金融所得も健康保険料に 75歳以上の投資家、現役世代に影響

金融所得も健康保険料に 75歳以上の投資家、現役世代に影響

フロッギー版 お金で得するオタク会計士チャンネル 山田真哉

2026.3.27

みなさんこんにちは! 公認会計士兼税理士の山田真哉です。

2026年の国会で、健康保険法の改正が審議される予定※です。特に注目すべきは、健康保険料の計算に金融所得が含まれる点です。

※健康保険法等の一部を改正する法律案は3月13日に閣議決定され、国会審議段階に入っています。

これまでは、どれだけ株式投資で利益を上げても健康保険料の計算に関係なかったのですが、今後はそうはいかなくなります。今回は、政府の詳しい資料や議事録なども踏まえて、どういう改正が行われるのか、そして今後どうなるのかについて解説したいと思います。

お送りする内容は、以下の通りです。

・高齢者の医療費問題
・利益が出た時の税金と保険料
・金融所得の合算で、どれだけ負担が増えるのか?
・金融所得合算の疑問点
・出産費用、高額療養費の改正

高齢者の医療費問題

そもそも今回の改正案で、金融所得が健康保険料に影響することになる対象は、75歳以上の方です。まず、その背景について説明します。

現在、団塊世代が75歳を超え、75歳以上の人口は非常に多くなっています。しかし、その中には健康な方もいれば、そうではない方もいます。つまり、年齢で一括りにできない時代になっています。

また、実務的な理由もあります。75歳以上の方は全員、後期高齢者医療制度に入っています。収入によって窓口負担は増えることはありますが、病院の窓口負担は原則1割です。

さらに、後期高齢者の医療費は75歳以上の方の保険料で賄われているわけではありません。なんと9割が税金や現役世代からの支援金で成り立っています。

そもそも「保険」とは、みんなでお金を出し合い、何か事故が起きた時には、そのお金の中から払うという仕組みです。しかし、75歳以上の医療費はそうなっていません。リスクへの備えのはずの保険が、ほぼ医療サービスへの補助金になっているというのが現状です。

また、75歳以上の方は、日常的に受診している方も多いです。そして、 一人当たりの医療費の自己負担額は 60代後半では3割ですが、70歳になると2割、 75歳以上は1割と医療費の負担が減ります。しかし、高齢になるほど、かかる医療費は高くなります。一人当たりが使う医療費と自己負担額の逆転が生じている。「はたしてこれは正しいのか」と政府内で議論されたわけです。

つまり、これからは年齢ではなく、支払い能力で保険料や窓口負担を考えた方がいいのではないか。その第一弾として、支払い能力に金融所得も含めるべきというのが今回の改正案です

投資で利益が出た時の税金と保険料

健康保険料の計算に含まれる金融所得は、日本株や外国株、投資信託の売却益、そして株の配当金や投資信託の分配金です。

ちなみに、税金については年齢に関係なく、これまで通り確定申告をしても、しなくてもどちらでもいいというルールです。というのも、株の売却益については、証券会社で「源泉徴収あり」の特定口座を作っていると、自動的に所得税15.315%、住民税5%が引かれます。そして証券会社が納税までしてくれるので、自身での確定申告は不要なのです。

ただ、株式譲渡所得として確定申告することもできます。金融所得の税金は分離課税で、給与や年金などの税率とは別に税金がかかりますので、税率は変わりません。にもかかわらず、わざわざ確定申告をする人がいるのは、複数証券口座の損益通算ができるからです

しかし、確定申告をすると、利益の分だけ国民健康保険料や介護保険料、後期高齢者医療制度の保険料が上がります。そのため、実際には会社員以外の方は、売却益が出ても確定申告をしないケースが多いです。

配当金や分配金も同様に、申告不要もしくは配当所得分離課税で確定申告を選択できます。株による損失と損益通算できるため、確定申告する場合もありますが、国民健康保険料などには影響が出てきます。

