なぜ危険が見過ごされたのか

風を読む 論説副委員長・川瀬弘至

転覆した移設抗議船の「平和丸」=3月16日午後、沖縄県名護市(大竹直樹撮影)
転覆した移設抗議船の「平和丸」=3月16日午後、沖縄県名護市(大竹直樹撮影)

「ニンガチカジマーイ(2月風まわり)」。沖縄の海で旧暦2月(現在の3月中旬~4月中旬)頃にしばしば起こる、気象状況の急変のことだ。

低気圧の接近などの影響で急に風が強まったり、風向きが変わったりする。穏やかな海が突然波立つので、古くから漁師らに恐れられてきたと、以前に第11管区海上保安本部(那覇)の職員が教えてくれた。

沖縄県名護市辺野古沖で同志社国際高(京都府)の2年生18人が分乗する船2隻が転覆し、女子生徒と船長が死亡する事故が起きた日も、ニンガチカジマーイが発生しやすい状況だったといわれる。当時、沖縄本島北部には波浪注意報が発令されており、海保の船が2隻に直接注意を呼びかけていた。

2隻は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古移設工事に反対する「ヘリ基地反対協議会」が普段は抗議活動に使っている船だった。観光客らを乗せるには不向きな全長約6メートルと約8メートルのプレジャーボートで、海上運送法に基づく事業登録もなされていなかった。

「どうしてそんな脆弱(ぜいじゃく)な船に娘を乗せたのか」

24日に開かれた同志社国際高の保護者説明会で、亡くなった生徒の遺族が涙ぐみながら、こう問いただしたという。

学校側によれば、2隻に分乗した生徒は「平和学習」の一環として、海上から移設工事を見学する予定だった。2隻が抗議船であるとは、事前に保護者らに伝えられていなかった。信じがたいのは、引率の教員が同乗しなかったことだ。安全管理体制が厳しく問われよう。

一方、ニンガチカジマーイの恐れがあるのに船を出航させた背景として、基地反対のためなら多少の危険はいとわないという、沖縄の抗議活動の異様さを指摘しないわけにはいかない。

辺野古沖で行われる抗議活動は相当に危険だ。海保の警備艇が制限区域に入らぬよう繰り返し警告する中、多い日には数十艇のカヌーなどがオイルフェンスを乗り越えて侵入し、警備艇とぶつかって負傷者が出ることも少なくない。

だが、基地反対派には玉城デニー知事の支持者が多く、県はこれまで安全対策を十分に講じていなかった。重大事故につながりかねない危険が、見過ごされてきたのだ。

「平和」の名のもとに尊い命が奪われる。そんな悲劇を、繰り返してはならない。

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