Clothes are simple to take off
現パロで付き合っていないランサーとアーチャーの話です。
R18ではないですけど、エロい感じを目指しました。
「男の前で脱ぐ事など何の意味も無い」と言うアーチャーと「それならオレがお前のシャツを脱がす」とアーチャーのシャツを脱がせようとするランサーの話。
前半にナナシのモブが多少出ます。
宴会で手が滑った同僚に酒をかけられたアーチャーは、同僚たちの悪ふざけでシャツを脱がされそうになってしまう。抵抗するも多勢に無勢で、殴ってでも止めるべきかと考えていた所、遅れてきたランサーによって助けられる。
そのお礼も兼ねてランサーと自宅で飲みなおしたアーチャーは、先ほどの事を持ち出された際に「男が男の服を脱がせても何の意味も無い」と言い切る。
それを聞いたランサーが「それじゃあオレがお前の服を脱がせる」と言い出し抵抗するアーチャーだが、そのしつこさに負けて、アーチャーに自分のシャツを脱がせることにした。
ところが途中からどんどん変な雰囲気になってきて・・・・・・。
前回の話にブクマ、コメント、いいねをありがとうございます。おかげさまでランキングにもお邪魔させていただきました。
周りに槍弓スキーがいないため、萌えを吐き出すように色々と妄想させて打ち込んでます。
次はエロをUPしたい。
先日のオルタニキチャレンジ、爆死いたしました・・・・・・。でも今度はクラス別ピックアップがありますね!書いたら出ないだろうか・・・・・・とパソコンの前で毎日悩んでます。
- 146
- 123
- 2,492
・・・・・・どうしてこんな事になったんだろう。
ここは学生時代から社会人になってからもずっと引っ越さず過ごしている私の部屋で、そして私の目の前には会社の同期であるランサーがいる。
そんな二人の前には、学生時代にちょっと昔っぽい感じに一目ぼれして買った丸いちゃぶ台が置いてある。そしてそこにはコンビニで買ってきた酒と、私の作った簡単なつまみが乗っている。
それは、私の部屋でランサーと飲むときのいつもの光景だ。
そんないつもの光景の筈なのにいつもと違うのは、普段であれば向かい側で飲んでいるランサーの美麗な顔が私のすぐ目の前にあることだ。
同じ会社だけではなく取引先などの女の子達をも虜にしている美しい顔が、吐息が掛かるくらいの至近距離にある。それだけで内心パニックに陥っている私なのに、更にランサーは先ほどから訳の分からない事を私に言ってくる。
私の頭の中はその話を理解するのを拒否しているのか、さっきからランサーが何を言っているのかさっぱり分からない。
思わず逃げ腰になって後ろ手にずり下がろうとした私の膝に手を置いたランサーはニヤリと笑うと、もう一回同じ話を繰り返す。
「なあ、アーチャー」
「なんだ、ランサー」
名前を呼ばれ、思わずオウム返しに返事をしてしまう。
「お前さん、さっきから微妙に上の空だが、オレが話している事をちゃんと聞いているか?」
「ああ・・・・・・聞いては、いる、が」
私は確かにきちんとランサーの話を聞いる。聞いてはいるが、その内容が理解できない。きっと頭の中で理解するのを拒否しているのだろうとは、流石に本人に向かって言いづらい。苦し紛れにふと思いついた言葉を舌の上に乗せてみる。
「ランサー、ひょっとして君はすでにかなり酔っていて、自分が何を言っているのかを理解出来ていないのではないのかね?」
引きつった笑みを浮かべながらそう問うと、ランサーは微かに首を傾げてみせたあとにんまりと笑ってみせる。
「オレはこれくらいの酒で酔わない。アーチャー、それはお前が一番良く知っているだろうが。だから自分が何を言っているかもちゃーんと良く分かっているさね」
「じゃあ、なんでそんな馬鹿な事を言い出すんだ」
「お前こそ、オレの話を聞いていたか? 俺はお前に聞いた。そしてお前は平気だと言ったな」
「ああ、確かにそう言った」
それを思い出すと、少し前の自分をぶん殴りたくなる。何故私はあんな事を了承してしまったのだろうか?
「だからオレはお前が言った事を実行しようとしているだけだ。だって、アーチャーにとって大した事はないんだろう? だから、オレはただそれを・・・・・・」
少し体を起こしたランサーはにんまりと笑いながら『それ』と言って、私が来ているワイシャツを指差してみせる。
「アーチャーが今着ているそのシャツ。それをオレが今から脱がせる。ただそれだけだ」
私の頭の中がいい加減に理解しろと、無理やりランサーの言葉の意味を伝えてくる。私は顎をそらすように顔を上に向け、大きく息を吐く。
ああ、なんで。なんで、こんな事になってしまったんだろう?
