冬優子「…………」
P「…………」 キーボードカタカタ
冬優子「……」
P「……」 カタカタカタカタ
冬優子「プロデューサーさん♥ ふゆと、デートしてくれませんか?」
P「やだ」 キーボードカタン!
冬優子「…………」
P「…………」 コーヒーノミノミ
冬優子「……」
P「……」 キーボードカタカタ
冬優子「……いい度胸してるじゃない」
P「何万人の前で歌って踊る冬優子ほどじゃない」 カタカタカタカタ
冬優子「まずモニターから目を離しなさい!」
P「今忙しい」 カタカタカタカタ
冬優子「忙しくても、人と話すときは目を見て話す!」
P「冬優子っていいお母さんになりそうだよな」 ハハハ
冬優子「そ、そういうのいいから!」
P「すごいな。見てなくても顔が赤いのがわかる」 カタカタカタン!
冬優子「っ! あんたねー!」
P「ちょっと待て……これで……一息つく!」 カカタンッ!
冬優子「……ついたのね?」
イスクルッ
P「で、わざわざ俺の仕事を止めるほどの話ってなんだ?」
冬優子「そこから!?」
P「そこからもなにも、話はもう終わってただろ?」
冬優子「はぁー!?」
P「声を荒げるほどのことか?」
冬優子「ふゆとのデートの誘いを断っといて、よくそんなセリフ吐けるわね!」
P「いやなものはいやなんだからしょうがなくないか?」
冬優子「まず! なんで! ふゆとのデートが嫌なのよ!?」
P「いやだから」
冬優子「こどもか!」
P「ものごとに理由を求め過ぎるのはよくないぞ。人間はもっとシンプルに生きるべきだ。いやなものはいや。それでいいじゃないか」
冬優子「担当アイドルとのデートが理由もないくらい嫌ってことは大問題でしょ!?」
P「それを言い始めたら、アイドルとプロデューサーがデートすることがすでに大問題だろ?」
冬優子「それは……その通りだけど……」
P「まぁ今更か。冬優子とオフを一緒に過ごすのも珍しくないし」
冬優子「そ、そう! 今まで何度もふゆに付き合っておいて、なんで今回に限って嫌なのよ?」
P「気分じゃない」
冬優子「気分!?」
P「冬優子だってあるだろ? 好きなことでも気分じゃなかったり、モチベーションがなくなること。今の俺がそれ」
冬優子「そりゃふゆにだってあるけど、ふゆとのデートに対してそうなるのはおかしくない!?」
P「そうか?」
冬優子「そうよ!」
P「……とはいってもな。次のオフは一日家にいるつもりだったから、正直外には出たくない」
冬優子「その気持ちもわかるけど!」
P「……よし、わかった。お互いに妥協点を取ろう」
冬優子「妥協点?」
P「前提を確認するが、冬優子はどこか行きたいところがあるわけじゃないんだな?」
冬優子「……ええ」
P「で、俺は家にいたい。つまりだ」
冬優子「ちょ、ちょっと。それって!」
P「事務所でデートしよう」
冬優子「………………は?」
P「そうだな……事務所に読みたかった漫画とかアニメのDVDとか持ち込んで、メシはコンビニ……はさすがに味気ないか」
冬優子「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
P「なんだ?」
冬優子「事務所? デート?」
P「そういってるだろ?」
冬優子「さっきの話の流れなら、普通あんたの家じゃないの!?」
P「さすがに担当アイドルをプロデューサーの家に招くのはまずいだろ」
冬優子「そもそも、どこに妥協点があるのよ!」
P「俺は家でゴロゴロできない代わりに事務所でゴロゴロする。冬優子は外でデートする代わりに事務所でデートする。十分妥協点とってるだろ」
冬優子「それって妥協点なの!?」
P「むしろ、普段仕事をする場所でダラダラするとか、背徳感マシマシで楽しいまであるぞ」
冬優子「楽しみ方が捻くれすぎでしょ!」
P「人は禁忌に惹かれるものだからな。理性は適度に外した方が人生楽だぞ」
冬優子「そもそも、事務所とか全然デートっぽくないじゃない!」
P「やること考えたら、お家デートとやらと五十歩百歩だろ」
冬優子「全然違うわよ!」
P「一緒にアニメ見て、寝転がりながら漫画読んで、ゲームの対戦でどっちがコンビニへ買い物に行くかを決めること以上のことをするつもりなのか?」
