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充足率27.9%の武雄アジア大学に資金はあるのか

大学ジャーナリスト
写真:イメージマート

◆学長「4年間は見守って」

4月開学の武雄アジア大学は定員140人のところ、入学者数は39人、充足率27.9%と大幅な定員割れとなることが判明しました。

この惨状に、学長予定者の小長谷有紀氏は市議会全員協議会、並びに報道陣の取材に対して次のように語っています。

26日に開かれた武雄市議会の全員協議会で、旭学園が報告した。学長に就任予定の小長谷(こながや)有紀氏は協議会で「(開学から)4年の間に(定員の)8割を目標としなければならない。せめて4年間は見守っていただきたい」と理解を求めた。

深刻な定員割れとなった原因については「学生募集の取り組みが、まだまだ足りなかったと反省している」と述べ、学生募集の時期が2025年8月の設置認可以降になったことなどを挙げた。

協議会後、小長谷氏は報道陣の取材に「少ないながらも1期生となってくれた方々を上手に育て、教育の質の良さを伝えたい。来年は1学年200人の入学を目標に頑張る」と述べた。

※2026年3月26日毎日新聞配信記事「定員未達の武雄アジア大 市長『誘致進めた私にも責任』佐賀」より

新設大学の学生募集が8月設置認可以降になるのは最初から決まっていた話です。

それでも学生を集める大学はきちんとあるわけで、2024年新設の北海道武蔵女子大学(北海道)、仙台青葉学院大学(宮城県)、愛知医療学院大学(愛知県)はいずれも充足率100%以上となりました。

「学生募集が設置認可以降」の言い訳は学生募集に苦戦した大学の常套句です。

2023年開学の電動モビリティシステム専門職大学(山形県)は定員40人のところ、初年度が3人、充足率7.5%でワースト記録となりました。※1

2年目も2人、そして2024年に募集停止を公表します。※2

同大が2023年開学時に、小長谷氏とほぼ同様のコメントを残しています。

電気自動車(EV)や自動運転システムの開発を学ぶ「電動モビリティシステム専門職大学」が飯豊町に開学し、5日、入学式があった。定員40人に対し、初年度の新入生は3人にとどまった。文部科学省の設置認可が昨年8月末で、同大は「学生募集が遅れ、思うように集まらなかった」としている。

※3

◆4勝11敗のデータを覆せるか

小長谷氏は「4年間は見守って」とのことですが、なかなかに厳しいと言わざるを得ません。

2015年から2025年まで開学した私立大学は44校。うち、初年度の充足率が70%以下となったのは15校あります(2018年2校、2019年1校、2020年5校、2021年3校、2022年1校、2023年3校)。

武雄アジア大学、大幅な定員割れが判明~充足率27.9%の惨敗・復活できるか新設44校データから検証(2026年3月26日記事)

うち、充足率が2025年に100%超となったのは2校。80%台が2校でした。

入学定員充足率は80%台を超えるかどうかが目安の一つです。定員割れとは言え、ぎりぎり経営が可能と言われています。80%未満となると、私学助成金のカットや修学支援制度の対象外となる可能性が出てきます。

70%以下だった新設校がその後、80%以上となったのは4校。11校は70%台または70%以下のままで、うち、2校は募集停止となりました。

まとめると、過去のデータは「4勝11敗」。武雄アジア大学はこのデータを覆せるのでしょうか。

小長谷氏は「来年は200人」とコメントしていますが、初年度で39人しか来ない大学がどうやって4倍もの学生を集めるのか、具体的な方策を示してほしいものです。

小長谷氏は「4年間で8割」ともコメントしています。

定員140人なので、2029年には560人。8割だと448人です。今年入学の39人がそのまま在籍したとして、448人を超えるには、2027年~2029年の3年間、毎年136.3人の入学が必要です。

◆30日までに辞退する可能性も

武雄アジア大学にとって、次の関門となるのが30日の入学辞退締め切りです。39人はあくまでも入学者の最高数であり、辞退者が出た場合、これより減ることになります。

後述しますが、数人程度でも痛い問題になります。

◆4年どころか大幅な赤字で持たない?

小長谷氏は「4年間見守って」とコメントしています。

ただ、入学者の少なさは収入が少ないわけで、果たして運営資金が持つのかどうか、懸念されます。

初年度納付金は121万円、定員140人が入学していれば1億6940万円の収入が見込めました。

しかし、実際は39人で4719万円が学費収入に…はなりません。

武雄アジア大学は一期生特別奨学金として25万円を留学生以外の入学者に支給することを公表しています。留学生は7人なので、32人で800万円の支出です。

武雄アジア大学サイト(2025年12月2日投稿)より。特待生、第一期生特別奨学金、家賃補助、交通費補助などを説明。
武雄アジア大学サイト(2025年12月2日投稿)より。特待生、第一期生特別奨学金、家賃補助、交通費補助などを説明。