しかも、配当金や分配金の場合、給与や年金、事業、不動産といった他の所得と合算した税率でも良い、配当所得総合課税というルールもあります。この場合、所得が多いと40%超の税率ですが、所得が低ければ0%になる可能性もあります。さらに、配当所得総合課税では、配当控除も使えます。結論だけ言うと、合計所得が695万円以下であれば、配当所得総合課税を選択する方が有利です

ただ、個人事業主や年金生活者が配当所得総合課税を選択すると、国民健康保険や介護保険、後期高齢者医療制度の保険料も上がる可能性があります。扶養から外れることになるといった問題が起きるので、なかなか簡単にできないのが現状です。

以上のように、確定申告をするかしないかで、保険料は変わります。しかし、公平性の観点から見ると、おかしな状況です。そこで、75歳以上の後期高齢者の保険料については、確定申告をした時と同様の計算にしようとしています

具体的には、後期高齢者医療制度で新たなサーバーを作り、現在証券会社から税務署に送られている特定口座年間取引報告書のデータを市区町村とやり取りすることによって、金融所得も含めた保険料を算出するという話になっています。

このシステムを作るのにも時間がかかりますので、もし2026年の国会で通ったとしても、実際にこの仕組みがスタートするのはその4、5年後になるでしょう。

金融所得の合算でどれだけ負担が増えるのか?

では、今回の改正で、保険料や窓口負担はどのくらい変わるのでしょうか。75歳で単身、東京都在住、年金150万円の人を例に挙げてみます。

金融所得を含めない場合、健康保険料は年間で1万4100円で、窓口負担は1割です。ところが、年間50万円の配当金を含めると、健康保険料は約6倍の8万3200円に増えます。さらに、窓口負担も1割から2割になります。年間の窓口支払いの医療費が5万円だった人は2倍の10万円になるということです。

ちなみに介護保険料にも金融所得が反映される見込みですので、介護保険の保険料や窓口負担も増える可能性があります。

金融所得合算の疑問点

続いて、金融所得を合算する際の5つの疑問点についてお答えしていきます。

①株の売却益や配当金がない年は?
②海外の証券会社の口座の場合は?
③株の損失が出た場合は?
④NISA口座の場合は?
⑤会社員や会社役員の場合は?

まず、株の売却益や配当金がない年は、当然保険料も増えません。つまり投資をしていても、株の売却をせず、配当金のない銘柄を選んでいれば、保険料は上がりません。

海外の証券会社の口座を持っている場合、海外の証券会社から日本の税務署へ提出するデータはありません。ただ海外の証券会社を使っている場合は、そもそも確定申告をしなければなりません。海外の証券会社からの入金について、確定申告していなければ税務調査の対象になってきます。

なお、株の損失が出ても、保険料は原則下がりません。税金でも、株の損失は株の利益と相殺できたり、3年間繰り越しはありますが、株以外の税金は安くなりません。ですので、金融所得を含めても、損失で保険料が下がることはありません。

NISA口座の場合、そもそも非課税の口座ですから、利益が出ても保険料にも反映されないと言われています。よってNISA口座では利益が出ても、損が出ても保険料が変わることはありません

会社員や会社役員の場合、75歳以上の場合は会社員であっても保険は後期高齢者医療制度です。年金生活者と同じように金融所得が合算されます。

現役世代への影響は?

現役世代への影響は2つあります。まず、将来設計に関わってきます。75歳以降、投資で生活しようと考えている方にとっては、保険料の負担額のシミュレーションがだいぶ変わってしまうでしょう。

そして、今回の改正案はそもそも、「確定申告をするかどうかで保険料が変わる仕組みが不公平」という話なので、今後60歳以上が対象となったり、国民健康保険に入っている人は全員適用という話はありうると思います。そうなると、今度は会社の健康保険に入っている会社員との公平性という問題も出てくるので、最終的には全国民に金融所得合算が適用される可能性は大いにあると思います。実際、適用範囲の拡大については、政府の議事録に出ています。

