いつか堕ちるその時を
この作品には、多少の暴力表現を含みます。
苦手な方はブラウザバックをオススメします。
おかしいですね、ちょっと重い話にしてPの光で純愛にしようとしたんですが、何故かこんな結末になってしまいました。
気に入って貰えたら幸いです。
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「……なぁ、私は……幸せになれると思う…?」
舞台の上、1人の少女 -カミサマ- が1つの質問をこぼした。
いつものファン達に縋るように、彼らが離れないことを確かめるように問う姿とはちがう、
何処にも行く宛てのないかのように言葉を紡いだ彼女に対してファンは何も答えられずに居た。
「…ははは、あんたらも…わかんねぇか、そりゃ…そうだよな……ははは……あははは!!!」
「……あんたらが居りゃ、少しは幸せだよ。」
誑しのようなセリフを吐いて舞台裏に消える彼女の背中に、黄色い声援が突き刺さる
その黄色い声は、彼女からしたら彼女を縛りすり減らす鎖でしかないというのに。
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「ルカ、次のオーディションなんだが……」
いつも通りのミーティング。つまんねぇ。
べらべらとあいつが喋って、それに頷くだけの作業。
なんの意味があるっつーんだよ。
「いつものアイドル雑誌ではあるが、何ヶ月分かをまとめて発行するみたいでな、ボリューム満点企画満載の大きなバックナンバーになる予定みたいだ。」
「その表紙を飾るアイドルを決めるためのオーディション……受けてみないか?」
「……わかった」
「ありがとう。」
「じゃあ改めて、今後のことなんだけど…」
そっからは別に何にもねぇ。
ただのオーディションだと思ってたら、表現力、アピール力を見たいだとか上が言ったらしく、ミニステージでのオーディションになった。
その為のレッスンがそっから始まって、でもいつもより少し忙しいくらいの日々。
そして迎えたオーディション当日。
全部出しきった。しばらくライブもなかったからそこんとこ危ねぇかもしんねぇなんて思ってたけど、杞憂だった。
結果は私が採用。
しばらくしてからそれを聞かされた時も、特に驚きなんてなかった。
「良かったなルカ……!」
「うっせぇ、別に、やれることやっただけ…」
「それでもルカの輝きがスタッフの方々に伝わった、1番だって思ってくれたってことだ。それって凄いことじゃないか?」
「……どうでもいい、んじゃ、帰る。」
「あぁ!撮影のスケジュールなんかは、わかり次第連絡するから!」
ほんとうるせぇ……
……んであいつの姿が……重なるんだよ……
…意味わかんねぇ……
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私のワンマンライブが決まった。
計画段階からずっとあいつは私の心配ばっかしてた。
その度に 随分な世話焼きだなぁ…! なんて一言つけてやれば、黙ってくれなくとも話は変えてくれる。
ライブの情報が世間に発表された頃から、私のスケジュールは空白を許さなくなった。
何年も前からこの道にいる分、それは辛くねぇしむしろいそがしいのはいい事。
だけど私のスケジュールが埋まるってことは、それに付き添ったり企画話をしたりするあいつのスケジュールも埋まるってことで。
ライブ発表から数週間後、あいつが階段から転げ落ちた話を、羽那から聞いた。
「……おい」
「ルカ、おはよう。」
「あんた…大丈夫かよ……」
「大丈夫だよ、別にちょっと足を踏み外して落ちたってだけなのに、しばらく入院〜、だなんて、大袈裟だと思わないか?」
やめろ、笑うな。笑うんじゃねぇよ。
あんたが運ばれた時間、覚えてんのか?
午前1時だぞ…?
