その日、283プロのアイドルたちに激震が走った。
P『明日は10時に駅前集合で。楽しみにしてるよ。』
アイドル全員とプロデューサーと七草はづきが入っている連絡用のグループチャットに、その文章が投下された。しかし5分後にそれは送信取り消しとなり、『すみません、間違えました』と丁寧に一言だけ謝罪の文が送られた。
無論、送信取り消しとなった文章の既読数は26。取り消されるまでの間は誰ひとりとして反応することはなかったが。
プロデューサーが明日休暇を取るということは、全体で共有されているスケジュールで皆把握していたことだった。
誰と間違えたのか。アイドルの中に"その者"がいるのか。皆が皆を疑い、ある者は妬み、ある者は嫉み、ある者は僻み、またある者は恨んだ。
◇
翌日
河川敷にて
めぐる「……プロデューサー、今ごろ彼女といるのかな……?」
真乃「……昨日の『アレ』、だよね?」
灯織「二人も見てたんだ……。少しびっくりしたけど……プロデューサーも大人だし、私たちの知らない側面も当然あるだろうから…。」
めぐる「でもでも! まだ決まったわけじゃないよ! 明日聞きに行ってみようよ!」
灯織「ちょ、直接聞くの!? それはさすがに不躾というか、踏み込みすぎというか……!? そもそも私たちには関係ない話だし……! あっ、いや、関係ないというと嫌な言い方だけど……その……プロデューサーにもプライベートがあるし……。」
真乃「……むんっ!」
めぐる「真乃はやる気あるみたいだね……! じゃあ二人で明日聞きに行こう!」
灯織「ちょっ、真乃、めぐる!? 私の話聞いてた!?」
真乃「……灯織ちゃんっ! 良い報告、期待しててねっ!」
灯織「い、"良い"報告って……!? 二人にとってはどうなるのが"良い"ことなの……?」
めぐる「それは……っ! と、とにかく!! プロデューサーが誰かのモノになるなんてイヤなの! 灯織はイヤじゃないの!?」
灯織「そ、それは……。」
真乃「灯織ちゃん、自分に正直になろうよ……!」
灯織「自分に正直に……?」
真乃「灯織ちゃんは……プロデューサーさんが、自分の知らないところで知らない人と仲良くしてるのを、どう思う……?」
灯織「プロデューサーが……。」
真乃「私は、なんだか胸が苦しくなっちゃうの……。」
灯織「……!」
めぐる「その反応、灯織も同じみたいだね……!」
灯織「……この胸の痛み……。そう、なのかな……。」
めぐる「……明日、灯織も行く?」
真乃「灯織ちゃん……!」
灯織「真乃……めぐる……。 ……うん。はっきりさせよう。私の……この気持ちも……!」
◇
283プロ事務所にて
三峰「……。」
霧子「……。」
摩美々「……。」
ガチャ
恋鐘「おー、みんな揃っとるね〜!」
咲耶「おや、どうしたんだい? 三人とも元気が無いじゃないか。」
摩美々「……恋鐘と咲耶も見たでしょー、昨日のアレ。」
咲耶「昨日の……アレ? ……あぁ、プロデューサーのメッセージのことだね!」
恋鐘「あ〜、あれか〜! プロデューサー、今ごろ誰かと会っとるんやろかね〜?」
咲耶「……多分、友人とかと会うんじゃないかな。」
霧子「……本当にお友達……さん、なのかな……?」
咲耶「……フッ、考えてもみるんだ。プロデューサーは毎日朝は早くに、夜は遅くまで働いているんだ。『彼女』に類するような深い関係になる人と、出会うことすら難しいはずだよ。」
摩美々「……そりゃあ、"外部"との接触はほとんどないだろうケド……"内部"でないとは限んないんじゃないの〜……?」
咲耶「"内部"……つまり、アイドルの中にプロデューサーとデキてる娘がいると?」
摩美々「……むしろそっちのほうが可能性としては高いというか〜……。」
三峰「……えっと〜、みんな何の話してるの? プロデューサー? 彼女? 昨日のプロデューサーの送信取り消しってそんなヤバい内容だったの!?」
恋鐘「結華、見とらんかったと〜?」