出産費用、高額療養費ほか

最後に、その他の健康保険法改正のポイントについても、お伝えしたいと思います。

まず1つ目、出産費用の無償化です。現在、支給されている出産育児一時金50万円が廃止されて公的保険となり、無償になります。加えて、個室代や赤ちゃんのための準備費用として現金が支給される予定です。こちらは法律の公布から2年以内に実施される見込みです。

2つ目、高額療養費制度の見直しです。こちらは過去にも取り上げたのですが、自己負担の月額の上限が引き上がります。しかし、がん治療などで長期間病院に通う人は年間上限額が設定されますので、今より負担が下がる見込みです。こちらは2026年8月の改正が予定されています。

そして3つ目、 OTC類似薬の追加負担です。OTCとは、花粉症の薬や痛み止め、保湿剤などの市販薬のことです。医師から処方された薬ばかりだと、医療費が上がってしまいます。そこで、市販薬へ誘導するために、医師から処方されるOTC類似薬には、 窓口負担額が25%上乗せされる改正です。ただし、子供や難病患者は上乗せの対象外の予定です。こちらについては、 2027年3月から導入される見込みです。

というわけで、 2026年2月23日時点の情報でした。
よかったら今後ともごひいきに。ば~い、ば〜い!

日米首脳会談で共同開発合意 「レアアース」関連株が上昇

日米首脳会談で共同開発合意 「レアアース」関連株が上昇

直近の値動きから見るテーマ株 QUICK

2026.3.26

株式市場で「レアアース(希土類)」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は2.0%と、東証株価指数(TOPIX、1.1%安)に対して逆行高となりました(3月19日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

事前報道で先回り物色が強まる

レアアース関連株が上昇したきっかけは、レアアースを日米で共同開発するとの報道です。

3月17日、「日米両政府は19日にワシントンで開く首脳会談で、レアアースやリチウム、銅の共同開発で合意する」と報道されました。

米国内で日本企業が参加する4つの事業を推進し、中国の安価な重要鉱物への調達依存を軽減する狙いがあるようです。

株式市場でも経済安全保障の面からレアアースのサプライチェーン(供給網)の強化は重要なテーマとして注目されています。日米首脳会談での正式合意を前に、期待が高まり買いを集めました。

海底資源開発をレアアースに応用か【三井海洋開発】

上昇率首位の三井海洋開発は海上で石油を生産・貯蔵・積み出しする浮体式設備(FPSO)などを手掛けています。

海底資源の1つであるガス成分と氷が混ざった塊「メタンハイドレート」の開発に取り組んでおり、技術がレアアース泥の回収にも応用できるとの思惑から物色を集めています。

19日の日米首脳会談では米ハワイ沖のマンガンの採取や小笠原諸島・南鳥島(東京都)沖のレアアースの採掘も議題に挙がる予定との報道もありました。海底資源の日米の共同開発で同社に協力が求められれば収益への貢献が期待できそうです。

リチウム鉱山の開発事業に出資【三井物産】

上昇率2位の三井物産は総合商社として幅広い資源や材料などを扱っています。同社は米南東部ノースカロライナ州キングスマウンテンのリチウム鉱山の開発で、米化学大手のアルベマールと共同出資を含めた連携を検討しているとの報道がありました。

日米はレアアースのリサイクルや精錬など4事業で合意しており、そのうちの1つに含まれるリチウム鉱山の開発への出資は実現が見込まれ、同社の将来の収益貢献にも期待できそうです。

リチウムイオン電池の再生事業などにも物色広がる

アサカ理研は使用済みのリチウムイオン電池からレアメタルを再生する事業を手掛けるほか、光学レンズ廃材からのレアアースの回収や高純度化にも成功しています。

三菱商事はレアアースのリサイクルや精錬など4事業の1つとして、米南西部アリゾナ州のカッパーワールド銅鉱山の開発に870億円を投じて2029年ごろの稼働を目指します。鉱山の権益は取得済みで、カナダのハドベイ・ミネラルズと共同開発します。

