CS大阪118ペーパー再録
版権元:Fate/stay night
注意:腐向け(士弓) ネタバレ 獣化
1/13インテで無料配布だったアーチャーに猫耳尻尾を生やしたかっただけの士弓ペーパーです。
お越しくださったみなさま、ありがとうございました。
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私は今悪夢を見ていた。自分の頭に猫の耳が生えてそれを確かめる手にもふさふさの毛並みと肉球が現れて腰部から伸びる尻尾は自分の意のままに動くという悪夢である。サーヴァントは夢を見ない? やめろ、こんなものが現実であるはずがない。最低最悪の悪夢だがせめて夢であってくれねば困る。
「きゃーやだアーチャーかわいい!(大変アーチャー、どうしたのそれ?)」
「凛、開口一番で言うべき台詞は本当にそれか? 心の声とかと逆ではないか?」
「ええー? なんのことかしらー? わー耳がふわふわで尻尾もふかふかだわ。すごい……気持ちいい……」
「おい、やめろ凛。いくら後付けの付属パーツのように見えてもそれは私の体の一部だ。こら、触るな! 痴女呼ばわりされたいのか!?」
「んんーさらふわ……。魔女の使い魔って言ったらやっぱり猫が定番よね。これなら猫嫌いのイリヤは寄りついてこないし! 完璧な計画だわ、流石私」
「やはり君が元凶か! どういうことか説明してもら――おい、いい加減その手を止めろ。いいかマスター、私は君に比較的従順に使えてきたつもりがね、今度という今度はさしもの私も怒――ええい! いいからやめなさい!」
*
「……えーっと。相談ってのはそれで終わりか?」
俺はコメントに窮した挙げ句なんとかそんな台詞を捻り出す。遠坂は氷が融けて色味の薄くなったアイスコーヒーをズゾゾーと吸い上げながら頷いた。
麗らかなとある休日の午後。「アーチャーを猫にしたら拗ねて出てこなくなったわ」という意味のわからない相談を持ちかけて俺を喫茶店に連れ込んだ遠坂は、最後まで聞き届けてもやはり意味のわからない説明を終えた。
「相談ということらしいから助言のつもりで言うけどな、それは多分誰でも怒るし拗ねて出てこなくもなると思うぞ」
「そうなんだけど、ああやって思い切り撫で回すのを楽しみにしてたから面倒な調合作業も乗り越えたのよ? 折角一等毛並みのいいペルシャ猫の毛を調達してきたってのに、あと半日もすれば薬の効果も切れちゃうじゃない」
「遠坂……。おまえ、最近寝てないっていうのはまさかそのためか?」
「え? まあね、三日くらいはこれにかかりきりだったし」
寝てないから頭がおかしくなってるのか、頭がおかしいから徹夜してでもそんな与太薬を完成させてしまうのか。
どちらが先かはわからないがとりあえず今の遠坂は寝不足で発想がぶっ飛んでいるらしかった。徹夜する遠坂をわかりにくくも心配して夜食やらを差し入れていたアーチャーは今の結果に泣いていい。
「……もう十分撫で回した結果あいつも隠れてるんだろ。可哀想だし薬が切れるまでほっといてやれよ」
「けど口ではあれこれ言うけど、撫でると喉を鳴らしてたのよ? 恥ずかしがってるけど本当は気持ちいいんだろうなーって判断するのも当然だと思わない?」
人間としての抗議と猫としての習性を天秤にかけられた結果後者を重視されたというのは、最初から聞く耳を持たれないのより哀れではなかろうか――。
仮にも自分の理想型である男がこのあかいあくまに人権を剥奪されている事実に色々思うところがないでもなかったが、ここは口にせず飲み込んだ。俺より弁の立つアーチャーが引きこもりという強硬手段に出たということは、今の遠坂には真っ当な説教がなんの意味もなさないということであるし、今こいつにもっとも必要なのは説得ではなく睡眠だろう。
