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<インタビュー>世界が熱狂するSEGA SOUND TEAMの正体――『ソニック』からセラニポージまで、20年の時を経て花開くコンテンツ活用戦略
Interview & Text:龍田優貴
Photo:筒浦奨太
~NexToneデジタルディストリビューション連載特集~
今、日本の「ゲーム音楽」がゲームサントラという枠組みを飛び越え、世界中のリスナーの日常に溶け込む巨大なコンテンツへと進化を遂げている。
前回インタビューを実施したNexToneのデジタルディストリビューション事業の新たな取り組み「Game Music Academy」の連載特集として、今回はセガの「SEGA SOUND TEAM」にインタビューを実施。セガのサウンドプロデューサー・大谷智哉氏の手がける楽曲が北米を中心に圧倒的な再生数を記録し、日本のトップアーティストと並ぶ存在感を示しているほか、驚異的なバイラルヒットを記録した「Serani Poji(セラニポージ)」、さらに映画との相乗効果で再注目を浴びる『ソニック』の楽曲群など、その波及力はとどまるところを知らない。
四半世紀を超える膨大なライブラリを、いかにして現代の「デジタル資産」として運用し、次世代へと繋いでいくのか。「SEGA SOUND TEAM」を牽引する大谷智哉氏、楽曲ライセンス木下亮氏、岩崎剛氏の3名に、その戦略と音楽制作への熱き想いを聞いた。
J-POPの第一線と並ぶ衝撃――
データが可視化した「世界で聴かれるセガ・サウンド」の現在地
――北米の音楽ストリーミングデータにおいても、大谷さまの作品は長期間にわたって非常に多く再生されていることが分かっています。リスナーの日常に深く定着している現状について、率直な手応えをお聞かせください。
大谷智哉:そうですね……。改めて資料を拝見して、正直また驚いているというのが本音です。自分としては去年、楽曲をほとんどリリースしていなかったのですが、それでも2023年のヒットに繋がった『ソニックフロンティア』のサントラがずっと再生数を底上げしてくれていて、J-POPの第一線の方々の中に自分の名前がINしている。もし僕が毎年大きなヒットを出し続けたら、「もっと上位に行けるのかな?」なんて興味深く思ったりもしました。本当にそうそうたるお名前がある場所なので。
――かつては想像もできなかったような状況ということでしょうか。
大谷:そうなんです。一番”可視化”されたと感じたのは、2024年の経済産業省の報告書でした。海外で人気の日本の楽曲・アーティストのランキングの中に僕の名前が入っていたんです。それまで「ソニックは海外で人気」「自分のSNSも欧米、南米のフォロワーが半分以上」くらいの体感でしたが、いざ数字として突きつけられると改めて衝撃がすごかった。自分の中でも大きな考え方の変化というか、刺激になりました。
――セガのサウンドチームは、かなり早い段階からグローバルを意識されていたのでしょうか。
大谷:僕が初めて担当したソニックタイトルが、2001年の『ソニックアドベンチャー2』でした。それより前の時代からコンシューマーサウンドの先輩方は「グローバル」を意識した楽曲制作を行っていました。僕の初めての海外レコーディングも、ニューヨークに行ってラップを録ることでした、入社して”初の海外出張なのに現地集合”でした(笑)。 担当しているタイトルのポジションからも「日本でヒットして世界へ進出しよう」みたいな段階を踏む考えが当時からあまりなく。あれから20年以上経った今も、ずっと同じスタンスでやってきたことが、大きな成果に繋がってきたのかなと思うと本当に嬉しいですね。
「欧米に寄せない」ことが正解に――
日本特有のポップセンスとメタルコアを融合させる配合の妙
――ソニックの楽曲は、ゲームをプレイしていない層にも広く浸透しています。世界中で愛される「ソニック・サウンド」のアイデンティティは、どこにあるとお考えですか?