三峰「いや〜、気づかなかったね〜! おもしろそうな話してるなー、ってずっと聞いてたけどさ。まったくPたんも隅に置けないね〜!」
摩美々「……ま、三峰ではないかな〜。そのカンジだとぉ。」
咲耶「……結華はたまに可哀想な眼をする時があるよ。今にも泣きそうな、哀しみと怒りが奥に潜む、そんな眼をする時が。……それが今だ。」
三峰「聞こえてるんですけど! そこの二人!!」
霧子「結華ちゃん……嘘が下手だね……。」
三峰「きりりんも三峰を哀れんでる!?」
恋鐘「はいはい! もう喧嘩はやめるとね!」
摩美々「……なーんか恋鐘余裕ありげじゃなーい?」
咲耶「まさか……恋鐘なのかい!?」
恋鐘「ふぇ!? 何のことばい!?」
三峰「こがたん……!? ……おっぱいなのか!? このおっぱいでオトしたんかぁー!?」
恋鐘「なっ、なんしよっと!? こら、結華ー!!」
霧子「恋鐘ちゃんも……嘘つくの下手だから……この反応だと、違うね。」
摩美々「……ま、明日本人に聞けばわかるでしょ〜。」
咲耶「それが一番早そうだ。」
◇
有栖川夏葉宅にて
果穂「わーカトレアー! あははっ!」
樹里「……でもよ、わざわざ夏葉ん家でミーティングしなくても良かったんじゃねーか?」
夏葉「……仕事の話はここまで。本題はここからよ。そのために今日は私の家に来てもらったの。」
樹里「本題? 本題は仕事の打ち合わせじゃねーのか?」
智代子「『例のアレ』だね……! 果穂がカトレアと遊んでるうちに話し合っちゃおう……ってコトだね!」
凛世「くっ……!」
樹里「ど、どうした凛世!」
凛世「……いえ……お気になさらず……!」
樹里「お、おう……。大丈夫ならいんだけどよ……?」
夏葉「……樹里も見たはずよ。先日のプロデューサーのメッセージを。」
樹里「へ? あ、あぁ……見たには見たけどよ。……まさか、その話でこんなんになってんのか?」
智代子「『こんなん』って、樹里ちゃん!? 凛世ちゃんがこんなにも苦しそうなんだよ!?」
凛世「がはっ!(吐血)……はぁ、はぁ……! 樹里さん……事はご想像している以上に……深刻なのでございます……!」
夏葉「そうよ樹里! もしプロデューサーに意中の相手がいたとしたら、凛世の……いえ、ひいては放クラのプロデュースに影響が出かねないわ……!」
樹里「……いーだろ別に……。プロデューサーだって大人なんだぜ? カノジョのひとりふたり、居てもおかしくはねーと思うけど。」
凛世「ひとり……ふたり……? 凛世にも可能性が……!?」
智代子「いやいや! 凛世ちゃんそれでいいの!?」
凛世「最期に……凛世の隣にいてくだされば……!」
夏葉「その考えには概ね賛同だけど……やっぱり真偽を確かめるべきだと思わない?」
智代子「二人とも思考がラオウすぎるよ……!」
樹里「ま、本人に聞くのがはえーよな。」
果穂「みなさん! なんのお話ですか!?」
夏葉「……なんでもないのよ、果穂。ちょっとプロデューサーに相談があるっていう話。明日みんなで聞きに行きましょ?」
果穂「……? お仕事の相談ですか……?」
凛世「……プロデューサーさまの……恋なk
智代子「わあぁー! お仕事! お仕事の相談だよー!!」
果穂「そうなん……ですか。……はいっ! わかりました!」
樹里「……別に誤魔化す必要もねーと思うけど……。ま、そんな大事な話じゃねーし、張り切んなくていいからな、果穂。」
果穂「わかりました……?」
◇
283プロ寮 桑山千雪の部屋にて
甜花「zzz……。」
甘奈「……千雪さんも見たってことは……。」
千雪「やっぱり見間違いじゃなかったのね……。」
甘奈「……。」
千雪「……。」
甘奈「ち、千雪さんは……どう思う……?」
千雪「『どう』って……あれは……。」
甘奈「"そう"……なのかな……。」
千雪「……きっと、お仕事での付き合いとか! そういうのよ、多分!」