石油資源開発は2015年に、次世代海洋資源調査技術研究組合(J-MARES)の組合員として、海洋資源調査システム・運用方法の技術確立に関する研究開発の活動を開始。内閣府SIP(戦略的イノベーションプログラム)に参画して南鳥島周辺EEZ(排他的経済水域)でのレアアース泥を対象とした技術開発に携わってきています。

いずれの企業も日米がレアアースの供給網の強化で協力すれば技術提供や事業拡大につながり、成長の追い風となりそうです。

日米首脳会談で合意も投資には長期目線が必要か

日本時間20日の日米首脳会談ではレアアースのリサイクルや精錬など4事業の合意のほか、南鳥島周辺の海域にあるレアアース泥を含む海洋鉱物資源開発に関する協力に関する文書を取りまとめたようです。

イラン情勢の動向で株式相場が上下に大きく動くなか、日米首脳会談明けの23日にはレアアース関連銘柄への売りが強まる場面がありました。

レアアース関連は以前から市場で注目されており、短期的な値動きが大きい銘柄もあるため、長期的な目線での投資が求められそうです。日々のニュースをチェックしつつ短期的な過熱感などに注意して、投資判断に役立てたいですね。

「この人たちを大事にしよう」と決めた瞬間、全てが一変した

「この人たちを大事にしよう」と決めた瞬間、全てが一変した

お金を語るのはカッコいい・河村真木子さんに聞く 河村 真木子

2026.3.25

外資系金融機関で20年にわたりキャリアを築き、現在は日本最大級のオンラインコミュニティを主宰する河村真木子さん。河村さんが最新刊『外資系金融ママがわが子に伝えたい 人生とお金の本質』で説くのは、単なる蓄財のテクニックではない。「人生の主役」を自分自身に取り戻すためのマインドセットとは何か。そして、なぜ今「環境」への投資が、お金以上に人生を劇的に変えるのか。レールなき世界を軽やかに、たくましく生き抜くための哲学を聞いた。

貯金より大事な、「オーナーシップ」を持つこと

――昨日は韓国、そして明日からアブダビへ行かれると伺いました。(取材は2月初旬でした。)かなりハードな印象ですが、渡航の目的はなんですか?

視察です。私が主宰するオンラインコミュニティ「Holland Village Member’s Club」には海外在住のメンバーさんや、仕事やバカンスで海外に行く機会が多い国内メンバーさんが多いので、福利厚生として使える拠点を世界中に増やしているんです。

今アブダビがすごくホットで世界中の富裕層が集まっているらしいと聞いたので、プロパティ(物件)をちょっと見に行こうと思って。

――「ちょっと見に行く」ために、わざわざアブダビまで?

情報収集は常にやっていますが、世の中の風景はどんどん変わっていくし、やっぱり自分の目で見ないと「今、本当に起きていること」は分からないので。

アブダビの後も、ニューヨーク、ボストン、LAに行く予定です。韓国は美容ツアーでした(笑)。

――最新刊『外資系金融ママがわが子に伝えたい 人生とお金の本質』は、発売前から大変な反響でしたね。特に次世代を育てる親世代に向けて非常にクリアなメッセージを発信されていますが、執筆にあたってこのテーマを選んだ動機を教えてください。

最近、フォロワーさんやコミュニティのメンバーさんから「自分の子どもたちにも金融経済の知識を持ってほしい」「どうやって教えたらいいの?」と聞かれることがすごく多くなったんですよ。

今はインフレになったり、AIが台頭したり、政治も情勢も変わったりと、まさに時代の大転換期ですよね。親世代が生きてきた時代の“常識”が通用しなくなっていることを肌で実感している人が多いのだと思います。

ライフプランを見据えたお金の備えに関しても「貯金だけではどうにもならない」という危機感が広がっている。時代の常識が変わっているのに、自分の考えを固定したままでは勝てないじゃないですか。「新しい考え方に自分をアジャスト(適応)させなきゃいけない。でもどうしたらいいの?」という不安に応える気持ちで本を書いたんです。

