light
The Works "P「ギャルって……なんだろうな」" includes tags such as "アイドルマスターシャイニーカラーズ", "シャニマス" and more.
P「ギャルって……なんだろうな」/Novel by けいりー

P「ギャルって……なんだろうな」

9,268 character(s)18 mins

自身で今年初となる事務所内越境コメディSSをつらつらと書きました。
【あらすじ】『アイドルから"ギャル"について問われたPが頭を悩ませた結果……』という導入です。
全編、Pの一人称視点になります。

【余談】
リアルが忙しく、前回投稿から1ヶ月以上空いて申し訳ないです。(初手安定の謝罪)
作中で展開する持論は作者個人の解釈であり、公式のキャラ描写とは"似て非なる"ものです。
有体に言えば、キャラ崩壊に当たるかもしれません。苦手な方はご注意ください。(シャニPはスパダリ)
※ノクチル×TSUTAYAコラボから着想を得た結果の怪文書です。

日頃からすき!、いいね!、ブクマをありがとうございます!
作品にコメント等をいただけたら……『GAK』です(Grateful All Kindness!)
細々とXをやってます。一応、避難用でブルスカに同名垢も。
フォローするかはお任せしますが……よければ、過去作のSSを"もう一本"お読みいただけると嬉しいです。

㊗️2024/06/30の[小説] 男性に人気ランキング32位

1
white
horizontal

「ん……『ギャルってなに?』……うーん」

 自席で携帯を眺める俺は、無人の室内で独り言を呟く。送り主から察するに、以前説明した『案件』についての質問のようだ。一瞬、返信内容を考えてみたものの、実際『ギャル』とは何なのか……自身の認識も曖昧で、ついぞ適切な言葉が浮かびやしない。

「……そうだな。『今度打ち合わせしよう』……と」

 即座に既読マークが付く。画面に写ったスタンプが親指を立てていることから、おそらく『了承』という意味だろう。溜息を吐いて、俺は冷めたマグカップの珈琲を一口啜る。検索エンジンに『ギャル 意味』で調べたものの、『英単語から派生した俗語』『若い女性を指す言葉』という漠然とした内容ばかりで……これを説明したとて"当人"には一切伝わらなさそうだ。他にいくつか単語を変えてキーワード検索を試みたものの、結果は言わずもがなだ。
 マグカップを持ち、椅子から腰を浮かせた際、机の上の携帯が光る。視線を落とすとチェインの通知だった。

