青が生まれた日
槍←弓(自覚あり)から始まる、二人がくっつくまでのお話です。ノリと勢いで書いたものなのでいつか消すかもしれません。
カルデア内の設定は全て捏造ですので、気になる方はご遠慮ください。
またキスをしている描写が入りますのでご注意ください。
マスターは男女どちらでもいいような口調にしてあります。
- 239
- 199
- 5,251
「クー・フーリン!誕生日おめでとう!」
カルデアの廊下をぶらぶらと歩いてた時だ、そう背後から声をかけられた。
「ああ?俺の誕生日ぃ?」
振り返りながら疑問を口にする。たぶん眉間にシワが寄ってたんだろう。声の主ー、マスターが苦笑交じりの笑顔で近寄ってきた。
「そう、今日は6月21日。夏至なんだって。夏至ってことはクー・フーリンの誕生日!」
そういえばそうだったか。
しかし此の身はすでに天寿を全うしている。今更生まれた日、しかも現代に無理矢理合わせた日を祝われるとは不思議な気分だ。
「おいおい、サーヴァントがどんな存在か知ってんだろ?おめでとうなんて間違ってるぜマスター」
「それはわかってる…けど誕生日を知ってしまったらおめでとうって言わずにいれなかったんだ!それに今…、クー・フーリンはここにいるから」
皮肉混じりの言葉に、あいも変わらず理解不能な言葉を返してくる。このマスターは相当の変わりもんだ。
このカルデアにおいてたった一人のマスター。
幾多のサーヴァントと契約を結び、幾度の死線を乗り越えてきた。その実力は魔術師としては半人前もいいとこだが、覚悟はなかなかのもんだ。
人理修復というとてつもない大義の為に、命を投げ出す。
とても生半可な覚悟でできることじゃねえ。
どんな時でも真っ直ぐ、最後まで諦めが悪いマスターを俺は存外気に入っているし、マスターもマスターで早々に召喚された俺を慕ってくれている。
「じゃあ他のクー・フーリン達にもおめでとうって言ってくる!」
無邪気な笑顔で廊下を駆けていく後ろ姿に、転けるなよと声をかけつつ。
誕生日…誕生日ねぇ…。
その日は何処に行っても、おめでとうと声をかけられた。たぶんマスターがカルデア中に言い回ったんだろう。
顔見知りの奴らには肩や背中をバシバシと叩かれ、あまり面識のない奴らには控えめながらもおめでとうと言われる。
慣れない言葉を言われまくったせいか、夜には戦闘をしてもいないのに疲労困ぱいだった。
「はぁ、もう死んでるっつーのに…」
何故か疲れ切った体が求めるのは、魔力。もとい魔力補給の為の食事。
誕生日らしいんだ、酒だってつけてもらおう。そう思いながらカルデア内の食堂へ足を運べば、時間帯をずらして行ったのもあり人は疎らだった。
「なぁ、とりあえず酒と酒に合いそうなやつ」
厨房に面するカウンターへ向かい、中にいる奴に注文する。メニューはなんでもいい。とにかく酒だ、酒。
「おや、また随分と疲弊しているようだなランサー?」
「げっ、テメェが今日の当番かよ…」
カウンターの向かいから声を返してきたのは、俺が苦手とする奴の一人、赤い外套を着込んだ弓兵だった。
「知っていると思うが、祝い事や宴会時以外の飲酒は禁止だ。無論、生まれた日でも宴会でなければ酒は出せん」
鼻で笑いながら嫌味な口調で伝えてくるのがいちいち憎たらしい。
このカルデアでは食料の節約のためだかなんだか分からねえが、特別な行事以外での飲酒を禁止している。
レイシフト先の現地で飲むのは例外だが、カルデア内では一切禁止。この決まりに不満を漏らす奴も多く、俺も声を上げたが厨房を任されている奴らの権利は大きいらしい…、ここの責任者とマスターが決めた以上、絶対だ。
まぁ、半獣の姉ちゃんやブーディカに頼めば少しは横流ししてくれる時もあるんだが…このアーチャーの野郎はそんなことはしない。
どんなことがあろうと「マスターの教育上良くない!」の一点張りで絶対に酒を出してくれることはない。
はぁ、ついてねえ…今日は諦めるか。
「あー…いい、適当に飯をくれ」
嫌味の一つでも返してやろうかと思ったが生憎、今日はそんな気力も残ってねえ。
「…本当に疲労が溜まっているようだな。いつも血気盛んな君がここまで疲弊しているのも珍しい」
「もういいから飯を寄越せアーチャー」
何も言い返さない俺に虚をつかれたような顔で言葉を返してくるアーチャーに、手を振って飯
を催促する。今日はもう飯を食って寝よう。
怪訝な顔で黙って出された今日の献立の定食を、食堂の適当な席について食べる。
誕生日だのおめでとうだの言われまくった割には、俺が疲れただけで普段と代わり映えしない食事をかきこむ。
早々に立ち去ろうと盆をカウンターへと返却した時だ。またアーチャーが声をかけてきた。
「君の明日の予定は?」
「予定?そうさね…レイシフトはねえし、ケルトの奴らか俺たちの誰かしらと鍛錬するくらいだろ」
「そうか…」
よく分からない質問に疑問符が浮かぶが、適当に応える。何か返ってくるかと思いきや聞いただけですぐに背を向けてしまったアーチャーにかちんとくるも、面倒になって俺もそのまま食堂を後にした。
続きますよね?