――独自のお小遣い制度など、ご自身の子育てでの実践例も豊富に紹介されていますね。

私自身も娘を持つ母親ですが、自分が知っていた常識と、これから子どもたちに伝えるべきものが全然違うと感じながら子育てをしてきました。単なる蓄財の術ではなく、自分の人生をどうアジャストさせるかという「考え方」を書き換えるための本にしたいという気持ちが大きかったですね。

1冊を通じて強調したかったのは、自分の人生を自分で切り開いていくオーナーシップを持つことの大切さ。お金を味方にする方法として「稼ぐ・増やす・使う」という3つのアプローチを軸にまとめました。
たとえば「稼ぐ」に関していうと、私は「使われる側の労働者」から「事業家」「オーナー」に転換していく重要性を伝えています。

かつては「大学に行って就職して結婚すれば安泰」という時代もありましたが、全員に敷かれていたはずのレールはもうない。そんな「レールなき世界」をいかに生き抜くか、読んでくださった方にとってマインドチェンジのきっかけになるとうれしいですね。

人生を変えるのは簡単。ちょっと考え方を変えてみる、だけ

――日本は長く「1億2000万人総レール社会」だったとも言えますが、それが崩壊した今、私たちは何を指針にすべきでしょうか。

日本って本当に、全員のレールが敷かれているような社会でしたよね(笑)。女性だけでなく男性も、自分の頭を抱えて考えなくても、なんとなく流れに乗ればやっていけた時代だった。でも、そのレールがいきなり途絶えた現代において、正解はどこにもありません。

一方で、私が20年間いた外資系金融機関という世界は、まさに「レールなき世界」でした。いつでもクビになるし、数字しか自分を助けてくれない弱肉強食のサバイバル社会。就職する前に経験したアメリカでの大学生活も同じでした。そうしたサバイバル環境では、常に自問自答しながら、自分の道を模索する力が磨かれたと思います。

一般的な日本社会の中では私のような生き方は少数派なのかもしれませんが、常識なき世界で育ってきたからこそ、皆さんに提示できる一つのオプションがあると思っています。誰かの指示に従うのではなく、自分の人生に責任を持つ「事業家精神」を持つこと。いつでも自分の人生のハンドルを自分で握れるように、環境とマインドを整えておくことが大切なんです。

――「考え方を変える」のは難しいことではないのでしょうか?

全然、難しくないと思いますよ。考え方をいきなり大きく変えようと思う必要はなくて、ちょっと変えてみるだけで日常は変わっていくんです。考え方をちょっと変えるために必要なのは、行動をちょっと変えてみること。具体的には、「出会い」ですね。

私が運営するコミュニティのメンバーさんの中にも新しい環境での出会いがきっかけになって、「今までの自分は何だったんだろう」というくらい劇的に人生を変えている人が大勢いますから。「考え方が根本から変わりました」「自分でも驚くくらいリスクを取って挑戦できるようになった」という声が本当に多く聞かれるんです。

――なぜ、出会いによってそこまで変われるのでしょうか。

人間は環境に非常に影響を受ける動物だからです。私自身も、外資系金融という厳しい環境が今の私をつくったと思っています。自分を変えたいなら、意思の力で頑張るのではなく、身を置く場所を変えるのが最短ルートです。そこには年齢の制限もありません。

私たちのコミュニティには10代の高校生から70代まで幅広い年齢層のメンバーさんが集ってくれているのですが、専業主婦歴の長かった60代の女性が、若い仲間と出会って新しい趣味やSNSを覚えて、「仕事もしてみようかな」と人生を変えている例もあります。

環境さえ整えば、誰でもいつからでも人生を切り拓けるんだなと、素敵なお手本をたくさん見せてもらっています。

まずは「自分から」メッセージを送ってみる

――自分を変えるために、どうやって環境を選べばいいのでしょうか?

