米国管理下に置かれたベネズエラ石油産業:原油生産をめぐる最近の動向

概要

  1. 2026年1月2日から3日にかけて、米軍がカラカスを急襲、ニコラス・マドゥロベネズエラ大統領を拘束した。ドナルド・トランプ米大統領は、権力の移行が行われるまで、米国がベネズエラを統治する計画であるとし、米国企業がベネズエラの原油生産量を回復させるために投資を行うとした。その後、米国の管理のもと、ベネズエラの石油産業を巡る情勢は急展開を見せている。
  2. トランプ大統領は、ベネズエラの石油セクターの復興に投資するよう米国の石油会社に促すとして、同年1月9日にExxonMobilやChevron等の石油会社幹部と会談を行った。しかし、ExxonMobilがベネズエラへの投資は不可能であるとしたり、ConocoPhillipsがベネズエラのエネルギーシステム全体の再構築を求めるとしたりする等、同国での探鉱・開発への投資に対しては慎重な意見が多く聞かれた。
  3. ベネズエラ国会は同年1月29日、炭化水素法の改正を承認した。今回の改正で、PDVSAと合弁事業を組むことなく、ベネズエラにおいて原油の探鉱、生産、輸出等を行うことが可能となったが、国家の管理が引き続き維持されている等の点から、持続的な投資が実施されるには課題があるとの見方がなされている。さらに、ロドリゲス暫定政権の持続性や、ロドリゲス政権後の政権がこの改正をどの程度拘束力のあるものとみなすのか関しては、極めて不透明、不確実であると見られている。
  4. 一方、ベネズエラおよびベネズエラ国営石油会社PDVSAに制裁を科していた米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、同年1月29日以降、ベネズエラ産の石油および製品の購入、販売、輸送、精製(一般ライセンス(General License:GL)46A)、ベネズエラへの米国製希釈剤の供給(GL47)、米国の油田サービス会社によるベネズエラのインフラ修復機会の拡大(GL48)、PDVSAとの新たな石油・ガス投資または操業に関する契約交渉(GL49)、BP、Chevron、Eni、Repsol、Shell、Maurel & Promのベネズエラでの事業拡大(GL50A)を相次いで許可した。
  5. OFACによる新たなGLの発行を受け、すでにベネズエラに資産を保有しているChevron、Repsol、Maurel & Promは原油生産増の可能性を示唆した。隣国トリニダード・トバゴのAtlantic LNGへのガス供給を模索しているShellとBPは、沖合ガス田の開発に積極的な姿勢を示している。一方、国有化によりベネズエラの資産を接収されたConocoPhillipsとExxonMobilは、ベネズエラでの探鉱・開発への再参入に消極的な姿勢を示していたが、3月に入り、ExxonMobilがベネズエラへの再進出を検討しているとの報道がなされている。
  6. 新たなGLにより、短期的に既参入企業の原油生産量が増加する可能性が出てきたが、長期的な生産増加には他の大手石油会社をもベネズエラに呼び寄せ、投資を促し、探鉱・開発を推し進める必要があると考えられる。そのためには、ベネズエラの政治的な安定性、米国による制裁の全面的な解除、改正された炭化水素法の不確実性の排除、石油セクターにおける行動変容の長期的な実践等が必要となろう。

 

1. はじめに

2026年1月2日から3日にかけて、米軍はカラカスを含むベネズエラの複数の場所を攻撃し、ニコラス・マドゥロベネズエラ大統領を拘束、米国へ連行した。ドナルド・トランプ米国大統領は、権力の移行が行われるまで、期限を設けずに、米国がベネズエラを統治する計画であると発表した。そして、ベネズエラの原油は米国のものであるとして、ベネズエラ原油に対する米国の権利を主張し、米国企業がベネズエラの原油生産量を回復させるために投資を行うとした。さらに、米国企業が参入すれば、ベネズエラの石油産業を1年半以内に再建できるとの見通しを示した。

