うつくしい世界
お久しぶりです。
大晦日、すごかったですね。ロードアニメ化ですね!
最初に考えてた空の境界のクロスオーバーが全く進んでいないのですが、まさかイリヤが実装されるだなんて!!しかも我がカルデアに来てくれるなんて!というパッションが治まらず、今までの話とは関係のない衛宮姉弟話を書いてしまいました。
私事ですが色々あってニートになりまして、受験生になりました。頑張る。
創作の気力は湧いてきたのでクロスオーバーは気長にお待ちいただけると嬉しいです。ロード本格始動までには・・・
本文は第3異聞帯までのネタバレがあります。注意してください。
(1/16追記)
おまけの続きを追加しました。
シトナイって、孔明先生と同じく依り代の自我が残って前面に出てる珍しい疑似サーヴァントじゃないですか。今まで聖杯戦争の面々が実装されても鯖側に引っ張られることが多かった五次面子の中で唯一、五次聖杯戦争の記憶を持って現界してるわけじゃないですか。FGOの中でわりと記憶がしっかりしてるエミヤが彼女と会ったらどうなるのかな、と。
マイルームボイスで黒弓さんは触れられてて赤弓さんが触れられないだなんて、解放されてない幕間でどうにかなるんですよね!?と思いつつ、それを待っていられなかった結果こんなの出来ました。
相変わらず型月世界について不勉強な部分があり、おかしなところがあると思います。
お優しい方がいたらこそっと教えてください。
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カルデアと似通った彷徨海の中。
その無機質な廊下を一人、エミヤは歩いていた。
世界が漂白されてから暫くシャドウ・ボーダーで潜行を繰り返し、決まったベースを持たなかったカルデアの面々は、彷徨海にたどり着いたことにより落ち着くことが出来た。
また、召喚陣が常設されたことで、ようやく人理修復後に座へ戻っていたサーヴァントの再召喚が始まったのである。
カルデアでは比較的早い段階で召喚され、人理修復後は比較的早い段階で座に戻ったエミヤであるが、今回も他のサーヴァントより早く再召喚されたようである。
まずは先に召喚されているというキャットがいるであろうキッチンへ向かうために歩いていたエミヤは、ふと誰かがいる気配がして振り返ろうとした。
「お兄ちゃん」
しかし、聞こえてきた声に動けなくなる。
声は、カルデアでともに召喚されていた魔法少女達のそれである。
だが、彼女たちは自分のことを「お兄ちゃん」とは呼ばない。
彼女たちは自分と直接かかわりのある彼女ではないからだ。
「もう、聞こえてるんでしょ!」
視線を向けず、中途半端な状態で固まった男に焦れたのか、再度声が急き立てる。そんな様子も、守護者として召喚された時ではありえないほどの修繕がなされた記憶の中のまま。
意を決して振り返ると、そこには思い描いた通り、とは言えないが確かに彼女が存在していた。
「イリヤスフィール・・・」
振り返って見た表情は、いかにも怒っていますというような膨れっ面。
振り返った瞬間に笑顔が見えたものの、その呼び名に再び憤慨した様子で一瞬むすっとした表情を見せたが、何かに気づいたのかまた笑顔になった。
「イリヤって呼んで!って思ったんだけど、今はシトナイってことになってるから、普段はシトナイって呼んで!」
でも二人っきりの時はお姉ちゃんでもいいのよ、と笑う彼女をただ茫然として見ていた。
相手の様子を気にせずに近づいてきた少女は、エミヤの目の前で止まった。
「先に真っ黒いアーチャーに会ったから、シロウがグレた!?ってびっくりしちゃった。それに、あのシロウは私のこと、わからなかったの」
急激に得られた様々な情報により、何も返すことが出来ない男を後目に少女はまくしたてるように話している。
