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デジタル庁GCASガイド

3. コスト最適化アプローチ(クラウド利用経費)

2026/03/31 公開

「2.4 ランニングコストの最適化アプローチ」で整理した各アプローチの詳細を示す。
なお、既に構築・稼働しているシステムに対しては、各アプローチの実施前にCSPが提供するアセスメントサービスの活用を推奨する。

<留意事項>
優先度A・Bの項目については「アプローチを適用した場合のコスト削減効果例」としてアプローチを適用した場合のコスト削減効果例を併記するが、金額はあくまで試算であることに留意すること。

試算の前提は以下の通りである。

  • 試算はサンプルであり、必ずしも記載する削減率が達成されるとは限らない。
  • 試算は令和6年8月時点のAWSにおけるサービス仕様・利用料を例として提示、ガバメントクラウドの他CSPでも同じ考え方を適用可能である。
  • コスト削減効果例については以下の前提で試算している。
    • 費用は年額
    • 為替は1ドル=150円
    • システム構成は以下の通り。
サーバー台数
本番環境検証環境DR環境
負荷分散装置2台1台1台
Web/APサーバー2台1台1台
DBサーバー2台1台1台
バッチサーバー2台1台1台
ブロックストレージ1台
統合ストレージ1台1台
バックアップサーバー1台
監視サーバー1台
ログ管理サーバー1台
OSパッチ管理サーバー1台
踏台サーバー1台

3.1 インスタンスサイズの選定

■ 概要
リソースの利用状況を踏まえ、より適切なインスタンスサイズに見直すことで、コスト削減を図ることができる。
クラウドではインスタンスサイズの引き上げが容易であるため、最初から安全マージン(バッファ)を含めた過剰なインスタンスで見積る必要はない。実際の使用量に合わせた必要最低限のCPUコア数を想定してインスタンスサイズを選定し、検証を通じて必要であればサイズを大きくする。

<インスタンスサイズの見直しによるコスト削減効果イメージ>

画像3-1

図3-1.アプローチ概要(インスタンス選定・サイズの変更)

アプローチの流れ

①情報収集
  • 現行システムの利用状況の確認
    • サーバーの情報(CPU使用率やメモリ使用率等)を確認する。
    • アプリケーションの情報(レスポンスやリクエスト等)を確認する。
  • 現状の要件の確認
    • スケーラビリティ、可用性、セキュリティ、アプリケーション要件等のシステム要件を確認する。
    • システム要件等を基に必要なリソース量を確認する。
②検証
  • インスタンスサイズの検討
    • 最低限必要なリソース量とCPU使用率等に応じて最適なインスタンスサイズを検討する。
③実行
  • インスタンスサイズの見直し
    • 検証を踏まえ、見直し後のインスタンスサイズを見積りや仕様書等へ反映する。
    • 不要なインスタンス利用料の発生を抑制し、コスト削減を実現する。

ポイント・注意点

  • クラウドではインスタンスサイズを柔軟に変更可能(再起動を伴うのみ)である。
  • 5年先の使用量予測やピーク時に合わせたサイジングは不要であり、通常時の使用量に基づきサイジングを行い、需要に応じてサイズを変更する。
  • 通常時のインスタンスサイズを決定する際には、現行環境のCPU使用率等を確認し、実容量に基づいたサイジングを行う。
  • インスタンスサイズ変更はクラウドサービスの機能で自動化するか、手動拡張する運用プロセスを事前に整備する。

アプローチを適用した場合のコスト削減効果例

対象DBサーバー
実施アプローチ内容
  • 通常時はピーク時の1/2(8vCPU/32GB *1)のサイズでの運用に変更
  • ピーク期間を2ヵ月と仮定し、通常時・ピーク時に分けインスタンスサイズを変更
実施前の構成等
  • RDS(2台)を利用
    • db.m6i.4xlarge(16vCPU/64GB)
  • 年度末のピーク時は通常時よりも2倍のリソースが必要となるため、通常時もピーク時と同等のサイズ(16vCPU/64GB)を利用
実施前の費用519万円
実施後の構成等
  • RDS(2台)を利用
    • 【通常時:10ヶ月】db.m6i.2xlarge(8vCPU/32GB)
    • 【ピーク時:2ヶ月】db.m6i.4xlarge(16vCPU/64GB)
実施後の費用302万円
削減率42%(-217万円)

