【腐】嘘は言わない嘘しか言わない(士弓)
士弓でエイプリルフールネタ。ただのイチャコラ。自分の士弓がイチャコラしてるのは貴重かも知れない。
え? 今日は4/16? え? 違うよ? 今日は4/1だよ? 型月のエイプリルフールネタまだ始まってないよ? 赤王とさっちんがニコ生したなんて知らないよ?
まああれだ。書くの遅い奴は時節ネタはやめとけって話ですね。すみません。
とりあえず、珍しく正統派イチャコラ。今までは士郎が一方的にイチャコラしてる話ばかりだったのでアーチャーにデレてもらいました。つーかこれがせいいっぱいのデレ。
激しくどうでもいいことですがアンケート内容を少し修正しました。
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春の宵。散りかけの桜の名残を惜しんで冬木大橋の上に立ち、街灯に照らされる川沿いの桜並木をぼんやりと眺めていた。
ぼんやりとしながらも常に周囲を探索するのは弓兵として性分だ。
新都の方はまもなく日付が変わるにも関わらずまだまだ賑やかだが、深山町の方は出歩く者はほとんどいない。街灯が少なく開いている店もない住宅街を歩き回るなど、犯罪者か魔術師ぐらいのものだろう。
しかし、私の「眼」は深山町から歩いてくる一つの気配を捉えていた。「それ」が家を出たときからここに向かっていることは分かっていたが、私は煩わしいことだと思いながら、逃げもせずただ夜桜を眺めていた。
わざわざ逃げるのも面倒だ。「これ」に害を及ぼす力などない。
「アーチャー」
「これ」は橋の歩道を少し進むと立ち止まり、支柱の頂上に立つ私を呼んだ。
反応せぬまま見下ろすと、私を捜して視線があちらこちら彷徨っている。気配を絶っていないのでこの辺りにいることだけは分かるのだろう。
どうするべきか。反応すれば面倒なことになりそうだし、反応しなくても後日うるさく言われそうだ。
躊躇っていると奴と眼が合ってしまった。が、こちらを視認しているはずない。たまたまだろう、とタカをくくってそのまま見下ろしていると、
「おーい」
視線を固定し手をブンブン振ってきた。……見えているのか。いや、私の霊力を辿ったのか? まだ気配を感じる程度しかできないと思っていたが、凛の特訓の成果のおかげか探知能力が向上しているらしい。
長いため息をつく。無視すれば諦めて帰るだろうと思っていたが甘かった。こいつが家を出たときに面倒がらず消えておけばよかった。
見つかったものは仕方ない。つまらない用事なら即座に霊体化すればいいだけだし、しばらくつきあってやろう。
もう一度小さく息を漏らすと下へと飛び降りる。
「よかった。間に合った」
数歩離れた歩道に音を立てず降り立つと、奴は何故か安堵の息を漏らして呟いた。
「貴様と待ち合わせした覚えはないが」
その呟きに眉をしかめて言い返すと、奴――衛宮士郎は「違う」と片手を振って示し、ポケットから腕時計を取り出して盤面を見つめた。
何しに来たんだこいつは。つまらない用事のようだが行動が意味不明すぎる。この年頃の私はもう少し落ち着いていたと思っていたが、こいつを見ていると実はこんな単細胞だったのだろうかと不安になってくる。
「よし」
小僧は小さく頷くと顔を上げた。そこに、理解できない不思議な表情を見つけ、しかめた眉をさらにきつく締める。
しかし、奴が放った言葉は聞き飽きたセリフだった。
「アーチャー、好きだ」
まったく……こんな夜中に何の用かと思ったら結局コレか。つまらない結果に鼻で笑い、いつもと同じ言葉を返す。
「そうか。私は貴様が嫌いだ」
だが、そこからは常時とは違って時計を掲げ示してニヤッと笑った。嫌な笑み。私に似てるような似てないような、複雑な気持ちになる笑み。
「かかったな、アーチャー。今は日付変わって四月一日。エイプリルフールだぜ」
「……なに?」
勝ち誇って告げられる言葉が、理解できない。エイプリルフールを知らないわけではないが、それが一体なんだというのだ。
合点が行かず、かと言って意味を問うたら、答えを知りたがっているようで嫌だ。とりあえず沈黙を守りつつ脳内で今の会話の意味を考えていると、
「だから、お前が言った「嫌い」っていうのは嘘になるってことだよ」
仕方ないなと言わんばかりの口調で説明されてしまった。
本当にくだらなすぎて呆れた。エイプリルフールとは言ったことがすべて嘘になる日ではなく、嘘をついてもいい日のことだろう。……と思った瞬間、あることに気づいた。
「つまり、お前は私のことが嫌いなのだな」
私が言ったことが嘘になるというのなら、私を好きだと言う言葉も嘘になる。
――この世界に英霊として召喚された直後はこいつを殺したくて仕方なくて、こいつも私に対して反抗的だった。
だから、本来なら私を好きと言うことが異常なのだ。私たちは元々同じ人間だったのだから。…………なのに、何故か、妙な引っかかりを感じる。衛宮士郎に好きと言われる異常事態に慣れきってしまったせいか。今の世界に取り込まれないよう常に警戒しているつもりだったが、気がつかないうちに染まってしまったのか?
