残響遥か
Fate/stay nightのネタバレ含みます。UBWルート後の弓兵と、英霊の座にいる本体の話。自分で書いておきながら何ですが、 こ れ は ひ ど い 。一体、救いはどこにあるというのか。
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打ち付けあう剣。間断なく響く鋼の音。
相対するは過去の自分と未来の自分。
その理想はしょせん借り物で、何を救うかさえ定かでは無い破綻した偽善。そんなものを抱く衛宮士郎は間違っていると剣を振るう赤い弓兵。
その刃は重く、鋭く、衛宮士郎に叩きつけられる。
細部の構成が甘い刃は砕かれ、けれども赤毛の少年はすぐさま剣を投影して赤い弓兵に抗う。
衛宮士郎の剣技は、未来の己から流れ込んだ経験の模倣に過ぎない。
未熟な投影、借り物の戦闘技術。
それでも食らい付いてくるのは、ただ意地から。
誰に負けても、自分相手には負けられないという意地。
何度刃を砕かれ、傷だらけになっても、少年は歯を食いしばって立ち向かってくる。
ぼろぼろになって刃を振るうその姿に、弓兵は磨耗して忘れかけていた過去の自分を思い出した。
がむしゃらになって、意地を通して駆け抜けた。そんな過去の自分。
抱いた理想を最期まで信じ、貫き通した己の一生。
10を救うために1を切り捨ててきた。
助からないはずの運命の者たちを救いたくて、世界と契約した。
そうすればもっと多くの人が救えると信じて。
けれども守護者となった自分がさせられてきたのは、千を救うために百を殺し、万を救うために千を殺すような殺戮。
守護者とは殺すためだけに呼び出され、救った者の姿を決して見ることの出来ない掃除屋だった。
だからこの願いは間違えだった。
過去の間違った己そのままに、歪んだ理想を抱いて剣を振るう少年の姿に、彼は力任せに刃を叩きつける。
否定するために、激情のまま刃を振るう。
けれども少年は屈しない。
技術も巧技もない過去の自分の刃が、その感情のままがむしゃらに打ち込まれてくる。
その刃はいよいよ重く、跳ね除け難くなっていく。
刃に乗って叩きつけられる少年の心。
誰もが幸せであってほしいと。
その感情は、きっと誰もが願う理想だ。だから引き返すことなんてしない。
何故ならこの夢は、決して。
「――決して、間違いなんかじゃないんだから……!」
思わず、その刃(想い)を打ち返す手が止まった。
それを愚かだと、間違いだったと呪ったのは自分自身だったというのに。
自分で自分を殺すという矛盾に、世界の修正がエミヤシロウという英霊を消し去るかもしれないという希望に縋って。
まともに考えれば根拠などなにもない、そんな頼りない可能性だけを信じ、訪れるかも知れぬ機会をひたすら待って耐え続けてきたというのに。
その無心の訴えが、どうしてこんなに心に響いてしまったのか。
間違えだと否定する刃が力を失う。
間違えなんかじゃないと叫ぶ刃が胸を貫く。
ああ、確かに。
「――私の負けだ」
この理想は、間違えなどではなかったのだ。
* * *
こうして得た答えに、何が変わるというわけではない。
サーヴァントとして召還された自分が消えれば、ここでの出来事は記録として座に送られる。
記録はしょせん記録であり、記憶には及ばない。実感とはほど遠く、それどころか目が覚めた後の夢の内容よりなお曖昧だろう。
きっと守護者としての数多の記録に埋没し、意識に浮かぶ事もないに違いない。
――それでも今の私は満足している。
誰にも理解されなくても、胸に抱く信念が借り物だとしても。
その理想を信じて駆け抜けた。
とりこぼしたものも多いけれども、確かに救えた命もあったのだ。
そのことに気付けたのだから、まだ頑張っていこうと意地を張れる。
ボロボロになりながらも、自分には負けられないと意地を張り通した衛宮士郎のように。
「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレも、これから頑張っていくから」
大切な彼女に笑顔でそう告げて。
赤い弓兵の聖杯戦争は終わった。
“Fate/Unlimited Blade Works"――end.