*1 本例では1/2のサイズに変更した場合を想定している。

3.2 インスタンスタイプの選定

■ 概要
クラウドに移行する際は、CSPが提供する各種のインスタンスから適切なものを選択する必要がある。
コスト効率の高いインスタンスを選定することで、単位時間当たりのコストを低減することができる。

<インスタンスタイプとユースケース>
クラウドでは用途に応じてチューニングされたインスタンスが用意されている。システム特性に応じたインスタンスを選定することが重要である。

インスタンスユースケース
汎用通常用途に適したバランスのコンピューティング・メモリ・ネットワーク
バースト可能一時的に負荷が高騰するシステム向け(開発環境や小規模システム等)
コンピューティング最適化CPU性能が必要な用途向け(バッチ処理等)
ストレージ最適化高度なIOPSを実現するSSDを内蔵(ビッグデータ処理等)
メモリ最適化コアあたりのメモリが大きく、メモリが必要な用途向け(データベース等)

例えば、一時的に負荷が上がるシステムでは、バースト可能インスタンスを利用することで時間当たりの利用料を安価に抑えることができる。
また、機能面にフォーカスして利用される開発環境や検証環境、業務影響のない本番環境等、厳密に性能が求められないインスタンスでは、安価なバースト可能インスタンスの利用もコストを抑える有効な手段となり得る。ただし、安定した性能を提供しないバースト可能インスタンスを利用する際は、事前に十分な検証を行うこと。

<世代の最新化>
パブリッククラウドのインスタンスは、vCPUやメモリ容量が旧世代と同じであっても、最新世代の方が高性能、低価格になる傾向がある。
最新世代のインスタンスタイプを採用することでリソース利用料が安価になる他、インスタンスのサイズダウンが可能になるケースがあり、コスト削減を図ることが可能である。

  • 継続してリソースの世代に係る最新情報を収集し、最適な世代について検討することが重要である。
  • 設定内容やアプリケーション等との互換性、セキュリティパッチ情報等を事前に業務要件等に応じて確認することが重要である。

アプローチの流れ

①情報収集
  • 現行システムの利用状況の確認
    • サーバーの情報(CPU使用率、メモリ使用率等)を確認する。
    • アプリケーションの情報(レスポンスやリクエスト等)を確認する。
  • 現状の要件の確認
    • スケーラビリティ、可用性、セキュリティ、アプリケーション要件等のシステム要件を確認する。
    • システム要件等を基に必要なリソース量を確認する。
  • 最新バージョンの確認
    • 各CSPのリリースノートや公式サイト等から、最新の世代情報を収集する。
    • 世代の最新化による影響(アプリケーション等との互換性、セキュリティパッチ情報等)を確認する。
②検証
  • 最適なインスタンスタイプの検討
    • サーバーやアプリケーションの特性、各種要件に応じて最適なインスタンスタイプを検討する。
    • WebAP等の業務影響のあるサーバについては、利用する業務パッケージソフトウェアにおける事業者が設定している推奨構成を確認した上で、インスタンスタイプ変更時の影響も含め検討する。
    • 検証用インスタンスについては、本番環境よりスペックの低いインスタンスタイプでの利用を検討する。
  • 世代の最新化可否を検討
    • 世代変更によるリスク(互換性、セキュリティ)や切り替え作業に係る工数、コスト削減効果等を踏まえ世代の最新化可否を検討する。
  • 互換性検証
    • 特にCPUアーキテクチャ変更を伴うインスタンスタイプ変更の場合、検証環境にて世代の最新化を実施し、アプリケーション等との互換性を中心に検証を実施する。
③実行
  • インスタンスタイプの見直し
    • 検証を踏まえ、見直し後のインスタンスタイプを見積りや仕様書等へ反映する。
    • 不要なインスタンス利用料の発生を抑制し、コスト削減を実現する。
  • 世代の最新化を実施
    • 検証を踏まえ、対象リソースの世代を最新化する。
    • リソース利用料が安価になることによりコスト削減を実現する。

3.3 稼働時間の調整

■ 概要
システム稼働時間を定義し、定義した稼働時間外はシステムの稼働を停止することで、コスト削減を図ることができる。

対応1週間の稼働時間①からの削減率
① 停止なし週168時間-
② 土日停止週120時間29%削減
③ 土日と平日夜間停止(22:00-6:00)週80時間52%削減