*****
ことのきっかけはホンの仔細なことだった。
本日、私が勤めている会社で行ったプロジェクトの成功を祝い、会社全体での打ち上げが行われた。
うちの社長はこういった催しが大好きで、それに対して金を惜しまない。しかもプロジェクトが社を上げてのものであり、打ち上げと言ってもホテルの宴会場を借りて行われたため、それなりの規模のものになった。そしてそれなりに名の知れたホテルで開催された為、提供されている料理はブッフェ形式、酒バーカウンターが設置されており参加している皆は遠慮なく飲み食いしていており全体的にかなり酔っぱらっていた。
宴会の最後のシメはビンゴ大会だったのだが、料理の提供が終わりそれが始まるまでには少し間が開いてしまう。中だるみになってしまうので場繋ぎの為に何か簡単な出し物が必要だろうとの事で、白羽の矢が立ったのが私と数人の同僚だった。
披露するといっても簡単な宴会芸だ。多分普段なら格段面白いとは思わないだろう芸であっても、皆良い感じに酔いが回っているのでそれなりに盛り上がってくれて私は胸を撫で下ろした。
余興が終わり又飲みなおそうかと話した私たちは、宴会場の出入り口近くに設置された簡易的なバーカウンターに向かうが、残念ながらそちらの提供も終わってしまっていた。残念がった奴の一人が探して意気揚々と持ってきたのは中身が残ったビール瓶だったが、足を滑らせ瓶は宙を舞い中身がこぼれる。
誤解の無い様に言っておくが向こうはあくまでワザとではなかった。ただ、かなり酔っていて足をもつれさせて転んだ場所に運悪くいたのが私だったと言うわけだ。
普段から幸運値の低さは自覚しているが、まさかこんなところでまでとは。ビールが掛かり酒臭いシャツを見下ろして、私は思わずため息を吐く。
まあ上着はここに来る前に脱いでいたし、余興をするのにネクタイも外していたから、ビールがかかったのはシャツだけで不幸中の幸いでスラックスは無事だった。
別に頭からかかった訳じゃないし多分瓶の中にも大した量が入っていなかっのだろう。ただ、ワイシャツが部分的にビシャビシャに濡れてしまって、体にぺったりと張りついてしまっている。
更に運の悪い事に、宴会も終わり際ということでスタッフは宴会場から姿を消しているから、何か拭く物をと思っても頼めない。
気持ち悪いけど替えのシャツなんて持ってない。上着はあるが控え室だし、こんな状態で羽織れば酒が染み込んでしまう。 さて、どうしよう。
若干酔いのまわった頭でそんな事を考えていると、いつの間にか同僚に囲まれてしまった。
「アーチャー、濡れたなら脱がないとな」
「そうそう。そのとおりだ」
「は? おい!」
余興が上手くいきテンションが高いままの同僚達は、眉根を寄せる私にお構いなしに手を伸ばした。
伸びてくる手に抵抗しようとするが、多勢に無勢。虚をつかれた事もあり、足をもつれさせた私は後ろ向きに倒れこんでしまう。肘をついて起き上がろうとするが、酔っぱらっている割に妙に手際が良い同僚達に押さえつけられワイシャツのボタンに手を伸ばされた。
「ちょっと待て! 貴様ら何をするんだ!」
「びしょ濡れのワイシャツを着ているアーチャーが風邪ひかないように気を使ってやったんだろう?」
「そうそう、風邪をひいたら大変だろう。ワザとじゃないけどかけちまって悪いと思っているんだからさ」
いつの間にか私にビールをかけた本人までも仲間入りしているから余計にたちが悪い。普段であればこんな事をするような奴らではないのだが、酔いと余興の成功で浮かれているのだろう。
舌打ちする私にお構いなしに、皆酔っ払い特有のノリでゲラゲラ笑いながらボタンを外そうとするが、酔っているからなのかシャツが濡れてしまっているせいなのか、ボタンは上手く外れないようだ。
こちらとしては助かるが、その分、奴らはムキになってボタンを外そうとしてくる。
ここは一発殴って止めさせたいが学生時代からそれなりに鍛えている為、万が一怪我をさせてしまっては大変だ。止めろと制止の声をあげたが周りの注意を引く振りをして止めさせようとしたが、場所が宴会場の端であることと、ビンゴ大会が始まったためそちらに人は集まってしまっていて、番号を呼ばれるたびに大きく沸きあがる歓声に私の声はかき消されてしまう。
挙句の果てに上手くボタンが外れない事に焦れたのか、スラックスの裾からシャツを引っ張り出し捲り上げられ、挙句の果てに外れぬボタンにイラついたのかシャツを引きちぎろうとしている。
「アーチャー。お前、前から思っていたけど良い体しているよな。折角だからここで披露してみせてくれよ」
何が折角だからだ、ふざけるんじゃないと叫びたくなる。
背に腹は変えられない。もし怪我をしてもおふざけが過ぎたやつらの自業自得だと割り切り、ぶん殴って止めさせよう。そう思った瞬間、私の背後からパシャリと言うシャッター音が聞えた。
「おっ、ランサー、随分遅かったな。もう終わりだぜ」
「お前も混じるか・・・・・・」
「おい、お前ら。アーチャーに何してんだ」
私を押さえつけている奴らに降って来たのは、私が良く知るランサーの声だった。聞えてきた声ににやつく顔を上げた同僚達の顔が一気に強張るが、背後で一体何が起きているのか私にはさっぱり分からない。
「いや、ちょっとしたおふざけだよ。な」
「そうそう、余興の延長みたいな」
「はっ、何だって?」
舌打ち交じりのランサーの言葉に、同僚達の顔から血の気が引いていく。
「もう一度聞く。お前達、アーチャーに何してんだって言ってんだよ」
「その、アーチャーに酒が掛かったから、気持ち悪いだろうし脱がせてやろうと思ってさ」
