「更生」や「再起」という言葉が免罪符に

「マツキ氏のペンネーム変更についても『被害者配慮』を強調していますが、これもフジテレビの当初の対応と似ています。漫画家からの不信感も頂点に達しており、レジェンド漫画家である高橋留美子氏の『めぞん一刻』や、現在アニメ放送中の人気漫画『葬送のフリーレン』などの名作も含め、多数の作家がマンガワンから作品を引き上げるという異常事態に発展しています。今後、『ドラえもん』や『名探偵コナン』といった国民的作品にまで波及していくのか注目されています」

 小学館側は山本氏の件に関し、21年の協議について「弊社は当事者ではないため、弁護士への委任を山本氏に促すよう指示した」と述べているが、社員が交渉の場に介在していた事実は重い。

「クリエイティブの世界では、しばしば『更生』や『再起』という言葉が免罪符のように扱われることがあります。小学館は今後、第三者委員会を設置し、作家起用のプロセスや編集部の人権意識などを調査する方針ですが、編集部が特定の才能を優先した不透明な判断は、結果として会社全体の信頼を損なってしまった。フジテレビのケースでは局の信用が完全に失墜し、社長が辞任に追い込まれました。小学館のケースも作家離れと同時に、イベント中止なども相次いでいます。今後、スポンサー離れや決まっていたアニメ化の中止や放送延期といった動きが出てくる可能性もゼロではありません」(出版関係者)

 8日、被害女性は代理人を通じて、小学館側から謝罪を受けていたことを明らかにした。女性は「被害の実相を知ってもらい、同じような被害に遭う人を無くしたいという思いが第一」であるとした上で、「小学館に対して強い怒りや恨みを持っているわけではないこと、特に、漫画家さんの作品を小学館から引き揚げて欲しいとも思っていない」と胸の内を公表した。

 はたして、フジテレビ問題のような“泥沼”になる前に、小学館は適切な対応を取ることができるのか。今後の対処が注目される。

(泉康一)

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