その後、米国の管理のもと、ベネズエラの石油産業を巡る情勢は急展開を見せているが、果たして、トランプ大統領が主張するように、米国企業の参入により、長年、放置され、投資不足によって空洞化し、環境が破壊されたベネズエラの石油産業を1年半以内に再建することはできるのだろうか。直近のベネズエラの石油産業を取り巻く状況についてまとめた。

2. トランプ政権、ベネズエラ石油セクターへの投資を促すため米国石油会社と会談

トランプ大統領は、ベネズエラの石油セクターの復興に1,000億ドルを投資するよう米国の石油会社に促すとして、2026年1月9日にExxonMobilやChevron、ConocoPhillips等の石油会社幹部をホワイトハウスに集め、会談を行った。

この会談では、ExxonMobilが、ベネズエラの現在の法的、商業的構造や枠組みを見れば、投資は不可能であるとしたり、ConocoPhillipsが、ベネズエラ国営石油会社PDVSAを含むベネズエラのエネルギーシステム全体の再構築を求めるとしたりする等、同国での探鉱・開発への投資に対して慎重な意見が多く聞かれた。

会談後、クリス・ライト米国エネルギー長官は、「Chevron、Shell、Repsol、Eniがベネズエラでの事業拡大に意欲を示した」と発言した。しかし、そのChevronも今後18~24ヶ月で生産量を約50%増加させることが可能、Repsolも今後3年間で現在の生産量を3倍にする準備ができているとしたものの、近い将来に同国の探鉱・開発に長期的な新規、大規模投資を行う可能性については言及しなかった。

(表1)トランプ大統領と石油会社の会談(2026年1月9日)(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)

3. ベネズエラ、炭化水素法を改正

ベネズエラ国会は2026年1月29日、原油生産量、輸出量を回復させるために探鉱・開発に民間投資を呼び戻すことを目指して、炭化水素法の改正を全会一致で承認した。

商業的枠組みや法制度に大きな変更を加え、永続的な投資保護策を講じ、炭化水素法を改正するよう求める石油会社の要望に、マドゥロ政権崩壊から1か月経たない短期間に応えるという非常に迅速な対応であった。

炭化水素法の主要な変更点は、以下の3点となる。

  • PDVSAと合弁事業を組むことなく、原油の探鉱、生産、加工、輸出を行うことが可能となる。
  • ロイヤルティは上限を30%とする(法改正前は30%だった)。臨時税や地方税等を廃止し、代わりに、統合炭化水素税(IHT)最大15%を課す。
  • 紛争はベネズエラの裁判所、または、契約上合意されていれば、調停や仲裁等を通じて解決する。

これまでの炭化水素法では、ベネズエラの上流事業に参入する方法は、PDVSAと合弁事業を組むか、油田サービス会社として参入するかのいずれかであった。今回の改正で、PDVSAと合弁事業を組むことなく、原油の探鉱、生産、加工、輸出を行うことが可能となったことから、PDVSAの独占状態を打破するもので、チャベス元大統領による国有化政策を覆すベネズエラ石油産業の大規模な改革であると評価をする向きもあった。

しかし、ロイヤルティやIHTの課税率は上限が定められているのみで、具体的な課税率を定める権限は炭化水素省に与えられている。ロイヤルティ自体は以前の30%が最大ではあるものの、一旦引き下げられたロイヤルティが途中で再び引き上げられる可能性もあり、どのようなタイミングでどのような割合とされるのかを石油会社が予測することが難しくなった。改正炭化水素法では、このように、行政府の裁量により契約内容が変更される場合があり、国家の管理が引き続き維持されているとコンサルタント等が懸念している。

また、紛争が生じた場合、調停や仲裁等を通じて解決することが可能となったが、調停や仲裁は必要となった場合に求めれば必ず行われるものではなく、契約で定められた場合にのみ実施されることとなっている。

