(続)16→22
現パロ士弓。16歳士郎さんと22歳アーチャーさんの年の差士弓の続きです。
ツイッターの診断メーカーのアンケートお題で「もう一度だけチャンスを…」という台詞を使って作文する、に乗っかって書いたもの。
前作はコチラ↓
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「まだ起きていたのか?先に寝ていろと言ったろう」
背中にかけられた声に、士郎はノートから顔を上げた。
「ん、ああ、宿題やってた。……終わったのか?」
鉛筆をノートに放ると、んー、と両手を上げて伸びをする。
振り返れば、疲れた顔のアーチャーが戸口に寄りかかっていた。
「ああ、最後の客がなかなかに粘ってくれてね」
「それはお疲れさん。……今何時だ?」
「1時を回ったところだ。子供はとっくに寝る時間だな」
「だからいちいち子供扱いすんなって!風呂、沸かしておいたんで入ってこいよ」
「風呂?」
「ん、そろそろかと思って追い焚きしておいた。今日週末だし忙しかったんだろ?ゆっくり浸かって体ほぐして来いよ?」
「風呂ね……」
「アーチャー?」
「……いや、お前にしては珍しく気が利いてると思ってな。ありがたく頂戴してこよう」
「俺にしては、は余計だよ。行ってらっしゃい」
肩を回しながらバスルームに向かう広い背中を見送ると、士郎は机の勉強道具を片付け始めた。
それを足元の学生鞄にしまっていく。
ここは、アーチャーが務めるバーの2階、彼が居室にしているワンルームの部屋だ。
質素を好む彼らしく、ベッドと事務用の机と椅子、造り付けのキッチンにいくつかの家具のみという生活感の薄いシンプルな空間となっている。
通っている高校が明日休みのため、士郎はアーチャーの部屋にこうして泊まりに来ていた。
士郎とアーチャーの関係は、体面的にはいわゆる幼馴染というやつで、二人の出会いは士郎が小学生に上がった頃に遡る。
義父の切嗣に何やら恩があるというアーチャーは、士郎の自宅に頻繁に通い、彼ら親子の家事や料理を担当してくれていた。
当時の士郎には分からなかったが、この時のアーチャーはまだ中学生だったため、切嗣も、同じく衛宮家に通ってきていた姉も何度もそれをやめさせようとしたが、彼はそれを頑として受け入れなかった。
結局、根負けするような形で衛宮親子と姉と彼の奇妙な家族のような穏やかな日常が始まった。
それは士郎が中学生になるまで続いた。
やがて、一通りの家事と料理がこなせるようになった士郎の姿に(教えたのはアーチャーだったが)自分の役目は終わったと認識したのか、彼が衛宮の家を訪ねることは一切無くなった。
その数年前に切嗣が亡くなった事も理由の一つとしてあるのだろう、と士郎は思っていた。
だが、彼が衛宮家から、いや衛宮士郎から距離を置こうとしたのはそれだけが理由ではなかった。
「あんたが好きなんだ!」
大学を中退し、バーの雇われマスターとなったアーチャーはますます士郎との接点を無くそうとするかのように、今まで住んでいた所を引き払い、この店の2階に移り住んだ。
だというのに、当の士郎がこの店のアルバイトとして通い始め、変わらずアーチャーと顔を合わせるという状況は続いていた。
(これについては店のオーナーの意向もあり、アーチャーが異を唱えたところでどうする事も出来なかった。)
こうなれば、多少露骨にでも士郎を避けてやろうとしていたアーチャーに、文字通り体当たりしながらぶつけられたのが、先のどストレートな告白だった。
ここに来て、とうとうアーチャーも観念した。
つまり、自分の気持ちに向き合うことにしたのだ。
ーー自分も衛宮士郎を想っているということに。
そして、今に至る。
今夜のように休みの前日には士郎が彼の部屋に泊まりに来たり、休日を共に過ごしたりするようになっていたのだ。
「風呂上がったぞ」
ぼんやりと物思いにふけっていた士郎は、かけられた声にハッとして顔を上げた。
振り返り、そこに立つ風呂上がりのアーチャーのしっとりとした姿に思わず息を飲む。
普段上げられている前髪は濡れて落ち、湯で上気し血色の良くなったアーチャーの顔に、士郎はどこか落ち着かない気持ちになる。
「あ?え、えーと、俺はもう入ったし」
どぎまぎと視線を外しながら返す士郎に、アーチャーは呆れたように嘆息する。
「……お前、明日休みだから泊まりに来たのだったな?」
「そうだけど?」
「ちなみにオレも明日は休みだ」
「? 知ってるぞ?」
「…………」
「……えっと、アーチャー?」
黙り込んだアーチャーを不審に思い、向けた士郎の視線を避けるようにアーチャーがふいっと顔を背ける。
そのまま踵を返すと、部屋の出口へと向かう。
「私は店のソファで寝る。おやすみ士郎」
「お、おやすみ……?」
立ち去るアーチャーを呆然と見送りかけた士郎は、その首の後ろや耳の先が明らかに紅潮しているのに気がついてしまった。
風呂上がりだというにはそれはあまりにも真っ赤で。
ふいに閃く。
ーーそれってつまり……!
「ま、待った、アーチャー!」
駆け寄って、立ち去ろうとする腕を後ろから慌てて掴んだ。
心臓の鼓動が早まる。
つられたように自分の顔もどんどんと熱くなっていくのが分かる。
「……もう寝ろ」
「いや、あの、」
「離せ」
掴まれた腕を振り払おうとするのを、離すまいと強く握り逆方向に引っ張る。
引きながら、頑なに振り返らないアーチャーの顔を後ろから覗き込むように首を伸ばした。
眉間に深く皺を刻んだ不機嫌そうな顔は、見覚えのあるお馴染みのものだったが、全面に血が上った真っ赤な顔と気まずそうに揺れる目は、おそらく初めて見るものだ。
「あ、あのな、アーチャー?」
「なんだ!」
「その、やり直させてくれっていうか」
「……何をだ?」
腕を引く力が弱まったのを感じて、今だ!と正面に回り込んで頭一つ分大きい男の顔を見上げる。
お揃いのように赤くなった顔を突き合わせると、いつかの告白のように真っ直ぐに目を合わせる。
「もう一度だけチャンスを……」
「ーー言ってみろ」
強請る自分を見下ろすアーチャーの目に、ちらりと覗く期待を正しく読み取って、士郎は続けた。
「アーチャー、俺とーー」
End
はじめまして FGOが盛り上がり、士弓増えるかなー と思いきや、濃いキャラ多すぎて(苦笑) 期待していたが、やはりかわらず茨道 サイト閉鎖も多く、こちらで読めるの はありがたいことです(アリガタヤアリガタヤ)