「……ここからだと俺の家の方が近いな。ほら、もう出るぞ遠坂。部屋と布団は貸してやるから、反省しながら半日は寝とけ」
促しながら立ち上がる。遠坂は渋っていたが、最低限の理性と、弄んだアーチャーへの同情心くらいはあるのか、最後には俺の提案に頷いた。
――ただし、一つの交換条件を付け加えて。
*
そういうわけで遠坂の家を訪ねることになった。
「……これがその、貴様が確かめなければならないことリストか?」
扉越しの再三に渡る説得に、アーチャーはシーツを頭から被って体を隠しつつ、ようよう姿を現した。てるてる坊主のような滑稽な姿になっているが俺もそれを笑わなかった。端から覗く尻尾の毛先が元気なく垂れ下がっているのが哀感を誘う。
「二度あるかわからない折角の機会だからって」
「ああ、だろうな……。このようなこと二回もあってもらっては困る」
心底から疲れ切った声だ。この俺ですらアーチャーのことをちょっと本気で心配した。遠坂は一度こいつに頭を下げた方がいいと思う。
「リストを見れば凛の意図はおおよそわかった。つまり私がどこまで猫と化しているのか確かめたいということだろう」
俺は手元の手書きリストを見る。
視覚、嗅覚、聴覚の確認。舌は人と猫どちらのものか。尻尾は本人の心情と一致して動くか。猫じゃらしに飛びつくか。マタタビは効くか――。
いよいよ人権というものがない。見てて悲しくなってきた。
「……これをこなせば、凛は本当に二度と私にコレは使わんのだろうな?」
「おう。ちゃんと証文もとったぞ」
口約束だけだと「寝ぼけてたからノーカウント」とか言われる可能性もある。魔術師の界隈では契約というのは特に重要なのだ。
ほれ、ときっちり書かせた証文を見せてやると、アーチャーは非常に怪訝そうな顔をした。逆の立場だったら俺もビックリするくらいの協力姿勢なので疑いを持つのに無理はない。
しかし今のこいつになお嫌がらせをしかけられるのはどこぞの性悪神父くらいしかいないだろう。俺もこの哀れなサーヴァントに追い打ちをかけるつもりはなかった。
「……はあ。この薬も、サーヴァントを変質させるという効果だけ取れば見事なものであるのは確かだからな……。わかった、協力してやろう。さっさと終わらせるぞ」
言うと被っていたシーツを取っ払う。布一枚分の重みから開放された途端、見事な毛並みの猫耳と尻尾が飛び出してきた。
「……」
遠坂が絶賛していた極上の手触りのもふもふは確かに見ているだけでも艶やかで、触れば気持ちがいいんだろうなと容易に察せられた。
「なんだ? 笑いたければ笑え、おかしなことになっている自覚はある」
「いや、笑わないけど……。ダメ元で訊くけど、尻尾触ってみてもいいか?」
「――――」
……結論から言うと、尻尾は触らせてもらえなかった。
アーチャーは手先までフワフワの手触りだったことと、怒るとちゃんと爪が出てくることが判明したので、それは記録に残しておく。
一.視覚と嗅覚と聴覚
「視覚についてはよくわからん。これは私が元々千里眼のスキル持ちで、暗所も見通せるからだろう。嗅覚、聴覚は以前よりも向上しているので、他のクラスであれば暗視能力の恩恵もあったのではないか?」
「ふうん。猫は色の見分けがつかないっていうけど――」
「問題なく見えている。どういう仕組みかは知らんが、より優性な性質が残るようになっているのだろうな」
「ちなみにさっきから耳が動いてるのは自分で動かしてるのか?」
「……それはリストにある項目だったかね?」
「ないけど。気になるだろ」
答えはなかったが、嫌そうに耳が後ろに向けられたので、少なくとも感情とは連動しているらしい。勝手に備考欄を作って付け足しておくことにした。