「同質性の罠」を突破することが大事だと思います。放っておくと、人間はずっと同じような居心地のいい環境にいちゃうんですよ。

私もかつて、気づいたら最初の旦那も金融マン、2回目の結婚で一緒になった旦那も金融マン、妹も金融だし、妹の旦那も金融、友達も全員金融だらけで、めちゃくちゃ同質性の高い環境に身を置いていた時期があったんです。

でも、同質性が高いところにいても新しいエネルギーは生まれないし、新しいアイディアも出てこない。30代のあるとき、「今まで接点のなかった場所に、あえて自分を突っ込んでみよう」と行動を起こしたんです。

――具体的にどういう行動を起こしたんですか?

あえてひと回り近く年下の友達をつくったり、SNSで話題になっているキャバクラ嬢のインフルエンサーに会いに行ったり、それまでの自分なら絶対に交わらなかった世界に突っ込んでいきました。

ゴールドマン時代にも会食やパーティーといった華やかな交流の機会がよくありましたし、実は“異質な世界”と出会うチャンス自体は結構あったんですね。けれど大切なのは、「また会おうよ」と自分からメッセージを送るかどうか。連絡先を交換しても、次に行かない人が多いじゃないですか。あえて自分からDMしてみて、踏み込んでいくと、どんどん世界が広がっていき、ついに「自分で事業をつくる」という生き方に転換するまでになった。そして今の私になりました、というわけです。

――心理的なハードルはなかったのでしょうか。

もちろんありましたよ! 向こうから「おばさん」と思われてバカにされてそうだな……とか勝手に引け目を感じちゃうことも多かったです。でも、自分の世界を広げたいと思ったから、自ら突っ込んでいきました。

私は自力でそれをやりましたが、今はもっと簡単に多様な仲間と出会ってつながれる場所として皆さんにコミュニティを使ってほしいなという気持ちでやっています。ここに来れば、医者も弁護士も金融のプロもいろんな人がいて、その日から友達になれるし、いつでも会える約束ができるし、めちゃめちゃラクですよね。

もう、30代の頃の私が入りたかったです(笑)。

180度変わった、コミュニティへの考え方

――そのコミュニティも、開設5年で1万7000人が参加する日本最大級の規模に。どのような場になっているのでしょうか。

実を言うと、開設した当初は、もうちょっと“上から目線”だったんです。「私が金融経済のことを教えてあげる学校」みたいな場所にするつもりでした。

でも蓋を開けてみたら、初月で3000人も集まって、しかもその顔ぶれを見たら、多彩な分野で活躍するプロフェッショナルな女性たちばかりで。聡明でアクティブな女性たちがこんなに日本にいたんだと分かって、「普通に私のリア友になってほしい!」って感動したんです。

――集まったのは「生徒」ではなく「仲間」だったというわけですね。

おっしゃるとおりです。当初の想定を超えて、魅力的な人たちが集まってくれたので、「私が先生役になって教える」という方針から転換して、もっとフラットな交流の場にしようと決めました。「この人たちを大事にしていこう」と強く感じたことを覚えています。

今、コミュニティの中で起きている活動の中で熱いのは起業家ワークショップ。自分でビジネスを始めたい人同士でアイディアの壁打ちをしたり、一緒に事業を立ち上げるパートナーを探したり。1万7000人の中には、優秀な会計士や税理士も入ってくれているので、起業に必要なプロフェッショナルとのネットワークも完全にまかなえる。すごいことが起きているんです。

メンバー限定カフェでは無添加オーガニック食材にこだわったフードを提供

ただ、ここまで大きな規模に育てることを最初から狙って計画していたかというと決してそうではなくて、メンバーさんの「起業の相談できるイベントをやってほしい」とか「もっと仲良くなるために、オフラインで集まってみたい」といったリクエストに一つひとつ応え続けていたら、自然とグロースしていったという感じですね。

私自身もビジネスパートナーをクラブのメンバーさんから見つけているんですよ。以前はゴールドマン・サックスの後輩女子が一番優秀だと思い込んでいたんですけど、「あれ? メンバーのほうが多様性があって、インスタや動画制作にも詳しい若い子もいるし、ゴールドマンの“おばさん”より良くない?」って気づいちゃったんですよね(笑)。

Agree to disagree

――メンバー同士が活発に議論できる空気をつくるために、河村さんが心がけていることはありますか?