「おっ……丁度良いかもしれない」

 そんな安易な考えが、後の一悶着に派生するなんて、その時の俺には露知らずで。

~~~~~

 あくる日、事務所内の会議室……もとい、ホワイトボードが備え付けられた、ちっぽけな部屋の隅で俺はノートPCを叩く。時計を確認すると、約束した時刻が徐々に近づきつつあることを知らせてくれた。
 コンコン、とドアのノック音が室内に響く。そっと開いた扉の隙間から覗く顔に、俺は目を丸くしてしまう。

「あれ……咲耶か、お疲れ様」
「お疲れ様……プロデューサー。その顔は……何も聞かされてないのかな?」
「あぁ、少し驚いたよ。でも、ここに来たということは……」
「おそらく、想像の通りさ。今日は他に予定も無くてね。とはいえ、飛び入り参加は許されるのだろうか?」
「勿論さ。少しでも役に立て……られるかどうかの責任は取れないぞ」
「ふふ。それは別に気にしてないさ……っと、当の本人も着いたみたいだよ」

 椅子に腰を下ろした咲耶がドアへ視線を送ると、擦り硝子越しに人影が動く。そっと俺は近づいてドアノブを回した。

「ほわっ……ぷ、プロデューサーさん……お疲れ様です」

 ドアノブを掴んだまま目を白黒する俺に、驚いた様子で廊下に佇む真乃……の隣には、ぼーっと立つ"当人"の姿だ。

「うぃー。お疲れ様でーす」
「透……真乃も呼んだのか?」
「うん。貰ったんだ、グミ。真乃ちゃんから」
「そ、そうか」
「あ……あの、私……もし、お邪魔なら……」
「い、いや……真乃も他に予定が無いなら……」
「んー。なら、おっけーじゃん」
「……う、うん。何をするのか……聞いてないけど」

 おずおずと鞄を持った真乃と、制服の緩んだネクタイを揺らす透が部屋に入る。先に室内で座っていた咲耶の存在に気付いた二人は、その隣の席に腰を下ろした。

「真乃も透に呼ばれたのかい?」
「あっ……は、はい。咲耶さんも……ですか?」
「あぁ。事務所の台所でお菓子を探す透を偶然見掛けてね。手持ちのクッキーを渡したら、この『秘密の催し』の参加権と引き換えられたというワケさ」
「ふふっ。私もついさっき……殆ど同じですね」

 咲耶と真乃は互いにくすっと微笑む。後ろ手にドアを閉めた俺は透に視線を送ると、『他に参加者はいない』という意味合いの"頷き"が返ってきた。真偽は不明だが……そっと俺はドアの内鍵を掛ける。

「よし。それじゃ早速……始めるとしようか」
「うぃーっす」
「え……えっと」
「……ちょっといいかい。具体的に何をするか、私と真乃に教えてくれないかな」

 手を挙げた咲耶が、至極当たり前な疑問を口にした。

「……透、もしかして説明してないのか?」
「あー……うん。忘れてた」
「そうか……えーっと、二人に説明するなら……俺からじゃないほうが」

 俺は部屋の隅の死角となった配信スペースに身を乗り出し、手招きする。こくりと頷いた"二人"は、咲耶・真乃・透が座る場へと姿を現した。

「わーっ、透ちゃんだけじゃないんだー」
「マジ~? お、うちらより多いじゃーん」

 開口一番、甘奈と愛依は三人の姿に目を丸くしていた。そりゃそうだ、二人には透への『プレゼン』としか伝えていない。

「甘奈、愛依。急で悪いが、参加者が増えてさ……頼めるか?」
「うん、甘奈は大丈夫だよー」
「おっけ~、咲耶ちゃんと真乃ちゃんなら……イケるっしょ」
「ふふっ。おねしゃーす」

 透が足をぶらつかせる最中、甘奈と愛依は目の前のホワイトボードをゆっくりと反転させていく。まっさらな面から多種多様な色で書き込まれた文字が三人の目へと飛び込んでいった。

「……これは」
「……ほわっ」
「……おー」

『~甘奈&愛依プレゼンツ~ ギャルJK補完計画<283プロアイドル完全ギャル化マニュアル>座学編』


 咲耶と真乃は食い入るようにホワイトボードを見つめた後、隣に座る透と、近くに立った俺に向かって交互に視線を送っていた。まぁ……何も聞かされずに連れられてきたら、そういう反応になるのも……否めないか。

~~~~~

 ホワイトボード近くの椅子に愛依が着席したと共に、甘奈は「んんっ」と咳ばらいする。

「まず、"283プロ白ギャル代表"の甘奈が説明しまーす。最初のセクション……プロデューサーさん、次のページを……」
「ちょ、ちょっと待ってくれるかい。タイトルからして非常に興味深いアジェンダだけども……一体どういう意味だろう?」

 再度、手を挙げた咲耶は混乱したような口ぶりで眉を顰める。

「あ、咲耶さんと真乃ちゃんは知らないんだよね……えっと」
「甘奈、それは俺から説明するよ。まず経緯だが、透……というかノクチル宛に某案件の依頼を受けててな。昭和~平成のギャルに扮するというコンセプトの仕事で」
「そーそー。で、そもそもなんだっけ……って。ギャル」
「……透からそういう質問があって、俺も説明が難しかったもんだから……甘奈と愛依に協力を頼んだのさ」
「うちと甘奈ちゃんってそーいうトコ、人より詳しめでさっ。透ちゃん用に資料を作れば……今後、別の子とかにも使えるんじゃないかって、プロデューサーが」
「ほわっ……そうだったんですね」
「とはいえ……『補完計画』というのは……?」