二.舌の構造および味覚
「人のものだ。特に変化は感じない」
との本人談だが、一応確かめさせてもらう。ここに寄ってくる前に買い出してきた袋をガサガサと漁って目当てのものを取り出した。
「……貴様、私に殺されに来たのか?」
「来てねえよ」
とはいえ並ぶのはいわゆるキャットフードの類いだ。今この瞬間俺に剣を振るっていないだけで十分アーチャーの理性は強固なものと言える。
「このリスト書いてるときに、とりあえず食べさせてみろって遠坂が」
遠坂の指示はキャットフードという曖昧なものだったので、そこから猫缶とカリカリとスティックタイプの液体おやつというレパートリーを揃えたのは俺の判断だが、余計なことは言わないでおく。
「……私は凛に忠義を試されているのだろうか……」
ぼそりと聞こえてきたのは余りに悲壮なひとり言だった。耳も尻尾も力なく垂れている。若干面白半分で買ってきた手前、罪悪感が湧いた。
「ま、まあどれかだけでも食べれば十分だろ」
フォローを入れつつ、とりあえず一番抵抗感が少なそうな猫缶に手をかける。ちゃんとした食器に盛り付けてカトラリーを添えれば、ツナ缶とかの人間用の缶詰食品と大差ない。見た目の上では。
「…………」
アーチャーは無言で、眉間にくっきりとシワを刻み込み、苦渋の決断と言った様子でフォークを手にした。(肉球のせいで持ちにくそうだがそのあたり器用にこなしている。)
自己申告の通り、味覚は人間のもののようだ。アーチャーはおいしいともまずいとも何のコメントも返さなかったが、最後まで下向いたままの耳と尻尾を見る限りはおいしくはないのだろう。猫より人間の方が雑食でグルメなのは明らかなので、優性な性質が残るという仮説から思えば味覚が人間よりというのは妥当な結果だった。
俺はリストの隅にアーチャーの悲壮さを一部書き留めておくことにした。これで遠坂も少しは反省すればいいと思う。
三.尻尾と感情の連動
これはもう今更確かめるまでもないだろう。
苛々と腕を組んで俺の視線を受け止めるアーチャーの尻尾は、ブンブンと忙しなく振られていた。猫が尻尾を振るときは犬の心情とは真逆と聞いたことがあるので、見たまま不機嫌なものと思われる。
しかしアーチャーの上背にあわせて、尻尾も相応に大きなものだ。遠坂の無駄なこだわりによりペルシャ猫の毛並みを獲得している彼の尻尾は、いつ見てもふさふさのふわふわであり、本人の機嫌とは裏腹に人間の手を引きつける魔力があった。
「……えい」
もふ、と尻尾の動きがストップする。
一部猫化という異常事態にアーチャーにも心労があったのか。どうせ避けられるだろうと思って伸ばしてみた手は予想に反して簡単に尻尾を捕まえられていた。
ここに来るまでに仕入れてきた知識で猫の尻尾は繊細なものだと知っている。なのであくまで表層の、一番気になっていた毛並み部分だけを優しく撫でる。すごい、信じられないくらいふわふわだ。これは遠坂が正気を失う気持ちもわか
四.猫じゃらしへの反応
想定外の事態により調査が中断してしまった。
まだ頭がくらくらするが多分全面的に俺が悪かったので文句は言わないでおく。むしろ爪を出さずに猫パンチで済ませてくれた温情に感謝をしなければならない立場かもしれない。サーヴァントの猫パンチ(頭部狙い)は全然シャレにならない威力だったが。
リストも大分埋まったが薬もいつまで持続するか、といった時間だ。あと少しなのでさっさと終わらせてしまおう。ぶおんぶおん振られる尻尾を見ない振りしてさっきと同じ袋から猫じゃらしを取り出す。
「…………」
アーチャーからの殺意が聖杯戦争当時を思わせるくらい高まる。怒るなよ、これも遠坂の指示だぞ。
