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2016年04月04日22:18

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Trois poèmes de Louise de Vilmorin (プーランク:ヴィルモランの3つの詩)

なんとも艶かしい詩を書いたのはフランスの女流詩人ルイーズ・ド・ヴィルモラン、その詩を用いて歌曲にしたのはプーランク。曲には過激なところはなく、目を輝かせてありふれた夢を語るような喜びを感じるだけの美しさに溢れている。あまり聴く機会のないのはやはり詩の率直過ぎる表現にためらいがあるせいかもしれない。ヴィルモランは1921年4月4日にパリの近郊の町で生まれた。最初の歌のリエージュとはベルギーの美しい町の名前だが、コルクと同じスペル同じ発音であることから、尻の軽い男とあしらっている。2曲目の冒頭の命の水とは蒸留酒のこと。比喩でも何でもなくフランス語ではブランディーを意味する。訳出上命の水ではなく命の酒と変えた。3曲目のタイトルは普通「白衣の天使さま」となっているが、そう訳す根拠が分からない。そもそも白衣の天使とは看護師でもイメージしているのだろうか。ロシアの文学者ミハイル・ブルガーコフに同名の自伝的小説があるが、そちらは白衛軍と訳されている。これは実際に存在した赤軍に対抗する勢力、つまり反ソ連体制を掲げた軍団と言うことになる。また白い軍勢からは黙示録の白い馬を連想しないでもない。白い馬は勝利を意味するので、みだらな妄想を断ち切って信仰の生活に戻りたいと願う点ではかろうじて繋がりがあるのかもしれない。いずれにしても性欲に悩まされたあげく、告白のような詩が綴られたわけだが、驚異的に難しい表現をしていると思わざるを得ない。《Francis Poulenc:Trois poèmes de Louise de Vilmorin, FP. 91》





No.1 「リエージュの少年」
並木道のはずれの掟の樹の下
童話から抜け出て来たような少年が
風にさらされながら突っ立って
行儀良くかしこまって私に挨拶するの

季節の変わり目に鳥が
雨に濡れるのもかまわずにはしゃいでいた
私も何も考えずに
「退屈なの」って少年に声を掛けてしまった

見え透いたきれいごとも口にせず
その晩私のわびしい部屋に入って来ると
蒼褪めた私の体を慰めてくれた
少なくても少年の影は確かな現実だった

でもね、あの子はリエージュの子だった
危ない罠にかかるほど溺れず
軽く、軽く風のように
晴れ渡った草原を走り回っている

そんなことがあってから笑いたくなると
ねまきを着て感じるの
でもピチピチした若い男の子がいなくて
退屈すぎてこのまま死んでしまいそう

No. 2「あの世」
あの世で命の酒
待ちに待った楽しい時間
選ぶのは背くこととは違う
私はこれを選ぶ

私はこれを選ぶ
私を笑わせらるなんて誰もできない
こうやってああして指を動かして
物を書く時のようにね

物を書く時のように
指はこっちへ動いたりあっちへ動いたり
あえて何も言わないけれど
こんな遊びがとても好き

こんな遊びがとても好き
最期のひと息まで
それと分からずに終わらせてくれるから
こんな遊びがとても好き

No. 3「救命隊のみなさまへ」
天上から見守ってくださる救命隊のみなさま
夜にあらぬ妄想に走る私を止めてください
体が触れ合わないよう私を離し
腰に当てられた手から私を守ってください

何よりもあの人の誘惑から解放されますように
あらゆるチャンスを見逃さずに
すべすべした水のあるどこへでも
袖を引っ張ってでも陥落させようとしますから

今よりももっとあの人との愛に溺れてしまう
そんな苦痛を舐めずにすみますように
すでに死んでいる女のような顔を
窓や扉に押し付けてひたすら待つ
冷たく湿った姿を見せなくてすみますように

天上から見守ってくださる救命隊のみなさま
あの人のために泣くのは十分です
この世で私の涙は雨となって降り注ぐ
いつの日か退屈な階段を昇りつめ
私が透明になって空を舞ったら
その時こそあの人の地で
ツゲの樹で覆われたあの人の星で泣こう

一点の迷いもなく良心に従って歩む救命隊のみなさま
あなた方は目を見張るばかりの整った顔立ちをされている
愛の悶えから抜け出せないでいる人への伝言を
無限の空間にあって飛ぶ鳥の群れに託してください
閉じられていない輪で繋がる鎖を私たちのために作ってください


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