【ANYCOLOR(にじさんじ運営会社)】業績好調なのになぜ?株価急落のトリガーとなった「ねじれ」決算を元機関投資家が分析
VTuber企業の実態は「小売業」?PER15倍の評価理由
「VTuberの会社なのに、なぜそんなに在庫を抱えているのか?」という疑問に対し、泉田氏はANYCOLORのビジネスモデルの実態を紐解きます。 第3四半期単体の売上高156.9億円のうち、実に107.4億円(約68%)を「コマース(物販)」が占めています。 ライブ配信やイベントの売上もありますが、収益の柱は圧倒的にVTuberのキャラクターグッズ販売なのです。 泉田氏はこのデータから「ほぼコマースの会社ですよね」と分析します。そして、グッズ販売が中心である以上、売れ残りの在庫リスクを常に抱える構造になっていると指摘しました。 ●在庫リスクと市場のシビアな目線 株式市場の掲示板などでは、ANYCOLORの株価が1株当たり純利益の何倍まで買われているかを示す「PER(株価収益率)」が約15倍という水準にあることについて、「割安ではないか」という議論が交わされることがあります。 しかし泉田氏は、同社が新しいテクノロジー企業ではなく、実態として「小売業」であると市場から見なされている場合、このPER15倍という数字は決して安すぎるわけではないと解説します。 「小売業の究極の仕事って、お客さんが欲しいときに適切に商品を出すっていうのと、いかに在庫を少なくするか。似てるんじゃない? なので、そこを精緻にやれないと小売業としてもバリュエーション(企業価値評価)ってなかなかつきにくくなるんだよね。」 在庫管理という小売業特有の課題を露呈してしまったことで、市場からの評価が厳しくなり、高い株価がつきにくくなっているのが現状のようです。
投資家の期待とのズレ?ROE60%超の超高収益と株主還元のジレンマ
一方で、ANYCOLORの稼ぐ力は極めて優秀です。 泉田氏が動画内で概算したところによると、企業が自己資本をいかに効率的に運用して利益を生み出しているかを示す指標である「ROE(自己資本利益率)」は、なんと60%を超えています。 100万円の元手で1年間に60万円以上の利益を生み出す計算になり、一般的な日本企業のROEが10%前後であることを考えると、驚異的な数字です。 「60%のリターンが出せる事業って他にありますか? (中略)となると、投資家からすると『そのまま今の事業をどんどん伸ばしてくれ』と以外ない」 ●キャピタルアロケーション(資金配分)への不満 投資家としては、これほどのお宝ビジネスを見つけたのだから、稼いだ利益を全額つぎ込んででも事業を拡大してほしいと願います。 ところが、会社側が発表した「キャピタルアロケーション(資金配分計画)」は、投資家の期待とは異なるものでした。 会社は手元資金と将来稼ぐキャッシュの合計約560億円のうち、半分以上の「300億円以上」を株主還元(配当や自社株買い)に充てると宣言したのです。 泉田氏は、ここに企業と株式市場の大きなズレがあると指摘します。 会社側は「VTuberの人数も無限には増やせないし、グッズを作りすぎれば在庫リスクになる」と現実的な限界を感じて株主に利益を返そうとしています。 しかし、成長を期待して投資した株主からは「なぜROE60%の事業に投資しないのか」と失望されてしまったわけです。