甘奈「で、でも、そういうのにしては早い時間だと思うし……。文体も、目下の人に対するような、軽い感じだったよ……?」
千雪「じゃあ……他にどういう可能性があるって言うの……?」
甘奈「それは……やっぱり……。」
千雪「ありえない、それはありえないわよ……甘奈ちゃん。」
甘奈「ど、どうして……?」
千雪「私ね、仕事帰りのプロデューサーさんと何度か呑みに行ったんだけど、お酒が入っても仕事の話しかしないの。それでも、何回か恋愛の話題になったこともあったけど……『今は付き合うとかは無いかな〜』とか言ってたし……。」
甘奈「……千雪さん、それどういうこと?」
千雪「だから、仕事が忙しくてそんな暇無いってことでしょうね。」
甘奈「違うよ! なんでプロデューサーさんと『何度か呑みに行』ってるの!? ずるいよ!!」
千雪「……甘奈ちゃん、落ち着いて。今はそんな話をしてる場合じゃ……
甘奈「してる場合だよ! 甘奈にとってはそれも『プロデューサーさんに集る女の話』の内のひとつだよ!」
千雪「『集る』だなんて、プロデューサーさんは甘奈ちゃんのものではないでしょ? それに『ずるく』はないわよ? プロデューサーさんを呑みに誘う権利は誰にでもあって、その権利を甘奈ちゃんが使ってないだけなんだから。自分の落ち度を私になすりつけないでちょうだい?」
甘奈「ぐっ……! あ、甘奈、未成年だもん!」
千雪「あら、それは残念〜♪ それじゃあ、プロデューサーさんの夜の予定は、その分私が埋めてあげるからね♪」
甘奈「ず、ずるいずるい! 性悪すぎるよ!!」
千雪「……甘奈ちゃんは、自分ができない理由を他所のせいにしてるけど、その前にやれるだけやったらどう?」
甘奈「ど、どういうこと……!?」
千雪「夜に誘えないなら昼に、平日がダメなら休日に、お酒が呑めないならスイーツ店に。とにかく、弾を撃たなきゃ当たるものも当たらないわよ? 恋は戦場なの……こと283プロにおいてはね。引き金が引けないなんて、論外なのよ。」
甘奈「ぐっ、うぅ……!」
千雪「とにかく、本題に戻るけど。プロデューサーさんが恋愛なんて、本当にありえないと思うわ。私、先週も一緒に呑みに行ったけど、少なくともそんなそぶりは見せなかったし。彼女がいるのに他の女性と呑みに行くような性格でもないでしょ?」
甘奈「そうだけど……ん? いま先週って言った?」
千雪「はぁ〜、もういいでしょ……。」
甘奈「ねぇ!! めっちゃ最近じゃん!!」
千雪「……とにかく、私直接聞いてみるわね。それでいいでしょ。はい、この話おしまい♪」
甘奈「ちょっと!!」
甜花「zzz……。フガッ……! ニヘヘ……zzz……。」
◇
283プロ事務所 レッスン室にて
「「1、2、3、4! 5、6、7、8!」」
冬優子「ふぅ、一旦休憩!」
愛依「は〜〜! あっつ〜〜!!」
あさひ「……う〜ん……。」
愛依「どったの? あさひちゃん。」
あさひ「なんか冬優子ちゃん調子悪くないっすか?」
冬優子「……。」
愛依「え〜? いつも通りだったっしょ? ね、冬優子ちゃん?」
冬優子「……そうよ、いつも通りだったでしょ? はー、水分が沁みるわー(棒)。」ゴクゴク
あさひ「昨日のプロデューサーさんのことっすか?」
冬優子「ぶふっ!」
愛依「ちょっ! 冬優子ちゃん!? な、なにか拭くもの拭くもの……!」
あさひ「お、アタリっぽいっすね!」
冬優子「なっ、ばっ! ちょっ、あさっ……!」
愛依「冬優子ちゃん、ちょい落ち着いて! ほら、上のジャージ脱いで〜!」
冬優子「くっ……!」ヌギヌギ
あさひ「それにしても動揺しすぎじゃないっすか? それに、そんなに気になるようなことなんすか? 『アレ』。」
冬優子「いやっ、別に『アレ』のせいで調子悪いわけじゃ……! ていうか、気にしてもないし! なんでふゆがあいつのことで……!」
愛依「どうどう。冬優子ちゃん、落ち着いて落ち着いて〜!」