冬優子「事務所ってとこが全てを台無しにしてるのよ!」
P「誰かが来ることを心配してるなら、はづきさんにそれとなく伝えとけば大丈夫だぞ」
冬優子「それも心配だけどそうじゃなくて!」
P「発想を変えろ。常識に囚われるな」
冬優子「使うタイミングを間違えてる!」
P「……わかった。冬優子がそこまでいやがるなら、事務所デートはなしだ」
冬優子「ふゆが悪いみたいに言われて、すごく納得いかないんだけど!」
P「となると、代案は……よし!」
冬優子「変なこと言ったら怒るわよ」
P「温泉行くぞ」
冬優子「……は?」
P「いつか前のCM撮影のとき、監督から紹介された温泉宿があってな。紹介なしじゃ宿泊できない上、マスコミも報道禁止の不文律があるらしい。そこなら行ってもいいぞ」
冬優子「ちょ、ちょっと!」
P「なんだ? これ以上の妥協点は探すの難しいぞ」
冬優子「なんでそれが代案なのよ!」
P「温泉と事務所デートなら事務所デートの方がいいから」
冬優子「判断基準がわからないんだけど!」
P「運転したくない。金がかかる。連休じゃないから泊まった次の日がつらい。どう考えても事務所デートの方がいいだろ」
冬優子「そもそも事務所デートという発想に問題があることに気づきなさい!」
P「そう言わずに1回やってみないか? 多分、冬優子はハマるぞ」
冬優子「やめて! 本当にハマって人としてダメになりそうだから!」
P「自覚はあるんだな」
冬優子「っていうか温泉? 宿泊? 本当に大丈夫なの?」
P「そこは紹介してくれた監督と不文律を守るマスコミを信じるしかないな。まあ、監督は愛妻家で有名だし、不文律を破るには俺たちじゃ不釣り合いだろ」
冬優子「部屋は? 別々?」
P「どうせなし崩し的に同じ部屋で寝ることになるんだし、1部屋でいいだろ」
冬優子「いいだろって……」
P「大体、同じ部屋だからヤルことヤッてるって発想が下劣だ。それを言い始めたら、事務所で二人きりもアウトだろ」
冬優子「職場と旅館を同じに見たらだめでしょ」
P「で、温泉でいいのか?」
冬優子「事務所デートと温泉って、選択肢すらないと思うんだけど」
P「じゃあ決まりだな。次のオフまでに準備しておけよ」
冬優子「……っていうか、そんな簡単にとれるものなの?」
P「何のための招待制だと思ってるんだ?」
冬優子「だからって、すぐ予約できるほどじゃないでしょ」
P「……ま、大丈夫だろ」
冬優子「……ねえ、ひょっとしてなんだけど……」
P「なんだ?」
冬優子「本当は前から予約してた。とかじゃないでしょうね?」
P「違うぞ」
冬優子「違うの!?」
P「的外れもいいところだな」
冬優子「訳わからない、選択肢になってない選択肢用意しておいて、本命の温泉を取らせるとか、そういうのじゃないわけ!?」
P「そもそもデートがなんとか言い始めたのは冬優子だろ?」
冬優子「ふゆが言わなかったらあんたが誘ってきたとか――」
P「まったくない。次のオフは完全に家でのんびりするつもりだった」
冬優子「だったら本当に、温泉行けるかどうかわからないじゃない!」
P「そこは信用しろ。直前になって事務所デートにはならない」
冬優子「……わかった」
P「じゃあ、話は終わりだな。俺は仕事に戻るぞ」
冬優子「待ちなさい! まだ話終わってない!」
P「……本当に忙しいのだが?」
冬優子「大事なことまだ聞いてない!」
P「大事なこと?」
冬優子「ええ」
P「なんだ?」
冬優子「あんた、本当にふゆに手を出さないの?」
P「ああ」
冬優子「なんでよ!?」
P「タイプじゃないから」
冬優子「担当アイドルがタイプじゃないプロデューサーってどうなの!?」
P「担当アイドルに手を出すプロデューサーの方がどうかしてるだろ」
冬優子「そうだけど、そうじゃないでしょ!」
P「なにがだ?」
冬優子「一緒に温泉行って、同じ部屋に泊まって、それでも手を出さない気?」
P「手を出して欲しいのか?」
冬優子「そんなわけないでしょ!」
P「ならなにも問題ないだろ」
冬優子「問題しかないわよ!」
P「そういえば、前にもこんな話したよな……ったく……」
俺が、冬優子に手を出すわけないだろ?
貴方の書く冬優子とPの関係好きです