大谷:僕自身は洋楽をたくさん聴いて音楽遍歴を歩んできたので、その影響は多分にあると思います。でも、あえて「欧米に寄せよう」っていう気持ちもそんなになくて。日本人的なポップセンス、いわゆる「エモい感じ」を残したまま、メタルコアなど今風のアレンジを取り入れる。ジャンル、年代、国籍問わず自分の中でミックスされた感覚をそのまま世に出しても、むしろその方が良い時代だと思っているんです。
――リスナー側も、ジャンルの壁を気にしていないと。
大谷:そうかもしれませんね。言語の壁もジャンルの壁もない。欧米の方も、日本のアニソンを日本語のまま聴きたい方もたくさんいらっしゃいますしね。そこを変に意識しない、カルチャライズしすぎないことこそがアイデンティティなのかなと思います。
――「自分が良いと思うものを届ける」ことが、一番の近道だということですね。
大谷:それが一番だと思っています。僕は個人的に、グローバルでバズっているアニメのタイアップ曲を分析するのが好きで。「楽曲のヒットは作品の牽引に繋がったのか?」とか、いろいろ考えちゃうんです。 でもやっぱり、答えの1つは「作品ファースト」であることへの共感だと思っています。僕はゲーム開発のすぐそばにいるコンポーザーなので、誰よりも作品の理解者であるべきだし、そうありたい。(開発中の)ゲームにとって「一番いい曲を生み出せるはずだ」というマインドで取り組んでいます。
「シャドウ」旋風がストリーミングを席巻。
劇中未収録曲まで波及した、キャラクター愛によるリスニングの変化
――近年は映画『ソニック・ザ・ムービー』シリーズの世界的なヒットもありました。関連楽曲のリスニング層に変化はありましたか?
大谷:映画はこれまでに3作ありますが、特に『ソニック×シャドウ TOKYO MISSION』はゲーム音楽からの引用やアレンジを最も多く取り入れられたシリーズだと思います。オリジナルの再生数にもかなり影響がありましたよね。
木下 亮:映画で使われた楽曲が前年比で伸びているのは、はっきり数字に出ています。面白いのは、映画に直接使われていなくても、登場キャラクターに関連した曲が伸びることです。今回は「シャドウ・ザ・ヘッジホッグ」というキャラクターが中心だったので、過去のゲームシリーズのシャドウ関連曲やサントラがすごく伸びました。
岩崎 剛:映画はファミリー向けということもあって、親子で行ってくださるファンが多いんです。昔ゲームを遊んでいた方が親になり、子供と一緒に映画を観て、昔の曲を思い出して聴いてくれる。そういうタッチポイントとしての役割はすごく大きかったですね。
木下:今回は特に、映画の内容を取り入れたゲームのDLC(ダウンロードコンテンツ)を制作したり、配信サントラのリリースを映画の公開日近辺にぶつけたりと、初めてタイミングをきっちり合わせることができました。新作だけでなく既存のカタログも含めて、相乗効果がしっかり数字に表れたのは大きな収穫でした。
「SEGA SOUND TEAM」とは?
セガのゲーム楽曲を世界に発信しているゲームサウンドレーベル。
今年35周年を迎える『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズや、ドラマチックアドベンチャーゲーム『龍が如く』シリーズ等、約1.5万曲のゲームミュージックを配信中。
SNSで随時情報を発信している。
NexToneデジタルディストリビューションと、NexTone Game Music Academy
2003年よりディストリビューション事業を開始。800以上のレーベルから130万曲を超える日本コンテンツを預かり、著作権管理事業とあわせてグローバルで益々存在感を高めている。音楽配信流通のみならず、マーケティング・広告、メタデータ整備など、きめ細やかなサービスが特徴のディストリビューター。
NexToneは、20年を超えるディストリビューション事業と著作権管理事業の両側面において、ゲーム音楽の発展に貢献してきた実績を背景に、2025年9月に「NexTone Game Music Academy」を発足。以下の2点を主な目的として、様々な活動を展開している。
① 日本の「ゲーム音楽」をグローバル視点でワールドワイドに広めていくこと。
② オンリーワン・エージェントとしてゲームシーンにおいて貢献を果たすこと。
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