一般選抜では授業料全額免除の特待生Sが10人、授業料約65%免除の特待生Aが25人程度の予定でした。

一般選抜の入学者は10人です。仮に特待生Sが2人、特待生Aが3人だったとしたら、合計で381万円、マイナスになります。

さらに家賃補助が10万円(対象2人)、特急券補助が20万円(対象は福岡県5人、長崎県3人)。合計で180万円のマイナスです。

まとめると、学費収入は3358万円しかありません。

しかも、ここから辞退者が出ると、さらに減少し、3人辞退なら2995万円、5人辞退なら2753万円しか収入になりません。

もちろん、辞退者数や特待生・家賃補助・特急券補助の人数などで変動します。

しかし、多く見たとしても、学費収入は3719万円、少なければ2753万円ということになります。

さらに、留学生減免制度もあります。

武雄アジア大学の「学生募集要項 留学生特別選抜」には留学生減免制度の項目があります。

日本語能力試験(JLPT)N2以上合格者、または日本留学試験(EJU) で「日本語」(記述を含む)概ね220点以上取得者、その他それに相当する日本語能力を持つ者に対し、入学金(25万円) を免除

※武雄アジア大学サイトより

日本語能力試験はN3までは比較的楽でN2から難化します。

国立大学や私立大学難関校ではN1を指定するところが多く、九州だと西南学院大学がN1を指定していました。

日本留学試験は日本への留学を希望する外国人向けの試験で日本語は400点満点、日本語・記述が50点満点になります。

日本学生支援機構サイトには各大学の目安があり、国公立大学だと、記述含めて240点から300点超、私立大学も難関校だと300点超です。

記述含めて200点~220点は青森中央学院大学、宇都宮共和大学、四国大学など。

220点は大学の中では下の方になります。ただ、ザル同然というところまで簡単なわけではありません。

武雄アジア大学に話を戻すと、まずまずハードルが高く、それが志願者を抑制した可能性があります。

こちらの留学生減免制度も対象者は少ないことが考えられます。7人中、2人が対象だと25万円×2人で50万円のマイナス。

7人全員が対象だと、25万円×7人で175万円のマイナス。

留学生の減免制度による武雄アジア大学の学費収入は3694万円から2578万円ということになります。

◆経費を考えれば1億円超の赤字か

入学者が少なくても、教員の人件費は変わりません。小規模校とは言え、1年間の支出は数億円は超えるはず。

学費以外の収入があって、光熱費や職員などを切り詰めたとしても、1億円超の赤字は確実です。

武雄アジア大学を運営する学校法人・旭学園の財務がしっかりしていれば、武雄アジア大学への支出も可能でしょう。

が、旭学園は経営する短大、高校、こども園、いずれも定員割れで資金が潤沢とは言えません。

旭学園の財務資料によれば、2024年度の納付金収入は約8億円。2023年度は8.35億円で約3500万円の減少です。

経営状況の分析では次のコメントが。

「貸借対照表を見ると総資産の額は徐々に低下し、資産が縮小しており、結果的には減価償却分の減額を全ては賄えていない」

「貸借対照表の財務比率をみると、運用資産余裕比率が減少している」

「経常収支差額比率は、5.3%のマイナス(全国平均△4.7%)となっている」

※旭学園「令和6年度事業報告書」より

こういう学校法人が大学の赤字、それも億単位の額を出せるのかどうか、疑問に思います。

◆2003年・立志舘大学が似たケース

武雄アジア大学と似ているのが、2003年に募集停止となった立志舘大学(広島県)です。

2000年に広島安芸女子大学経営学部として開学。

学校法人広島女子商学園が1989年に開学した広島女子商業短期大学を4年制に転換しました。学校法人広島女子商学園は1925年開学の広島女子商業高校を擁し、順調に生徒を集めていました。

ところが開学1年目、定員195人のところ、入学者は32人、充足率16.4%と低迷します。

武雄アジア大学と広島安芸女子大学は文系学部、開学1年目の充足率が30%未満の2点、共通しています。

週刊ダイヤモンド記事では、当時の状況を次のようにまとめています。

同大学の初年度納付金は一一〇万円。定員を満たせば「売上高」は二億円強のはずが、三二人で三五二〇万円。最初のつまずきは、かようにインパクトのあるものだった。

一年目の時点で、メインバンクであった広島信用金庫は「これでは再建は無理だ」として閉鎖を求めるが、理事会は「四大化は時代の流れ」とばかりに存続を決定する。大学開学時点では無借金で当座預金を一〇億円持っており、学校の土地があれば借金ができる、そう高を括っていたフシがある。当時、ある理事は「短大でこれだけ儲かるから、四大は二倍儲かる」と語ったともいわれる。

※4

広島安芸女子大学は開設2年目の2001年も38人(充足率19.5%)と低迷します。開設2年目には福島県の専門学校経営者が支援に乗り出し、開設3年目にして共学化、校名を立志舘大学と改称することが決まります。