楽しそうな様子から一転、俯く彼女は相変わらず小さく、この彼女も長く生きれなかったのだろうか、とふと思った。
情報処理が追い付かず、そんな感慨を持ってただ無言で彼女を見下ろしていたが、突然顔を上げて笑いかけられたせいで面食らってしまう。
「だから、シロウが私の事覚えていてくれてすごくうれしいわ!」
「イリヤ」
「はい、シロウ。ねえ!沢山話したいことがあるのよ!だから、どこかでゆっくり話しましょう?」
そう微笑んだ彼女の願いを、自分は今やなんの問題もなく実行できるのだと思い至り、思わず口元が緩んでしまった。
「ああ、そうだな。そういう強引なところ、変わってないな」
「なにー!かわいくないことを言うのはこの口かー!」
「いふぁいよ、ねえふぁん」
表情を見られないようにと抱き上げたが、すぐに腕を突っ張り顔を見られた挙句、口角を引っ張られる。
口元を抑えられたままで聞き取り辛かっただろうが、聞こえただろうか。
乱暴な姉が楽しそうに笑っているから、きっと聞き取れただろう。
彼女の大切なバーサーカーのように、彼女を抱え上げながら自分に与えられた部屋へ向かう。未だ再召喚に応じるサーヴァントは少なく、目的としていた食堂でも外野は少ないだろうが、好んで聞かせたいわけでもない。
絵面が危険なことはわかるが、それを指摘するような者と行きかうほどの数がまだここにはいないのだ。気にすることではないだろう。
「シトナイ、ということは疑似サーヴァントなのか?」
「シトナイが一番前に出てきてるけど、ロウヒとフレイヤの3柱の女神が集まってできたハイ・サーヴァントだよ。私が依り代として選ばれたのは、そんな滅茶苦茶な存在を現界させる最終手段かもね。私もよくわからないんだけど」
「そうか。アラヤが働いた訳ではないのだな」
そう、呟くように合槌を打つと、至近距離で笑われた。
「あはは。シロウがそんなこと言うなんて変なの!シロウが一番よく知ってるでしょ?」
「この漂白された世界にアラヤは存在しないわ」
「私はよく知らないのだけど、人理が焼却された時もアラヤは存在しなかったのでしょう?」
そう、そんなことは私が一番よくしっている。
人理が焼却されたあの1年も、人理が漂白された現在も、アラヤは存在していない。
だからこその己だ。
これほどまでに記憶の損傷がなく、行動を強制されることもなく、自由に動けることなど今までの現界ではありえなかった。
一部、魚釣りを満喫している自分などよくわからない記録が出てきたが、それは別の平行世界の話だろう。これは深く追及するまい。
「君も、いないのか」
「それをいうなら貴方もでしょ。そもそも、私が調整された聖杯戦争はもう終わってるのよ。言いたいこと、わかるでしょ」
アインツベルンのホムンクルスであるイリヤスフィールは、小聖杯として機能するように造られた存在である。
彼女の戦うべき戦場は、現在ではない。すでに、彼女はこの世界に存在していなかった。
当たり前のように口にされるそれが、今更悲しかっただなんて、彼女には口が裂けても言えたものじゃない。
「でも、貴方は生きてたでしょ。今、ここで。でも、アラヤのいない世界だってしって私、嬉しかったのよ。悪い子なの。」
貴方がいない世界だってしってる。
でも、貴方が柵無く存在出来る有り得ない奇跡の世界ってこともしってるの。
私、このせかいを救うために現界してるのに。
このままこのせかいが続いてくれたらって思っちゃうのよ。
このせかいが、貴方の大嫌いな取捨選択する地獄だっていうことも知ってるのに。
「泣かないでくれよ」
首元に抱きつかれながら、泣く彼女の頭を撫でる。
壊れかけた出来損ないの男を、兄と、弟と呼んでくれる彼女が、たしかに愛おしかった。
俺は君を救えなかったのに、君はこんな私のことも愛情深く悲しんでくれるなんて。
今、俺は終わった世界の続きをみているのだ。
「俺はもう救われてるよ」
だって、こんなにもうつくしい世界だ。