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アイドルを卒業した夏葉にめちゃくちゃアプローチされるシャニPの話/Novel by TONO

アイドルを卒業した夏葉にめちゃくちゃアプローチされるシャニPの話

4,744 character(s)9 mins



お題箱で頂いた「シャニPにアプローチしまくる夏葉」の話です。

多分今年最後の投稿です。
来年もP夏書くと思うのでよろしくお願いします!

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夏葉の卒業コンサートから一週間。仕事も一段落した頃に夏葉からドライブをしないかとお誘いのメッセージが来た。提案された日はちょうど俺も休みだった。いや、夏葉のことだからその事を確認してから誘ったのだろう。
家業を継ぐことにした夏葉はこれからもアイドルだった頃と変わらず忙しい日々を送るだろう。だから当たり前だが会う機会は少なくなると思っていた。
打ち上げもあったが二人きりで話す時間はなかった。最後、ではないが思い出話をしたいと思って迷うことなくもちろんと返信した。

そして当日。訪れたのは二人で何度も訪れた砂浜だった。平日のちょっとした穴場である場所だからか人は見当たらない。二人きりだからとテンションが上がって、裸足になり足だけ入ると少し冷たいが気持ちよかった。
出会った頃よりさらに綺麗になった夏葉が子供のように無邪気にはしゃぐ姿に、胸が締め付けられるような気持ちになった。

「ねえプロデューサー、アナタに言いたいことがあるの」
「ん、なんだ?」

海から上がって喉が渇いたからと自販機で買ったコーヒーを飲んでる時だった。出し抜けに夏葉がそう言ったのでなんだろうと視線を向ける。
夏葉は緊張した様子で数回深呼吸したかと思うと、ゆっくりと口を開いた。夏葉らしい、凛とした声で。

「私、有栖川夏葉はプロデューサーのことが好きです。結婚を前提に私と付き合って下さい」




「お疲れ様、プロデューサー」
「うん、夏葉もお疲れ様」
「適当に頼んでおいたわよ。お酒はどうする?」
「ちょっと飲もうかな。夏葉のオススメとかはあるか?」
「そうね...多分プロデューサーはこれが好きだと思うわ」

夏葉におすすめされたワインを注文し周りを見渡す。個性的な絵画や雑貨が飾られている店内はお洒落で温かみがある。夏葉の行きつけだと聞いていたので高級ホテルのレストランのようなものを想像して少し緊張していたが居心地のよい雰囲気でホッと力が抜けた。

「いい雰囲気だな」
「そうでしょう?友達とよく来るのよ。デザートもおすすめよ!」
「へえ、そうなのか。楽しみだな」
「ねえ、プロデューサー」
「ん?」
「好きよ」
「んぐっ!」
「私と付き合って?」
「……うん、気持ちは嬉しいけど夏葉とは付き合えないよ」

にこにこと笑みを浮かべながら告げられた言葉にあの時と同じ返事をする。数秒沈黙が続いた時ちょうどワインが届いたので誤魔化すように一口飲んだ。ちらりと夏葉を見ると特に落ち込んだ様子も無く俺の事を真っ直ぐ見つめている。
帰りの車の中、夏葉はいつもの変わらなかった。だから帰ってからあの告白は夢か、それとも何か聞き間違いでもしたかと思ったのだがそうではないらしい。

「手強いわね」
「手強いというか...夏葉にはもっといい人がいるよ」
「私はアナタがいいの。もう、覚悟してちょうだい!そう簡単に諦めるつもりはないわ!」
「...実は付き合ってる人がいるんだ」
「嘘ね。恋人がいないことは調査済みよ。それにアナタに悪い虫がつかないように私がどれだけ努力したと思ってるのよ」
「...何をしたんだ?」

多分バレるだろうなと思いながらついた嘘に不穏な返事が返ってきた。笑みを浮かべるだけで答えてくれない夏葉にこれ以上聞かない方がいいなとなんとなく思っていると夏葉が注文してくれていた料理が届いた。美味しそうな料理を前に仕事が忙しくてお昼に菓子パンしか食べていないお腹がぐうと鳴った。さっそく鯛のカルパッチョを一切れ食べるとオリーブオイルと鯛の甘みが口に拡がる。

