横浜は本当に坂だらけ?QGISで傾斜を可視化してみた!
QGISの機能をわかりやすく紹介!
今回取り上げるのは「傾斜」です。
標高DEMやゾーン統計などの扱い方を、
具体的なストーリー仕立てでお届けします。
プロローグ|ベビーカーと坂道
あなたは新居を探している。横浜市で。
夫婦と小さい子どもの3人暮らしだ。
条件はいくつもある。
保育園、小学校、駅距離、家賃、治安。
そして、地味だけど毎日効いてくる要素が一つ。
坂道。
内見の日、ベビーカーを押して5分歩いただけで分かる。
地図では「駅近」でも、体感はまるで別物だ。
不動産サイトにはこう書いてある。
「閑静な住宅街」
「高台につき眺望良好」
翻訳すると、だいたいこうなる。
坂がきつい。
感覚ではなく、地形で考えたい
問題は、坂の情報が定量化されていないことだ。
坂が「ある」のか
「どれくらい」あるのか
子どもが成長しても通えるのか
これを感覚だけで判断するのは、少し心もとない。
そこでQGISを使って、
横浜市全体の「傾斜」を数値として可視化してみることにした。
今回やること(ざっくり)
やることはシンプル。
DEM(標高データ)から傾斜を作る
100mメッシュごとに平均傾斜を算出
横浜市全体を色分け表示
「どこが平らで、どこがしんどいか」を、
ベビーカー目線で俯瞰する。
QGISの準備|座標系は現実寄りに
QGISを起動し、プロジェクトのCRSを
EPSG:6677(JGD2011 / 平面直角座標系 IX) に設定する。
横浜市で距離や面積を扱うなら、これが一番無難。
「何メートル」を正しく扱えることが重要だ。
横浜市の平面直角座標系「EPSG:6677」で検索し設定
行政区画データで横浜市を切り出す
画面は、「レイヤの再投影(Reproject layer)」 を使うところ
国土数値情報から
神奈川県の行政区域データを取得し、QGISに読み込む。
属性で横浜市を抽出;Extract by attribute(N03_004='横浜市')
区ごとに融合;Dissolve(Dissolve fields = all)
ジオメトリの修復;Fix geometries
CRSの再投影;Reproject layer(Target CRS = 6677)
この辺は、後で泣かないための準備運動。
筆者はQGISを英語モードで使用していますが、
日本語モードでも同様の作業は可能です。
筆者は、QGISを英語モードで使うことをオススメしています。
日本語モードだと、一部機能に制限が生じたり、
バージョンによって表記揺れがあり情報が古くなりがちです。
DEMを取得する|ElevationTile4JP
次に、プラグイン ElevationTile4JP を使って
横浜市全域のDEM(標高値を値として持つラスタ)を取得する。
地理院DEMを範囲指定で持ってこれるので、
「標高データ集め」で消耗しなくて済む。
ここで得られるのは、ただの高さの数字。
だが、坂道の正体はすでにこの中に入っている。
プラグインのインストール方法
目的のプラグインを検索し、右下の Install Plugin からインストール
インストール後のプラグインは、プラグイン名の左チェックボックスに☑️
プラグインの実行
ズームレベル・CRS・作成範囲(レイヤ)を選択して実行
傾斜ラスタを作る|「標高→傾斜」変換
DEM(標高)から Slope(傾斜) を作成する。
これで、
「ここは何度の坂か」がピクセル単位で分かる。
内見では見逃しがちな
微妙なアップダウンが、ここで浮かび上がる。
100mメッシュを作る理由
次に、Japanese Grid Mesh プラグインで
100mメッシュを生成する。
なぜ100mか。
家一軒単位だと細かすぎる
町丁目単位だと粗すぎる
徒歩感覚に一番近いのが100m
「この一帯はどうか」を考えるには、
ちょうどいい粒度だ。
座標系・出力範囲・メッシュサイズを選択して実行
# 見切れているが、メッシュサイズの設定は最下段の100mメッシュを設定しておく
Zonal Statisticsで「平均傾斜」を持たせる
Slopeと100mメッシュを組み合わせて、
Zonal Statistics を実行。
ラスタ:傾斜
統計量:平均値
これで各メッシュに
「この100m四方の平均的なきつさ」
が属性として入る。
坂道が、感想からデータになる瞬間。
(スタイル調整後)
色で一目で分かる地形
最後に地図を調整してみる。
行政区単位でもゾーン統計回してランキング表を追加した。傾斜の順位が一目でわかる。
傾斜が小さい:明るい色
傾斜が大きい:濃い色
派手さは不要。
見る人が一瞬で判断できることが大事。
地図を眺めると、すぐ分かる。
臨海部はほぼ平坦
内陸部は細かく起伏が連続
同じ「区内」でも、地区によって負担は全然違う
横浜市|区別「平均傾斜」ランキング
※値が大きいほど、坂がきつい傾向
🥇 坂がきつい上位グループ
1位 保土ケ谷区5.18°
2位 栄区5.01°
3位 港南区4.90°
4位 戸塚区4.52°
5位 青葉区4.21°
このあたりは
「高台の住宅地」「落ち着いた街並み」と引き換えに、
日常的に脚力を要求される区。
🥈 中位グループ(場所による差が大きい)
6位 旭区 4.14°
7位 南区 3.99°
8位 緑区 3.90°
9位 磯子区 3.63°
エリア選び次第で、
「平坦で楽」も「想像以上にしんどい」も両立するゾーン。
🥉 比較的フラットなグループ
10位 金沢区 2.79°
11位 神奈川区 2.69°
12位 都筑区 2.61°
港北ニュータウン周辺など、
計画的に造成された地形の強さが出てくる。
🟢 かなり平坦なグループ
13位 泉区 1.62°
14位 瀬谷区 1.34°
15位 港北区 1.28°
16位 西区 0.96°
17位 中区 0.64°
18位 鶴見区 0.33°
ベビーカー、自転車、将来の通学。
日常移動の負担が最も小さいのはこのあたり。
この地図から分かること
この図は、
「どこが良い」「どこが悪い」を決めるものではない。
ただ、
毎日ベビーカーを押す場所
子どもが自転車で通る道
将来、親が年を取ったときの動線
そういった生活の重さを、
事前に想像しやすくしてくれる。
不動産情報は嘘をつかないが、
言わないことが多すぎる。
地形は、黙って全部教えてくる。
もう一歩踏み込めば、小学校の学区単位で傾斜のキツさを比較したり、道路単位で勾配を計算することもできる。ぜひ自分の町でお試しください。
出典:
国土数値情報(国土交通省)および基盤地図情報 数値標高モデル(国土地理院)を加工して作成
▼続編
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