こんなところにあたしを連れてきて何させるつもり?
ご奉仕でもすればいい?男の人が好きそうなやつ…
あたし、奴隷だからそういうのあんまりわかんないよ?
そういうことじゃない?なら何…?
貴族の男が奴隷の女にさせることなんて、それくらいしかないでしょ。
え…あたしがあなたの召使いに…?役に立たないと思うけど…
そう…わかった。貴族様からの命令だっていうなら従う。
どうせ奴隷のあたしに拒否権なんてないから…
これからよろしくお願いします、ご主人様…
ご主人様、お茶をお持ちしました。どうぞ…
紅茶の淹れ方が上手くなった?
そう…ありがとうございます…
え…敬語は外してもいい?急にどうしたn……ですか?
わ、笑わないでください…
これでも頑張ってるんですから…
命令?わかりましt……ううん、わかった。
命令なら従う。これからはこんな感じで喋る。
うん…こっちの方が喋りやすい。正直助かる。
それじゃ、あたし、まだ仕事が残ってるから…
ん……ご主人も仕事、頑張って。
あっ、ご主人…起きた?
あ、うん……寝てたから毛布かけようとしただけ…
そのままだと風邪ひいちゃうかもしれないし…
って、なんで頭撫でるの……
子ども扱いされてるみたいでなんか悔しい…
ん……どういたしまして。
ご主人、明日も朝早いんでしょ?
早くベッドで寝た方がいいよ。
あたし?仕事は終わったけど…
うん、風呂も入った……それがどうしたの?
それは…命令?
わかった…命令なら従う。
別に嫌じゃない。多分…
じゃあ、失礼します。よいしょっと…
ねぇ、理由聞いてもいい?
なんで一緒に寝ようなんて言い出したの?
なんとなく?ご主人の考えてること、よく分からない…
あたしは……少なくとも悪い気分じゃない。
今は胸のあたりがポカポカする…そんな感じ。
それにしても、ご主人って変……
奴隷と同じ床(とこ)につく貴族なんて聞いたことがない。
え……可愛い?あたしが?
そんなこと言われたの、初めて…
うん…嬉しい、のかな?
初めてだからわかんないけど…たぶんそうだと思う。
ごめん、ご主人。話しすぎた。もうそろそろ眠いよね。
うん…おやすみなさい。また明日…
ッッ、ご主人…⁉︎なんでこんなところに…⁉︎
あたしのことはいいから…早く逃げてよ…
ヘマをして捕まったあたしが悪いんだから…
こんな役立たずの奴隷なんかさっさと見捨ててよ…
大切な、家族……あたしが…?だから絶対助けるって…
わかった…ご主人のこと、信じて待ってる。
あたしの命、ご主人に預けるから。よろしくね…
ご主人…その、迷惑かけてごめん。
え…?違うって何が…
そっか、お礼か……
ありがとう、ご主人。あたしのこと、助けてくれて。
そうだったんだ…アイツら、ご主人に金品を要求するためにあたしのことを…
あたしなんて攫っても無駄だって考えなかったのかな…
だって奴隷だし…ご主人があたしを見捨てることだって、可能性としてはふつうにあり得たのに…
卑下してるつもりはないけど…あたしが奴隷だってのは事実だし…
あ、そうか……元奴隷、だよね、あたし…
今はご主人の召使い…うん、そうだった。
ねぇ、ご主人。あたし、頑張る。
元奴隷だけど、ご主人の召使いだって胸を張って言えるように頑張るから。
うん…ご主人こそ無理しないでね。
ご主人が傷ついたりしんどい様子なのを見るのは、あたしも嫌だから…
うん、お互い様。お互い自分を大切にするってことで。
おかえり、ご主人。
…?どうしたの?緊張した顔して…
え……婚約?なにそれ、どういうこと?
そ、そうなんだ…難しいことはよくわかんないけど、要するに家と家との付き合いで…
え……あたしがご主人とその人の子どもに…?
召使いを養子にするなんて聞いたこともないけど…
その人は優しいから大丈夫だって…それは知らないけど…
それよりもなんていうか…モヤモヤする。
何が気に入らないのかわかんないけど、なんかモヤモヤして気持ち悪い。
ごめん、ご主人。あたし、ご主人の提案は素直に受け入れられそうにない。
仕事戻るから。それじゃあね。
(婚約…つまりご主人にお嫁さんが…)
(ご主人は優しいから、きっとお嫁さんに尽くすはず…)
(そうなったら、あたしのことは今までよりあまり見てくれなくなる…)
(当然、だよね…あたしは所詮、元奴隷の召使い。)
(どっちを大切にするかなんて、言うまでもない。)
(嫌だ…そんなの嫌だ!)
(ご主人が知らない女のモノになるなんて嫌だ!そんなの耐えられない!)
(けどご主人のあの口ぶりだと、結婚する事はほぼ決まってる…あたしはどうしたら…)
(…ご主人に選んでもらうしかない。あたしかその女、どちらかを…)
ご主人、入るよ。
うん、ちょっとね。ご主人に言いたいことがあって…
そう、例の養子になるかって話。
あたしは二人の養子にはならない。絶対に。
ううん、ご主人だけの子どもならともかく、知らない女の子どもになるなんて嫌だ。
優しい人だからって……それ、ご主人に対しての話でしょ?あたしに対して優しいとは限らないじゃん。
それにそのことはそんな重要じゃない。
重要なのは…ご主人があたしとその女、どっちを選ぶかってこと。
何するんだって…ご主人、あたしを選んで。
じゃないと今ご主人に握らせてるこれ、あたしの心臓を貫くことになるよ。
そう、そのまさか。
婚約を破棄してあたしと一緒にいてくれるって言うなら、今すぐあたしを抱いて。
けどその女と結婚することを選ぶなら…このままグサッとやって。
ご主人が他の女のモノになるくらいなら、ここで死んだ方がマシ。
あたし、そんなに強い人間じゃないから。
あたしを選ばないって決断を下すなら…せめて最期だけはご主人の手で終わらせて欲しい。お願い。
ダメ。どっちも選ぶなんて許さない。
そんなのあたしが納得しない。
…やっぱり伝わってなかったよね。だったら今言う。
あたし、ご主人のことが好き。
ご主人のこと、女として愛してるし、ちゃんと男として見てる。
ご主人はモノでしかなかったあたしを人として扱ってくれた。一人の女の子として見てくれた。
こんなの、惚れるなって方が無理だよ…
わかってる。ご主人があたしのことを異性として意識してないことぐらい。
歳もふたまわりくらい離れてるし、それは仕方ないと思う。
けどしょうがないじゃん…好きになっちゃったんだから…
お願い、ご主人…あたしを選ぶか、殺すかして。
ご主人が他の女を愛してる状態なんて耐えられない。
ごめんね、苦しい思いさせて。
けどあたしにはこうすることしかできないから…
覚悟はできてる。ご主人のモノになる覚悟も、ご主人の手で終わらせられる覚悟も、両方。
あとはご主人が選ぶだけ。
ねぇ、ご主人…あたしとその女、どっちを選ぶの?
よしわかった お前を解雇して新しい人生を歩ませよう。