「これ美味しいな!」
「ふふ、そうでしょう?これも食べてみて?」
「ん、...美味い!」
「アナタの口にあってよかったけど随分お腹が空いてたのね。お昼ちゃんと食べてる?」
「...まあ、今日は忙しかったからあんまり食べれなかったけどいつもは食べてるよ」
「コンビニ弁当かしら」
「ああ、あとたまに事務所の子が作ってくれるけ「じゃあ私が作るわ」え、」

いや、確かに夏葉にお弁当を作ってもらったことはよくあったが。さすがに卒業してからも作ってもらうのは申し訳ないし事務所で会わないのにわざわざ渡すのも大変だろう。

「一緒に住めば問題は無いわ」
「んんん...」

...という俺の意見に夏葉は自信たっぷりな様子で答えた。まだ酔ってないのに顔が熱くなって、なんかもう色々過剰摂取してる気分だ。

「あ、お腹がすいてるのよね。どんどん食べていいのよ」
「...ありがとう。でも好きなものばかりだから何から食べるか迷うな」
「ふふ、プロデューサーが好きなそうな料理を選んだのよ」
「え、よく覚えてたな」
「当たり前じゃない。好きな人の好みは知っておきたいもの」

「私もプロデューサーのことよく分かってるのよ」と、得意げに笑う夏葉を見て思わずうっ、と胸が詰まる。ピザもパスタも、美味しいはずなのにそれどころじゃないくらい。

「夏葉と一緒にいるの心臓に悪いな...」
「えっ、それは困るわね...ずっと一緒にいたいから慣れてちょうだい」





仕事帰り、クラクションの音に振り返ると見慣れた車が止まっていた。すぐ誰なのか分かったのでどうしたのだろうと近くに寄ると車に乗せられ夏葉の家まで連れていかれた。そして一緒に食事をして温かいお茶を飲みながら話しているとふいに夏葉がにこにこと嬉しそうにしながら「好きよ」と言った。
何度言われてもなれることは無い。なんなら俺の反応を見るためにからかわれてる気がしてきた。心臓の鼓動がはやくなるのを感じながらじっと夏葉を見つめる。

「...楽しそうだな」
「ええ!ずっと伝えるのを我慢してたのよ?こうして好きって言えるのがとっても楽しいし嬉しいわ!」


...夏葉はそう言ってもこのままでは良くないだろう。夏葉が忙しいのは知っている。俺のためにじゃなくて自分のために大事な時間を使って欲しい。それにこのままだと機会も減らしてしまう。...夏葉にふさわしい人と、出会う機会を。

「もし俺が嫌だって言ったら諦めるのか?」
「そうするかもしれないわ。アナタの嫌なことはしたくないもの。...でも、プロデューサーにそんな言われたら、私...」
「夏葉......」
「...」
「...うん」
「ふふ、プロデューサーは優しいわね」

夏葉は笑いながら近づいて俺の手をそっと握る。久しぶりに夏葉の手に触れた気がして、その手は相変わらず綺麗だった。アイドルを辞めも尚変わらず自分を磨き続ける所も夏葉らしいしやっぱりかっこいいなとぼんやりと見つめながら思った。

「私たちのことを誰よりも考えてくれていて、一緒にいてくれる。ただのパートナーじゃない。...プロデューサーは私にとって唯一の存在よ」
「......」
「好きよ、愛してるわ。だから、私もアナタの唯一の人になりた「っ、夏葉は...!」...」
「ずっと一緒にいたから勘違、い...」

胸の奥でずっと思ってた言葉が溢れ出したが、そこまで言って、砂浜での夏葉の表情を思い出した。それからこうして会う度に優しく笑みを浮かべる姿を。自分に向けられた愛おしそうな視線を。
それを思い出したらそれ以上言えなくて、口を噤んで頭を下げる。

「...いや。ごめん、分かってる。伝わってるよ」
「...ええ」
「でも、夏葉にはもっと良い人がいると思うんだ」
「それ何回言うのよ。もしかして誰かに言われたの?」
「...いやまあ、うん」
「......誰に」
「わ、悪い。名前は分からないんだ」