さっきまでの下卑た笑みを浮かべた顔が、ランサーの言葉で引きつったものへと変わっていく。
「へえ、オレの目にはアーチャーが嫌がっているようにしか見えないんだけどな。それはオレの気のせいなのか?」
「あの、その」
同僚達の目が不自然に泳ぎだす。
「なあ、これが余興の延長だって言うなら、お前らの上司に『見てください。今日はこんな風に皆で楽しみましたよ。』って言いながらこの写真を見せても良いんだよな」
突き刺すようなランサーの言葉に、同僚達の顔が蒼白になる。
それはそうだろう。
うちの会社はセクハラ等に関してはとても厳しい。異性の社員だけでなく同姓の社員に対しても節度を守れ、と常日頃言われているし、そういったことがあった場合の処分も男女問わず厳しいものとなっている。
今この状態を傍から見れば、それなりの処分を下されるだろう。度を越した悪ふざけとはいえ、仮にも一緒に仕事をしてきた同僚である。さっき私が声をあげる事を躊躇ったのは、それらが理由だった。
「いつまでもぐだぐだくだらねえ言い訳してないで、アーチャーからその薄汚ねえ手をとっとと離せ」
ランサーの普段とは少し違う乱暴な言葉に同僚達の肩が跳ね、その勢いのまま私のシャツを掴んでいた手が、体を押さえていた手が離された。
「アーチャー。オレとそうサイズは変わらないだろう。シャツが汚れたならこれを使え」
視線を目の前の同僚達に向けたまま、ランサーは手にした鞄の中から何か取り出す。
差し出されたのは、クリーニングの袋に入れられたワイシャツ。
営業職のランサーは、以前客先でお茶をこぼされシャツを汚されてしまい、次の客先に行く前に慌ててシャツを購入した事があったらしい。それから常に替えのシャツを持ち歩いているんだわ、そういえばそんな話を聞いた事があった。
だが濡れたままの状態で着れば、渡されたランサーのシャツにも酒やその匂いが染みてしまうかもしれない。差し出されたシャツを前に躊躇う私に「気にすんな。一つ貸しにしておく」とランサーは短く告げた。
どちらにしても、このシャツで帰るのは躊躇われる。ここは私が気を使わぬように貸しすると言ってくれた、ランサーのお言葉に甘えるとしよう。
「心遣い感謝する」
差し出してきたシャツを受け取ると、控え室に向かおうと立ち上がる。
数歩進んでふと後ろを振り返ると、そこには冷ややかな目をしたランサーと正座をさせられている同僚たちという図があった。
*****
「ったく、あいつら何考えてんだか」
舌打ち混じりに吐き出すランサーに「もう済んだ事だ」と短く告げる。
「だけどよ、オレが間に合わなかったらどうなっていたんだか」
どうやらランサーは私のされた事が未だに許せないらしい。手にした缶をいきおいよく煽ると、晒された喉仏が上下に動く。その角度から中身の量を推測した私は、そっと次の酒の缶をランサーの前に置いた。
「あそこで君が来なければ、彼らには申し訳ないが少々手荒な手段をとらせ貰おうと考えていたよ」
「本当かよ」
「本当だとも。最後の手段と思っていたが、あの状況ならそれもやむなしだしな」
「・・・・・・最後の手段を使うような状況だったんじゃねえかよ」
「まあ、あれはあくまで酔った上のおふざけだろう」
「おふざけにしちゃ、ありゃやりすぎだ」
私が置いた新しい缶のプルタブを引き上げながら、ランサーは吐き捨てる。
「いいか、冗談抜きに俺があの写真をあいつらの上司に見せたら、それなりの処分が下るのは確実だぜ」
「ああ、そうだろうね。確かにそれは私も思う」
私の言葉が気に食わなかったのか、ムッとした顔で手にした缶に力をこめるランサーに軽く肩をすくめて見せる。
「おい、何でそう他人事なんだよ。客観的に見たらそう思う位の事をお前はされたのに、当の本人が何も言わなくて良いのか?」
「だって、私の分も君が怒ってくれただろう」
「え?」
その言葉を聞いたランサーは、ぽかんとあっけに取られたような顔で私の事を見た。
「私の代わりに君があんなに怒ってくれた。私にはそれだけで十分だよ」
緩く首を横に振った後、私は滅多に見せない満面の笑みを浮かべた。
*****
ランサーに渡されたシャツに着替えて戻った時、まだ同僚達は正座のままランサーから説教を受けていた。戻ってきた私を見て肩を跳ねさせ怯えた顔をしていたから、恐らくランサーからキツイ制裁を受けたのだろう。
「ランサー、シャツをありがとう。あと、私はもう平気だ。何もそこまでしなくても」
こちらにチラリと視線を向けたランサーは、忌々しげに吐き捨てる。
「アーチャーが許しても、オレはこいつらを許す気はねえ。いいか、今後一切アーチャーには業務以外で近づくな。変な真似をしようものなら、社会的に抹殺する。冗談じゃなく徹底的に潰す」
宴席でのおふざけに対してそれは大げさじゃないかと思うが、私の事を思って言ってくれるんだと思えば少し嬉しさを感じてしまう。
「ランサー、ビンゴ大会がもうすぐ終わる。シャツが変わっていることで余計な詮索を受けたくはないから、もう帰ろう」
「・・・・・・おう。お前ら、アーチャーがいないこと、上手く誤魔化しとけ」
「すまないな、君たち。あとの事は任せた」
「アーチャーがこいつらにすまないとか言う必要はねえ。おい、分かったな」
怯えた顔で視線を泳がせる同僚達に対してまだ文句を言い足りないのか、ランサーは舌打ち交じりに目の前に並んだ顔を睨みつける。早くこの場を去りたかった私はランサーの手を引くと「もういいだろう」と短く告げ会場を後にした。