 真乃と咲耶は互いに顔を見合わせ、揃って肩を竦める。

「甘奈の勝手な想像になるけど……ギャルって10代の学生の印象が強いと思うの」
「それ、うちも思った~。透ちゃんのノクチル、真乃ちゃんのイルミネとかドンピシャじゃ~ん?」
「あー……ふふっ。そうかも」
「そ、そうなの……かな……?」
「あぁ。そういう需要の元、こういう依頼が届いたと思う。幸い、各ユニットに学生はいるから。こういうマニュアルを作っておけば後々……」
「なるほど。283プロの各ユニット内に『ギャル』に適したアイドルを『用意』する。それは今後の案件需要を『カバー』する為だね。ふふっ……『補完』とはそういう意味で合ってるかい?」

 早速、本質を突いた咲耶の指摘に、俺は即座に頷いた。

「概ね、その通りだ。今回のノクチルのケースを鑑みて、そういった方向性で進めたいと思う。勿論、キャラを変えてくれだとか、身の丈に合わないようなことを強要するつもりは無いよ。あくまでも知識を得た上で、それをどう活かすかは自分たちで考えてみてほしい」
「ふぁー……うぃーっす」

 透は欠伸を交えて、眠たげに眼を擦る。

「それで、前半は甘奈の発表で……後半の担当は愛依ちゃんになりまーす」
「ふふっ、よろしく頼むよ」
「よ、よろしくお願いしますっ」
「おねしゃーす」

 プロジェクターから壁に映し出された資料に、甘奈は手持ちのレーザーポインターを当てていく。

「ここで問題でーす。『ギャル』という言葉の発祥についてだけど……透ちゃん、わかるかな?」
「え……あー……わからん」
「そ、そっか……真乃ちゃんはどうかな?」
「えっと……『GIRL』……英語の略称でしょうか」
「あー、結構惜しいかも。咲耶さんは分かるかな?」
「俗語だね。正確に言うと国内で作られた造語だよ」
「わっ、正解! その通り、『ギャル』という言葉自体は和製英語で……『GIRL』と近い意味ではあるんだけど」
「ふふっ。ちなみに英語圏でも『ギャル』という単語で通じるのさ。ただ、スラングだから注意すべきだけどね」

 咲耶以外、その場の全員が「へー」と関心していく。

「続いては英字表記の『GAL』について。実はある3つの"英単語"の頭文字の略なんでーす。それは一体なんでしょう?」

 咲耶含め、全員が頭を悩ませていた。

「んー……おっけ」
「はい、透ちゃん」
「飛行機の……アレなんだっけ、真乃ちゃん」
「ほわっ……えっと……ドイツ航空?」
「え、ドイツって"D"じゃない?」
「透、ドイツは”G”だよ……だとしても違うだろうけど」
「あはは……ギャルが空飛んだら、甘奈ビックリしちゃうなー……」