稼働時間の定義にあたっては、以下のようなシステムに関する要件・プロセスも含めて見直しの余地があるか検討する。

  • 夜間の定期処理を業務時間内で実行
  • 依存関係を確認し、定期処理を並列で実行

アプローチの流れ

①情報収集
  • 現行システムの利用状況の確認
    • システムログやダッシュボード等を用いてシステムの稼働時間(トラフィックパターンやピーク時間等)を確認する。
  • システムの依存関係の確認
    • 他システム・サービスと連携している場合、対象のシステム・サービスの稼働時間を確認する。
  • 稼働時間変更時の影響の確認
    • 担当課職員に対し、業務上必要な稼働時間を確認する。
    • システムの稼働時間変更によって、夜間処理や他のシステムとの連携に影響があるか確認する。
②検証
  • 稼働時間の検討
    • 担当課職員と事業者へのヒアリング結果をふまえて依存関係を整理し、稼働時間を検討する。
  • 稼働時間調整対象インスタンスの選定
    • 検証環境・CI/CD環境・開発環境等の業務影響が少ない環境のインスタンスについて未使用時間の停止可否を検討する。
    • 通常業務での使用頻度が低い(使用頻度に時期的な偏りがある、あるいは年間のうち特定期間のみ利用する)インスタンスについて停止可否を検討する。
  • 起動停止プロセスの検討
    • 起動停止前後に必要となる処理を検討する。
    • 順序性の整理・検討・インスタンスの起動停止においてはAWS Instance Scheduler等の自動化サービスの活用を検討する。
③実行
  • 稼働時間の見直し
    • 検証を踏まえ、最適なシステムの稼働時間を決定し、見積りや仕様書等へ反映する。
    • 遊休リソースの削減に繋がり、コストが削減される。

検討の結果、停止運用ができず稼働時間が長くなる場合、損益分岐点を考慮し、長期継続割引(Savings Plans等)の適用を検討する。
ガバメントクラウドでは、長期継続割引購入にあたる利用条件(購入プランの制約等)があるため、詳細はGCASガイド(メンバー専用ページ)を参照すること。

画像3-2

図3-2.稼働時間と長期継続割引における損益分岐点
(東京リージョンを条件としたAWS EC2 Instance Savings Plansの割引率をもとに作成)

ポイント・注意点

  • クラウドでは利用時間に対して料金が発生するため、リソースを停止することが利用料の削減に大きく影響する。
  • システムが遊休状態(システムが必要な処理をしていない時間が多い状態)になっている場合は、システムの稼働時間を極力削減することでコスト削減を図る。
  • 稼働時間の調整にあたっては事前にテストを実施する等、業務や連携先システムへの影響を与えないことを確認する。
  • 稼働時間は運用フェーズにおいても定期的に見直しを行い、不要なリソースの停止、処理データの増加や業務時間の変更が発生した場合には、稼働時間を再検討する。
  • クラウド側のキャパシティ不足によるエラーが発生しリソースを起動できない場合があるため、稼働時間の調整に当たっては、コスト削減効果と業務への影響とのバランスを慎重に見極める必要がある。開発環境や検証環境については、稼働時間の調整を検討しやすい領域である一方で、本番環境や運用環境については、利用頻度の低い踏み台サーバーや夜間バッチ処理用サーバー等、通常業務への影響が小さいものについて稼働時間の調整を検討する。
  • クラウド側のキャパシティ不足によるエラーの発生頻度は限定的だが、業務上重要なサーバーについて起動停止する場合は、当該リスクを考慮して、以下のいずれか、または複数の対応を含むリソース起動の自動化の仕組みを検討する。なお、業務開始直前(日本時間7時00分から9時00分など)、月末月初、きりのよい時間(日本時間の9時00分など)等の需要の集中が想定される時間帯においては、起動リクエストを避けることも有用である。
  • クラウドのキャパシティは頻繁に変動する場合があるため、数分待ってから、起動リクエストを再送信する(リトライ)。
  • 一回で起動するインスタンス数を減らし、新しい起動リクエストを送信する。例えば、15 のインスタンスを起動する単一の起動リクエストを送信している場合は、5つずつ3回の起動リクエスト、または1つずつ15回の起動リクエストに分割する。
  • 同一スペックのインスタンスの起動時に、複数回キャパシティ不足となる場合は、CPU(コア)数、メモリサイズを変更して新しい起動リクエストを送信する。
  • 起動可能なゾーン(ドメイン)を複数指定し新しい起動リクエストを送信する。または、現在指定しているゾーンが1つである場合は、現在と異なるゾーンへインスタンスの起動リクエストを送信する。

