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冬優子「日付が変わるまで付き合え?」 P「今日だけは、な」/Novel by 紅木弘

冬優子「日付が変わるまで付き合え?」 P「今日だけは、な」

3,897 character(s)7 mins

冬優子の誕生日を祝いたいが素直に祝うのは照れくさい。つまりはそういうことです。

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冬優子「……あんた、明日が何の日かわかってるの?」

P「冬優子の誕生日だろ?」

冬優子「……そこはちゃんと答えるのね」

P「こっちがお願いしている立場なのに、機嫌を損ねるようなことするわけないだろ」

冬優子「……それ、立場が逆になったら機嫌を損ねるようなことをするって聞こえるわよ」

P「さすが冬優子だ。俺の言葉の裏の意味をしっかり理解している」

冬優子「舌の根も乾かぬうちに!」

P「大丈夫、俺は加減のわかる男だ。冬優子が怒って帰らないギリギリのラインは理解している」

冬優子「ふゆの怒りのラインでタップダンス踊ってるんじゃないわよ!」

P「お互い、それが楽しいんだから別にいいんじゃないか?」

冬優子「ふゆは全く楽しくない!!」

P「冬優子は誘い受けの気があるからな」

冬優子「ふゆを変態みたいに言わないでくれる!?」

P「それで、結局冬優子は日付が変わるまで俺に付き合ってくれるのか?」

冬優子「今までの会話で、なにをどうしたら付き合ってくれると思えるのよ」

P「この後なにか用事があるのか?」

冬優子「……とくにないけど……」

P「つまり、冬優子はとくになにも用事がないが俺の誘いは断るということだな?」

冬優子「な……」

P「冬優子はもう俺と会話したくない。それどころかもう顔も見たくないと。そういうことだな?」

冬優子「飛躍しすぎでしょ!?」

P「なら付き合うんだな?」

冬優子「………………しょうがないわね」

P「冬優子」

冬優子「なによ?」

P「顔がニヤけてるぞ」

冬優子「……うっさい」


P「さて、じゃあまず、冬優子に聞きたいことがある」

冬優子「なによ?」


P「誕生日プレゼント、なにが欲しい?」

冬優子「はぁあああああ!?!?!?!?!?」


P「そこまで声を荒げなくてもいいだろ?」

冬優子「いいだろ? じゃないわよ! あんた、今それを聞くの!?」

P「むしろ、タイミング的に今しか聞けないだろ」

冬優子「あんたのタイミングはどうなってるのよ!?」

P「いいか冬優子、落ち着いてよく聞け。これには深いわけがあるんだ」

冬優子「そのわけの内容によってはふゆ、本気で帰るからね」

P「普段冬優子で遊んでいる俺だが、いくらなんでも誕生日の前日に誕生日プレゼントを聞くことが非常識であることは重々承知している」

冬優子「あんたにもふゆに対するなけなしの常識が残ってたのね」

P「これでも1ヶ月は前から、冬優子の誕生日になにをプレゼントしようか考えていたんだ」

冬優子「そんな素振り見せなかったじゃない」

P「そんな素振り見せたら冬優子はすぐに察するだろ?」

冬優子「……それで、あんたは考えてどうしたのよ?」

P「とりあえず、結華と甘奈の3人でショッピングモール行ってきた」

冬優子「なっ!!」

P「あいつらやっぱりすごいぞ。最新の流行や動向にも詳しいし、その場にいない冬優子に似合いそうな服やらアクセやら選んでくる。おまけに俺が知らないことを聞いても嫌な顔一つせずに教えてくれる」

冬優子「ちょ、ちょっと待ちなさい」

P「なんだ? ちゃんと2人にはお礼として冬物を1着買ってやったぞ」

冬優子「んなこと聞いてない!」

P「だったらなんだ? まだ俺の話は続くぞ」

冬優子「なんであの2人と一緒に買い物なんて行ってるのよ!?」

P「経験上、こういうのは男だけで考えてもいい結果を生まないことが多いのでな。うちの事務所であの2人以上の適任がいるか?」

冬優子「別に、あさひや愛依でいいでしょ!?」

P「あの2人はあの2人で、冬優子へのプレゼントを探すって言ってたからな。俺が関わらない方がいいだろ」

冬優子「ああ、もう!!」

P「なにをそんなに怒ってるんだ?」

冬優子「もういいから!」

P「心配するな。適材適所であの2人を選んだだけだし、あいつらとふたりきりにもなっていない」

冬優子「……で? あの2人にアドバイスもらったんなら、プレゼントなんて悩む必要ないじゃない」

P「なにを勘違いしてるのか知らないが、アドバイスをもらったからといって、それが冬優子へのプレゼントを悩まない理由にはならない。むしろ、選択肢が広がって困ったまである」