このような点から、改正炭化水素法を持続的な投資に結びつけるには、規則の明確さや予測可能な実施が必要であるとの見方がなされている。

さらに、そもそも、マドゥロ政権で副大統領を務め、マドゥロ氏拘束後に暫定大統領に就任したデルシー・ロドリゲス氏が率いる政権の持続性や、ロドリゲス政権後の政権がこの改正をどの程度拘束力のあるものとみなすのか関しては、極めて不透明、不確実であると見られている。

米国の制裁下でもベネズエラでの探鉱・開発を続けてきたChevronでさえも、炭化水素法改正後に、改正された炭化水素法については検討中で、ベネズエラにおける長期的な見通しについて語るには時期尚早であるとした。

4. OFAC、一般ライセンスを発行、ベネズエラに対する制裁を一部緩和

米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、2026年1月29日以降、相次いで、一般ライセンス(General License:GL)を発行し、ベネズエラ政府とPDVSAおよびその子会社に対する制裁措置の枠組みは維持したままで、ベネズエラ産原油に関連する様々な事業と活動を米国の石油会社等に許可した。

まず、OFACは、1月29日にGL46を発行し、既存の米国企業に、ベネズエラ産原油や石油製品を購入、販売、輸送、関連する海事サービスの提供、再販、精製することを許可した。マドゥロ大統領追放後、米国による海上封鎖によりPDVSAの原油貯蔵施設が満杯となり、一部の油田の操業が停止していたが、このような事態を回避するために、米国は大手商社VitolとTrafiguraに個別のライセンスを付与し、ベネズエラ産原油5,000万バレルの取引を委託した。GL46により、ベネズエラ産の石油の輸出、販売を行うことができる企業の範囲が拡大され、ベネズエラ産原油の輸出がスムーズに行われ、油田操業に支障をきたすことを避けられるよう取られた措置と考えられる。

OFACは2月3日には、GL47を発行し、米国産希釈剤のベネズエラへの供給を許可した。ナフサやコンデンセート等の希釈剤は、ベネズエラの超重質原油の輸送や処理に不可欠で、希釈剤が安定して供給されることは、ベネズエラの原油生産増のための重要な要因と考えられる。GL47発行以前、米国の制裁下でベネズエラへの希釈剤供給を許可されていたのはChevronのみであった。また、ベネズエラはロシアやイランからも希釈剤を輸入していた。

2月10日には、ベネズエラにおける石油またはガスの探鉱、開発、または生産のための、米国または米国人による物品、技術、ソフトウェア、またはサービスの提供に通常付随し、かつ必要となる取引を含む上流活動を認可したGL48が発行された。これにより、米国の油田サービス会社がベネズエラの老朽化した石油・ガスセクターにおいて、探鉱、開発、または生産活動に使用される物品の改修または修理を含む、石油・ガス事業維持のための取引を行うことが可能となった。アナリストや市場関係者の中には、油田サービス会社によるベネズエラの石油インフラの再生は容易な取り組みであり、GL48発行により、同国の石油生産量を現在の日量約75万バレルから今後2年以内に日量120万~150万バレルにまで増加させる可能性があると指摘するものもある。しかし、SLB、Halliburton、Baker Hughes等大手油田サービス会社は、ベネズエラにおける新たな機会に慎重ながらもオープンな姿勢を示してはいるものの、事業拡大、再参入には法的、商業的枠組みが整わなければならないと強調している。

2月13日には、あらゆる企業がベネズエラにおける石油・ガス部門の事業への新規投資について契約の交渉および締結に関連する取引を行うことを許可するGL49が発行された。GL49は、契約締結にあたっては、別途、OFACの承認を得る必要がある。

同じく2月13日には、BP、Chevron、Eni、Repsol、Shellに対して、追加の石油・ガス上流プロジェクトの追求を含む事業拡大を許可したGL50も発行された。OFACは、2月18日にはGL50Aを発行し、GL50を更新し、事業拡大を許可したBP、Chevron、Eni、Repsol、ShellにMaurel & Promを対象に加えるとした。これにより、すでにベネズエラに資産を持つ企業であるChevron、Eni、Repsol、Maurel & Promは、比較的迅速に生産量を増やすことができる可能性が出てきた。また、隣国トリニダードのAtlantic LNGターミナルを共同で運営しているBPとShellは、ベネズエラ沖合やトリニダード・トバゴとの沖合国境沿いのガス田を開発し、同ターミナルにガスを供給する道が開かれることになった。

