多くの人に知ってほしいのに、なかなか遊ばれない歯がゆさを感じていました。社内で「対戦に特化したピクミン」を企画として出したこともありますが、1プログラマーの思いつきが本格始動することはありませんでした。
その後、Splatoonのチームに入り、完成を見届けたあと会社を辞めました。
理由はいくつもあります。海外に住んでみたかったこと、会社に飽きてしまったこと、未来が見えすぎて面白くなくなったこと、そして「自分のアイディアで最初から最後までゲームを作りたい」という気持ちです。
独立して序盤は、賞金とかアプリ収益でまぁまぁ資金に余裕があったんですが、最近は会社の資金が尽き気味で自己資金を会社に入れてなんとかやっていました。
ピクミン4が与えた刺激
2023年7月、ピクミン4が発売されました。AIとの「ダンドリバトル」など、対戦要素は強化されていましたが、自分がずっと望んでいたオンライン対戦は入っていませんでした。
「だったら、自分が作るしかない。」
そう心に決めた瞬間でした。
資金ゼロからの挑戦と奇跡の出会い
同年11月、資金的に追い込まれていたとき、「Gyaar Studio Indie Game Contest」の存在を知りました。賞金が出ると聞き、1ヶ月でプロトタイプを作ることを決意しました。
以前別の作品でオンライン機能を実装してくれた学生バイトの方に声をかけたところ、彼はなんと1ヶ月でプロトタイプを完成させてくれました。もし彼との出会いがなければ、Jelly Troopsは存在していなかったと思います。
最初のプロトタイプ動画↓
見た目は粗削りで自信はありませんでしたが、結果はまさかの入賞。開発支援金1000万円をいただき、ゼロからの挑戦が奇跡的に続行できることになりました。
しかし、困ったことに、作って一ヶ月なのでキービジュアルの1枚もない状態。受賞イベントまでのわずか1〜2週間でイラストレーターの友人に頼んで、急いで仮のキービジュアルを作ってもらって乗り切りました。
(イラストレーターのことりさん、その節はありがとうございます!)
仲間との出会いが生んだ力
その後も、次々と奇跡の出会いがありました。
2024年2月、アートディレクターを募集しました。業界歴30年の大ベテランも応募してくださった中で、あえて若いUIアーティストのIzawa Marieさんにお願いしました。最初は面談をすっぽかされるなど心配もありましたが、話してみると「この人は絶対に伸びる」と直感しました。UIアーティストなのに、キャラデザやモデル制作など何でもやってしまう姿勢に大きなポテンシャルを感じたのです。
作曲者募集では50名以上の応募がありました。その中から選んだのはOdasisさん。経験豊富な方々が多かった中、彼の楽曲ややりとりから将来性を感じました。結果的にBGMだけでなくSEまで作ってくださり、数々のわがままにも応えていただき、本当に助けられました。
さらに、エフェクト担当としてKinacomさんと出会いました。エフェクトだけでなく、アニメーションやPV制作まで幅広く協力していただき、チームはどんどん強くなっていきました。
学生プログラマーの離脱、そして奇跡の加入
一方で、長く一緒にやってきた学生プログラマーのSさんが、勉強や卒論で忙しくなり、さらに「自分でゲームエンジンを作りたい」という新しい夢を持ったことで、チームを抜けることになりました。彼の気持ちは尊重したいけれど、正直ものすごく痛手でした。AI実装やネットワーク実装などプログラムの重要な部分を担当してくれていた中心メンバーだったからです。
「このままではAIを完成させられないかもしれない」──そんな不安が頭をよぎりました。
しかし、なんと、任天堂時代の先輩(@たんけんずき さん)がAIプログラマーとして応募してきてくれたのです。会社にいた頃、同じチームになったことはありませんでしたが、まさか退職した後に一緒にゲームを作ることになるとは夢にも思っていませんでした。まさに奇跡!
担当者さんの変更
Jelly Troops開発中は色々と大変なことがあったのですが、その中でもとくに大きなショックだったのは、パブリッシャーの担当者が二度も変わったことです。しかも前回のゲームに引き続き、またもや担当者交代。前回は部署異動、今回は退職。人生の選択なので応援したい気持ちはありますが、2回連続となるとさすがに堪えました。
パブリッシャーの担当者が変わると、関係を1から作り直さないとですし、情報も伝わりきっていないことも多くて、なかなか仕事がうまく回らなくなることが多いように思います。めちゃくちゃショックでした。
そして2025年6月、さらに担当者さんが再度変わることに…。短期間で三度目の交代にはさすがに頭を抱えましたが、それでも「どうやれば新しい担当者さんといい関係を築けるか」を考えるようにしました。
人生で一番ハードだった2025年8月
2025年8月、韓国・釜山で開催されたBIC Festに出展しました。ところが初日の設営中に、任天堂提出用のビルドが動かないという報告が入りました。しかも会場はWi-Fiもない状態。頭の中に「終わった。発売日延期か…」という言葉がよぎりました。
必死に原因を探ると、ビルド時のキャッシュが問題らしいと判明。キャッシュを消して再ビルドしたところ、なんとか正常に動きました。しかし現場にWifi環境はなく、スマホのローミングを使って数百MBのビルドをアップロードしました。容量が軽かったことが救いでした。
BIC Festが8月18日に終わると同時に高知へ戻り、翌早朝にはドイツへ出発。Gamescomは朝9時から夜8時までという超過酷な展示会です。ホテル代が高すぎて遠方に宿を取った結果、通勤ラッシュ並みにぎゅうぎゅう詰めの電車に毎日揺られました。
さらにホテルに戻れば、今度はDay1パッチのための不具合修正。ビルド審査が通ったら即提出しなければならないため、休む暇はありませんでした。
ドイツ観光といえば、帰国便までの1時間にホテル周辺を散歩した程度。人生で一番ハードな期間だったかもです。
発売直前
2025年9月現在、Switch版のビルド審査は通過しました。あとはDay1パッチの審査を待つのみ。通れば予定通り発売、もし通らなければSwitch版のみ延期という瀬戸際です💦
直近のGamescomでの試遊も好評で、2日連続で遊びに来てくれた人や、ゲームが面白いからサインくれって人がいたり、コラボしたいって言ってくれた開発者の人もいました!
子育てをしながらの開発は本当に大変でしたが、もうすぐゴールが見えています。うーん嬉しい。
最近新しくまたPVを作りました。このゲームの面白さが伝わるPVになっているので是非見てみてください! ちなみにナレーションを妻がやってくれています。
さいごに
その他にも数々の方に手伝っていただき、このゲームは完成しました。
フルタイムで働いていたのは自分ひとりでしたが、最終的には プログラマー3人、アート4人、サウンド1人、レベルデザイナー2人、マーケター1人 というチームになりました。
妻や2歳の子供にもご負担かけましたし、その他にも様々な方にお世話になりました。皆様の力なくして、Jelly Troopsは完成しませんでした。本当にありがとうございます!
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