中日二軍で壮絶な練習…寮で「死亡説」が流れた“ある選手”「それほど追い詰められているように…」野村克也から絶賛されるまで「前原1人にやられた」
「手首がおかしいです…」落合博満の特訓
過酷な練習は、成長を促した。前原はウエスタン・リーグ3位の打点、5位の本塁打を記録。監督が星野仙一から高木守道に替わった秋季キャンプでは、主砲の落合博満に猛特訓を課せられた。 「カーブマシンに正対し、来た球をずっと打ち続ける練習をしました。バットに当てられないと、自分の体に直撃する。ずっとスイングしていると、練習が終わっても、手からバットが離れないんですよ。一本ずつ指をゆっくり剥がさないといけなかった」 落合は「これで、ようやく練習したと言えるな」と呟いた後、「明日もな」と事もなげに告げた。前原は心の中で「えっ……」と絶句した。キャンプ中、落合道場は毎日1時間半、2000球にも及んだ。 「落合さんは口には出さなかったけど、『おまえのスイングは無駄が多すぎる』と言いたかったのだと思います。バットが遠回りすると、当たらないですからね。毎日続けていると、腱鞘炎になりました」 キャンプ最終日、前原が「手首がおかしいです」と告げると、落合は「じゃあ、やめとけ」とあっさり練習を免除した。その直後、ボソッと囁いた。 「手首が痛いなら、ゴルフできないな」 中日のような人気球団になれば、オフにはゴルフコンペが目白押しとなる。落合の一言で、全ての行事が飛んでしまった。だが、練習はウソをつかなかった。
野村克也「前原1人にやられた」
92年、不動のレギュラー・立浪和義のケガによって、前原にチャンスが巡ってくる。開幕2戦目、「8番・セカンド」で先発に抜擢されると、大洋の岡本透からプロ初ホーマー。立浪復帰後も、不調の宇野勝や種田仁に代わってサードやショートを守った。 「僕は落合さんのような天才打者ではないので、キャッチャーの配球を研究して、いつも山を張っていました。ヤクルトの古田(敦也)さんと広島の達川(光男)さんの時は、よく読みが当たって打てました。悪球打ちなので、どんな打者か把握しづらかったのかもしれません。逆に、大洋の谷繁(元信)とか阪神の山田(勝彦)の配球には苦労しました」 6月24日のヤクルト戦(神宮)では同点2塁打、勝ち越しソロ、2度のファインプレーと大活躍。敵将の野村克也は「前原1人にやられた」と脱帽した。前半戦、セ・リーグ4位の打率.322、7本塁打、28打点と好成績を残すと、故障の落合に代わってオールスターに出場。仙台での第3戦、ロッテの河本育之から2点タイムリーを放ち、優秀選手賞に輝いた。 「運がいいんですよ。落合さんの補充選手をどうするかで、山本浩二監督(広島)はオマリーか前原で迷ったそうです。あの年は亀新フィーバーもあって、阪神の選手が7人も出ていたので、落合さんと同じ中日の僕を選んでくれた。この頃の球宴は2試合でしたが、オリンピックイヤーは3試合という規定があった。いつもより1試合多かったから、チャンスが回ってきたんです」 前原の野球人生は、この日がピークだった。徹底的に内角を攻められた後半戦は打率.191、2本塁打、4打点と落ち込み、規定打席には到達できなかった。
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