〜ジェンティルドンナ〜
「失礼。」
「ああ、いらっしゃい」
「…………」
ジェンティルを家に入れると、俺の部屋を見渡しながら無言になってしまった。何か言いたいことがあるらしい。
「どうぞ……正直に言ってください。」
「随分と質素ですのね」
「たしかに……」
ジェンティルを迎えるまでは質素だなんて思わなかった。しかし、彼女の洋服姿が光り輝いて見え、対照的に部屋が物寂しく感じた。
「ジェンティルが綺麗すぎるんじゃないか?」
「……」
「お、お茶淹れてきまーす…」
「お構いなく。」
もはや綺麗だなんて言われ慣れているだろうに、つい変なことを口走ってしまった。
しかし、ソファに座る姿はやはり美しい。
「お待たせ……って、ジェンティル?」
「ハンガーから貴方のスーツが落ちていましたの。」
お茶を淹れて戻ると、ハンガーに黒のスーツを通すジェンティルの姿があった。
「そんなの気にしなくても……」
「あら、こちらは?」
「え」
「トレーナーの名刺……にしては、随分と煌びやかですわね」
「……」
「Fuchuウマ娘キャバクラ……?」
まずい、友人に誘われたキャバで貰った名刺をポケットに入れたままだった。いやしかし、彼女はキャバクラなんて知らないはず。
「それは、飲食店でいただいたんだ」
「そう。」
「……じゃ、じゃあお茶を」
「あまり舐めないでくださる?」
「へ?」
「そのように見縊られると、手元が狂ってしまいますわ」
プレス機にかけられるかのように床へと押し倒された。
「このように♡♡♡」
「あ……えっと、ジェンティル?」
彼女がこちらの上に座り、一瞬で手を押さえつけた。
「ま、待とう」
「フー♡そうですわね♡」
荒い吐息が首を撫でる。
「この部屋に伺ってから、貴方の香りでおかしくなりそうでしたの♡」
「……」
「我慢していたのだけれど、仕方ありませんわね?」
「あ、あの……あっ」
言い訳を考える間もなく、唇を塞がれる。頭が溶けそうなほど甘い感覚に、胸の鼓動が早くなっていく。
「覚悟なさい?トレーナー♡」
赤い瞳は、じっとこちらを見つめていた。
ずっと遠いところ。 それは果たして地上か?