冬優子「というか、あさひは『アレ』がどういう意味なのかわかってんの!?」
あさひ「え? 友だちと遊ぶ約束じゃないんすか? 冬優子ちゃん、プロデューサーさんのこと好きっすよね? だから、遊びに誘われなくてモヤモヤしてたんすよね?」
冬優子「ん、んん〜……っ! なんか色々とツッコミたいけど……まず第一に! ふゆはあいつのこと好きなわけではない! 気に入ってるだけ!」
愛依「またまた〜!」
あさひ「それは誤魔化すにも無理があるっす。」
冬優子「うっさい! そして第二に!! 『アレ』の相手は"友だち"なんて浅い関係のものではない! はずよ!」
愛依「え〜!? そうなの!?」
あさひ「じゃあどんな関係なんすか?」
冬優子「大人の関係……よ。多分ね……。」
愛依「大人の?」
あさひ「関係……ってなんすか?」
冬優子「あんたたちが知らなくてもいいことまでする関係よ……。なんにせよ、あいつにとってはめちゃくちゃ貴重なはずの休日を、わざわざ一緒に出かけるために使うなんて、相当親密な間柄に決まってるわ!」
愛依「たしかに? そう言われれば? そうかも?」
あさひ「案外、休日でも仕事してたり……しないっすかね?」
冬優子「それもあり得なくはないわ。でも、あいつが誤爆したのはメッセージアプリよ? ふつう、仕事だったらメールでやり取りするでしょ?」
あさひ「それもそうっすね……。じゃ、カノジョさんで確定っすね!」
冬優子「ぐはっ!!」
愛依「ふ、冬優子ちゃん!?」
冬優子「だ、大丈夫……。自分で論理を展開しておきながら、逃れようのない事実に絶望しただけよ……!」
あさひ「どんな人なんすかね! プロデューサーさんのカノジョさん!」
冬優子「まだ! まだ……決まったわけじゃないから……!!」
愛依「じゃあさ、明日聞きに行こうよ〜! うちも気になる〜! プロデューサーのカノジョ〜!」
冬優子「彼女と決まったわけじゃないから! あくまで、『アレ』がなんだったのか、真相を聞きにいくの! 仮に彼女とのことだったとしても、彼女の詳細は聞きたくないからー!!」
◇
浅倉透の部屋にて
透「解析班ー。どうー?」
円香「……とくになにもない。そもそもSNSにあるわけない。あの人の個人的な情報なんて。」
透「えー。じゃあもう聞くしかないかー。プロデューサーに。」
円香「……正気? ……聞くならひとりで行ってきて。」
透「え、メッセージ送ればよくない? 直接会わなくても。」
円香「……文章じゃ嘘がわからない。あの人、顔に出やすいから。直接聞いたほうが確実。」
透「……なるほど?」
ガチャ
雛菜「お菓子買ってきたよ〜!」
小糸「ひ、雛菜ちゃん! 先に手洗いに行かなきゃ……!」
透「おー。ごくろうー、雛菜隊員、小糸隊員。」
円香「……あ。」
透「え。なんか見つかった? 樋口隊長。」
円香「……勝手に隊長にしないで。てゆうか、班長じゃない?」
透「あ、そっか。じゃあ雛菜班員と小糸班員だ。」
雛菜「へ〜? はんいん〜?」
小糸「そ、それで、どうしたの? 円香ちゃん……!」
円香「……これ。『283プロ プロデューサー熱愛報道』……。」
透「!」ガタッ
雛菜「……相手は〜?」
円香「……『相手は』……『同事務所、事務員の女性か』。」
小糸「は、はづきさん……!?」
透「……はづきさん……? ……それ、いつの?」
円香「……ん、日付け……20××年12月……。」
雛菜「な〜んだ! 結構前だね〜!」
透「ふふ、やっぱりか。"あの時"のだ。」
小糸「そ、そういえばあったね……! そんなことも……!」
円香「でも……
透「え?」
円香「……でも、今回も誤解とは限らない。」
雛菜「へ〜? 昨日の『アレ』の相手ってはづきさんなの〜?」
円香「……わからないけど、可能性はゼロじゃない。」
小糸「で、でも! はづきさんは今日事務所で仕事してるハズだよ……!」
雛菜「う〜ん、じゃあ別のひとかもね〜。」