一番大切にしているモットーが、「アグリー to ディスアグリー(Agree to disagree)」、つまり「同意しないことに同意する」ことです。同調圧力を排して、お互いの多様な意見を認め合おうよ、という姿勢です。だからこそ、私に対しても平気でアンチコメントが活発に飛び交ったりしますし、会費を払ってまで叩きにくる「課金アンチ」もいたりします(笑)。

コミュニティに詳しい方によると、お金を払ってまでわざわざ批判をするのは「それだけ愛着を持っていただいている証拠」らしいのですが……、さすがにアンチコメントが1000件くらい集中したときは参っちゃいそうになりました。

――1000件ですか! 向き合うのも相当なエネルギーが必要なのでは?

正直、あまりのフルボッコ(編集部註:全カ(Full)でボコボコに叩きのめすの略)ぶりに参ってしまって、カフェに顔を出すことすら怖くなってしまったときもありました。でも、アンチコメントすべてに目を通して、しっかり対話して、自分の考えを説明したいと思ったんです。
誤解されている部分はきちんと説明して誤解を解き、自分が悪かった点は素直に認めて改善策を示し、でも譲れない部分は「私はこれでいきます」と言い切る。誠実に向き合った結果、離れてしまう人がいたとしても、それはそれで健全な形だと思っています。

――今、ご自身の時間のうち何割くらいをコミュニティ運営に使っている感覚ですか?

えー、めっちゃ使っていますよ。感覚的には1日中(笑)。これは大袈裟ではなくて、最近、自宅にメンバーさんがお泊まりにくる「ホームステイ」の受け入れを私もやっているんです。

――ご自宅にですか?

はい。最近、コミュニティの中で海外ホームステイプログラムというのが走っていて、海外在住のメンバーさんが「日本からこちらに来るときがあれば、どうぞうちに泊まってください」とほかのメンバーさんを受け入れているんです。富裕層の方々なので、プール付きのお手伝いさんも常駐している邸宅ばかりです。「どうせ部屋が余っているので」と無償で提供してくださっているから、みんな大喜びで。

だったら、うちも地方のメンバーさんが東京に出張に来たときのホテル代わりに使ってもらったらいいなと思って、我が家でもホームステイ受け入れを始めました。

事務局からは「頭おかしくなったんですか?」ってドン引きされましたけれど(笑)。でも、みんながやってくれているのに私がやらない理由もないなと思って。実際にやってみると、昨日も初対面の金融女子と弁護士さんが泊まりに来て一緒にシャンパンを開けて楽しく過ごしたんですよ。

私、一人でいるほうが寂しくて疲れるタイプだから、全然苦じゃないんです。

人生は変えられる、と信じられる場所

――通常なら「お金」が発生するサービスが、善意の無償提供で自然と差し出される。新しい「経済圏」と言えそうです。

まさに「経済圏」だと思います。「ここに集まる人たちなら大丈夫」という信頼をベースに、それぞれができることを提供し合う価値交換が生まれています。それも決して自己犠牲的ではなくて、私も含めて皆さん、喜んで提供している感じです。オフ会も200近く立ち上がっていて、全部、私はノータッチ。完全に自走しています。

――運営者として河村さんが担っている役割は何ですか?

私はもう、みんなが喜びそうな企画を考える「プロデューサー業」に徹しています。私自身が表に出て発信するのは毎朝の経済コラムくらいで、ゴールドマン時代の元同僚や知人に国際政治や金融のプロを学校のように連れてきて、上質なレクチャーを提供する“企画側”に回っています。

皆さんが輝ける場所、ここでしか学べないものを得られる場所を育てていくことがすごく楽しいんです。

ちなみに講師役の選定基準は超厳しいですよ。内容はもちろん、発信者の「声」や「滑舌」、清潔感といったビジュアルまで徹底的にこだわります。オンラインでは聞き心地が良くないと、聴いている人がサーッと離脱していくので滑舌も重要です。

見た目もしかりで、話が面白くてもブサイクはダメです(笑)。顔のつくりの美醜という意味ではなく、清潔感を与えるよう小綺麗にメンテナンスしておくことは、メンバーの貴重な時間を奪わないための、最低限のマナーだと思っています。

――「コミュニティを始めてよかったな」と思うのはどんなときですか?