アプローチを適用した場合のコスト削減効果例

対象Web/APサーバーバッチサーバー踏み台サーバー
実施アプローチ内容 Web/APサーバーを常時稼働から平日夜間(0時~6時)及び休日の稼働を停止 バッチサーバーを常時稼働から夜間8時間のみの起動に変更 踏み台サーバーを常時稼働から24時間/月の稼働に変更
実施前の構成等
  • EC2(2台)を利用
    • m6i.2xlarge(8vCPU/32GB)
  • 常時稼働(24時間365日)
  • EC2を利用
    • m6i.4xlarge(16vCPU/64GB)
  • 常時稼働(24時間365日)
  • EC2を利用
    • m6i.large(2vCPU/8GB)
  • 常時稼働(24時間365日)
実施前の費用227万円227万円28万円
実施後の構成等
  • 同構成で平日18時間の稼働
  • 利用される時間帯のみ稼働
  • 同構成で夜間8時間の稼働
  • 処理を実行する時間帯のみ稼働
  • 同構成で月24時間の稼働
  • 調査やメンテナンスでログインする際にのみ稼働
実施後の費用28万円75万円9,331円
削減率87%
(-199万円)
67%
(-152万円)
97%
(-27万円)

3.4 ストレージ選定・容量の変更

■ 概要
最低限必要なデータ容量から利用を開始することで、不要なストレージ利用料を抑止し、コスト削減を図ることができる。
クラウドでは必要に応じてストレージ容量を拡張できるため、数年後を見据えた大きな容量を利用開始時点で確保しておく必要はない。最低限のストレージ容量に変更し、年次または隔年で容量を拡張していく。

画像3-3

図3-3.アプローチ概要(ストレージ選定・容量の変更)

アプローチの流れ

①情報収集
  • 現行システムの利用状況の確認
    • データ使用量を確認する。
    • データの種類(業務データ、バックアップ等)を確認する。
    • データの利用頻度(アクセス、更新等)を確認する。
  • データの増減率の確認
    • 監視ツールやダッシュボード等を用いてデータ使用量の増減幅や増減率について確認する。
    • 各データの保管規程に係る現状の要件を確認する。
    • 文書管理規定やセキュリティポリシー等の保管要件の根拠となる情報を確認する。
②検証
  • ストレージサービスの検討
    • データの種類と各種要件(IOPSやスループット等)に応じて最適なストレージサービスを検討する。
  • ストレージ容量の検討
    • 定期的な拡張運⽤を前提に、最低限必要なデータ容量に応じた最適なストレージ容量を検討する。
      (例:5年後を⾒越してサイジングするのではなく、年次または隔年でのEBSボリューム拡張運⽤を前提とし、1〜2年後に必要な容量の1.2倍〜1.5倍(60〜80%の利⽤率)をターゲットとして考える)
    • バックアップ用ストレージについては、バックアップ要件(フル/増分/差分)、保存期間等を踏まえて適切な容量を検討する。
③実行
  • ストレージ容量の見直し
    • 検証を踏まえ、最適なストレージサービス・容量を見積りや仕様書等へ反映する。
    • 不要なストレージ利用料の発生を抑制し、コスト削減を実現する。

ポイント・注意点

  • クラウドはストレージサイズの拡張が容易なため、数年先を見越した容量のサイジングは不要であり、実使用量に数%のバッファを持たせてサイジングする。
  • 可用性はCSP側で担保するため、RAIDを考慮したストレージ構成(RAID分のストレージ容量等)やスペアディスクの考慮は不要である。
  • ログや一時ファイルの保管場所となるストレージについては「3.9 不要なログの削減 」も参照すること。