 苦笑いを浮かべた甘奈は、全員が口を噤んだ様子を見て、スライドを次のページに送っていく。

「正解は……これでーす」

Greatest Awesome Lady最高に素晴らしい女性

~~~~~

「"最高に素晴らしい女性"か……なるほど、それは……気付かなかった」

 盲点を突かれたとばかり、咲耶は納得したように頷くと、それに隣席の真乃も同調していく。

「ふふっ、素敵な意味があるんですね」
「……へー」
「これは一つの説でしかなくて。そもそも"ギャル"の対象は"女子"にしか表さないから、無理矢理『Lady』を当てはめて――」
「あー……わかったわ、うん」

 おもむろに透は足元の鞄を持ち上げ、ごそごそと中身を漁りだす。取り出した手に握られた物はプラスチック製の容器だった。

「これ」
「透ちゃん、それって……?」
「ふむ。ボトルガムの容器だろうか」
「うん。空っぽだけど……プロデューサーだよね。これって」
「ふふっ。お菓子を探してたもんね。でも……プロデューサーさん……?」

 真乃が疑問の表情を浮かべる中、「あっ」と声を漏らした甘奈は透へと向き直る。

「えっと、ガム……『M』……"メンズ"っていうことかな?」
「おー、それそれ」
「透……ガムを指しているのなら、スペルが違うよ。ガムは『GUM』で……『GAM』じゃないのさ」
「……えー」
「咲耶ちゃん、甘奈から……いいかな?」

 おずおずと甘奈は手を挙げた。 

「透ちゃんの言ってること……答えは間違ってるけど、ちょっぴり合ってる……みたいな」
「「えっ?」」
「えっと……この次のスライドで」

 甘奈の合図に、俺はプロジェクターから投影した資料のスライドを次に送る。写し出された画面に着席した三人は感嘆の声を漏らしていく。


『 G A M 』すらりとした女性の脚

「これも俗語だけど……やっぱりギャルって甘奈的には『美脚』だと思うんだー」
「あー、うん。めっちゃわかる、グー」
「ほわっ……透ちゃん、そんなに見ちゃ……」
「確かに、真乃は良い脚をしているね。美脚と言って差し支えないよ」
「さ、咲耶さんまで……」
「甘奈的には、透ちゃんも咲耶さんも……花丸合格だよー!」

 にっこりと笑みを浮かべた甘奈の表情に、室内の雰囲気が柔らかくなっていく。俺は手元のPCを操作し、甘奈の説明に合わせて順々にスライドを映し出す。ファッション・コスメ・注目トレンド・SNSの運用方法……ありとあらゆる部分に『ギャル的』な注意点が添えられていた。

「着崩しコーデ、盛りメイク、SNS映え……ふむ、目から鱗とは正にこのことだね」
「し、知らないことだらけ……勉強になりますっ……むん」
「あー……すごいね。なんか」
「これでも一部抜粋で、だいぶ端折っててね。もう少し詳しく説明すると……あ」

 室内の時計を見た甘奈は、スライドを眺める三人に慌てた様子で声を掛ける。

「ごめんね、結構時間使っちゃったみたいで。この後の後半部分……愛依ちゃん、お願い出来るかなー?」

 甘奈に声を掛けられた愛依は、掛けた椅子からすくっと立ち上がった。

「おっけ~! こっからは"283プロ黒ギャル代表"のうちが担当するね~」
「おー……いぇー」
「甘奈ちゃんが前半で『外見』周りの説明してたし……うちは、こっちの方向で~」

 愛依はプロジェクターから映し出されたスライドの画面を指差す。

『GAN』&『GAO』

「ふむ。これは……どういう意味だろう」
「ほわっ、えっと……LとMに続いて……NとO……?」
「ふふっ。簡単じゃん、これなら」

 ふーっと息を吐いた透は、椅子に身体を預け、隣席の真乃や咲耶へ瞳を向ける。

「"ガーン"っていって、"がおー"……みたいな」
「透、それは流石に……」
「ふふっ……透ちゃんらしいね」

 振り上げた拳で空を切った直後、顔の横に両手を置き獣のポーズをする透の姿に、愛依は俯いてしまう。

「うわー、大正解! 透ちゃん、ギャルじゃ~ん」
「しゃー。取れたわ、免許」
「うんうん、もう"ギャル"の免許皆伝っしょ~!」
「おー。バイデン、いぇー」

~~~~~

「てなワケで、後半担当のうちからは『ギャル』の内面について発表していくね~! まず、『ギャル』と言えば……咲耶ちゃん的にはどんなイメージだったり~?」
「そう……だね。派手で明るい子……とかだろうか」
「なるほどね~。真乃ちゃんは~?」
「わ、私は……クラスの目立ってる子という印象が……」
「あーね。透ちゃんは~?」
「んー……なんか楽しそう。人生」
「おっけ……全員正解! てか皆ワカってんじゃ~ん」

 ちょいちょい、と愛依の合図を確認して、俺は手元のPCを操作する。壁に映し出したスライドに大きな正三角形の図が表示されていく。

「真乃ちゃんの言ってた『クラスの目立ってる子』って意見、それは咲耶ちゃんの『派手で明るい』の結果みたいなモンだよね。この三角形は学校とかクラスにおける……なんだっけ、えーっと……あ、そうそう『ヒエラルキー』ってやつ」
「真ん中より下の層が多くて、上にいくにつれ少なくなってくのね。学校にも寄るけど、うちのクラスはギャルしかいませーん……ってトコ少ないっしょ?」
「おとなしめ~な子もいれば、めっちゃ派手でノリ良い~子とかいたりすんじゃん。まぁ、でもギャル系の女子って少数派だったりすんだけどさ~」

