ホルムズ海峡に自衛隊艦船を派遣できるのか 法的な論点と課題は
緊迫のイラン情勢をめぐってトランプ米大統領が日本などを名指しし、ホルムズ海峡への艦船派遣に期待を示す中、日本は19日の日米首脳会談を前に対応の検討を本格化させている。だが、自衛隊派遣の実現にあたってクリアしなければいけないハードルは高い。①憲法を含む国内法上の制約②米国のイラン攻撃に対する法的評価――の論点をもとに、自衛隊派遣をめぐる課題を整理した。
論点① 国内法上の制約
安保法制の「存立危機事態」
第1の論点は、自衛隊の海外派遣をめぐる国内法上の制約だ。日本が取り得る選択肢の一つは、2015年制定の安全保障関連法制の適用だ。「存立危機事態」に認定した場合、集団的自衛権の行使が可能となる。米国など密接な関係の他国が攻撃された際、日本の存立が脅かされ、国民の生命などに明白な危険がある事態を指す。15年の国会審議でも「存立危機事態」の例として、ホルムズ海峡での機雷掃海が挙げられた。
ただ、政府は当時、「国民の生死に関わるような深刻重大な影響が生じるか否かを総合的に評価して判断する」(当時の中谷元・防衛相)との認識を示しており、現状のイラン情勢での認定は難しいとの見方が政府内で強く、実現性は低い。
安保法制の「重要影響事態」
安保法制の中でも「重要影響事態」に認定すると、米軍などに弾薬提供や戦闘機への給油など後方支援活動が可能となる。ただ、「現に戦闘行為が行われている現場」で活動ができない制約がある。米国などからの後方支援へのニーズも踏まえ、必要性を判断するとみられる。
国際平和支援法の「国際平和共同対処事態」
安保関連法の一つ、国際平和支援法では、戦争や紛争に際し「国際平和共同対処事態」の認定でも、自衛隊が地球のどこでも、米軍などを後方支援できる。だが国連決議が必要で、今回の米国のイラン攻撃にはあてはまらない。
論点② 米国のイラン攻撃に対する法的評価
第2の論点は、国際法上の正当性が疑われる米国とイスラエルによるイランへの先制攻撃を、日本としてどう法的に評価するかだ。15年の国会審議で当時の安倍晋三首相は「仮に、ある国家が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず、違法な武力の行使を行うことは国際法上認められない」と指摘。日本が後方支援や武力行使をする場合をめぐって「我が国がそのような国を支援することはない」と述べた。
日本政府はこれまで米国のイラン攻撃への法的評価を避けている。だが、過去の答弁にのっとれば、日本が事態認定をする場合、米国の攻撃が国際法上違法ではないとの認識を示す必要があるとの見方もある。
自衛隊法の「海上警備行動」は
一方、国際法上の評価を避けて自衛隊を派遣する道も考えられる。法的ハードルは低いが、活動には制約が大きい。自衛隊法82条に基づく「海上警備行動」の発令について、小泉進次郎防衛相は16日の参院予算委員会で、一般論として海上における人命、もしくは財産の保護などに特別の必要がある場合に「発令が制度上は可能だ」と述べた。ただ、武器を使用して防護できる対象は日本関係船舶に限られる。
19年には当時の安倍政権が、防衛省設置法に基づく「調査・研究」を法的根拠として、中東海域で航行する日本関係船舶の安全確保のための情報収集のため、海上自衛隊の護衛艦と哨戒機の派遣を閣議決定した。新たに活動範囲にホルムズ海峡を含めることも考えられるが、活動は情報収集目的だけと限定的だ。
イランとの関係悪化の懸念も
日本はイランと伝統的に友好関係を保ってきたが、自衛隊の派遣によるイランとの関係悪化も懸念される。
元防衛事務次官の高橋憲一氏は「タンカー護衛にあたる他国軍艦に対する燃料補給などを重要影響事態法で実施することは可能だが、当該活動が国際社会から求められるかは明確ではない」と指摘。海上警備行動のための「調査・研究」としての護衛艦派遣はすでに行われているが、「護衛するタンカーの船籍の問題や、ホルムズ海峡で活動した場合のイランとの関係などを慎重に検討する必要がある」との見方を示した。
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