聞いたことがないほどの冷えた声にぞくりと背中が震えた。
しかしなんとなく、周りからの視線でそう思われてるのだろうなと分かっていた。実際に言われたのは一回だけだが。有栖川家のパーティに参加した時の事だった。夏葉の隣に立つからには恥ずかしくないようにマナーや服装には気をつけたが、トイレから帰る途中ある男性に声をかけられた。値踏みするように全身を見られ居心地の悪さに挨拶だけしてその場を去ろうとしたが夏葉の名前を出されて思わず足を止めた。
どうやらその男性は俺と夏葉が付き合ってると思っていたらしい。驚いて否定してもこちらの話を聞いてくれる様子はなかった。俺が夏葉の隣に立っているのが気に入らないようで、その時に言われたのだ。『夏葉さんの隣にはもっと相応しい人がいるべきだ』と。そのまま捲し立てるように喋ると満足したのか会場に戻って行った。
気にしてないよ。とは言えなくて黙ってしまった俺に夏葉は眉を寄せたまま言った。

「...私の相手は私が決めるし誰かに言われる筋合いはないわ」
「...うん」
「プロデューサーがいいの。アナタ以外と結婚するなんて考えられないわ」
「......」
「それにアナタは魅力的な男性よ。もっと自信を持っていいと思うけど?どれだけ私が見張ってたと思ってるの」
「それ前も言ってたけど本当か?わざわざそんなことしなくても俺なんか狙う人...」
「……まあいいわ。とにかくプロデューサーのことを何も知らない人より私の方が信じられるでしょう?」

自分に向けられる真っ直ぐな瞳と言葉に胸が締め付けられる。

──ずっと一緒にいる。その約束を破るつもりはないしすぐ傍で夏葉を見ていたい。しかしいつかみんな羽ばたいて自分の元から離れていくと思っていた。だから、夏葉に告白されるなんて思ってもいなかったしアイドルと付き合うなんて考えたこともなかった。...でも、

「もう、プロデューサーはどうして欲しいの?」
「...夏葉に幸せになって欲しい」
「プロデューサーが頷いてくれたら私は世界一幸せになるわよ」

...ああ、もう。夏葉に勝てる気がしない。
なんだか急に力が抜けて、思わず笑ってしまった。突然笑い出した俺に夏葉は不思議そうな顔を覗き込むが、繋がれた手に力を篭めると一瞬驚いた後どこか期待するような目で俺を見つめる。
きっとこれからも夏葉に振り回されるのだろう。夏葉のすることに驚かされてドキドキして、笑って。幸せそうな笑みを隣でずっと見られたら幸せだろうなって、そう思って。

──俺は「よろしくお願いします」と、頭を下げた。




「見てちょうだいプロデューサー!」
「ん?これってお揃いのマグカップか?」
「ええ、一目惚れして買ったのよ」
「可愛いな!明日の朝これで一緒に紅茶を飲もうか」
「そうしましょう!ふふ、楽しみだわっ」
「帰りに買ったパンもあるし、朝からいっぱい食べちゃいそうだな」
「...ねえプロデューサー」
「ん?」
「好きよ、本当に」
「俺も夏葉が好きだよ」
「...ぇ」
「...はは、やっぱり夏葉みたいに素直に言うの恥ずかしいな。でも夏葉に好きって言われるとすごい嬉しいんだ。だから俺もちゃんと伝えたいと思ってさ」
「......」
「好きだよ夏葉。...て、あれ」
「...ちょっと今、こっち見ないでちょうだい。いえ、違うのよ。嫌だった訳じゃないの。嬉しかったわ、本当に。でも、ちょっと驚いちゃって...ごめんなさい......ふう、もう大丈夫よ!それにしてもこの部屋暑いわね!」
「...そうかな、そんな真っ赤になるほどは暑くないと思うけど」
「~~っ、プロデューサー!」
「ははっ、...なんか夏葉の気持ちが分かったよ。確かに好きって言えるのって嬉しいな」
「...もう、ずるいわ。私ばっかりプロデューサーに振り回されてるじゃない」
「えっ」
「えっ?」

Comments

  • Eklundh

    解釈一致すぎて一生ついていくレベルです。素晴らしいものをありがとうございます。

    December 25, 2022
  • 社畜

    押せ押せ夏葉強すぎる…P特攻ついてそう… そしてお互いに振り回されてるの好き

    December 17, 2022
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