花田
基本的に、最初のほうのループは原作のチュートリアルの流れを追いかけつつ、どういった要素を後から入れていくかを考えるのがメインでした。「この回は人狼パートをシンプルにして、ドラマの部分を厚くしよう」とか、「もう少し人狼の駆け引きを加えてもいいんじゃないか」とか、そのバランスは毎回調整していましたね。人狼の玄人からしたら「こんなの簡単でしょう」となるかもしれないけれど、ユーリくんのレベルだったらこういうミスもするよね、こんな初歩的なミスもきっとあるよね、というところで折り合いをつけていました。
木村
人狼ゲームとして正しいことと、物語として面白いことは、別の部分なんですよね。だから人狼監修の松崎さんにも入っていただいて、人狼のロジックとして間違っていないかを確認しつつ、物語の面白さを花田さんに追求していただくという、二重のフローで制作を進めることになりました。
市川
話が面白いのは花田さんの脚本で間違いないのですが、作っていて一番緊張したのは人狼パートに間違いがないかどうかですね。投票先、投票数など……映像が完成したところで1回寝かせて、時間を空けてから、もう一度見直す時間を設けるようにしていました。
花田
一番難しかったのは「人狼ゲームというものをどのくらいの人が知っているのか?」というラインの設定でした。たとえば麻雀だったら「知っている人が見ればいいよね」で済ませられますが、人狼ゲームは「知っている人向け」と言いきれるほどみんなが詳しいわけではなく、かといってまったく人狼を知らない人にゼロからすべてを説明するのは困難です。このくらいであれば見てもらえるだろう、というラインをずっと探っていましたね。エンジニア権限も人狼的には占い師になりますが、原作をプレイしていなければ「エンジニアって何?」となるので、とにかく序盤はその話ばかりしていた気がします。
木村
あと、コールドスリープ室でグノーシアが残っているか否かを即時判定するランプの設定については、なぜアニメで追加したのかは視聴者の方も気にされていました。そこは結構話し合いましたよね。
花田
最初に僕が「人狼ゲームって、人狼をすべて吊ったときにゲームマスターはすぐに勝敗を言うの? それとも翌朝になってから言うの?」と聞いたんです。そうしたら「どちらのパターンもあります」と言われて。それだと困るなと思ったんです。『グノーシア』の場合、人間側が勝利の時は最後のグノーシアがコールドスリープされた直後にユーリはループする。ということは、そのタイミングでループしなかったらグノーシアがまだ残っている、とユーリは分かってしまうんです。するとその後、空間転移までの時間にユーリはグノーシアが残っている前提で明日の会議に向けて行動出来てしまう。それはよくないよね、となってランプをつけて判定を同タイミングで全員が共有するという演出が生まれました。
木村
ランプの設定がなくなると、基本的には翌朝まで待って「みんな無事でした」という展開になるのですが、そうすると「頼む、当たってくれ……!」という手に汗握る瞬間を作りにくくなります。疑わしいものを凍らせたその瞬間に、当たっているか間違っているかをハラハラしながらその場で見届けるという演出は、アニメ的には非常に効いたものになったように思います。
花田
原作の描写としては、グノーシアをすべて排除した直後にイベントが発生することが多いんですよ。だからコールドスリープをした時点で「勝ち」を確定させたかった。翌朝までひっぱってからイベントという段取りは、どうしてもアニメ的には不自然になりますから。
木村
第4話~第6話あたりは人狼のチュートリアルが中心なので、視聴者の方がついてきてくださるだろうかというのは気になっていました。シナリオとして抜群に面白いのはわかっていたんですが、基本的には人狼を繰り返す構成なので、そこがとっつきにくく感じてしまわないかなと。第7話で乗員が揃ってからはがらっと雰囲気も変わるのですが、そこにたどりつくまでの情報量が多かったので、ドキドキするポイントではありましたね。
市川
ざっくり「面白いことが起きているようだぞ」というのが視聴者の方に伝わるように、というのは心がけました。それは音楽の力もありますよね。勝っているときは勝っている音楽がかかるし、負けているときは負けている音楽がかかる。
木村
そこは音楽の深澤(秀行)さんと音響監督の納谷(僚介)さんのおかげですね。すべての議論はロジックで作っているので、そこに破綻はないのですが、さらっと見ると「?」となる方もいらっしゃると思いました。それでも展開が伝わるように、音楽で状況をサポートしようというのは現場の意識としてありましたね。