「ドラマの中で女性に与えられる役割がなかなか変わらない――」。そんな危機感を持つNHKドラマプロデューサーがいます。NHKの看板番組である大河ドラマの『光る君へ』や、朝ドラことNHK連続テレビ小説『カーネーション』などを手掛けてきた内田ゆきさんです。ステレオタイプに囚われず、生き生きとした一人の女性、人間としての物語を追求する作り手に話を聞きました。
 


仕事ができるヒロインに「抜け」が求められてしまう現実
 

記憶に新しい『光る君へ』のまひろこと紫式部しかり、世界的デザイナーのコシノ三姉妹の母をモデルにした『カーネーション』の糸子に今もなお惹かれるのは、思いのままに生きる姿があったからかもしれません。完ぺきではなくても、それでいい。なんなら何が悪いのか? そう言わんばかりの強ささえありました。

そんな女性たちを主役にしたドラマをこれまで手掛けてきたのが内田ゆきさんです。1999年からNHKでドラマプロデューサーとして活躍されています。実力派の作り手のおひとりです。

『光る君へ』『カーネーション』の女性プロデューサーが語る、日本のドラマへの危機感と覚悟「ドラマの中で女性に与えられる役割がなかなか変わらない」_img0
「シリーズ・マニア」に登壇した際の内田さん(著者撮影)


内田さんにお会いしたのは、フランス北部のリールで3月末に開催されたドラマ祭「シリーズ・マニア」の会場でした。世界各国からドラマの作り手たちが集まり、上映会などが行われるなか、内田さんが感じたのは実は危機感でした。「変わりつつあるのだけれど……」と前置きしつつも「日本のドラマの中の女性、特に若い女性が与えられる役割は、やっぱりなかなか変わらないままなんですよ」と話し始めました。

「例えば、仕事ができる女性を主人公にしようとする場合、部屋が散らかってるのが悩みといった状況を作り出さないと、ドラマになりにくい現実があります。男性だったらそんな設定は必要ないのに。でも、女性の場合は、仕事はできるが抜けたところがある、親近感がわくでしょう、と意外性で価値を作り出そうとする現実があります」

そう思う一方で、いざ自分がドラマを作る側に回ると「難しさもあります」という内田さん。女らしさや男らしさといった、自分にもある無意識の“思い込み”が邪魔するのだそう。葛藤があるなかで理想は持ち続けます。

「ジェンダーや年齢に囚われずに、“仕事で忙しい人間”として当たり前のように女性を取り上げられるようになりたい。女性でもバリバリ仕事をして楽しく生きている人はダメですか? と問いただされる時代だと感じます」

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連続テレビ小説「カーネーション」 NHKオンデマンドで配信中 ©︎NHK

今から14年前に初回放送された朝ドラ『カーネーション』はタブーにも踏み込み、妻子ある相手との不倫の描写は物議を醸しましたが、プロデュースした内田さん自身もヒロインのキャラクターに思い入れがある様子です。

「糸子の熱血さは、“必ずしも品行方正でなくてもいい”ということも伝えていました。簡単に表現できるものではなく、(脚本家の)渡辺あやさんだからこそできたことだと思っています」。波瀾に満ちた人生を歩んだ糸子を表す重要な要素になっていたということです。

 
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