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蛙と人形の二重奏/Novel by スピキュールβ

蛙と人形の二重奏

4,043 character(s)8 mins

リハビリを兼ねた2本立て。
年齢制限を付ける程では無いと思うので全年齢です。

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ゲコゲコお鳴き!


 私は俗に言う【悪の魔法使い】です。
 名前?それは別にいいでしょう。
 私は己の楽しみの為だけにその力を振るい、それが他人を苦しめ傷付けようと良心が痛む事はありません。
 だって私は【悪の魔法使い】なんですから。

 今回はスーパーロボット達が人類を脅かす敵と戦う世界を舞台に、人間を魔物に変えて大暴れさせようと思います。
 使うのは『ギガノスの蒼き鷹』の異名で知られるマイヨ・プラート大尉の部下、ウェルナー・フリッツ氏です。
 彼は今まで次元獣だのバルマー帝国だのヴォルクルス教団だのといった連中と戦ってきたので、今頃魔法使い程度で驚いたりしないようですね。
 拘束されてるっていうのに生意気にも此方を睨んでます。
 では、前置きはここまでにして早速変身させましょう。

「闇より生まれし紅き月の輝きよ、我が手に力を与えよ。
虚無へと誘う深淵より、無慈悲な力を放ち、汝を深淵の底へと引きずり込む。
その姿を変じ、妖しき蛙の姿となれ……」

 ぼわわ~んと気が抜けそうな効果音と共に緑と紫が混じった毒々しい色の煙がウェルナーを包む。
 その煙の中でウェルナーの身体はみるみる内に縮小していき、肌の表面にイボが生じるとその体色は元々着ていた軍服と同様の濃い青色に染まっていく。
 手足は細くなる一方で胴体は肥大化し、首は無くなって頭部と胴体は一体化。
「げ、げ、ゲコッ…」
 目は丸々と大きくなって口は横に大きく裂け、だらしなく開いた口からは長く平たい舌が覗いた。

 やがてその煙が晴れると、そこに居たのは拘束されていたウェルナー・フリッツという人間ではなく、ゲコゲコと鳴く小さなカエルだった。
「ふふ、随分と可愛くなりましたね。
ですがこんなに小さくて可愛い蛙じゃ戦いには使えないので、少し名残惜しいですが“強化”しましょう」
 魔法使いはウェルナーだった蛙をケージに入れると上機嫌そうに外に出た。
 広々とした屋外に出た魔法使いは、ケージから出した蛙が逃げないように呪いを掛け、再び怪しげな呪文を唱えた。
「我が手に宿りし禁忌の力よ、顕現せよ。
我深淵より湧き出でし異界の力を操りて、在りし者の姿を歪め物質の法則を捻じ曲げん。変異せよ」
 魔法使いの言葉と共に蛙の体が薄らと光を放ち始めた。
 魔法使いの掌に収まる程の大きさだった蛙は瞬く間に魔法使いの背丈を超え、木々の背丈を超え、20m程の大きさになった。
「……ああでも、これじゃあまだ戦いはできませんねぇ」
 魔法使いは蛙を見上げながら新しい遊びを思いついた子供の様な声で語りかける。
「そうですねぇ……貴方の乗機のように、両肩にキャノン砲でも取り付けてみましょうか!」
 魔法使いがそう言いながらまた詠唱を始めようとすると、蛙は自らの置かれた状況に憤慨しているのか魔法使いに向けて威嚇するように叫び始めた。
 ゲコゲコ、ゲロゲロと耳を塞ぎたくなるような音量のそれに対し魔法使いは怯む事なく涼しい顔をするだけだ。
「おや、何か文句があるんですか?
カエル風情の分際で……。まぁ良いでしょう」
 また魔法使いは呪文を唱えた。
 先程の魔法と違い人間の使う言語とは異なるのか、その呪文の内容はウェルナーには理解できない。
 それはそうと魔法を受けたウェルナーの体がまた光に包まれた。
 光が治まるとそこには、本来巨大ロボに装備されるサイズの巨大なキャノン砲が右肩と左肩に装着されていた。
 ウェルナーの乗機ヤクト・ゲルフ、有名な物だとガンキャノンを想像すれば分かりやすいだろう。
「ふっふふ……ハハハハハっ!!
名前を付けるとしたらケロケロキャノン辺りですかね?
まあ何れにせよ敵を油断させる事は出来そうで……ぶふっ」
 魔法使いはあまりにも滑稽なその姿に腹を抑えて爆笑しながら命令を下す。
「はー…そのキャノン砲なら基地ぐらい跡形も無く吹き飛ばせる筈です。
丁度人間が集まってる観光地があるようなので、そこで一暴れして試してみては?」
 そんな事をすれば無数の死傷者が出るのは誰にでも理解出来る事だが、他人に対する思いやりなど持たない魔法使いには関係ない。
 残酷な言葉をしれっと言い放った魔法使いがむにゃむにゃと転移の魔法を唱えると、蛙の足元に巨大な魔法陣が展開される。
「『○○という観光地を壊滅させろ』」
 魔法使いがウェルナーに掛けた呪いは、『魔法使いの命令に絶対に服従する』というもの。
 つまり魔法使いが『マイヨを殺せ』と命令すればウェルナーは自らの意思など関係なく彼を殺害しなければならない。
 マイヨに心酔するウェルナーにとってそれは絶対に避けたい事だが、強靭な意思だけではこの呪いに抗う事は出来ず、何よりマイヨはこの巨大な蛙がウェルナーだと気付かずに討とうとするだろう。
 ウェルナーが心酔するマイヨを討つ、マイヨがウェルナーを討つ。
 どちらにせよウェルナーにとってもマイヨにとっても救いのない結末になるのは目に見えていた。
「いつか対峙するであろうプラート大尉が、貴方に気付いてくれると良いですね」
 魔法使いは転移したウェルナーに対し、残酷な笑みを浮かべながらそう呟いた。
 そしてすぐにウェルナーへの興味を失ったのか、次は誰をどんな魔物に変えようか思考を巡らせるのであった。

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