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デジタル庁GCASガイド

2. コスト最適化アプローチの全体像

2026/03/31 公開

2.1 ランニングコスト最適化に向けたプロセスの全体像

ガバメントクラウドへの単純移行では、費用削減に限界がある。
ガバメントクラウドにおける効率的なシステム運用によりランニングコストを最適化するため、適切なクラウド利用のためのアプローチ例とアプローチを実践した地方公共団体の事例について情報提供する。

図2-1

図2-1.ランニングコスト最適化に向けたプロセス

2.2 ガバメントクラウドにおけるコストの考え方

オンプレミスとガバメントクラウドでは、コストに対する考え方が大きく異なる。
本書のコスト最適化アプローチ例を実施する際は、これらの考え方を念頭に置いていただきたい。

 ガバメントクラウドにおけるコストの考え方オンプレミスにおけるコストの考え方
コスト構造 ・リソースの利用料が利用した時間分だけ課金される。
・不要となったシステムのリソースは停止、削除することで課金を停止することができ、使い方を工夫すれば大幅なコスト削減が可能であるため、継続的にコスト削減に取り組むことが肝要。
・初年度の機器導入コストと毎年の保守コストが固定的に掛かる。
・特に大型機器は一般的に高額となり月賦払いでも途中解約ができず、契約した全額を支払う必要があるため、保守期限まで使い続けることになり、不要となったシステムの機器も保有し続けることになる。
リソース確保・拡張 ・必要なときに初期費用無しで即座にリソースを利用できる。
・需要に応じ自動・手動でリソースを拡張・縮小できるため、緻密なサイジングが不要となり、効率的にリソースを利用できる。
・リソース利用までに、緻密なサイジング、機器調達・搬入等の複雑な工程が多く、数ヶ月のリードタイムが必要となる。
・そのため実需以上のリソースをあらかじめ保険的に確保する必要があり、結果的に余剰リソースが発生しコスト効率が低下する。
インフラ構築・検証コスト ・IaCによりインフラ構成をソフトウェアとしてコーディングでき、どこから何度でも同じ構成を即座に構築することができる。
・CSPのマネージドサービスはAPI仕様とサービスレベルが定義されており、機能は統合されているため、インフラ統合テストは不要となる。
・物理機器の設置、OS・ミドルウェアの設定、ソフトウェア導入作業等の構築作業をデータセンター等の現地で実施する必要がある。
・環境依存によりインフラ統合テスト等の検証工数がかさむ傾向にある。
運用コスト ・CSPのマネージドサービスを活用することで、物理機器・OS・ミドルウェアの運用作業から解放され、少人数での運用が可能である。
・CSPサービス間のAPI連携により容易に自動化が可能なため、作業を省力化できる。
・物理機器(サーバー・NW等)・OS・ミドルウェア・アプリケーション全てを自前で運用保守するため、障害対応コスト、定期メンテナンス、セキュリティ対策等人的運用コストがかさみがち。
・基本的に手動中心の作業となり人手が必要となる。
データ可視化 ・監視関連データ、コストデータ等はCSP側の機能によりデフォルトでデータが提供されており、ユーザーはシステムにとって重要なデータを定義し組み合わせ可視化することが可能である。
・可視化されたデータに基づいて即座にコスト削減に着手できる。
・データ可視化のためには、専用ソフトウェアの導入や機器単位の設定が必要となり、構築・運用ともに工数がかさむ傾向にある。
・データを可視化できたとしても、コスト構造が硬直的なため、無駄なコストが発生していても容易に下げることができない。

2.3 経費区分とコストの構造

2.3.1 本書における経費区分

本書では、ガバメントクラウドの利用において最も削減しやすく、コスト削減効果が高く他項目に波及しやすい「クラウド利用経費」に着目したアプローチを推奨する。
なお、下表は「ガバメントクラウド先行事業(基幹業務システム)における投資対効果」(令和5年12月発出)におけるランニングコストを基に、各経費項目についてまとめた表であり、「クラウド利用経費」がランニングコスト全体の1/4程度を占めていることがわかる。

カテゴリ経費項目コスト全体に占める割合例説明
物品費クラウド利用経費23.59%CSP(クラウドサービスプロバイダー)の利用料
ソフトウェア借料24.75%業務パッケージソフトウェア、ミドルウェアの借料
ソフトウェア保守費11.14%業務パッケージソフトウェア、ミドルウェアの保守費
通信回線費8.56%回線、コロケーション経費
ハードウェア借料2.91%ハードウェア等の使用に関する借料
ハードウェア保守費0.34%ハードウェア保守費
データセンター利用費0.12%データセンター経費
作業費システム運用作業25.06%システム稼働監視、ジョブ管理、ヘルプデスク、障害対応、バックアップ等
ハードウェア保守作業0.46%ハードウェアに関する保守作業費
その他外部委託費3.07%大量帳票出力等、定常運用以外で定期的に外部事業者に委託する業務に関する作業費