これらのGLには共通する内容が含まれている。

例えば、ベネズエラにおける契約は米国の法律に準拠し、契約に関する紛争の解決は米国で行うことが求められている。また、一部を除き、ロシア、イラン、北朝鮮、キューバ、中国の事業体との取引を禁止している。米国は、これらのGLは、苦境に立たされているベネズエラの石油産業と経済の立て直しや安定化に必要な措置だとしているが、中国等、米国の敵対国のベネズエラでの役割を縮小する一方で、米国の経済的利益を促進し、ベネズエラ暫定政権に対する米国の影響力を維持するような形で、これらの措置を実現しようとしていると見られる。

また、ベネズエラ政府やPDVSA等への金銭の支払いは、地方税、許可証、手数料の支払いを除き、米国を拠点とする外国政府預金基金、または米国財務省の指示によるその他の口座に行うとされている。これは、米国がベネズエラの石油収入を管理し、これを合意された目的のためにベネズエラ暫定政府に分配するとともに、債権者の請求から保護することを目的とするものと考えられる。

さらに、債務スワップや金、暗号通貨による支払いが禁止されている。ベネズエラは過去に米国の制裁を回避し、マネーロンダリングを行うためにこれらの手段を用いてきたことから、このような内容が加えられたものと思料される。

なお、GLには有効期限は設定されていないが、OFACはいつでもGLを取り消したり、修正したりすることができる。

5. 石油会社の一般ライセンスに対する反応と探鉱・開発状況

新たな一般ライセンスの発行を受けた石油会社の反応は、その立ち位置によって異なっている。Chevron等ベネズエラに資産を持つ企業は、原油生産増の可能性を示唆した。隣国トリニダード・トバゴのAtlantic LNGへのガス供給を検討しているShellとBPは、ベネズエラ沖合やトリニダード・トバゴとの沖合国境をまたぐガス田の開発に積極的な姿勢を示している。一方、国有化によりベネズエラに保有していた資産を接収された経験のあるConocoPhillipsとExxonMobilは、ベネズエラでの探鉱・開発への再参入に消極的な姿勢を示していたが、3月に入り、ExxonMobilがベネズエラへの再進出を検討しているとの報道がなされている。

(1) Chevron:短期的に原油生産量50%増の可能性があるとするも、大規模新規投資には言及せず

Chevronは、OFACのライセンスに基づきベネズエラで操業を継続してきた唯一の欧米大手石油会社である。Chevronは、「新たなGLと、ベネズエラの炭化水素法の最近の改正は、ベネズエラ国民のためにベネズエラの資源開発をさらに進め、地域のエネルギー安全保障を向上させるための重要な一歩である」と述べ、トランプ政権とベネズエラ政府による最近の措置を歓迎した。

1月に行われた2025年第4四半期の決算説明会で、Chevronのマイク・ワースCEOは、PDVSAとの合弁事業による2025年の原油生産量が日量約25万バレルだったとし、米国政府からの追加認可があれば、今後18~24ヶ月で生産量が最大50%増加する可能性があると付け加えた。

しかし、近い将来にベネズエラへ新たな投資を行う可能性についての示唆はなかった。Chevronはこれ以前より、PDVSAとの合弁事業は事業活動から生み出される資金のみで賄われているとしている。この資金で油井の改修、ポンプ、パイプライン、コンプレッサーステーションなどの基本的なメンテナンスが行われているという。そして、この状況が近い将来に変更される可能性はない、少なくとも当初は新規投資を行わないとしている。