俺は無心というか悟りの境地でしばらく猫じゃらしを動かした。アーチャーは腕組みのまま不動を保っていて、遠坂の思惑に反して猫じゃらしには興味なしと言った感じであったが――。
(……耳と尻尾が反応してる)
悲しきは男のポーカーフェイスを台無しにする猫パーツ。猫耳は獲物を狙ってか前を向き、尻尾の往復速度も落ちた。アーチャー本人に自覚はあるのかわからないが、耳と尻尾だけ見れば完全に猫じゃらしに意識を奪われる猫の図である。腕を組んでいるのは案外手を出しそうになる猫の本能に負けまいと思ってのことなのかもしれない。
もうしばらく続けていればあるいは人間の理性が猫の本能に陥落する瞬間が見れたのかもしれないが、その場合猫じゃらしの操り手である俺への被害が発生しそうなことに気がついたのでここらで止めておいてやることにする。
アーチャーの名誉のため、リストには単に〝猫じゃらしには飛びかからない〟とだけ記すこととした。
五.マタタビへの反応
最後の項目に来た。
これも道中買ってきてある。パッケージに猫の写真が印刷されたかわいらしい感じの粉末マタタビだ。外袋の中には更に小袋が入っている。
『成猫でも初めてであれば半分程度の少量からはじめましょう』――アーチャーは成猫というか成人男性なのだが、どれくらいが適量なんだろう。万が一があっては困るしとりあえず猫規準でスタートしたらいいか。
裏の説明書きを読んで黙々と準備する俺に、ソファに深く腰掛けるアーチャーはもはや何のリアクションもしない。あれほどの毛並みがややくたびれて見える。疲れているのだろう。
本来はおもちゃなんかに振りかけるらしいが相手は猫ではなくアーチャーである。普通に小皿に出してみることにした。
「ほら」
言って手渡――そうとして相手の肉球もふもふな手を見て止めた。頑張れば持てそうだが零したりしたら面倒だ。俺が持ったまま鼻先に近づけてやることにする。
アーチャーは現実を直視しがたいといった様子で目を閉じた。それでもちゃんと吸い込むためにか深呼吸を何度かする。
「どうだ? 吸うのが効かないなら舐める方が効くらしいけど」
アーチャーの様子に今のところ変化はない。単に量が少ないだけかもしれないが、そもそも普通の猫であっても効果のない猫もいるらしい。……そう思うとアーチャーの猫的性質を確かめるのにあまり適したテストではないような気がしてきたが、今更過ぎるので黙っておく。
「――必要ない」
やっぱり猫規準じゃ量が少なすぎるよなあ、と思い直していたころ、不意にアーチャーがぼそりと言った。
「うん? 今なんて言った」
「もう結果は出たからこれ以上の検証は必要ない、と言った。いいからその皿を退けろ」
「いや、見切りをつけるの早すぎるだろ。ここまで来たんだしもうちょっと試そう」
小皿だけ差し出して舐めろというのは抵抗があっただろうか。せめて飲み物にでも混ぜるべきだったかもしれない。
「手早く紅茶でも煎れるか。ミルクティーにしたら混ぜて飲んでも気にならないだろ」
「不要だ。紅茶でもなんでも好きにすればいいが、さっさとその皿と袋をどこかへやってくれ」
「なんだよ、いやに急ぐな。これが最後なんだし、マタタビだってまだ余ってるんだからせめて小袋一つ分くらいは飲み込んでから――」
「だから! ソレは私に十分効果があるからもう止めろと言っている!」
とうとう立ち上がってアーチャーは怒鳴った。ぶわっと尻尾の毛が逆立って、体格のいいアーチャーの体からもはみ出して見えるくらいの太さになる。
大声に対して反射的に小皿を下げて口を閉じた俺は、フーフーと威嚇してくるアーチャーを前に、彼の台詞を吟味するための時間の空白を要した。
「……効いてるのか?」
まさか、たったこれだけで?