そのまま真っ直ぐ帰ろうかと思ったが、ランサーの「折角のただ酒だったのに、飲み損ねた」との呟きを耳にし、シャツのお礼も兼ねて私の家で飲まないかと誘ったのだった。シャツを変えてもべたつく肌に出来れば帰宅早々シャワーを浴びてしまいたかったが「オレも酒を飲みたかった」と言っていたランサーを優先する事にした。彼が帰ってからシャワーを浴びる事にした私は、常備菜や簡単なつまみを用意して彼と乾杯したのだった。
数本目の缶を開けたランサーは、どこかぼうっとした目で私の事を見ている。もう酔ったのかと思わず首をかしげると、ランサーも同じように首を傾げながら口を開く。
「どうしたんだ、アーチャー」
「どうしたんだって、ランサー。それはこっちのセリフだ。ひょっとしてもう酔ったのか」
「酔ってねえ」
「それじゃあ、さっきからぼんやりと何を考えているんだ?」
「何って、さっきの事だな」
「さっきの事?」
「ああ、お前がさっきされたこと」
「宴会場での事か?」
「おう」
ぼんやりとした顔でそう呟かれ、本人がもう良いと言っているのに、ランサーはまだ気にしてくれているのかと苦笑いしてしまう。
「その話はもう済んだ事だ。しかしあいつらは何をしたかったんだか」
「アーチャーのシャツを脱がす事だろ」
「まあ、確かにそれはそうなんだろうが」
「そういえば詳しく聞いてねえが、何であんな事になったんだ?」
「ビール瓶を持った奴が足をもつれさせ、酒をかけられた。それでシャツが濡れ、どうしようかと悩んでいたら、酔った奴らに濡れたままじゃ生けないだろうといわれ、その場のノリで脱がれそうになった。ただそれだけだ」
「ほう、お前は自分があんな事されたのに、ただそれだけですませるのか」
首をかしげたままのランサーの声に、微かな苛立ちが混じる。さっき綺麗に話が纏まったと思ったのに、又ぶり返されてはたまったもんじゃない。
「ランサー。私は君が怒ってくれたから、それで良いと言っただろう」
「でもよ・・・・・・」
「まあ、確かにあの状態は、一歩間違えれば強姦現場だな。だが元はといえば、私に酒が掛かったのが原因だ。それが無ければ、あいつらもあんな馬鹿な真似をしなかっただろう」
フッと鼻で笑うと、わざとらしく肩をすくめて見せる。
「しかしあいつらも物好きだ。私の服を脱がせて、一体何になるというんだ」
私の言葉を聞いたランサーの目が妖しく光る。
「アーチャー。今なんていった」
「だから、男が男の服を脱がせて何になるといった。同性の前で服を脱いでも、何の意味も無いだろう」
「ふうん、そうか。じゃあ、オレがお前の服を脱がせてもいい訳だな」
「・・・・・・なんでさ?」
私の目の前でわざとらしい笑みを浮かべてみせるランサーに向かって、私は思い切りしかめ面して見せる。
「だって、お前は同性の前で服を脱いでも、何の意味も無いんだろう? だったらオレがお前を脱がせてもいいじゃねぇか」
おいおい、どうしたんだランサー。遅くまで仕事をしていて疲れているのか? 引きつった笑いを浮かべそうになるが、深く息を吸うと私はゆっくり話し出す。
「落ち着くんだ、ランサー。例えばだ、ここにいるのが私ではなく綺麗で麗しい女人ならば、脱がせて貰ったり脱がせたりするのも楽しいだろう。だが、今の君の目の前にいるのはこの私だ。どこをどう見ても、君よりも背の高いむくつけき男だ。そんな男のシャツを脱がせて何が楽しいんだ」
深く吸った息をため息混じりに吐き出す私の顔を、ランサーはきょとんとした顔で見つめている。
「いいかランサー。もう一度言おう。男の私が君にワイシャツを脱がされて、楽しいか? 第一、それに一体何の意味があるというんだ」
「やってみなきゃ、わからねえだろうが。なあ、アーチャー。そうやってぐだぐだ言い訳してるけどよ、ひょっとして俺に脱がされるのが恥ずかしいのか」
「ハアッ? 貴様、何言っているんだ。そんな事がある訳がないだろう」
「だったら脱がせてもいいだろ」
しつこく言い募ってくるランサーに、しだいに乾いた笑いがこみ上げてきてしまう。
「ハハッ。そんな戯言を吐くとは。ランサー、貴様やはり酔っているだろう」
「酔ってないと何度言わせんだ。ああ、そうか。やっぱりオレに脱がされるのが恥ずかしいんだな」
「いや、別に。君に脱がされたとしても、恥ずかしくもなんとも無いな」
「じゃあ、いいじゃねえか」
「だから、ランサー。私が言いたいのはそう言う事ではなくて・・・・・・」
一回話をそらした筈なのにいつの間にかランサーは話を戻してくるから、会話は堂々巡りだ。
途中のコンビニで購入した酒はいたって普通の酒で、度数が高いというわけでもないし、そんなに減ってはいない。確かに本人の申告通りランサーはそんなに飲んではいないのだろう。
そう。酔っていない筈なのに、ランサーは性質の悪い酔っ払いの様に同じような会話を延々と繰り返す。そんなランサーのしつこさに、私は段々とイライラしてくる。
綺麗なお姉さんの服を脱がしたくて、しつこく言い募るなら良くわかる。私だって男だからな。
それなら分かるが、何でこんなむくつい男の服を脱がそうとして、ランサーはここまでしつこく言ってくるのかは分からない。
確かにランサーに脱がされたとしても、何の問題もない。私だって思春期の女子じゃない。あくまで男同士だし、そんな訳だからランサーの前で服を脱ぐのが恥ずかしい訳でもない。
ランサーがうちで飲んでいて終電がなくなり泊まった時には、お互い上半身裸で風呂から出てきたこともある。お互いに見慣れているとは言わないが、ランサーが私の上半身を見た事が無い訳でもない。
別に私の上半身が何か変わっているかと言えばそんな事はないから、脱がされたからと言って恥ずかしくも無いし問題がある訳じゃない。
それだから余計に、何でランサーがここまでしつこく食い下がるのかが分からない。
ひょっとしてもてすぎて、女の裸は見飽きたのか?