 納得したような素振りで、こくこくと真乃は頷いていった。

「そ、そうかも……しれません」

 わざと一呼吸置いて、愛依はスライドに向き直ると、三角形の上部に横線が一本引かれていく。

「この三角形の頂上が『クラスの人気者』だとしたら、この線より下は『その他のクラスメイト』になるのね。で、トーケー?的にはこの線を基準にして、下から上の人を好きになりやすい傾向が男女共にあって~」
「へぇ……それは面白いデータだね」
「勿論、線の上下に分かれた人同士とかあるケド……逆って殆ど無いんよね~。ケッコー不思議じゃね?」
「た、確かに……」

 愛依に向かって、咲耶と真乃がしきりに頷く中、PCの画面に向かいあった俺はどこからか視線を感じて……ふっ、と顔を上げると、透が顔を背けたような――

「……質問。好きな人がいない場合は、三角形に」
「あ……うーん。それ、他校とかってイミ?」
「ううん。年上……とか」
「あ、それね~。大学生とか社会人も……全然アリっしょ~!」

 愛依は三角形の頂上付近を指して、三人に向き直る。

「……ギャルになったら、付き合えるかな。そーいうの」
「そりゃもう、ヨユーっしょ。ギャルは無敵だし、ガンガン行って、がおーってさ」
「……っし、なるわ。ギャル」
「そもそも、透は仕事で請けているんじゃなかったかい?」
「あれ……そうだっけ?」
「ふふ、透ちゃん。さっき、プロデューサーさんが説明してくれてたよ」