言葉だけなら冗談やからかいだと思えるのだが、アーチャーの様子を見るとあまりに真剣だ。肌色のせいでわかりにくかったが、言われてみると顔が紅潮している。怒ってるから血色がいいともとれるが……、これは本人の証言とあわせると――
「確か猫ってマタタビで発情すr」
「死ね。記憶を失うまでその脳みそ切り刻んでやる……!」
あまりに物騒な宣言とともにこちらに歩み寄ってくる。本気だ。今のこいつならやりかねない。
俺は速やかに男に背を向けて、戦略的撤退をはかることにした。
*
逃げ切れた勝因は、投影した干将莫耶すら自らの肉球のせいでうまく握れないという事実にアーチャーがショックを受けている時間があったからだろう。
屋敷を上から下へかけずり回っている間にアーチャーの怒り(というか混乱もしくは羞恥)も収まったらしく、同時に薬の効果もようやく切れたのか、静かになった追跡者の気配に俺が隠れていた部屋から顔を出すころには、廊下に立つアーチャーからは猫耳も尻尾も消えていた。
「おお、戻ったのか。よかった」
怒りが再燃しないよう気をつけながら近づく。
アーチャーはちらりと俺を見たが、鼻を鳴らすだけで何も言わない。斬りかかってくる気配もないので俺はそのままアーチャーの前にまで足を進めた。改めて確かめるが、やはり余計なパーツはくっついていない。
「ってことは、半日経ったんだな。うわ、外も暗くなってきてやがる」
色々あったがこれで一件落着だ。いい加減遠坂を叩き起こして、この事件の反省文の一つでも書かせる頃合いだろう。
「それじゃあ俺は屋敷に戻るけど、おまえはどうする? ここで遠坂の帰りを待つか?」
アーチャーの前に戻って尋ねる。最後の騒動のせいで屋敷内が少々荒れているので、こいつのことだから片付けにでも取りかかるかもしれない。
「…………」
そんなことを思っての質問だったが、アーチャーは押し黙ったまま何も言わない。
「……おい? どうした、何か言えよ」
怪訝が半分、心配が半分で声をかける。猫になった副作用で今度は口がきけないとかあるのかもしれない。もう何があってもおかしくない。
おかしな態度にもうちょっと近づいて様子を見ようと一歩足を進め――背中が痛い、と思ったら天井を見上げていた。
「――は?」
足払いで仰向けに引き倒されたのだ、などという論理的な思考が復活するより先に、下手人は速やかにマウントポジションで俺を押さえつけ、ぽかんと開いた口に何かを突っ込もうとしてきた。大慌てで口を閉じて阻止する。
がつん、と歯に固い感触がぶつかる感覚がした。防げたはいいがかなり痛い。
「んー! んんんー!(てめーなにしやがる!)」
「何を? フン、決まっている。貴様は猫の耳と尾が気に入りのようだったからな! 消えてしまっては寂しかろうと、同じ目に遭わせてやるだけだ!」
うわ、こいつまだ全然冷静じゃなかったー!?
迂闊に近づいてしまった己の判断を悔やんでも後の祭り。今日一日のストレスによりバグったアーチャーは手にした丸薬的な何かをぐいぐい俺の口に押し込んでくる。
口を開けられないので無言でドッタンバッタンと本気で抵抗する俺が、内心かなり本気でセイバーに助けを求めたのが功を奏したのかなんなのか――。
「何やらおかしな気配を察知しましたが! どうしました、シロウ!」
そう勇ましくセイバーが駆け込んできてくれたのは、俺とアーチャーの下らない格闘がちょうど終わったころだった。
疲れ果てた俺が廊下に転がり、ようやく溜飲を下げたアーチャーがその横に立つという奇っ怪な状況に、セイバーははてなと首を傾げた。
「これは……? シロウ、何があったのです」
「今はちょっと訊かないでくれ……」
彼女の救援が間に合ったのかどうか――つまりこのあとの俺の身に何が起こったのかどうかについては、ノーコメントとさせていただきたい。