透「……やっぱり明日直接聞きに行こう。」
小糸「ちょ、直接!? め、メッセージとかじゃ……!」
透「嘘が顔に出やすいから。プロデューサーは。メッセージより確実なんだよ、小糸ちゃん。」
円香「……。」
雛菜「やは〜! 透先輩、プロデューサーのことよく見てる〜!」
透「ふふ。」ドヤァ
円香「……じゃ、頑張って。三人とも。」
小糸「ま、円香ちゃんも一緒に行こうよ……!」
円香「……別に興味ない。」
透「樋口も行こうよ。ホントは気になるんでしょ? 『よく見てる』んだし。」
円香「……うるさい。」
雛菜「え〜? 行こうよ〜円香先輩〜! "班長"なんだから〜!」
円香「……。」スマホポチポチ
雛菜「ま〜ど〜か〜せ〜ん〜ぱ〜い〜!」
円香「ちょっと……服引っ張らないで……!」
スマホ ポロッ
円香「あっ……!?」
小糸「あ……! だ、大丈夫……!?」ヒョイッ
円香「かっ、返しt
小糸「あっ……え……?」
透「ん、どうしたの小糸ちゃん。……え。」
雛菜「ん〜? ……わぁ〜ぉ♡」
小糸「ま、円香ちゃん……この壁紙は……?」
円香「っ……!」
雛菜「プロデューサーだ〜!」
透「……ツーショットなんて撮ってたんだ。珍しいね。樋口。」
円香「それは……あの人が無理矢理……。」
透「プロデューサーが"無理矢理"撮ったのを、なんで壁紙に設定してるの? イヤなんじゃないの?」
円香「……っ。」
透「……ふーん。そうゆーことか。……小糸ちゃん、雛菜、明日樋口も行くって。」
小糸「え……う、うん……!」
雛菜「りょーかーい〜!」
円香「ちょっと……!」
透「どうせプロデューサーに聞く気だったんでしょ。私たちがいない時にさ。」
円香「っ……はぁ。わかった、行くから。」
透「……うん。じゃ、そうゆーことで。」
◇
283プロ事務所 倉庫にて
美琴「ワン……ツー……スリー……フォー……」タンタンタン、タンッ
ガチャ
にちか「し、失礼しまーす……!」
美琴「ファイブ……シックス……セブン……」タンタンタン
にちか「あっ……。……!」
美琴「エイト。」タンッ
美琴「……ふぅ……。」
にちか「…………あの……!」
美琴「ん、あぁ。にちかちゃん、おはよう。」
にちか「おはようございます……! すみません、黙ってみちゃってました……!」
美琴「ごめんね、うるさかった? レッスン室、いま使われてて……。」
にちか「い、いえ! うるさくなんてないです!」
美琴「そう……。それなら良いんだけど。」
にちか「でも……。」
美琴「……?」
にちか「あっ、いえ! なんでもないです!」
美琴「……そう言われると気になるけど。」
にちか「あ……いや、その……! 美琴さん、少し元気がないカンジですか……?」
美琴「!」
にちか「あっ! えっと……! なんか動きがいつもより迷いがあったかな〜……なんて……! すみません、何様なんだってカンジですよね〜……!」
美琴「……ううん。すごいね、にちかちゃん。」
にちか「え?」
美琴「うん、そうなの。ちょっとプロデューサーのことで……ね。」
にちか「プロデューサーさん……ですか?」
美琴「うん……。昨日のメッセージ、にちかちゃんは見た?」
にちか「あ、あ〜! 見ました見ました! なんか彼女とのやり取りみたいなの! 気持ち悪くないですか、あれ。ちゃんと送信する前に相手を確認しろって思いますし。もはや、わざとなんじゃないですかね? 彼女持ちアピールみたいな? うわ〜、そう考えたら鳥肌立ってきますね! あんなイタいひと好きになるなんて、よっぽどの変態ですよね!!」
美琴「……私って、変態なのかな。」
にちか「……え?」
美琴「プロデューサーを好きになる人は変態って……。」
にちか「……え、えぇぇぇぇ!!??」
美琴「?」
にちか「い、いや! いやいやいや! いや! 美琴さん!?」
美琴「どうしたの?」
にちか「み、美琴さんって……えぇ!? "そう"なんですか!!?」