 んん、と咳払いした愛依からの合図に俺はスライドを次に送っていく。

「これ説明するか、ちょー迷ったんだケド……良い機会だからついでに~」

 壁に映し出されたスライドには、デカデカと目を引くフォントの文字だった。

『ナチュラル"ギャル"はオタクの味方じゃない』

~~~~~

「これは……中々刺激的な内容だね」
「えっと、よく漫画やアニメなんかで取り上げられてるヤツ……『ギャル=オタクの味方』みたいな風潮、アレってさ……ちょっち、違うなーって思ってて」
「……へー」
「『ギャル=誰とでも仲良く出来る』っていうのも、いやいや……んなワケ無いっしょ。美化しすぎだし、リアル見えてないなーって」
「ほ、ほわっ……」
「そもそも、ギャルは普通に考えてイケメンの味方だし……あ、勿論オタク趣味あっても引くことは無いんだけど。でも、普通にギャルだからって見た目で判断すンなってさ。こっちだって仲良くしたい人は選ぶしさ。それにそーゆーので描かれてる男子って普通に見た目良きだし、シュッとしてて清潔感もあるじゃん? つまり"外見良くて趣味が合う"だったらベストなんだけどさ~」
「「「……」」」

 愛依の熱量に三人とも押し黙ってしまい、見かねた俺はそっと口を開く。

「えっと、愛依もその辺で……わかるよ、昨今の風潮は」
「ん……皆に質問なんけど。仮にオタク系の人とプロデューサーが同じ場にいるとするじゃん。両方ともドルオタで、知り合いじゃなかった場合、仲良くしなきゃいけなくなったら、どっち選ぶ~?」
「え、プロデューサーでしょ」
「まぁ……プロデューサー……になるね、うん」
「っ……プロデューサーさん……です」
「おいおい……四人とも」
「ま、そりゃそーよね。なんてったってスカウト組だし~」
「あ、甘奈……スカウトじゃなくて……でも、プロデューサーさん……が良いかな」
「甘奈ちゃん、めっちゃ可愛いし……スカウト入りの雰囲気だから平気っしょ~」

 ほんのり頬を染めた甘奈は、ホッと胸を撫で下ろす。褒められてはいるのだろうが……コメントに困るような、形容し難い複雑な気持ちになってしまう。

「まぁ、その……各々の感想は置いといて。だけど、"ギャル"を特別視しない男もいると思うんだ」
「……えっ?」
「……ん~?」

 一瞬、甘奈と愛依の瞳が曇った……ような気が。

「あ、えーと……つまり、俺は清楚な子とかも……」
「え……好きじゃないってこと? ギャル」

 透の大きな瞳から刺さるような視線……もとい、この場の五人も同様だった。

「なーんだ。なら、いーや」
「……え」
「それならそうと……早く言えば良かったんじゃないかな、プロデューサー?」
「……ん?」
「ほわっ……清楚が好き……だったんですね」
「……いや、あの」
「甘奈も……清楚にキャラ変して……」
「……おーい」
「うちって清楚系いけっかな~……うーん」
「……俺の話を……」

 目の前のアイドル達は互いの顔を見合わせ、眉間に皴を寄せていく。駄目だ、声が届いてない。一体どうすれば――

「いいか、皆。人の良し悪しは外見じゃない。それは『ギャル』も『清楚』も同じさ。むしろ見た目に反した子のほうが……だな。例えば、『顔は良いけど勉強は出来ない』……違うな。『王子様系なのに中身は乙女』……いや、訂正しよう。『スカートは短いのにおとなしい』……すまん、これも忘れてくれ」

 五人の冷ややかな視線を受け、どうにも適切な言葉が浮かばない。

「なんというか……"ギャップ"がある子だよ」
「んー。どういう意味……ギャップ」
「そうだな、ギャップというのは……」

 壁に映し出した資料から、Webの検索エンジンに画面を遷移する。ギャップ……英字表記だと『GAP』か。早速、俺はキーボードを叩いた途端……一気に血の気が引いてしまう。



『ギャル 意味』
『ギャル 見た目』
『ギャル 出会い』
『ギャル スタイル』
『ギャル 口調』
『ギャル 服装』
『ギャル 名前』
『ギャル 制服』
『ギャル 水着』
『ギャル 下着』
…………
………
……

 プロジェクターに映し出される検索履歴……一瞬、室内が静寂に包まれる。

「……おー」
「……おや」
「……ほわっ」
「……わぁ」
「……へぇ~」

「ち、違うんだ。これは資料前の下調べで……ちょっと待てよ、下の方は検索してなんか……」

「いいって、そんな言い訳」
「好きならそうと……正直になるべきだよ」
「ギャル……むんっ」
「甘奈、そのままで良かったんだ~」
「やっば……ギャルってサイキョーっしょ~」

 ニヤニヤと笑みを浮かべる五人を前に、俺は目を背けることしか出来ず、急いでPCを閉じる。

「よし、それじゃ時間もアレだし……今日はこの辺に……」
「え~? まだ"座学"が終わっただけじゃ~ん。『プ ロ デ ュ ー サ ー?』」
「そーそー。あー……次は"実践"……とかだっけ?」
「逃げるなんて、ダメ……ですよ?」
「ふふっ。五人相手は……少しばかり骨が折れるかもしれないね?」
「こんなチャンス、滅多に無いし……やるしかない……よねっ?」

 口々に聞こえる言葉と視線……みるみるうちに五人の目の色は変わっていった。

「『GAP』の意味、プロデューサーならさ。分かる……よね?」

 じりじりと近づく『最高に素晴らしい女性』たち……俺は咄嗟に目を瞑って――

~~~~~

 それ以降、例の『補完計画』の資料が日の目を見ることは無かった。
 仮に、ギャル……『GAL』じゃなくとも、"彼女"たち……283プロのアイドルは全員『最高に素晴らしい女性』だ。
 『GAM』を兼ね備え、『GAN』と詰め寄り、『GAO』と捕食する様も含めて。

 そんな彼女たちは、普段の様子とステージの上の間にも"大きな隔たり"があった。
 もしかすると、そんな"相違"をファンは……いや、俺も……垣間見たいだけだ。
 『GAP』の意味とは、つまりそういうことだろう。

 他の意味……もし、そんな風に思われていたら……いや、まだまだ早いか。
 きっと、それに至るまで、彼女たちを見守る必要があるのだから。


 『Greatest Awesome Producer』最高に素晴らしいプロデューサー

Comments

There is no comment yet
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
Popular illust tags
Popular novel tags