3年目の2003年、入学者は123人と一気に増えます。ただ、このうち、45人は留学生で、それも授業料を半額にしていました。※5

さらに、新理事長となった専門学校経営者は大学の土地などを担保に融資を受けていたことが判明します。理事長は10月に辞任、支援からも撤退します。経営が行き詰まり、2003年1月に募集停止・廃校とすることを公表。在学生は近隣の呉大学(現・広島文化学園大学)に編入する形になりました。

毎日新聞記事では、破綻した時の記者会見に対し、理事長が、

「開設から2年足らずの間に、運転資金として学園の資産10億円を使ってしまった」

と当時の経営のずさんさを指摘しています。※6

◆旭学園は3.25億円の借金

立志舘大学は運営する学校法人の資金が潤沢でした。それでも、学生が集まらなかったことから2年間で10億円の運転資金を使ってしまいます。

立志舘大学は定員195人、武雄アジア大学は定員140人です。

もちろん、この類似点だけで武雄アジア大学の運営経費が年5億円かかる、とまでは言いません。

それでも、大学に多額の運営経費がかかることは確かでありことを示すのには十分と考えます。

そして、開学1年目の入学者数が少なく、学費収入が数千万円程度、という点も同じです。

一方、武雄アジア大学と立志舘大学が大きく異なるのは、運営資金です。

立志舘大学は傘下の高校の経営が順調であり、無借金、かつ、10億円の運転資金がありました。

武雄アジア大学を運営する旭学園は、経営する短大、高校、こども園、いずれも定員割れとなっています。旭学園の財務資料によれば、借入金残高が佐賀銀行、佐賀共栄銀行の2行から3億2500万円もあります。

1年目から1億円以上の赤字となることが確実な武雄アジア大学に旭学園は運転資金をきちんと出せるのでしょうか。

◆経営状態の公表か撤退が必要

旭学園が武雄アジア大学の経営のために資金を出せるのであれば、無用の疑念を払うためにも早期に公表することが必要です。

逆に資金を出すことができないのであれば、撤退、すなわち、次年度以降の募集停止を公表することが必要です。その場合、今年入学の学生については近隣にある西九州大学などへ受け入れを依頼することになるでしょう。

資金拠出の公表をしない、撤退もしない、というケースも考えられます。その場合、運転資金が行き詰まり、教職員に対する給料未払いやリストラなどが起こり、学生は十分な教育を受けられない事態に陥ることもあり得ます。

過去には、2004年開学の創造学園大学(群馬県)が経営陣の内紛や開学時の虚偽申請、学校債返還トラブルなどから入学者が激減しました。

2012年には、電話料金滞納から一時、電話が不通に。教職員の退職が相次ぎ、購買部のレジ打ちを教授が担当するほど、経営は悪化しました。

結局、2013年に文部科学省が解散命令を出し、同校は募集停止・廃校となります。在籍学生のいる学校法人に対する解散命令は史上初でした。

武雄アジア大学が経営に行き詰った場合、創造学園大学のようなトラブルは起こり得ます。

繰り返しますが、そうならないためにも、早期に運転資金を用意するか、撤退するか、表明すべきではないでしょうか。

◆加筆修正(2026年3月29日11時40分現在)

「◆4年どころか大幅な赤字で持たない?」の部分で留学生減免制度とその減少分について加筆しました。Xでの指摘を受けてのものです。

留学生減免制度については、記事執筆前に把握しており、対象者が少ないことなどから、本稿では記載していませんでした。

ただ、ご指摘をいただいた後、50万円~175万円が他大学ならともかく、武雄アジア大学にとっては厳しい金額であることに変わりなく、加筆した次第です。

Xでご指摘いただいた、梅昆布茶様、ありがとうございました。

◆注釈

※1:初年度入学者数のワースト記録は2024年開学のグローバルBiz専門職大学(神奈川県)も同じく3人でタイ。充足率だとワースト記録はグローバルBiz専門職大学の3.1%で電動モビリティシステム専門職大学は7.5%で2位。

※2:2026年2月に実業家・西和彦氏が開学する「日本先端モビリティ専門職大学」(仮称)に継承されることになった(現在は文部科学省の認可待ち)。

※3:2023年4月6日 朝日新聞 山形版「未来の自動車、学び発進 電動モビリティシステム専門職大、3人入学 飯豊 /山形県」

※4:週刊ダイヤモンド2003年3月8日号「特別レポート ついに出た四年制大学募集停止 立志舘大学迷走に見る経営不在」

※5:読売新聞2003年4月7日「存亡の岐路に立つ大学 立志舘、卒業生も出せずに休校」

※6:毎日新聞2003年1月12日広島地方版「立志舘大休校問題 初年度から定員割れ、ずさん経営で資金難 理事長が謝罪 */広島」

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ありがとうございます。
大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『就活まるごとガイド』(講談社)など累計35冊・68万部。 2026年に『採用のバカヤロー!』を刊行予定。

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