アプローチを適用した場合のコスト削減効果例

対象ブロックストレージ
実施アプローチ内容
  • ストレージの実容量(バックアップ含む)のみの見積りに変更
実施前の構成等
  • EBSを利用
    • EBS gp3 / 7.5TB
  • 業務利用1TB、RAID構成、スペアディスク、バックアップ等を考慮し合計7.5TBで試算
  • オンプレミス環境と同等な容量での見積り
実施前の費用129万円
実施後の構成等
  • EBSを利用
    • EBS gp3 / 1.57TB
  • Amazon EBS Snapshot を利用 *1
実施後の費用22万円
削減率83%
(-107万円)

*1 1TBのストレージ領域のうち50%を使用しており毎日10GBの更新があるストレージを毎日バックアップ(7世代保管)すると仮定し試算している。

3.5 運用のマネージドサービス化

■ 概要
バックアップや監視などの運用管理機能をマネージドサービスを用いて実現することで、バックアップサーバーや監視サーバー、運用管理系ソフトウェアが不要となり、コスト削減を図ることができる。

<マネージドサービスで代替できる機能例>

  • バックアップ:CSPの標準機能を活用し、ストレージやシステムのバックアップを行うことで、サーバーの常時稼働が不要になりコストを削減できる。
  • セキュリティ対策:システムの脆弱性を早期に発見し対策を講じることで、セキュリティインシデントを防止する。これにより、セキュリティ対策に必要な人材確保や研修、製品導入と運用、脆弱性調査等のコストを削減する。
  • 監視:CSPが24時間365日の監視を提供する。これにより、内部のITチームが監視に費やす時間が削減され、他の重要な業務に集中できコストを削減する。
  • ロギング:ログ管理ツール等を使用して、システムのログを自動的に収集し、分析する。これにより、システムのパフォーマンスの最適化、問題の迅速な特定、工数の低減等につながり、コストを削減する。

<バックアップにおけるマネージドサービスの活用例>
バックアップサーバーを用いたバックアップでは、サーバー構築に係る開発費や24時間365日サーバーを稼働させるための利用料金が発生する。
マネージドサービスを用いたバックアップに変更することで、マネージドサービスの設定のみで実現可能となり、バックアップ対象データ量等に応じて課金されるためコスト削減が可能となる。

アプローチの流れ

①情報収集
  • 現行システムの機能/非機能要件の確認
    • バックアップ、監視、パッチ適用等のマネージドサービスの活用が見込める要件を抽出する。
  • マネージドサービスの提供範囲の確認
    • 利用予定CSPで提供されるマネージドサービス、活用におけるベストプラクティスを確認する。
②検証
  • マネージドサービスの活用可否の検討
    • マネージドサービスの機能が求める要件を満たすか確認し、必要に応じて要件の見直しを検討する。
  • 実現方式の検討
    • マネージドサービスで置き換える場合の運用管理機能のアーキテクチャ・実現方式を検討する。
③実行
  • マネージドサービスの活用
    • 現行システムで独自のソフトウェア利用、サーバー構築により実現している要件を、マネージドサービスにより実現し、コストを削減する。

ポイント・注意点

  • クラウドでは基本的な運用管理機能がマネージドサービスとして提供されており、サーバーを構築・運用する場合と比較してコスト減となる可能性が高い。
  • マネージドサービスでの実現が難しい運用作業は、要件の見直しやマネージドサービスで実現可能な運用への変更を検討する。
  • 独自の運用管理システム(バックアップ、ジョブ管理等)の構築は避け、可能な限りマネージドサービスへの置き替えを検討する。

アプローチを適用した場合のコスト削減効果例

対象バックアップサーバー 監視サーバー
実施アプローチ内容
  • バックアップサーバーを Amazon EBS Snapshot に代替
  • 監視サーバーを Amazon Cloud Watch に代替
実施前の構成等
  • EC2を利用
    • m6i.large(2vCPU/8GB)
  • バックアップソフトを利用
  • EC2を利用
    • m6i.xlarge(4vCPU/16GB)
  • 監視ソフトを利用
実施前の費用28万円56万円
実施後の構成等
  • Amazon EBS Snapshot を利用
  • Amazon Cloud Watch を利用
実施後の費用5万円8,100円
削減率82%
(-23万円)
99%
(-55万円)

3.6 DR構成の選定

■ 概要
クラウド利用時はIaC等の活用により環境構築が迅速に実現できるため、スタンバイ環境の削減が検討可能。オンプレミス環境と同様のDR構成を採用している場合、見直しにより費用削減が期待できる。