でもだからと言って、それが私の服を脱がす理由にはならないだろう。
そこから導き出される結論。ランサーはやはり酔っている。うん、そういう事にしておこう。
「なんだ、やっぱり恥ずかしいのか?」
「しつこい、たわけが」
「そんな言い方無いだろうが」
酔っ払いのたわごとだと思っても、それなりに真面目に対応しているうちに段々と馬鹿馬鹿しくなってくる。同じ会話を繰り返す事に少し疲れた私は、思わず苦笑いを浮かべながらこう言ってしまった。
「私と君は男同士だぞ? さっきから言っているが、同姓の君に脱がされて裸を見られたとしても、恥ずかしいも何もない」
口に出すと、自分の言葉が余計に馬鹿馬鹿しく思えてしまう。
第一なんで私が宴会場で災難に会った話から、男同士で服を脱がす脱がさない話に代わってしまったんだ? 酔っ払い特有の話の取り留めの無さなのか?
もしランサーが酔っ払っているなら、真面目に対応する事なんてなかったんじゃないだろうか? 酔っ払いの戯言に真面目に対応していた自分がおかしくて、思わずくつくつと笑ってしまう。ランサーは手にしていた缶の中身を一気に煽るとそのまま叩きつけるように置いた。
「そうだな。オレとお前は男同士だ。だからアーチャーは脱がされてオレに裸を見られたとしても恥ずかしくないんだな」
「ああ。だからさっきから何度もそう言っているだろう」
笑いがこみ上げる口元を押さえながらランサーに視線を向けると、さっきまで胡坐をかいていたランサーは、何故か立膝の体勢になっていた。
「よし。アーチャーがそう言ってくれたことだし、これからお前を脱がせるわ」
「はっ?」
意味が分からず首を傾げる私に向かって、ランサーは笑顔を浮かべながら立膝でにじりよってくる。
「おい、ランサー。貴様、本気で言っているのか?」
「おう! 難解も確認しただろう。それじゃあ、今からお前の事を脱がせるからな」
「おいおい、冗談はやめてくれ」
「冗談じゃねえよ」
「笑えない冗談だろう?」
「オレは笑えるな」
ランサーは笑いながらにじり寄ってくる。その姿に、これは酔った上の冗談だと思った私も笑いながら膝を崩す。彼の冗談に乗る形で軽く上半身を倒し肘をついて体を支えるとこちらにじり寄ってくるランサーから逃げるような態度を取ってみたが、ふいに動きを止めてしまう。
彼は笑顔のままにじり寄って来るのだが、何だか変なオーラを漂わせている。
そう、例えるなら獲物を上手い事袋小路に追い込んで、舌なめずりをして襲い掛かろうとしている猟犬のような。
その様子にただ事じゃない雰囲気を感じ、段々と自分の顔が引きつってきたのが分かる。何がどうと上手い事いえないのだが、何だかこのままでは不味い気がする。
『おいおい、ちょっと待て。こいつは一体何を考えているんだ?』
ランサーがにじり寄り、二人の間の少し距離が縮まる。
『今ならまだ間に合う。冗談めかして逃げられるんじゃないか?』
そんな考えがぐるぐると回っているが、少し酔いが回った頭では『それでは一体どうすればいいのか』が上手く纏まらない。私の前までにじり寄って来たランサーは、私の膝に手を添えるとにっこりと笑ってみせる。
「なあ、アーチャー?」
「何だね、ランサー」
「オレが話した事を、お前はちゃんと聞いていたよな?」
「あ、ああ。聞いてはいたが、その、なんだ」
「じゃあ今から脱がせるな」
思わず語尾が尻すぼみになるが、そんな私に構わずランサーはそう言うと私の膝を跨ぐ様に身を乗り上げてきた。
「え、は? ちょっと待て」
「脱がすのに邪魔だな。ベルトはずすぜ」
「おい、人の話を聴け!」
「おう、優しくするから安心しな」
「そうじゃないだろう! ってちょっと待て」
人の話を全く聞いていないランサーは、カチャカチャと音を立てながら素早く私のベルトを外すとすばやく抜き取ってしまった。腰をひねって抵抗しようとするが、上手く行かない。もがく私の事など全く気にしていないランサーは、手早く私のスラックスのホックをはずしファスナーを下ろしてしまった。
何が楽しいのか鼻歌を歌いながらシャツをズボンの中からスルスルと引っ張りだしたランサーは、何かに気付いたように首をかしげるとシャツをグッと引っ張り上げ私の腹を見つめた。
「なあ、アーチャー。さっきも思ったんだけどさ、お前さんワイシャツの中は何も着てないのか?」
「ああ、営業で外回りの君と違い、私は経理で事務仕事だ。今の季節の社内は暖房が利いているから、中に余計なものは着たくなくてね」
「ふうん、そっか。あっネクタイも邪魔だから外すな」
「おい、ちょっと待て。何故そうなる」
私の制止の言葉を無視して、ランサーは私の首元に手を伸ばすと。ネクタイに人差し指をかけて少し引っ張る。飲んだ後だからと少し緩めに締めてあったネクタイは、ランサーの指によってシュルッと簡単に外されてしまう。そのままネクタイを脇に放ると、ランサーはもう片手で私の襟元を掴み、親指と人差し指で一番上のボタンをぷつりとすばやく外してしまった。ボタンを外した親指と人差し指をそのままシャツに差し込み、隙間を広げながら鎖骨付け根の部分を指先で何度かなぞってくる。
普段触られないような場所を撫でられたからか、ぞわりとした快感にも似た何かが腰の辺りに纏わりついて落ち着かない。
鎖骨をなぞるのを止めたランサーは、手を下ろしシャツの裾を摘みあげ、鼻歌を歌いながらゆっくりと下からボタンをはずし始めた。
