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Shaving/Novel by yosihito

Shaving

1,709 character(s)3 mins

大人士弓旅。士郎の髭を剃るアーチャー。

novel/7407132

の「髭」の続きのような違うような。
これも自分ばかり楽しい話です。
髭や髪が伸びる士郎さんと変わらないアーチャーの対比はぐっときますね。

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ぞり、と男がナイフを滑らせる。
冷たい金属の感触が顎から首へ移動し、急所すれすれをかすめていくのに本能的な恐怖が湧き上がる。
ぞくりとした冷たい感覚は背筋から下半身へと伝わって文字通り股間が縮み上がってしまった。
俺の強張った顔を横目で認めたらしいアーチャーの口の端が楽しげに吊り上るのを見てしまい、憮然とした顔になるのを抑えられない。
それさえも奴の興を誘ったようで、ふ、という笑いの息が耳に届いた。
「笑うなよ、危ないだろ」
「そう思うなら喋るな」
抗議の声はぴしゃりと遮られ、なお手を止めない奴の正論に俺は黙って固まるしかなかった。

アーチャーが俺の髭を剃っている小さな音と、時折、ちゃぷんという水音のみが響く部屋は静かで、ここがあまり治安の良くない地域の宿の一室だという事を忘れそうだった。
どうやら、窓がない部屋は正解だったようだ。
「もう少し上を向け」
声をかけておきながら、俺が首を動かすのを待たずに強引に上向かされた。
「お前な……」
相も変わらず人の抗議は右から左のようで、こちらの苛ついた声に頓着する様子はない。
だが先ほどまで窺えていた面白がる様子はその顔からは消え、ただ俺の髭を剃ることだけに集中しているのがその真剣な表情から分かった。

まるで武器の手入れをされてるようだ、とおかしな連想が頭に浮かぶ。
それはそれで悪くないなと思ってしまい、その思考に我ながらどうしようもないなと顔に出さずに苦笑した。

刃先はまっすぐ、少しの曇りも残さないように。

投影魔術なんてデタラメがあるせいか、武器の手入れという作業には無縁な俺たちだが、いざという時のために投影品ではないナイフをいくつか、常に携行するようにしていた。
アーチャーが今俺の髭を剃るのに使っているのもその一つで、奴がそれを丁寧に手入れしている姿を時折目にしていた。

何て事ないその場面を、今思い出してしまっているのは、その様子に少なからず嫉妬めいたものを感じていたせいらしい。我ながらなんてガキっぽい。
でも、あの時ナイフに向けられていたあの真剣な眼差しが、今自分に向けられている事が素直に嬉しい。

――それはそうと、

顔が近い……!

頬や首筋にかかる息、伏せられた睫毛、間近に寄せられた顔に、つい「あの時」を想起させられてしまって、その、いろいろとまずい。

「終わったぞ」
静かな声に、はっと我に帰った。
「あ、ああ、ありがとう……」
差し出された濡れタオルで顔周りに残った石鹸の泡を拭う。
さっぱりしたと思ったのもつかの間、
「それで、お前はなにをおっ勃ててるんだ?」
顎でしゃくられて、ばっと自分の股間に目を落とす。
そこには存在を主張し始めている俺の分身が、ズボンの上からでもはっきりと確認できた。
「わわっ!」
あたふたする姿をにやにやと人の悪い笑みで見下ろしてくる男に誰のせいだ!と言い返そうとして、はたと思い出した。
「お、お前……そういえば言ってたよな?」
「なんの話だ?」
「髭、剃らないと俺とはやらない、とかなんとか」
「? だから今オレが剃ってやって」
「つまり、剃ってたらOKだって事だよな?」
「!!」
咄嗟に離れようとする腕を素早く掴む。
アーチャーは掴まれたのと逆の手で俺を振り払おうとして、ナイフを手に持ったままなのに気付き、ギクリとその動きが止まった。
それを幸いとその体を引き寄せて顔を寄せた。
「お前だってそろそろ、だろ?それに」
「?」
「ちゃんと剃れてるか触って確かめてみろよ?」
に、と笑いかけると、アーチャーはさっきの俺と逆転したように憮然とした顔を返して寄こした。
そして、呆れたように小さく息をつくと、俺の顔に手を伸ばして触れる。
頬を撫でる手はそのまま顔を滑りおり、顎を掴み上げて俺の顔を上向かせた。
「オレが剃ったんだ。綺麗に剃れてないわけがなかろう?」
不敵な顔でニヤリと笑うとそのまま顔を寄せ、噛み付くようにくちづけてきた。

End

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