<DR構成の種別例>
システムが求める要件と許容可能なコストに応じてDR構成を検討する。
職員向けシステムや、一部領域や地域の国民向けサービスなど、停止することで即座に国民生活に影響のない「バックアップ」を検討することになると想定する。

DR構成概要コスト復旧時間
バックアップ本番環境のバックアップを事前に取得しておき、障害発生時はバックアップデータを基に復旧する。
ウォームスタンバイ最小限の縮退環境を別地域に用意(常時起動)し、障害発生時にリソースを追加、切り替える。
アクティブ/アクティブ本番環境と同等構成のスタンバイ環境を別地域に用意(常時起動)し、障害発生時は即座に切り替える。

DR構成の検討にあたっては[ ガバメントクラウド手続き概要 : GCASガイド(メンバー専用) > 全般的なガイド> 概要文書 > 02_ガバメントクラウド手続き概要]や地方公共団体向けの「ガバメントクラウド利用における推奨構成」も参照すること。

<バックアップ構成のイメージ>
DR構成のうち「バックアップ」について、AWS Backupのクロスリージョンバックアップを用いて以下データをS3バケットに格納する構成のイメージを示す。

  • システムデータ: AMI(OSイメージ)、プログラム、IaCコード等
  • 業務データ: RDSスナップショット、ファイル等

図3-4.バックアップ構成のイメージ

アプローチの流れ

①情報収集
  • 災害対策に係る現状の要件の確認
    • システム再開目標や復旧方針等を確認する。
  • DR構成の確認
    • 現行システムと移行後のシステムにおけるDR構成を確認する。
②検証
  • 災害対策に係る要件の再検討
    • ガバメントクラウド利用機関が許容可能な復旧時間等を踏まえ、過剰な要件でないか確認する。
  • DR構成(次期)の妥当性の検討
    • 上記で再検討した要件を鑑み、見積り時点でのDR構成(次期)が過剰でないか検証する。
    • バックアップを採用した場合でも、過剰なバックアップ冗長化や高頻度のフルバックアップ等が行われていないかを確認する。
      (例:戸籍システムから抽出した最新データについて、法務局の戸籍副本管理システムの機能要件に基づき遠隔地に設置された副本サーバへ日次で送信されているため、インフラ側での遠隔地バックアップは削減する。)
③実行
  • DR構成(次期)の選定
    • 検証フェーズを踏まえ要件を達成可能かつコスト最適なDR構成(次期)を選定する。

ポイント・注意点

  • DR構成の選定に当たっては、各ガバメントクラウド利用機関にて定める非機能要件を基に検討する。
  • 災害対策関連要件の見直しを行い、災害時に必要となる業務継続性とそれに伴うコストを確認し、DR構成の検討・選定を行う。
  • 本アプローチ及び試算では、本番環境と利用者拠点とのNW回線を考慮していないため、実際にDR構成を検討する場合にはNW回線の構成についても併せて検討を行う。

アプローチを適用した場合のコスト削減効果例

対象 負荷分散装置
Web/APサーバー、DBサーバー、
バッチサーバー
実施アプローチ内容
  • DR構成をウォームスタンバイからバックアップ構成に変更
実施前の構成等
  • ウォームスタンバイの構成
  • ALB(1台)を利用
  • Web/APサーバー(1台)を利用
    • m6i.2xlarge(8vCPU/32GB)
  • DBサーバー(1台)を利用
    • db.m6i.2xlarge(8vCPU/64GB)
  • バッチサーバー(1台)を利用
    • m6i.4xlarge(16vCPU/64GB)
  • リードレプリカにて同期されるデータ量を500GB~1TBと仮定
実施前の費用491万円
実施後の構成等
  • バックアップの構成
  • Amazon EBS Snapshotを利用 *1
  • データ転送料(月次500GB、日次10GB)
実施後の費用18万円
削減率96%
(-473万円)

*1 毎日10GBのデータ更新がある場合、S3に対し月次500GBのフルバックアップ及び日次10GBの増分バックアップ(7世代保管)をすると仮定している。

3.7 ストレージクラス選定とライフサイクル管理

■ 概要
データのアクセス頻度・世代・保管期間に基づきデータ保管先として適切なストレージクラスを選定し、データのライフサイクルを管理することで不要なストレージ利用料を削減する。