ボタンを一つ外すたび、シャツを生地を持つ手が肌にかすかに触れるから思わずびくりと背筋を反らしてしまう。思わず変な声が出そうで挙動不審になってしまうが、ランサーはそんな私の様子を気にも止めておらずホッとする。
ランサーは二つばかりボタンを外すと、シャツを持ち上げてまだ留めたままのボタンの位置まで広げた。
また幾つかボタンをはずしてはゆっくりシャツ持ち上げはだけさせたところで、顔を少し傾けてまじまじと私の腹を見ている。
「この前も思ったけどさ」
「なんだ、ランサー」
「こうやって改めて見るとさ、お前ってしっかりと腹筋割れているんだなと思ってさ。あと、前に泊めて貰って見た時にも思ったんだけどさ、アーチャーって着太りするタイプだな? 何となく、もう少し肉付きが良いイメージだったんだけど、改めて見たらビックリだわ」
「ジムでトレーニングとまでとは言わないが、それなりに体を鍛えているからな。ランサーだって人の事はいえない体をしているだろう」
私の返事にランサーは特に反応も示さず、ただじっと私の腹を見つめている。何も言わずに見られていると、まるで視姦されているようで何だかだんだんむず痒いような変な気分になってくる。どうせ脱がされるのであればさっさと脱いで、とっとと貰い終わりにしたい。その時ランサーが微かに呟く。
「マジマジ見ると、やっぱりお前の腰は細ぇな」
聞えるか聞こえないかの微かな呟きだったが、静かな部屋では大きく聞える。その声の中に妙な空気になりそうな気配を察した私は、それをどこかに押しやりたくて、何も気付かない振りをして声をかける。
「何を馬鹿な事を言っているんだ、ランサー。じっくり見たって何もないただのごついだけの男の体だ。私の上半身裸なんて何の面白味もないし、酒のつまみにもなりもしない。脱がすならとっとと脱がせてくれないかな。こんな馬鹿馬鹿しい事はさっさと終わらせ、早く飲みなおすとしようじゃないか」
『ああそうだな。とっと済ませて、飲みなおそうぜ』そんな言葉が返って来ると思ったのに、私の予想に反してランサーはどこか不機嫌そうな表情を浮かべた。
「ふうん。そういう事を言うなら、アーチャーも手伝えよ」
「私が手伝うって、どうやってさ」
「簡単だ。オレがボタンをはずしやすいようにしてくれ」
「はずしやすいようにって、一体どうすれば」
「そうだな。ああそうだ、何かポーズを取ってくれ」
「はあっ、貴様正気か?」
「おう、勿論正気だ。宜しく頼むぜ、アーチャー」
にやりと笑って見せたランサーは、お手本のような綺麗なウインクをしてみせる。今度は一体何を言い出すのかと思ったが、早くこんな事は終わらせて欲しいと思い仕方なく上半身を軽く起こす。
はだけられていた部分のシャツが体を起こしたことでパサリと音を立てて脇に落ち、肌があらわになり内側に篭っていた熱が開放される。
ポーズといわれても、すぐには思い浮かばない。ボタンをはずしやすい格好なら、こんな感じだろうか? そう思って手を頭の後ろで組み軽く肩を反らしてみるがそんな私の様子をランサーはじっと見つめている。
熱のこもった視線に当てられ、息が乱れてくるのを落ち着けようと私はゆっくり呼吸を繰り返す。
「ふうん」
短くそういうと、ランサーは又私の事を見ている。
「ランサー、いわれた通りにしたぞ。脱がすなら手早くしてくれ」
「いや、何かな。お前のその格好、凄くいやらしいな」
「何を言っている、このたわけが。私は肩を少し反らせただけだ」
「そう、今アーチャーが肩を反らしただろう? そうすると肩と一緒に、胸も反るんだ。なんっつーかその恰好、胸を突き出しているみたいで妙にいやらしく見えるな」
「くだらないことを言っているなら、もうおしまいだ。その手を離せ」
何気なくした仕草なのに、いやらしいとか言われると何だか急に恥ずかしくなり、頭の後ろで組んでいた手を下ろす。
そう言って上にあげていた手をおろし、まだはずしていないワイシャツのボタンを摘まんで弄んでいたランサーの肩を軽く押して、私の上からどかせようとするが、彼の体はビクともしない。
ムッとした私は今度は力を込め押してみるが、ランサーの体は微動だにしない。何となく彼には敵わないと言われているようでカチンと来て、更に力を込めて押すがビクともしない。
「手、邪魔だ」
独り言のように呟くと、ランサーは弄んでいたボタンから手を外し、自分の肩を押さえていた私の手を掴むとするりと下ろしてしまう。
「どうかしたのか、アーチャー」
不思議そうにそう言うと、俺の手を掴んでいた手を離しそのままスッと何気なく私の胸元に手を置いた。
ランサーが触れている場所から、彼の体温が伝わってくる。ただ触られているだけなのに、心臓が一気に走り抜けた時のように鼓動を早める。自分のものではないその熱は、触れている部分から私の中に無遠慮に入り込み一気に体中を駆け昇る。
触られているだけなのに、何でこんな風になるんだ? 私は微かに息を呑む。
「こんなに鼓動も早い。今頃酒が回ってきたのか?」
無邪気に聞いてくるランサーは、胸元の手の指先に少しだけ力をこめてきた。
私が返事をしないでいると胸元置いていた手はゆっくりと下され、又私のシャツのボタンを外そうと伸ばされた。肩を再び軽く抑え制止すると、ランサーは不思議そうに軽く首をかしげてみせる。
「なあ、何で止めるんだ?」
「いや、その。だから」