職場でも家庭でもない「サードプレイス」がつくれているなと実感できるときですね。今日インタビューを受けている場所は、2年前に麻布十番にオープンしたメンバー限定のカフェなのですが、同じような拠点が全国に16ヵ所にまで広がっていて。普段はオンラインでつながっている仲間と、リアルに出会える場所として、オフ会のイベントに使ってもらったりしています。

「Holland Village Private Cafe」2号店

ふらりとカフェに立ち寄れば、誰か知り合いがいて「昨日のあの話、聞いた?」と共通の話題で盛り上がれる。まさに「社会人版・学食」みたいな場所になっていると思うんです。

私も時々店舗に立ち寄るんですけど、そこでメンバーさんたちが楽しそうに喋っている顔を見るのが、もう最高に幸せなんです。このコミュニティから新しい価値や挑戦の成果がどんどん生まれていくとうれしいなと思います。

入ってくれた人たちが、「今はサラリーマンだけど、ここで出会った仲間といずれこんな夢を実現したい」とこれからの人生に希望を持てるような場所に。人生は変えられる、と信じられる場所にしていきたいです。

お金があれば、好きな人と結婚できます(笑)

――あらためて、河村さんにとって「お金」とはどのような存在でしょうか。

お金とは、「選択肢を広げるもの」です。私自身も自由に使えるお金があったから離婚もできたし、子どもを留学させることもできた。そして、経済的自立があれば、好きでもないお金持ちと結婚しなくてすむんですよ(笑)。相手の経済力に依存せず、純粋に「この人が好きだ」という感情だけでパートナーを選べる。絶対、そっちのほうが幸せでしょう? 経済的自立は、愛に生きるためのパスポートなんですよ。
特に女性はまだまだ男性と比べて社会で活躍する上での制約が多い現実があると思うので、人生の選択肢を増やす手段として、お金を味方にすることがより重要です。そのために、できるだけ早い時期からマネーリテラシーを高める意識を持つべきだと思います。

――河村さんは稼いだお金を何に使いたいですか? 今、成し遂げたい「野望」を聞かせてください。

もう買いたいものは一通り買ったので、個人の贅沢を満たしたいという欲はもうあまりないですね。今は、コミュニティの福利厚生にお金を使いたいです。将来的には、メンバーさんが入居できるラグジュアリーな老人ホームをつくりたいと思っているんです。

実際にフロリダやアリゾナにあるリタイアメントコミュニティにある施設を見学したこともあって、ミシュランのシェフがいて、スパもレストランもあるような、自分が入っても楽しいと思える施設をつくってみたいなと構想を膨らませています。人を幸せにすることこそが、今の私のお金を使う最大の原動力ですね。

――その「人を幸せにしたい」というエネルギーの源は何でしょうか。

結局、私は「人が好き」なんだと思います。

子どもの頃から自分を売り込んで人と仲良くなるのが大好きで、「自作の名札を胸に貼って自ら『公園デビュー』をしていた」と母から聞いていますし、小学生の頃には陰キャで読書好きだった姉に代わって姉の友達を引き受けて遊んでいましたから(笑)。根っからの“営業マン”なのでしょうね。

ゴールドマンの営業時代も、相手の人生や価値観を聞くのが大好きだったから仕事に夢中になれたのだと思います。相手がどんなに”おっさん”だとしても、「そういう考え方もあるんだ」「この人のこういうところ、超面白い!」と知れるのが好きだったんです。

だから、私は今、めっちゃ楽しいんです。毎日いろんな人に会えて、出会えた人に何をしたら喜んでもらえるか考えて、そのために世界を飛び回る。1日中、考えても飽きないし、疲れ知らずで元気になる。

私は、人を幸せにしたい。まさに天職だと思っています。