美琴「『そう』……って?」
にちか「美琴さんって、プロデューサーさんのこと……!?」
美琴「え……うん。好きだよ?」
にちか「いやいやいやいや! ……いやいや! ありえないですって!! 美琴さんみたいな完全無欠の美女が! あんなオジさんみたいな人となんて!!」
美琴「……にちかちゃん。私は完全無欠なんかじゃないし、プロデューサーの年齢は私とそう変わらないよ。」
にちか「いや、年齢でいうとそうでしょうけど! 中身の方ですよ!」
美琴「……あんまり、他人の陰口を言うひとは好きじゃないかな。」
にちか「……へ?」
美琴「じゃ、私帰るね。……明日プロデューサーに聞いてみようかな……。」
にちか「あ、あの……!」
ガチャ
バタン
にちか「……うぅ……うぁ〜〜〜……あぁ、もう! 全部プロデューサーさんのせいだよぉ……!」
◇
さらに翌日
事務所にて
ガチャ
P「おはようございます……って、うぉっ!? み、みんな……揃って随分と早いな。」
真乃「プロデューサーさん!」
摩美々「一昨日の取り消したメッセージについて〜。」
夏葉「詳しく聞かせてもらうわよ!」
千雪「あのメッセージのお相手は……
冬優子「一体どこのどい…どなたなんですか〜?」
P「お、一昨日のメッセージ……? あ、あれか。」
透「はづきさんとか?」
P「え? なんではづきさんの名前が出てくるんだ?」
美琴「彼女……とか?」
一同 ゴクリ……
P「彼女? あ〜、いや、彼女ではないぞ。」
一同 ホッ……
P「幼馴染だよ。最近こっちに引っ越してきたらしくて。」
めぐる「……幼馴染……? それって……
咲耶「……まさか、女性ではない……だろうね?」
P「え、女性だけど。」
凛世「……! そ、その方は……どのようなお方で……?」
P「どのような……うーん。まぁ、しばらく会って無かったけど、久しぶりに会ったら綺麗になってたな〜。大和撫子……ってほど清楚な性格じゃないが、見た目だけで言えばそれだな。そうそう、凛世みたいに着物が似合いそうな感じだよ。」
凛世「……ギリッ……! 左様……で……ございます……か……!」
甘奈「そ、その人って結婚してたりは……?」
P「いや? してないぞ。『仕事が彼氏』みたいなこと言ってたな。」
愛依「へ〜! プロデューサーと似てんじゃん〜?」
P「ははっ、まぁそうかもな。似たもの同士、気が合うのかもな。」
雛菜「こっちに引っ越してきた〜ってことは〜、お家もプロデューサーと近いの〜?」
P「あぁ、そうそう。一昨日メッセージ送った時点では知らなかったんだが、どうやら俺と同じマンションで、しかも隣の部屋に越してきたらしいんだ。昨日、駅に行こうとした時にマンションのエレベーターで会ってさ。」
にちか「……偶然にもほどがあるでしょー……。それってもはや……
P「『運命』だよなー、ほんとに。いや、腐れ縁ってやつか?」
一同「…………。」
P「な、なんだ? みんなどうした……?」
灯織「まだ大丈夫……。一線を越えなきゃ、まだ……。」ボソボソ
三峰「殺るしかない……か? いや、でも……。」ボソボソ
千雪「拉致……監禁……うーん、なんとかして寮に閉じ込めちゃったほうが早いか……。」ボソボソ
冬優子「クソっ……ポッと出のポ野郎が……! 条件整いすぎでしょ……! 既成事実でも作らないと……。」ボソボソ
透「幼馴染……? 私のほうが先だよね……? そうに決まってる……。私のほうが若いし、私のほうがかわいい、でしょ? ……そうだよね、プロデューサー……。」ボソボソ
美琴「……うん、負ける要素にはなり得ない。大丈夫だね……。」ボソボソ
P「……な、なんなんだ……?」
プロデューサーの誤爆が招いた波乱。のちに、ある者は二人の仲違いを、ある者は"幼馴染"への陰湿な嫌がらせを、またある者はプロデューサーを誘惑しようとする。
はたして、プロデューサーとその幼馴染の運命やいかに。
結華が擦れまくってて笑う