「だからどうしたって言うんだ。オレはただワイシャツを脱がせているだけだ。なあ、アーチャー。お前やっぱり恥ずかしいんじゃないのか?」
「ハッ。そんな事あるか」
「ふうん。なあ、アーチャー。お前って胸囲があるから、脱いだら余計に腰が細いのが強調されてるな」
「・・・・・・たわごとを言うな」
「たわごとじゃねえ。アーチャー。お前の体って、妙にエロくてそそられるんだよ」
「このたわけが。何を、馬鹿な事を言っている」
「やっぱり、オレに見られて恥ずかしいのか? 可愛いな」
吐き捨てるように言った言葉は、囁くような言葉で返される。
過去に風呂上りに上半身裸でうろついていたくらいだから、ランサーの前で肌を晒すのなんて恥ずかしくなど無かったはずだ。それなのに囁かれた言葉の意味を理解した途端、耳がカッと熱くなり自分の顔が一気に赤くなったのが分かる。
「ん、アーチャー。でも、お前顔真っ赤になってるぞ。やっぱり恥ずかしいのか?」
「別に。恥ずかしくなんてないと言っているだろう」
声が自然と小さくなってしまう。
今まで何とも無かったはずなのに、自分の体が性的に見られていると言われた途端、変に意識して羞恥心を煽られてしまう。だが正直に恥ずかしいと言うのは、何かに負けたような気分で言いたくない。
「なあ、声が小さくてよく聞こえねぇ。じゃあ、さっきの続きするか」
どうにか誤魔化せないかと逡巡している隙に、ランサーの手は又ボタンを外すべく伸ばされた。私は咄嗟にその手を払いのけてしまい、乾いた音が部屋の中に響きわたる。
「おい、アーチャー。何で止める」
「・・・・・・ランサー、もういい加減にしてくれ」
「いい加減にしろって何をだ」
「だから、もう勘弁してくれ」
「だから勘弁してくれって、何のことだ」
鼻に皺を寄せてこちらをねめつけ問うランサーの顔から視線をそらす。
羞恥のあまり真っ赤になっているであろう自分の顔をランサーに見られたくなくて、そのまま手のひらで自分の顔を覆う。もう片方の手も使い両手で顔を隠すと、そのまま後ろに倒れこみ軽く横を向いた。
「ん、何で顔を隠すんだ。やっぱり恥ずかしいのか?」
恥ずかしいかどうかなんて、今の私の状態を見ていれば分かるだろう! そう怒鳴りつけるよりも早く、ランサーは私が顔を隠していた手を外すと顔の脇で押さえつける。
「なあ、言えよ」
「・・・・・・貴様は目が見えないのか? 恥ずかしいかどうかなんて、私のこの顔と態度でとっくに分かっているんだろうが! なあ、ランサーお願いだ。私が悪かった。君の言うとおり、今度からは気をつけよう。だからこんなふざけた茶番はいいかげん終わりにしてくれ」
「なあ、アーチャー。オレは分かっていたとしてもお前の口から聞きたいんだ」
恥ずかしさの余りキレ気味に叫んでしまった私に、ランサーはグッと顔を近づける。
「あとな、お前が恥ずかしかろうが恥ずかしくなかろうが、もうそんな事は関係ねえ。お前が止めろと言ってもさ、オレはこのままお前を脱がせる」
「・・・・・・は? このまま脱がす、だと?」
信じられないような言葉がするりと出てくるから、私は唖然としながら聞き返した。
「ああ、お前の事をこのまま脱がせると言ったんだ」
「ハハッ。よく言ったもんだな」
「あ、何だって」
「私の事を脱がせるというが、貴様だって両手が使えないじゃないか? そんな状態で私の事をどうやって脱がすと言うんだ? 今の状態で脱がせられるものなら好きにするが良い」
さっきから私の手はランサーの手に押さえつけられてしまっており、身動きが取れない。と言う事は、逆に今はランサーも手が使えない。
その状態からどうやって、私のシャツを脱がすというのか。少し心に余裕の出来た私は鼻で笑いながらそう言って見せるが、ランサーは無言のまま私の事を見下ろしている。
「それと、何度も言うが私の服を脱がしてどうするんだ。異性の体ならまだしも、貴様と変わらない同性の体を見ても面白くもなんともないだろう。酒のつまみにもなりもしない」
「ほう、言ったな」
良く見るとランサーは、さっきまでのどこか茶化すような目つきではなく、まるで餓えたようなギラギラとした目で私の事をじっと見つめている。
私は・・・・・・私はそんな彼の視線に心臓を射抜かれたように、動く事ができない
ランサーは手を押さえつけたまま体を傾けると、寝ころがっている私の耳元にそっと顔を寄せた。微かな息で髪は揺れ、体の奥がぞわりと揺れる。
「アーチャーは馬鹿だな。なあ、分からないのか? 手が使えないとしても、幾らでも脱がすことは出来るんだぜ」
思わず目を見開き、口を軽く開けたまま彼の事をじっと見つめると、顔を上げたランサーは今まで見た事が無い妖艶な笑みを浮かべてみせた。
「お前の体が面白いのか面白くないのかは、お前じゃなくてオレが決める」
急に口の中が乾いてきて、喉が張り付き声が出せない。どうにかしようと無理やり唾を飲み込むと、静かな部屋に喉を上下させるその音がやけに大きく響いて聞こえた。
その音を聞いたランサーは、何故か満面の笑みを浮かべながら私の腹の辺りに顔を近づけると、ほうっとため息にも聞こえる様な息を吐き出した。臍のすぐ近くで息を吐かれた微かに背中が反ってしまう。
「どうしたんだ、アーチャー?」
自分が原因だというのに不思議そうな声で訊ねてくるランサー。
腰の辺りがなんだか軽く引っ張られた様な感じがして不思議に思い顔を下に向けると、途中までボタンのはずされたシャツの片側がいつの間にかランサーの膝に押さえつけられてピンッと綺麗に引っ張られていた。