あんたが倒れた時に持ってたカバンには私のライブの宣伝用企画のプレゼン資料が入ってたってのも聞いた。
あぁそういえば、前にはづきさんに残業のしすぎで怒られてんのも見たな。
……あんたは、私のせいで怪我したようなもんなんだよ。
……あんたがいなくなったら、誰が私を連れ出してくれんだよ。
あんたが言った一言に…私は……私は………
「……ルカ?」
「あ……」
「そっちの方こそ、大丈夫か?」
「……大丈夫。」
「そうか。」
「……ごめんな。」
「は……?」
「今が大切な時期なのに、プロデューサーの俺がこんなんじゃ、だめだよな……」
「ごめん……ごめん……」
泣いてる。あいつが。
いつも超人みてぇになんでもできるあいつが。
……なんで私のために泣けんだよ。
なんで私のために自分を責めれんだよ。
わかんねぇ…わかんねぇよ……
「……んなことねぇよ。」
「……ルカ……?」
「あんたは…少し…いや、大分働きすぎなだけ……」
「あんたが戻ってくるまでがんばってやるよ。」
「……待ってるから。」
「……!」
「……あぁ!俺も、早くルカの傍に戻れるよう頑張るよ!」
「そこで頑張ったらまた倒れんだろ……」
「あはは……そうかもな……」
「……またくる。」
病室を出る。
1人なって思考をまとめ直す。
まともなことなんて一つも考えられねぇ頭をまわしながら。
……私は、あいつの事が……
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職場復帰を果たしてすぐ、ルカのワンマンライブが開催された。
疲労のせいで転げ落ちただなんて、ルカには到底言えない。
でも多分あの行動からして……
「…気づいてたんだろうなぁ……」
「…何に、だ。」
「おわっ…と…ルカか、お疲れ様!」
「あんがと。…んで、あんたは私が写真やらなんやら撮ってる間に、何考えてた訳?」
ツイスタ用、円盤用に動画や写真を撮ってたルカが帰ってきていたのも知らずに独り言を零していたもので、ルカの問いかけに言葉が詰まる。
「あ〜、いや、なんでもない!ただちょっと、な。」
「ふ〜ん……」
「……私以外のこと、考えたって訳か」
口元に不敵な笑みを浮かべた彼女がそう呟く。
なんだかその一連の仕草が妖美に見えて、心臓の拍動が激しくなっていく。
「んなぁ……」
何かを抱えたような彼女の瞳が俺を捉える。
目が離せない。
「あんたは…私の事……」
「283さーん!!!」
「……あ?」
ルカが俺に何かを問いかけようとした所で、ライブスタッフの方が俺を呼ぶ。
「あ、え、えっと……はい!!」
「あぁお取り込み中すみません……少し映像や写真の確認をして頂きたくて……!」
「あぁ!もちろんです!今行きますね!」
「………」
「ルカ」
「……んだよ。呼ばれてんならさっさと行けよ。」
「あ、あぁ、そうだな、すまない…」
「控え室で、休んでてくれ。話が終わったら迎えに行くから。」
「…ん。」
彼女が端的に返事をしたのを確認して、スタッフさんの居る方へ向かう。
今思うと、この時の俺の背中には、俺の知る由のない視線が向けられていたんだろう。
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映像の確認後、ルカを乗せて車を走らせる。
ライブ会場が事務所、ルカの家から離れてることもあり、流石に当日はホテルに泊まろうという話になった。
「それじゃあルカ、疲れも溜まってるだろうし、充分休んでくれ」
「…あぁ。」
なんだか復帰した直後より冷たくなってしまった彼女の反応に肩を下げつつ、自分も自分の部屋へ足を運ぶ。
前例があるんだ、自分も疲労を貯める訳にはいかない。
(公式のSNSで終演後の告知投稿をして……あ、これははづきさんがやってくださってる……
ならもう今日するべきことはないな……
あとではづきさんにはお礼のお土産でも買うか……)
そうして束の間の休息へと入った自分。
そろそろベッドに…なんて思った時に、ドアがノックされる音が聞こえた。
(ルカか…?)
そう思い扉を開ける。
そこに居たのは予想通りルカだった。
けどその表情は、ライブ成功後とは思えないほど暗さを孕んでいた。
「どうしたんだ…ルカ……」
「……不安になった。」
「不安……?それは…「まず…入れてくんねぇか。」…わかった」
急かすように話を進めるルカに違和感を抱きながら、ルカを部屋に招く。
「それで、不安に、っていうのはどういうことでなんだ?」
「……アイドルとしてじゃねぇ、私としての事だ」
「…話してくれるなら、聞かせてくれないか。」
「あぁ…その前に、1個聞きてぇ……」
「なんでも聞いてくれて構わないさ」
「あんたは…どこにも行かねぇ……?」
どこにもいかない?
それはルカがソロで活動して、まだ不安定だった頃にファンに問いかけた質問。
またその質問をするほど、ルカを追い込む何かがあったのか?
