自治体システム統一、「5年後」目標に地方「短すぎ」
今国会で成立したデジタル庁の創設などを盛り込んだデジタル改革関連法では、バラバラだった地方自治体の情報システムを2025年度末までに統一させる目標が掲げられている。しかし、地方自治体からは「期間が短すぎる」と不安の声が漏れる。マイナンバーを使って国や自治体がもつ個人情報の利活用をめざす菅政権のデジタル改革にとって、システムの統一は前提となるが、実現への道のりは険しそうだ。
5月12日に成立した「地方自治体情報システム標準化法」は、全国の1741市区町村が住民の情報を管理するシステムに関し、政府が標準規格をつくり、これに基づいたシステムに移行させる。
住民基本台帳や選挙人名簿の管理、年金や介護など社会保険、住民税など税務などについて、各自治体はバラバラのシステムを使っている。政府は同法によって、改修など維持管理コストや職員の負担を減らせる利点を強調している。
また同法では、自治体の情報を管理しておくクラウド環境を国が用意し、各自治体が使うように求める。国と自治体の情報連携が進み、セキュリティーも高まると政府は主張する。
11日の参院総務委員会で、藤井比早之内閣府副大臣は「ガバメントクラウド(国が用意するクラウド環境)を活用することで、庁内外のデータ連携が容易となり、サービスを提供しやすくなる。個別にセキュリティー対策を行う必要がなくなり、安全にシステムを利用できる。住民の利便性向上と地方自治体の業務効率化が期待される」と語った。
ガバメントクラウドの詳細はまだ明らかにされておらず、どのような形で情報連携が行われるのかはっきりしない。政府はマイナンバー制度を活用したデジタル社会の構築をめざしており、実現に向けて「国と地方を通じたデジタル基盤の構築」を課題に挙げる。
政府が描く工程表では、22年夏までにシステムの標準規格の仕様書をつくる。それを基にIT業者がシステム開発に乗り出し、同年度末にシステムを完成させる。25年度末までに全自治体がシステム導入を終えるという方針だ。
しかし、関東地方の中核市の担当者は「25年度末までの移行は精神論だ」と悲観的な見方を示す。
東日本のシステム開発を担当するIT業者によると、新しいシステムへの切り替えには「一つの自治体で通常1年半ほどかけている」という。さきの中核市の担当者は「システム導入の期間は実質3年。全国の自治体の導入がそこに集中すると、業者の人的資源が足りない」と指摘する。
100以上の自治体に基幹系システムを納めている九州のIT業者の担当者によると、システムの入れ替え作業は、自治体とのやりとりに時間がかかるため、年に5自治体程度に抑えてきたという。自治体との相談時間を短縮すると「市町村側が(システムを)正しく理解できず、操作を誤ってしまう」と懸念を示す。
総務省幹部「鶴の一声で違った方向に走っていった」
もともと総務省は、17年ごろから各自治体のシステムを統一する検討を行ってきたが、議論はあまり進んでいなかった。菅義偉首相が就任し、デジタル改革を目玉政策に打ち上げた。
ある総務省幹部は「当初はシステムの規格統一だけを議論していたが、政府と自治体との情報連携の仕組みを入れることが加わり、想定していた構想とは別のものになっていった」と話す。鶴の一声により、法制化が進み、システム統一と導入の目標時期も設定されてしまった。
これに対し、総務省の担当者は「仕様が標準化されるので開発は簡略化されるはずだ」と主張する。武田良太総務相は18日の会見で、「(自治体から)期限を柔軟に考えてほしいとの声がある」との質問に、「システム規模が大きい団体は移行に相当の期間を要する場合がある」との認識を示したが、期限の延長には言及しなかった。
庄司昌彦・武蔵大教授(情報社会学)の話
日本の人口構成を考えると、20年後には高齢者が多く医療や介護の行政ニーズが増える一方、支える世代が少ない時代を迎える。自治体のシステム標準化は、機械でできるところは任せ、人にかかる負荷を減らして自治体を存続させるのが大きな目的だ。
デジタルの力が発揮できるように業務を見直し、「このやり方が合理的なのか」という検討をするべきだ。業務や新しいシステムを適用する作業は大変だが、いつかはやらないといけないことで、先送りするとますます人手は足りなくなる。
正直、5年間での導入は難しいと思っている。政治的な意思決定として、それくらいの強い意思を持たないといけない、ということだ。私は10年くらいかかると言ってきた。最善を尽くして5年でスタートできても、軌道に乗るまでもう5年くらいは見ないといけない。標準化は一回作って終わりではない。最初は出来が悪かったとしても課題をリスト化し、改善する仕組み作りが大切だ。
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