「論語」最古の写本、国宝へ 柳橋水車図は重文 文化審議会が答申

筒井次郎
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 文化審議会は26日、論語疏(そ)巻第六(東京・慶応義塾図書館)、五百羅漢図(京都・東福寺)、奈良県飛鳥池遺跡出土品(奈良文化財研究所)の美術工芸品3件を新たに国宝に指定するよう、文部科学相に答申した。

 論語疏巻第六は、古代中国の思想家・孔子と弟子との対話をまとめた「論語」の注釈書の現存最古の写本。6世紀ごろに書かれ、日本には平安前期までに伝わった。藤原氏の所有を示す印がある。慶応大が2017年に古書店から購入し、調査したもので、世界的な論語研究の最重要写本として大変貴重という。

 五百羅漢図(明兆(みょうちょう)筆、二幅狩野孝信補写)は、釈迦の入滅後もこの世で仏法を守る500人の聖者を描いた50幅の連作のうち、寺に伝わる45幅と補写2幅だ。

 近年の調査で、南北朝時代の1386年に寺の画僧・明兆が描いたと確定した。日本では現存最古の五百羅漢図で、かつ重要作家によって描かれた点で比類ない価値があると評価された。

 飛鳥池遺跡出土品は、奈良県明日香村にある飛鳥時代(7世紀後半)の工房群から出土した考古資料で、日本最古の鋳造貨幣・富本銭(ふほんせん)(直径約2.5センチ)15枚など643点からなる。律令国家形成期を支えた一大官営工房の実態を鮮明に示す、きわめて重要な資料群と評価された。

 また、重要文化財には46件を新たに指定するよう求めた。

 このうち香雪美術館神戸市)の柳橋(りゅうきょう)水車図(長谷川等伯(とうはく)筆)は、画面いっぱいに橋と柳、水車を組み合わせた、きらびやかな6曲1双の屛風(びょうぶ)(桃山時代、16~17世紀)。京都の宇治橋を題材に、名絵師・等伯が60代の頃に描いたとみられる。川の水波を銀の截金(きりがね)(銀箔(ぎんぱく)で施された線)で表現するなど入念な装飾技法もみられる。

 30例以上が現存する同様の作品の中で、作者が判明した最古例で、等伯の画業を考究する上で欠かせない優品という。

 冷泉家(れいぜいけ)時雨(しぐれ)亭文庫(京都市)の顕注密勘(けんちゅうみっかん)(中下帖(ちゅうげじょう)藤原定家筆)は、定家が著した「古今和歌集」の3帖の注釈書。上帖はひ孫の為秀の写本だが、中下帖は原本。下帖に承久3(1221)年の定家奥書がある。

 冷泉家は定家を遠祖とし、代々宮中で和歌を教えてきた家柄。江戸中期以降、関係する書物と一緒に箱に収めて蔵で保管され、2022年秋からの調査で発見された。日本の国文学上、和歌史上、大変貴重と評価された。

 ほかの重文指定は次の通り(かっこ内は所有者や保管場所など)。

 星曼荼羅(まんだら)図(皇居三の丸尚蔵館)▽浜松図〈海北友松筆〉(同)▽濁醪療渇黄葉村店(だくろうりょうかつこうようそんてん)〈小山正太郎筆 明治22年〉(ポーラ美術館)▽ノルマンディーの浜〈鹿子木孟郎筆 1907年〉(泉屋博古館東京)▽阿弥陀浄土図(海住山寺)▽競馬(くらべうま)図(春日大社)▽木造五大明王像(奈良国立博物館)▽木造源頼朝坐像(ざぞう)・木造源実朝坐像(山梨・善光寺)▽木造不動明王及(および)二童子像〈康住作〉(恵林寺)▽木造慈恵大師坐像(尊勝院)▽木造薬師如来立像(両讃寺)▽木造如意輪観音坐像〈康俊作〉(如意輪寺)▽木造性空坐像(円教寺)▽銀百鶴図花瓶〈加納夏雄作〉(皇居三の丸尚蔵館)▽鳳凰花卉堆朱箱(ほうおうかきついしゅはこ)(東京国立博物館)▽色絵松帆掛舟(ほかけぶね)文葉形皿〈伊万里〉(サントリー美術館)▽菊白露蒔絵(まきえ)婚礼調度(徳川美術館)▽銅孔雀(くじゃく)文磬(けい)(深大寺)▽線刻阿弥陀浄土図鏡像(七宝寺)▽白地葵紋付筋亀甲繫(つなぎ)文様絞染(しぼりぞめ)小袖(萩博物館)▽宋版孫真人玉函方(ぎょくかんほう)・膏肓●穴灸法(こうこうしゅけつきゅうほう)・産育保慶集〈金沢文庫本〉(館山市立博物館)▽古今伝授関係資料(冷泉家時雨亭文庫)▽北野天満宮聖廟(せいびょう)法楽奉納連歌(北野天満宮)▽観世音秘密無障礙(むしょうげ)如意輪陀羅尼(だらに)蔵義経(石清水八幡宮)▽敦康(あつやす)親王御対面儀定文(さだめぶみ)案〈藤原行成筆〉(皇居三の丸尚蔵館)▽香取神宮文書(香取神宮)▽伊場遺跡群出土木簡(浜松市博物館)▽須須(すず)神社文書(須須神社)▽建内記(京都大学付属図書館・総合博物館)▽朝鮮日々記(にちにちき)(安養寺)▽琉球国王朱印状(個人)▽奈良県五條猫塚古墳出土品(奈良国立博物館)▽金錯銘鉄剣(市原歴史博物館)▽新潟県野首遺跡出土品(十日町市博物館)▽福井県大釜屋・西山窯跡群出土品(福井県教育庁埋蔵文化財調査センター)▽岐阜県島・塩屋金清神社遺跡出土品(飛驒の山樵館)▽銅骨蔵器・石櫃(いしびつ)・石臼(西方院)▽横帯文銅鐸(どうたく)〈舌共〉・袈裟襷(けさだすき)文銅鐸〈舌共〉(南あわじ市滝川記念美術館玉青館)▽絵所預(えどころあずかり)土佐家関係資料(京都市立芸術大学芸術資料館)▽山神枡(ます)〈天文9年11月15日/杉山等刻銘〉(佐山区)▽三井三池炭鉱専用鉄道電気機関車大牟田市)▽上野撮影局写真帖(ちょう)(個人)▽琉球国之図(沖縄美ら島財団)▽高台院関係資料(高台寺)

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この記事を書いた人
筒井次郎
文化部|大阪駐在・歴史担当
専門・関心分野
世界遺産、京都・奈良、寺社・遺跡・文化財

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