「長かった。銃が戻って来たら、また猟に行きたい」。砂川市の要請で2018年、ライフル銃でヒグマを駆除した際、建物に向けて発砲したとの理由で銃の所持許可を取り消された池上治男さん(77)は、判決を前にそう話していた。銃を失ってから7年。最高裁まで争った訴訟は池上さんの勝訴で終結した。
「シカはあっちの茂みからここを通る。この辺にくくりわなを仕掛ければとれる」
雪に覆われた一昨年の12月。池上さんは砂川市内の農園にいた。ピンネシリの山並みを背景にリンゴの果樹園が目の前に広がる。
樹皮がシカに食い荒らされていた。実がなるまで何年もかけて育てたリンゴの木。シカの食害で枯死すると、苦労はすべて水の泡だ。農家の男性は「悔しい。何とかしてくんねえか」と、池上さんに相談していた。
数日後、わなに立派な角の雄ジカがかかった。その数日後も。その数日後も。シカは何頭もかかった。「池上さんがいなければリンゴは廃業だった。助かった」
池上さんは北海道大学水産学部を卒業後、水産会社に就職。捕鯨船に乗りクジラを追ったが、ふるさとの山が恋しくなり、脱サラしてIターンした。学習塾を経営する傍ら、獣害に悩まされる農家の姿をみて人助けがしたいとハンターになった。「農家の収穫は1年に1回だけ。それをシカに食われたらやり切れないだろ」
日の出とともに「パトロール中 北海道鳥獣保護員」のステッカーが貼られた車で見回りに出るのが日課。砂川市、上砂川町、歌志内市、奈井江町。猟友会砂川支部管内の山里が池上さんの庭だ。
毎朝散歩する老人を見つけて…