2月に入っても、ワースCEOは、ベネズエラでの生産量は短期的に約50%増加する可能性があるとしながらも、大規模な新規投資の準備を整える前に、事業の安定性と有利な財務条件が必要だと述べている。新規投資に関しては、他の石油会社もChevronに倣うのではないかとの見方がされている。

(2) Repsol:原油生産量を1年以内に50%、3年以内に3倍に増やす可能性がある

Repsolは2007年のベネズエラの石油部門国有化後も、PDVSAとのオリノコベルトでの合弁事業Petroquiriquireで原油を、Cardon IV鉱区、Quiriquire Gasで天然ガスを生産してきたが、2025年5月にトランプ政権が同社のライセンスを取り消したことで、原油やコンデンセートの輸送を含む操業が制限されていた。

OFACによるGL発行を受けて、Repsolはベネズエラで石油・ガス事業を実施するための法的根拠を得たことで新たな好機が開かれたと、ベネズエラでの操業について楽観的な見方を示した。

Repsolは現在のPetroquiriquireの原油生産量、日量約45,000バレルを1年以内に50%増の日量67,500バレルに、3年以内に3倍の日量135,000バレルに増やす可能性があるとしている。また、PDVSAとのオリノコベルトでの合弁事業Petrocaraboboについては開発を続けるという。

(3) Eni:原油でのガス代金支払い再開へ、合弁事業の可能性について複数の米国企業と協議中

Eniは、GL50により、ベネズエラでの石油・ガス事業を再開し、これを継続できるとした。

Eniのベネズエラにおける主要資産はRepsolとの折半出資によるCardon IV鉱区Perlaガス田である。同ガス田で生産されるガスは主にベネズエラ国内の電力需要を満たすためにPDVSAに供給されている。PDVSAは、EniとRepsolに原油で支払いを行っていたが、米国の制裁を受け、安定した原油供給が行われなくなっていた。OFACのライセンスも2025年に取り消されてしまった。

Eniは2026年1月末に、PDVSAに供給したガス代金の未払い総額30億ドル超を回収するため、原油の受け取りを再開するのに必要なライセンスをOFACに申請した。2月26日、Eniのクラウディオ・デスカルツィCEOは、ベネズエラが供給を受けたガスの代金を原油で支払うことを可能にするライセンスを米国から取得したことを明らかにし、ベネズエラでの合弁事業の可能性について複数の米国企業と協議中であると述べている。

(図1)Perlaガス田位置図(出所:各種資料を基にJOGMEC作成)

(4) Maurel & Prom(フランスに本拠を置くE&P企業):原油生産量を3倍に増やす可能性がある

Maurel & Promは、PDVSAとの合弁事業Petroregional del Lagoの権益40%を保有し、マラカイボ湖北西部 に位置するUrdaneta Oeste油田の生産に従事してきた。Maurel & Promは、比較的短期間でベネズエラにおける同社の生産量を日量約2万バレルから3倍に増やす可能性があるとしている。

(5) Shell、BP:沖合ガス田の開発前進へ

トリニダード・トバゴは、中南米最大のLNG生産国であり、天然ガスを原料とするアンモニアとメタノールの主要生産国でもある。しかし、同国の天然ガス生産量は近年減少を続けている。ShellとBPがトリニダード・トバゴにおいて共同で運営しているAtlantic LNGも、フィードガス不足により4基あるトレインのうち第1トレインの稼働を2020年以降停止していたが、2026年1月に同年第4四半期に第1トレインの廃止作業を開始することでパートナー間の合意が成立したことを明らかにした。ShellとBPは、同プロジェクトの他のトレインに供給する天然ガスを確保すべく、ベネズエラ沖合やトリニダード・トバゴとの沖合国境沿いで複数のガス田を開発するためのライセンスをOFACに申請していた。GL50が発行されたことによりこれらガス田の開発可能性が高まっている。