<ストレージクラスの特徴>
適切なストレージクラスを選択し、過剰なスペックを備えないことが重要である。

ストレージクラス特徴ユースケースアクセス頻度取り出し時間コスト
標準・高耐久性、高可用性
・低レイテンシー、高スループット
アクセス頻度の高いデータ向け
幅広いデータに適切
低頻度・標準と同等のスペックだが高レイテンシー
・データ取り出しごとに課金
アクセス頻度の低いデータ向け
アーカイブ・セキュアで高耐久
・最も低コスト
・データの取り出しに数分〜数時間を要する
長期間のデータアーカイブ向け

<ライフサイクル機能の利用イメージ>
時間経過に伴いアクセス頻度が下がるデータはより安価なストレージへ自動移行し、保管期間が過ぎたデータは削除するようにライフサイクルを設定する。

画像3-5

図3-5.ライフサイクル機能の利用イメージ

アプローチの流れ

①情報収集
  • 保存するデータの確認
    • バックアップ、ログ、業務データ等の保存が想定されるデータの情報を収集する。
  • 各データの保存期間に係る現状の要件の確認
    • 文書管理規定やセキュリティポリシー等の保存期間の根拠となる情報を収集する。
  • 現行システムで扱うデータ種別、保存期間の確認
    • 現行システムにおける保存データ及びその保存期間を確認する。
②検証
  • データの保存に係る要件の整理、見直し
    • 集めた情報を基に、システム上に保存するデータとその保存期間を整理、見直しを行う。
  • 要件に応じたストレージクラスの検討
    • データ分類に応じたデータ格納先のバケットを検討する。
    • データ(バケット)単位でのストレージクラス・ライフサイクルを検討する。
③実行
  • データの自動削除を実行
    • 検証を踏まえ、各オブジェクトストレージサービスに対してライフサイクル機能を設定する。
    • 不要なストレージ利用料の発生を抑制し、コスト削減を実現する。

ポイント・注意点

  • オブジェクトストレージ利用時は、アクセス頻度等に応じてバケット単位でデータ格納場所を分け、適切なストレージクラスを選定する。
  • ライフサイクルの設定は、オブジェクトストレージの付随機能によってサードパーティー製品を導入せずに自動化可能である。
  • データの種類、保存要件等を確認し、業務データ並びに運用管理上必要となるデータのライフサイクルを定め、適切な時期にデータを削除することでリソースを無駄に消費し続けることのないよう設計・構築する。

アプローチを適用した場合のコスト削減効果例

対象統合ストレージ
実施アプローチ内容
  • 18TBの格納データのうち、6TB分のデータに対し、ストレージクラスの移行及び半年後削除のライフサイクル設定を実施
  • 18TBの格納データのうち、12TB分のデータに対し、段階的に低位なストレージクラスへの移行を実施
実施前の構成等
  • S3を利用
    • 18TB
実施前の費用81万円
実施後の構成等
  • S3を利用
    • 6TB(標準2か月、低頻度2か月、アーカイブ2か月保管)
    • 12TB(標準4か月、低頻度4か月、アーカイブ4か月保管)
実施後の費用11万円
削減率86%
(-70万円)

3.8 柔軟なリソース確保

■ 概要
負荷量に応じてリソースを柔軟に増減させ、余剰なリソースの発生を抑止することで、コスト削減を図ることが可能である。
オートスケーリング機能を使用すると、新しいインスタンスが自動的に作成され、既存のインスタンスが削除される可能性がある。これによりデータが損失することを防止するため、一部のサーバーに依存しない(各種リクエストの独立化等)構成が必要である。

  • データはDBやオブジェクトストレージに保存することで、オートスケーリング時のデータ損失を防止する。
  • セッション情報(ユーザーの状態等)は外部のストレージに保存する。ユーザーが複数のサーバー間で移動するときに、そのユーザーの状態を一貫して保持し可用性を向上させる。

