「平和だなあ」
「サーヴァントを手元に残しておいてどの口が」
そう毒づきながら醤油せんべいがバリバリとアーチャーの口へ消えていく。
惰性で点いているワイドショーは当たり障りのない話題が流れ、足元はぽかぽかと炬燵の中。今年は冷え込みが早かった。
「国会やってるな」
香ばしい指先でチャンネルを回すアーチャーが止めたのは、居眠り議員達の会議だった。
布巾もだしておくべきだったか。どうもコイツと二人となるとただしく男所帯染みてくると士郎はごちる。
「この頃の首相はこの人だったな。たしか次の……」
「ストップストップおい! やめろ時空が乱れるだろ」
「なんだ、株でも当てた方がよかったか?」
「じいさんの遺産は雷画さんがちゃんと運用してくれてるよ」
ありがたいことに金には困っていない。どうやら外貨も積み立てがあるらしく、冬木を飛び出した衛宮士郎はそういったものも活用していたのかもしれない。もともとじいさんも海外で魔術師殺しの活躍をしていたようだし。
国外のことを思うに、残された通帳の桁の幾つかはイリヤの家のものだった可能性が浮かんでくる。
「イリヤにも相続権あるよな?」
「あるだろうな。彼女に戸籍があればだが……」
「俺、国際法ぜんぜんわからないぞ」
もとよりホムンクルスの一族に人間社会のルールがどこまで有効かも不明だ。
「時計塔に問い合わせれば何かわかるものか?」
「凛が憤死しそうな話だな」
菓子盆からウグイス色の五家宝が取り出される。
「黄色いきな粉の方が好きなんだけど」
「そうだな」
己の前に置かれたそれの透明な包みをしかたなしに剥く。二色入りなので消費が片寄るのだ。そして五家宝は口の中を瞬で砂漠にした。
「なあ、じゃんけんしようアーチャー」
「よかろう」
ストーブを出すにはまだ早く、火の気は遠く台所だ。冷めた湯呑みと急須を前に手の読み合いが始まった。
眼の良さは負けていないし、勝負強さだって五分五分のはずなのだ。今度こそはと衛宮士郎はグーに力を込めた。
ある日の衛宮邸の昼下がり、散るは秋の葉ばかりなり。