冬優子「……つまり、悩みに悩んで今に至るってこと?」

P「それは違う。悩みに悩んだのは事実だが、最終的には冬優子へのプレゼントはちゃんと用意した」

冬優子「だったら、なんで誕生日になにが欲しいかなんて聞いたのよ?」


P「プレゼントしたものが翌日フリマアプリで売られていた夢を見た俺の気持ちがわかるか?」


冬優子「……は?」

P「……ここ最近毎日のように見るんだ」

冬優子「ふゆ、そこまで非常識な人間に見える?」

P「冬優子がそんなことしないことくらいわかってる。もっと言えば、そんなことされたことは、少なくとも俺が知る限りない」

冬優子「だったら――」

P「だがな、一度でも悪夢を見るとその悪夢に囚われる。ましてや毎晩だ。不安にもなるし精神的にすり減る」

冬優子「…………」

P「……初めてなんだよ」

冬優子「……なにが?」


P「誰かへの贈り物で、ここまで悩んだの」


冬優子「…………」

P「職業柄、人に贈り物を贈る回数は少なくないし、プライベートでも誕生日やクリスマスにプレゼントをしたことは多くはないが少なくはない。仕事での贈り物は絶対に外さない自信があるし事実そうだった。プライベートの方は……どうだろうな? 少なくとも贈った後に使っているのを何度か見たから、全く外したわけではないと思う」

冬優子「……だったら、なんでふゆのときもそこまで悩む必要ないじゃない」

P「……人に贈り物を贈る際、俺はいつも80点が取れるものを贈るように心がけている」

冬優子「十分じゃない」

P「そうだ、なに一つ問題ない。下手に90点や100点を狙おうとすると失敗するリスクが高いし、人がもらってある程度うれしいものは普遍的で確立されている。無難といえばそこまでだが、その無難を理解できていないやつが世の中に大勢いる以上、相対的に俺の贈り物は上位に上がる」

冬優子「そうやって言葉にするとすごくセコく聞こえるわね」

P「初めて言葉にするからな。それに、俺はそれを悪いことだと思っていないし、それができることが自分の強みだと思っている」

冬優子「……まあ、それを完璧にこなせるのはあんたぐらいでしょうね」

P「ところがだ、この俺が初めて、贈り物でギャンブルをした」

冬優子「は?」

P「冬優子に、100点の贈り物をしたいと思ったんだよ」

冬優子「なっ……」

P「そのせいで、悩まなくていいことでなやんで、使わなくていい時間を浪費し、見なくてもいい悪夢を見た」

冬優子「さんざんな言い様ね」

P「だが、それもあと数時間だ。誕生日になったらさっさと渡して、今日は安眠させてもらう」

冬優子「……今夜は見るんじゃないの?」

P「プレゼントなんて、渡して中身を見た5秒の反応で全てが決まる。もっと言えば、渡してしまえばもうどうしようもない以上、悩む必要も無くなる」

冬優子「その割り切りができて、なんで悪夢を見るまで追い込まれてるのよ」

P「冬優子だって、ライブが始まる前は不安になったり緊張したりしても、始まってしまえばそうでもないだろ。それと同じだ」

冬優子「……あんたにそんな繊細な部分があるとは思わなかったわ」





ピピピ!ピピピ!

冬優子「……日付、変わったわよ」

P「ああ……」

冬優子「……わざわざ、アラームまでつけてたのね」

P「ああ……」

冬優子「…………」

P「……冬優子」

冬優子「……なに?」


P「誕生日、おめでとう」


冬優子「……ありがと」

P「……よし」

冬優子「?」


P「帰るぞ」

冬優子「はぁあああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?」


P「帰らないのか?」

冬優子「プレゼントは!?」

P「そんなに欲しいのか?」

冬優子「むしろ、ここでもらわなかったらいつもらえばいいのよ!?」

P「……まさか、あんな与太話を信じたんじゃないだろうな?」

冬優子「………………は?」

P「俺が、冬優子にプレゼントを贈るくらいで不安になるほどセンチメンタルだと思うか?」

冬優子「なに!? じゃあ、さっきの話は全部ウソ!?」

P「結華と甘奈の3人で買い物に行ったことと、プレゼントを用意していること以外はウソだな」

冬優子「なんでそんなウソをついたのよ!?」

P「わからないのか?」

冬優子「わかるわけないでしょ!?」


P「一番最初に、冬優子におめでとうって言いたかったからだよ」


冬優子「っ……だからって、あんなウソつく必要ないでしょ!?」

P「むしろ、いつ冬優子が寝言は寝て言えと言ってくれるか楽しみにしていたんだが……どうやら俺はまだ、冬優子に理解されていないらしい」

冬優子「あんたのことなんて一生理解できないわよ!!」

P「……さて、冬優子よ」

冬優子「なによ!?」


P「今日の俺は、いくつのウソをついたと思う?」

冬優子「………………へ?」


それがわかるまで、一生つきあってもらうぞ。

Comments

  • ありがとう

    March 22, 2024
  • こよこよ

    めっちゃいいやん

    May 8, 2023
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