<オートスケーリング機能の利用イメージ>

画像3-6

図3-6.オートスケーリング機能の利用イメージ

アプローチの流れ

①情報収集
  • 現行システムの利用状況の確認
    • サーバーの情報(CPU使用率やメモリ使用率等)を確認する。
    • アプリケーションの情報(レスポンスやリクエスト等)を確認する。
  • 必要最小限のリソースの確認
    • システム要件等を基に必要なリソース量を確認する。
②検証
  • スケーリング対応可否の精査
    • 考慮事項を基にアプリケーションがオートスケーリングに対応できるか確認する。
  • スケーリング方式の検討
    • リクエストへの処理において特定サーバーに依存しない構成を検討する。
③実行
  • オートスケーリングの設定
    • オートスケーリングを前提としたサーバーサイズに変更する。
    • オートスケーリングの設定を実施
    • 遊休リソースの削減に繋がり、コストが削減される。

ポイント・注意点

  • インスタンスが負荷に応じて追加(スケールアウト)、削除(スケールイン)するため、アプリケーションが状態を保持しない(ステートレス)必要がある。 そのため、利用するアプリケーションがステートレスか確認し、セッション情報等が必要な場合には、外部に保持する改修が可能か検討する。
  • アプリケーション負荷の最大と最小を確認し、インスタンスの最大値(サイズ、台数)と最小値を検討する。
  • これまでの負荷状況を確認し、スケールアウト・スケールインするトリガーを決める。負荷の増減が不定期の場合は、CPU使用率やメモリ使用率をトリガーとし、定期的(例えば月末のみ等)の場合は、スケジューリングによるオートスケールも可能である。

アプローチを適用した場合のコスト削減効果例

対象Web/APサーバー
実施アプローチ内容
  • ピーク時のみオートスケーリングによりサーバー台数を増やす設計とし、インスタンスサイズは通常時に必要となるスペックに変更
実施前の構成等
  • EC2(2台)を利用
    • m6i.2xlarge(8vCPU/32GB)
  • 月に2日間ピークがあり、その時だけ4倍のスペックが必要
  • インスタンスはピーク時に必要となるサイズを選定
実施前の費用227万円
実施後の構成等
【通常時】
  • EC2(2台)を利用
    • m6i.large(2vCPU/8GB)
  • ※通常時は1/4のサイズでの稼働
【ピーク時】2日/月
  • EC2(6台)をオートスケーリングで2日間/月のみ利用
    • m6i.large(2vCPU/8GB)
  • ※ピーク時のみ4倍(合計8台)での稼働
実施後の費用67万円
削減率 70%
(-160万円)

3.9 不要なログの削減

■ 概要
必要なログ及びログの保存期間を再定義し、必要最低限のログをマネージドサービスに保存することで、コスト削減を図ることが可能である。
マネージドサービスは保存量に応じて課金されるため、サーバーには最低限のシステム運用に必要なデータのみを残し、保存の必要があるログの出力先は可能な限りマネージドサービスに移行する。

<設計の見直し・マネージドサービスへの移行イメージ

見直し前の例見直し後の例
独自のログ管理システムを用いたログ管理マネージドサービスを用いたログ管理
出力レベルFATAL、ERROR、WARN、INFO、DEBUG、TRACEFATAL、ERROR、WARN、INFO
保存先独自のログ管理システムマネージドサービス
保存期間2年1年

ログや一時ファイル等、保管の必要がないデータは仮想サーバーに溜め込まず、削除・退避する設計を行う。

  • 保管が必要なデータはブロックストレージでなくオブジェクトストレージに移動させることで、保管コストを抑えることができる。
  • 不要な一時ファイルは定期的に削除する運用とし、格納データが単調増加することを前提とした過剰な見積りは行わない。

アプローチの流れ

①情報収集
  • 現行のログ収集・保存状況の確認
    • ログの出力レベル、ログの種類(機密性等)、保存先、保存期間等の情報を収集する。
  • 現状の要件の確認
    • 業務要件によって保存期間等が定義されているかを確認する。
  • システムの依存関係の確認
    • ログを他システム・サービスに利用している場合、出力を停止した際の影響有無を確認する。
②検証
  • 要件の検討
    • 集めた情報を基に、出力レベルや保存期間、保存先を整理、見直しを行う。
  • ログ管理サービスの検討
    • システム規模及びログの種類等に応じて最適なマネージドサービスを検討する。
③実行
  • 収集対象ログ、出力レベル、保存期間の見直し
    • 検証を踏まえ、見直し後の要件に基づき、マネージドサービスを活用してログを保存する。
    • 独自のログ管理システムやログ保存に係る不要なコストを抑制し、コスト削減を実現する。