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規則正しい心臓の鼓動は確かにヒトのそれと同じで、そのあまりの違わなさに苛立ちのような心のささくれを自覚した。
いっそ、人間と全く違うのであれば、鼓動もなく呼吸もない戦闘機械のような存在であるならば、こんな風にいま感じる事もないのに。
温かい広い胸板に耳を押し当て、そんな八つ当たりにも似た思いに耽っていた士郎は、
「眠れないのか?」
と不意にかけられた声にはっとする。
「悪い。起こしたか?」
「人の上で寝心地悪そうにずっと身じろぎされてはな。あげく、ため息ときた」
「……悪い」
「人をマットレスだか枕だかにするのは勝手だし、それを許したのも私だが、寝心地は保証せんとも言ったぞ」
「あ、いや、そんなんじゃなくて……」
むしろ寝心地は悪くないです、と小さくこぼしたのへ、それは何よりだと笑い混じりの応えが返った。
同時にぽんと頭に手がのせられる。
大きな手が髪をかき分け頭皮ごとゆるゆるとマッサージするように撫でてきて、手のひらの温もりとその感触の心地良さに自然に目が閉じられる。
とくとくとく、と頬を叩く規則正しいリズムは確かにこの男がここにいることを証明していて、それにじわりとした喜びを感じる。
そうだ、仮初めだろうと偽物だろうと、呼吸をして鼓動を刻む温かな体は確かにここにある。
それで良い。
髪をなでる手と密着した人の体温がとろりとした眠気を呼びこんできて、士郎は逆らわずにそれに身をまかせた。
水中へ沈んでいくように音や感覚が遠く小さくなっていく。
だから、
「おやすみ」
という男の低い声がらしくなく、ひどく優しく聞こえたのは、きっと寝ぼけてたからなのだろう。
End
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