嫌いなのだな、と確認する己の口調が、耳を疑いたくなるほど乾いていた。――認めたくないが、私は少々動揺しているらしい。
「え?」
まだ少年の名残を残した瞳が、大きく見開かれ私を見つめた。
なんだそのマヌケ面は。私の「嫌い」が好きになるならお前の「好き」は嫌いになるのが道理だろう。くだらない言葉遊びだ。だが、一番くだらないのはくだらない言葉遊びに動揺している私自身だ!
そう怒鳴りつけたい気持ちを抑えて、ポカンとしているマヌケ面を睨みつける。やがてマヌケ面はやっと気づいたという表情になった。遅い。だから貴様はマヌケだと言うのだ。
「いっ、いや、違うって! ほら、時計!」
小僧は慌てて時計を再度掲げ、私に見せた。現在零時三分から四分のあたりを示している。
「それがなんだ。日付が変わってエイプリルフールなのはもう分かっている」
フンと嗤ってやると、奴は地団駄を踏んで頭を横に振った。
「ちがーう! 俺のセリフは日付が変わる直前! ちゃんと時計見て確認してから言ったんだよ!」
「は?」
「だから、俺の「好き」は本当の意味で「好き」なんだって! どうせお前が俺のこと好きとか言うわけないから、ちょっと企んだんだ。つまらないことだけど。うわー、今になって恥ずかしくなってきた」
必死に説明する顔が徐々に紅潮し、途中で顔を背けて呻き出した。だが、顔を背けても赤く染まった耳はこちらから丸見えで、私はその耳を見つめ、
「馬鹿か……」
ガードレールに腰を下ろしてガックリと肩を落とした。馬鹿すぎて力が抜け、顔も上げられない。いや、上げたくない。顔を背けたいのはこちらも同じだ。
「どうせ俺は馬鹿ですよ。けどなあ……、って、アーチャー?」
私が座り込んでいるのに気づいたらしく、数歩歩み寄ってきた。視線のみ前方に向けると奴の羽織っている白いジャンパーの胸辺りが見える。
馬鹿は私だ。
「どうしたんだよ。俺の馬鹿さ加減に呆れたのか? けどさ、こうでもしないと……」
自分に呆れ果てる。この世界が悪い。こいつが悪い。こんなくだらないことで、こいつの「好き」が嘘だと思って、動揺して――――嘘でないことにほっとしている自分が、どうしようもなく、くだらない。
「うるさい」
言い訳を続ける声を強い口調で遮り、間近にある肩を鷲掴みにして引き寄せる。こうすれば近すぎて顔も見えまい。熱を持った顔など見せてたまるか。
「貴様など嫌いだ」
額を胸元に軽く当てて告げると、息を飲む音が聞こえ、触れた体が大きく震えた。
「アーチャー……?」
かすれる声が私を呼ぶ。奴の狼狽が伝わってきて、私は口角を上げ声なく笑った。くだらないことで私を動揺させた罰として、もっとうろたえるがいい。
「嫌いだ、衛宮士郎。大嫌いだ。本当に嫌いだ」
何度も嫌いと繰り返すうちに、おかしさがこみあげてきて、声が笑いを含むのを抑えきれなくなった。
本当に嫌いだ。殺したかったのに、眩しすぎて殺せなかったこいつが。臆せず私を好きだと言うこいつが。私を動揺させる衛宮士郎が、嫌いだ。
いつの間にか奴の腕が背中に回って抱きしめられていた。私の手は膝の上から動かず、奴の手を払うこともなく、ただ任せるがままにしている。
「……俺は好きだ」
耳元で囁かれる声に、ク、と喉から笑いが零れる。
「今日はエイプリルフール。言ったことが嘘になるのではなかったのか?」
からかいの声をかけながら顔をあげると、間近に紅潮して汗ばんだ顔があり、街灯の光を受けた瞳の中に私が映っていた。
「俺は嘘は言わない」
「私は嘘しか言わない」
いいよ、と奴の唇が囁いた。
「十分だ」
次ぐ言葉は吐息混じりで、その吐息が私の唇に届く。
まったく、四月馬鹿とはよく言ったものだ。こんな会話、馬鹿すぎて、くだらなすぎる。恥ずかしくてこいつ以外に聞かせられない。
いつの間にか自分からも腕を回していたようだ。気づけば掌に奴の背の感触があった。……まあいい。今の私は英霊ではなくただの馬鹿な嘘つきなのだから、これぐらいは許してやろう。
「好きだ」
「貴様など嫌いだ」
唇が触れる直前、何度も繰り返した言葉を交わすと、眼を閉じて奴の唇に自分の唇を重ねた。