2.3.2 クラウド利用経費の内訳

一般的に、クラウド利用経費はサーバーとデータベースの費用が約9割を占める傾向にある。
クラウド利用経費のうち、経費割合が高いサービスから見直すことで効果的にコスト最適化を進めていただきたい。

図2-2.一般的なクラウド利用経費内訳 *1

*1 仮想サーバーのみを利用した単純移行の構成を想定してデジタル庁が試算したもの。

本章では、「2.1 ランニングコスト最適化に向けたプロセスの全体像」で示した各フェーズのうち「③適切なクラウド利用」に係る個々のアプローチについて説明する。
クラウド利用経費、運用保守作業費、ソフトウェア借料・保守費のそれぞれについて、削減に向けたアプローチの概要と効果、優先度を以下に整理する。
アプローチの採用に当たっては、優先度の高い順での実施を推奨する。

2.4 ランニングコストの最適化アプローチ

2.4.1 コスト最適化アプローチ(クラウド利用経費)

No アプローチ *1 優先度 *2 アプローチの概要アプローチの効果
1インスタンスサイズの選定A インスタンスの利用状況を確認し、必要に応じて最適なサイズを選定する。 利用状況に応じた適切なサイズ(構成)に変更することで、コストが削減される。
2インスタンスタイプの選定A サーバーやアプリケーションの特性、各種要件等を踏まえ、最適なインスタンスタイプ・世代を選択する。 不要なインスタンス利用料の発生を抑制し、コストが削減される。
3稼働時間の調整A 夜間や週末等システムを利用しない時間帯に応じて、リソースの稼働時間を調整する。 不要な時間帯にリソースを停止することで、コストが削減される。
4ストレージ選定・容量の変更A ストレージの利用状況等を確認し、必要に応じて最適な構成(タイプ・容量)に変更する。 データの特性に合わせた適切なタイプ(構成)に変更することで、コストが削減される。
5運用のマネージドサービス化A 運用管理系の基本的な機能において CSP が提供するマネージドサービスを活用する。 コンピューティングリソースや運用管理系ソフトウェアが不要となり、コストが削減される。
6DR構成の選定A 災害対策に係る要件の確認及び見直しを実施し、最適な DR 構成を選定する。 過剰な DR 構成を採用していた場合、不要な DR 関連リソースの抑制、コストが削減される。
7ストレージクラス選定とライフサイクル管理B データの保存期間を定義し、一定期間が過ぎたデータを段階的に安価なストレージクラスへ移行。
保存期間が過ぎたデータは自動で削除とする。
データが特性に合わせ適切なクラス(構成)に移行され、また不要なデータが自動的に削除されることで、
ストレージの使用量やコストが削減される。
8柔軟なリソース確保B システムの負荷に応じてリソースがスケーリングされるよう、設定を実施する。 遊休リソースの削減に繋がり、コストが削減される。
9不要なログの削減C 出力レベルや保存期間等の設計(ログに関する定義)の見直しを実施し、マネージドサービスにログを保存する。 独自のログ管理システムやログ保存に係る不要なコストを抑制し、コストが削減される。

2.4.2 コスト最適化アプローチ(運用保守作業費)

Noアプローチ優先度アプローチの概要アプローチの効果
1定量的計測の実現B 従来のシステム監視から、オブザーバビリティ(システム全体の挙動を把握)を高めることで、
問題の根本原因を迅速に特定するサービス監視に移行する。
常駐人員等の廃止や、不要なシステム監視工数の発生を抑制し、コストが削減される。
2IaC・マネージドサービス活用による自動化B 従来のシステム運用(構築作業、メンテナンス等)から IaC・マネージドサービスを活用することで、
作業効率が向上し、運用が簡素化(自動化・迅速化)する構成に変更する。
構築作業(OS・MW インストールや設定等)、メンテナンス等のシステム運用に係る
余剰な作業工数を抑止し、コストが削減される。

2.4.3 コスト最適化アプローチ(ソフトウェア借料・保守費)

Noアプローチ優先度アプローチの概要アプローチの効果
1クラウド移行によるソフトウェアライセンスの見直し・削減C 運用管理系のソフトウェアをマネージドサービスに置き換え、
不要なソフトウェアの削減・数量見直しを実施する。
不要なソフトウェアやライセンス数の発生を抑止し、コストが削減される。

*1 ネットワーク通信料金はクラウド利用経費全体において大きな割合を占めないため、コスト削減アプローチの対象とはしない。

*2 アプローチの実施難易度及びコスト削減効果を基にA~Cの優先度を定義した。