「もちろん、行かないよ。」
「俺はルカのプロデューサーだから。ルカがアイドルを辞めるまで、そばにいて、見守る。」
「……はっははは……」
「…やっぱ……そういうよな……」
「あんたは…『プロデューサー』…私は…『アイドル』……」
「わかってる……わかってるけどさ……」
「もう……いやなんだ……」
そうルカが呟いた直後、肩に強い力を感じて、ベッドに倒れ込む。
押し倒されたのだ、ルカに。
「る、ルカ……?」
「ずっと…わかんなかった……私は幸せになれるのかって…何が…私を幸せにするのかって……」
ルカの両手が、俺の首をぎゅっと掴む。
「独りになってから…それはファンのやつらだって…ずっと言い聞かせてきた……言い聞かせて…歌ってきた……」
俺の浮き出た喉仏を、彼女の両手の親指が押し込む。
動悸が激しくなるのを感じる。
「でも……違った……」
徐々に力が入る。
「私を幸せにすんのは……あんただ……」
体調不良の時とは違う吐き気。
苦しい。
「あんたが倒れたって聞いて…病院に行ったあの日…気づいたんだ……」
「こいつとなら、私が閉ざしていた扉を叩いて、こっちは開いてるって、示してくれたこいつとなら」
「死んだって構わないって。」
そう言い終わるやいなや、指に入っていた力が増し、彼女の語尾が強くなる
「きっとこれが『好き』なんだろうなっ!」
「あんなにてめぇのことが憎かったのに、今じゃあの時美琴を見た時よりも、あんたのことが輝いて見えるっ!!」
「どうせ……あんたも私も……いつか終わんだよ……」
「なら……一緒に堕ちようぜ……?」
強くなっていった語尾は手の力と共に少しずつ弱くなっていって、段々と顔を俯かせる。
苦しさの中で、彼女の感じていることを知りたくて、少しでも感覚を他に向ける。
喉仏に当てられた彼女の手は、震えていた。
首を絞められてから彼女の腕を掴んでいた自分の腕を、彼女の頭に乗せる。
「ルカが……望むなら……っ……それでもいい……」
彼女はずっと、奪うことを恐れていた。
きっと今だってそうだ。
自分の気持ちで、俺から何かを奪うんじゃないかって、怯えてる。
そんな彼女の手を振り払ってしまえば、俺は今までの全てを無駄にすることになる。
マネージャーさんから託されたものも、ルカが八雲なみさんから託されたものも。
だから、言葉を続ける。
「はは……俺も……望んでるなら……何も…怖くないだろ……?」
「ルカは、俺からなにも奪っちゃいない。」
「……っ」
ぽとり、と俺の寝間着にシミが広がる。
もう片方の腕を頭の後ろに回して、そっと抱き寄せる。
「なんで……あんたは……そこまで……」
「そんなの決まってるじゃないか」
「俺はルカのプロデューサー……いや、プロデューサーじゃなくても、ルカの幸せを一番に願ってる人だからさ。」
「……」
ルカは何も言わない。
だけど、きっと気持ちは伝わってる。
「なぁルカ。」
「………」
「もし、ルカがトップアイドルになって、ルカの歌が届かせたい人全員に届いたならさ。」
「その時こそ……一緒に堕ちよう。」
「1番上からおちるんだ、きっとどこの誰よりも、ずっと一緒に居れる。」
「……どうかな、ルカ。」
「……」
「……あんたが…そういうなら……」
「…いや…」
「私も…そうしたい……」
「アイドルとして…やんなきゃいけねぇ事は…残ってるから……」
「あぁ。」
「…んだからよ……」
「?」
「プロデューサーとして……これからもよろしく……」
「……もちろんだ!」
その後は、部屋に戻りたくないというルカの要望を聞き入れて、俺の部屋で2人で寝た。
今は『アイドル』と『プロデューサー』。
そんなことはもちろん起きないし、しない。
だけどもし、彼女が翼を広げきった後なら。
痕もなにも残っていないけれど、俺の首にはたしかに、一生、いや、来世でも消えない呪いが残っている。
どこか重く悲しくてそれでも2人にとっては光がある、そんな雰囲気がとても良かったです 一緒に堕ちようの表現すごく好きです。シャニPかっこいいです