Shellは、ベネズエラ北東部沖合に位置するDragonガス田の開発を計画しており、早ければ2027年にも生産を開始する可能性があるとしている。Shellはまた、トリニダード・トバゴとの沖合の国境をまたぐLoran・Manateeガス田の開発も検討している。BPは、両国の海域にまたがるCocuina・Manakinガス田の開発を計画している。

(図2)ベネズエラ北東部およびトリニダード・トバゴ沖合主要鉱区図(出所:各種資料を基にJOGMEC作成

なお、Shellは、3月5日にカラカスで行われたロドリゲス暫定大統領やダグ・バーガム米国内務長官も同席した会談で、ベネズエラ暫定政府と石油・ガスに関する新たな枠組み合意を締結したと発表した。詳細は明らかにされていないが、ShellはPDVSAと技術・資金提携を結び、Dragonガス田や東部Monagas州Punta de Mata市の油田の開発を進める。ロドリゲス暫定大統領は、今回の合意は先頃公布された炭化水素法の改正に盛り込まれた新たなビジネスモデルを具体化するものだと述べたという。

(6) ConocoPhillips:賠償請求に重点、ベネズエラへの復帰はない

ConocoPhillipsは、約20年前にベネズエラで資産が国有化されたことを受けて賠償を求めることに重点を置いており、ベネズエラに戻る予定はないとしている。

(7) ExxonMobil

ExxonMobilは、1月9日にホワイトハウスで実施された会談で、現状ではベネズエラへの投資は不可能だとした。ただし、その後、トランプ政権がベネズエラ暫定政権と協力して実施している同国の安定化、経済活性化、そして最終的には民主的に選出された政府への移行を目指す取り組みについて、慎重ながらも楽観的な姿勢を示し、正しい目標だとした。そして、1月末には、ExxonMobilは重質油に関する専門知識を有しており、生産コストの低減と回収率の向上、ひいてはより経済的な原油を市場に投入できる有利なアプローチを、米国政府が政策を策定する際に提供できるとして、ベネズエラに調査チームを派遣する意向を表明した。

2月に入っても、ExxonMobilのダレン・ウッズCEOが、トランプ政権がベネズエラの安定化と経済活性化に重点を置いていることを称賛しつつも、ベネズエラへの投資が意味を成すには同国が代議制国家に移行する必要がある、ベネズエラは現状では投資に適さないと評価したことは揺るがない、同国への再参入には依然として消極的だと述べていた。その理由として、チャベス元大統領とマドゥロ前大統領による長年にわたる国有化、不安定な政策、そして経済悪化を挙げた。

ところが、3月に入り、ExxonMobilのジャック・ウィリアムズ上級副社長は、「数週間以内に、現地にチームを派遣し、調査と活動を開始する予定。当社はベネズエラに進出した経験がある。2度の国有化を経験。資産や資源については熟知している。ベネズエラでの事業は非常に成功した」と述べ、ベネズエラへの再進出を検討していることを明らかにしたと報じられている。

6. 終わりに

OFACが5件のGLを発行したことにより、ChevronやRepsol等すでにベネズエラに足場を築いてきた企業は、既存の生産地域で短期的に原油生産を増やす可能性が高まった。また、沖合のガス田開発についても、トリニダード・トバゴへの供給を前提に、進展の可能性が見えてきた。しかし、トランプ大統領の主張するように、ベネズエラの石油産業を1年半以内に再建するためには、他の大手石油会社をもベネズエラに呼び寄せ、投資を促し、探鉱・開発を推し進める必要があろう。そのためには、ベネズエラ暫定政権の政治的な正当性やその後の政権を含めた安定性、米国による制裁の全面的な解除、改正された炭化水素法の不確実性の排除、石油セクターにおける行動変容の長期的な実践等、いくつものハードルがあると考えられる。現状では、新規参入企業は、非上場企業を含む中小規模の企業になる可能性が高いとの見方さえある。中長期的なベネズエラの原油生産動向は、引き続きベネズエラと米国の政策がカギを握ると考えられ、その動向を注視していく必要があろう。

 

以上

(この報告は2026年3月10日時点のものです)

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