事件直後の「事件解説」を、専門家を称する人がしていても真に受けるべきではない理由
ポケモンセンターメガトーキョーの従業員が、ストーカー行為を繰り返していた元交際相手に刺殺される事件が起きた。衝撃的な事件であり、事件直後からSNS上で様々な言説が飛び交っている。
最近は辺野古での船舶事故や自衛官の大使館侵入テロなど、衝撃を受ける事件が立て続けに起きている。その流れで様々な言説が流布されているし、これからも流れるだろう。それに先回りするかたちで、犯罪心理学の専門家から注意喚起を行いたい。事件が起きたとき、即座に流通する「事件解説」を真に受けるべきではない。
なぜ「事件解説」が的外れになるのか
事件直後に流通する「事件解説」は、その多くが続報によって的外れだったことが明らかになる。なぜそうなってしまうのかと言うと、犯罪報道からわかることなどほとんどないからだ。
理由は2つある。第一に、そもそも事件直後は明らかになっていないことが多すぎる。かつて安倍晋三が暗殺されたとき、私は少なくとも政治的動機が目的だと思った。だが蓋を開けてみれば、家族を崩壊させたカルトの広告塔だったという私怨に近いものだった (もっとも、それが政治的癒着だったので政治的動機がないとも言い切れないが)。事件直後というのは、容疑者の口から語られる動機すら不足している。このありさまで解説などできるはずもない。
第二に、犯罪報道によって得られる情報には偏りがあるからだ。報道にのる情報は、警察がマスコミに明かせると考えたもの、あるいは明かしたいと思ったものに過ぎない。これには捜査上やむを得ない面と、明らかに警察に都合のいい報道をしてほしい欲望がある。いずれにせよ、警察が明かしていない情報にこそ重要なものがあるかもしれないのに、そこが欠けている状態で解説などやはりできるはずもない。
専門家を称していても信用すべきではない
リテラシーがある人は、いやいや、流石にガレソもへもへみたいな奴の言うことなんか信用しないよと応じるかもしれない。だが、解説をしているアカウントが専門家を名乗っているように見えても、やはり事件直後の解説は信ずるべきではない。これも理由が2つある。
第一に、犯罪の専門家といっても色々いて、多くが「犯罪心理」のような動機や事件の背景を解説できる専門家ではないということだ。元刑事、と聞けば犯罪の専門家のように見えるが、彼らはあくまで犯罪捜査の専門家に過ぎない。元刑事の著書を開くと、犯罪心理に関してはかなり出鱈目を書いているという場合も少なくない。某Vtuberは元々矯正分野で勤めていたらしいが、だとすれば彼はあくまで矯正の専門家であって犯罪の原因を云々できる専門家と言えるかは微妙だ。
なお、これは逆もしかりで、私には犯罪捜査や法律について云々するほどの専門性はない。だからしていない。
2つ目の理由は、上述のように事件直後に解説など到底できないはずなのにしてしまうこと自体が、彼らの問題を露呈しているからだ。専門性の低さゆえに解説できないことに気づけないか、専門性を凌駕するほどの自己顕示欲なのか……いずれにせよ碌なものではない。患者を診察せずに病名を診断する医者のようなもので、そういう人物はいくら医師免許を持っていても信用に値しない。
なお、この記事のサムネに使った田宮榮一氏は事件についてコメントを求められるたび、極めて漠然とした回答をしたことで有名である。ニュースをとしては困ってしまうような回答だが、己の専門性に対し極めて誠実な態度だといえる。彼のようにありたいものだ。
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