会話

分野にもよるだろうが、少なくとも思想研究においては、先行研究の追跡よりも、一次文献の精読、そして研究対象自身が読んでいた文献への遡行こそを優先すべきであろう。先行研究を丹念に辿ることはもちろん必要な手続きだが、それが中心になると、他人の読みの布置のなかでテクストを理解した気になってしまう。 だが、テクストそのものの論理に身をさらすことと、誰かの解釈を経由してそれに触れることは、似ているようでまるで違う。一次文献に何度も立ち返り、その思考が生まれた問いの磁場そのものに入っていくことが、遠回りに見えて一番確かな道。