ランサーは顔を更に近づけると、シャツの引っ張られていない方の生地を軽く歯で銜え薄い唇で挟み込んでみせる。
何をしだしたかと驚いて目を丸くしている私を見ながら、ゆっくりとゆっくりと生地を引き上げ始めた。
目を丸くした私から視線をそらさぬまま、ゆっくりとまるで見せつけるかのように、少しずつくわえた生地を引き上げていくが、その動きが不意に止まる。一体どうしたのかとそちらに視線を向けると、そうやら外していないボタンの位置まで生地を引き上げたらしい。軽く目線を落としてその事を確認したランサーが軽く左右に首を振ってみせると、プツッという小さな音が聞こえ生地を銜えているその顎がクイッと持ち上がった。
「ほらな、アーチャー。わかるか? 手を使わなくてもボタンを外すことなんざ、幾らでも出来る。一番上のボタンは最初にオレがはずしているから、ボタンは残り二個だ」
シャツを銜えたまま少しくぐもった声でそう話してくるランサーは、何故か嬉しそうな顔で赤い目を三日月の様に細めて笑う。その顔に魅入ってしまった私が喘ぐ様に吐いた息の音が、静かな部屋の中に響き渡る。
ボタンを外したことで少したわんだシャツの生地を、ランサーは膝を使って器用にピンッと張っていく。次のボタンはちょうど胸の真ん中の位置にあるから、今の私は胸板が半分程見えてしまっている。
そんな私の姿をランサーはどこか妖しい笑みを浮かべながら見た後、首を左右に振った。再びプツッという小さな音が聞こえ生地を銜えているその顎がクイッと持ち上がると、私の胸があらわになり思わず息を呑む。そんな私を見つめるランサーの目の奥に、私の知らない色が見え、咄嗟に視線をそらす。底が見えない不思議な色・・・・・・いや、そうではない。私はこの色の名を知っている。
この目は深淵だ。その奥に隠された感情に気付いてしまったらもう元には戻れない。
ぱっと口を開き銜えていた生地を口から離したランサーは、微かに視線をそらした私の事をじっと見下ろしていたが、おもむろに顔をさげてきた。私の腹に唇が減れるか触れないか位の距離まで顔を近づけるので、腹に息がかかってくすぐったいような何だか変な感じがする。
そのまま唇が触れるか触れないかの距離を保ちながら、腹を唇でなぞりあげるかのように顔を移動させる。
ランサーの前髪が肌に触れてくすぐったい。それと同時に彼のつけているイヤリングが時々肌をひやりと撫で上げるから、何だかぞくぞくしてきて思わず背を反らしてしまう。
「ンッ」
背をそらしたことで彼の唇との距離が無くなる。私自ら、彼の唇に肌を押しつけてしまい血の気が引いてしまう。
「す、すまない、ランサー。ワザとじゃないんだが・・・・・・はっ?」
慌てて反らした背中を戻し、顔を上げて謝ろうとした私は言葉を無くす。反らしてしまった背中を戻したことで離れたと思ったランサーの唇は、離れるどころか私の肌を追いかけ更に強く押し付けられた。
驚きのあまり言葉が出ずに荒い息を繰り返している俺を、彼は妖艶な笑みを浮かべながら見つめている。いつの間にか、二人の間に漂う空気がねっとりとしたものに変わってきている。
「なあ、アーチャー。もう一度言うから良く聞け。このまま俺に脱がされた後、お前は一体どうなるのか分かっているか? 脱ぐ事に意味はないといったが、今でもそう言えるのか?」
「そ、れ、は・・・・・・・」
カラカラに渇いた口の中を湿らせたいが、粘ついた唾液しか出てこない。それを無理やり飲み下すが、乱れた息はそれ位じゃ整ってはくれない。
「ボタンは最後の一つだ。オレがそれを外す間に、良く考えときな」
「貴様・・・・・・随分と上から物を言うもんだな」
精一杯の虚勢を張って言ってはみたものの、羞恥心に溢れた私の手がさっきから細かに震えていることなんて、私の手を押さえ込んでいるランサーにはとっくにわかっているのだろう。
「オレとお前がこの後どうするかってことだ。お前は脱がせれるなら好きにしろといった。そしてオレはお前の事を脱がせる。アーチャー、これを最後まで脱がした後で、オレがお前に何をするんだろうな」
ランサーは上目づかいに俺を見ながら舌をゆっくりと伸ばす。見せつけるように俺の腹を舐め上げ顔を動かしていく。艶かしいその仕草から思わず目をそらしかけると、それを感づいたのかランサーはぞくぞくするような低い声で囁いてきた。
「アーチャー、オレから目を背けるな」
その鋭さに微かに肩を震わせながら視線を戻すと、赤い目が射抜くように私の事を見ていた。
「そう、良い子だな」
目をそらしたいのに、そらせない。私を見つめる赤い目が三日月形に細められ、ニッと口の端を上げたそこから飴を煮詰めたような甘い声が降って来る。
まるで視野が狭くなってしまったみたいに、私の目にはランサーしか映らない。
私は今どうするべきなのか。自分自身でも分からない。
私から視線をそらさぬまま、ランサーはゆっくりとシャツを咥えると、まるで獰猛な獣が餌を食いちぎるような荒々しい仕草でいきなり大きく首を振る。勢いをつけて引っ張られたシャツからフッと言う微かな音が聞こえ私の上半身があらわになる。
動きを止めたランサーの髪が一歩遅れて私のむき出しになった胸板を叩く。
咥えていたシャツを口から離し顔を近づけてきたランサーの欲を飢えた赤い目に映っていたのは、その鋼色の目に自分でも知らない欲を湛えた私の顔だった。