【腐】青と赤の空の境に(士弓)
はなぶさ はる様(user/2238391)主催の士弓プチアンソロジーに掲載していただいた小説です。はる様、掲載許可いただきありがとうございました!
毎度変わり映えしない話でもうなんつーか。
時間枠も毎度おなじみホロウ準拠です。港で釣りするときの話の後日談的な感じ。
自分的士弓の萌えツボが「寝起き」なので、どーしてもそういう話ばっかになってしまいます。
寝起き、というだけでそんなアレやこんなアレが思い浮かびますがそれなのになんかいつもいつもエロ度が足りないですね。毎回ちゅー止まりってどうなんだと。
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「釣りプロのおじさーん。今日も釣り?」
「そうだ。おじさんと言うな」
「ねえおじさん、お友達誰も来なくなっちゃったけどケンカでもしたの?」
「友達などではない。おじさんと言うな」
「ギルはどうしたのー?」
「知らん。飽きたんだろう」
「最初にいた青いおにーさんは?」
「知らん。バイトで忙しいんじゃないのか」
「おじさんこの魚きれいだねー。ほら」
「……む。そうだな。おじさんと言うな」
うわあ……。
埠頭で釣りをしている赤黒い大男の回りには、何人もの子供たちが群がって、無遠慮な質問をぶつけたりバケツの中をのぞいたり釣り具を勝手にいじったり、とにかくやたら賑やかだった。
暇つぶしに港に散歩に来た俺は、遠目からも目立つその一群に気づき、ひとつからかってやろうと近寄ってみたが……
「こら、バケツに手を入れるな。ん? 釣ってみたいのか? しかしこの竿はお前には重い。やめておきなさい。貴様! 石を投げるな魚が逃げる!」
たのしそうだなー。
子供たちの言うことにいちいち答えて、イタズラされても適当に流したりしないで大真面目に相手する。ギルガメッシュをガキ大将とするならば、アーチャーはさしずめ近所の面倒見のいいお兄さん。そりゃあ子供たちから好かれるわけだ。
眺めているうちに心がほのぼのしてきて、からかってやろうという気分はどっかに吹き飛んじまった。少し離れたところに立って、子供たちと「おじさん」のほのぼの劇場を見守っていると、
「だから道具にさわ……、……っ!」
男の子から釣り糸を取り上げようと身をよじったアーチャーが俺に気づいた。
「く…っ! こ、小僧、貴様……!」
ものすごい苦悶と憤怒の表情で俺を睨みつけるアーチャーさん。しかし、その足元には子供たちがわらわらとうごめいているので全然迫力がない。
「衛宮士郎……いつから見ていた……?」
ギリリと歯噛みしてドスの利いた声で聞いてきた。十五分ぐらい前から、と素直に答えたら間違いなく殺される。
「えーと……今来たところ?」
まるで待ち合わせでもしてるかのような答えを絞りだすと、あははー、と気の抜けた笑いとともに頭をポリポリ掻いた。しかしアーチャーは納得できないのか鋭い視線のままだ。頼む、納得してくれ……子供たちの前で血祭りは勘弁してほしい。
「し、しかし、なんだな、アーチャー。なんだー、その……あれだよ」
俺は話を変えようと眼をグルグル泳がせて話題の糸口を探した。うう、嫌な汗が噴き出てきた。アーチャーの背後におどろおどろしい闇が見えるのは気のせいか。
必死な俺は、とりあえず世間話で誤魔化すことにした。
「よく来てるみたいだけど、釣り好きなのか?」
「いいや」
無難な話題を選んだつもりなのに一言で終了してしまった。く、くそ、負けるものか。今こそ商店街で買い物して鍛えた世間話テクを活かすとき!
「嫌いなのに、リールやロッドを複製して、さらに釣り用のライフジャケットや帽子やサングラスまで揃えたのか? 釣りが好きでもいいじゃないか。天気はいいし、浜風は気持ちいいし、のんびりできて最高だな」
「のんびり?」
アーチャーはイヤミたらしく言葉を繰り返すと、鼻でせせら笑った。
「のんびりしているのはお前だけだ、衛宮士郎。私は遊びで釣りをしているわけではない」
「遊びじゃないというと……?」
「凛の命令だ」
アーチャーはそれだけで理解るだろうと言うように言葉を切った。以心伝心、てわけじゃないが、なるほど、たしかにそれだけで通じてしまった。
そっか。最近ランサーはバイトに忙しくて釣りすることが少なくなった。だから藤ねえが魚を奪ってくることが少なくなり、衛宮家の食卓に刺身や塩焼きが出る回数がめっきり減った。よって、魚を食べたい遠坂が従僕に厳命し、アーチャーがこうして釣りに来ているということか。
そしてその魚はきっと俺が調理することになるんだろう。つまり、俺たちは連鎖の最底辺だということが証明されたわけだ。
はぁ……。と思わず漏れたため息がアーチャーのため息とシンクロした。俺たちってほんと苦労人だよなあ。
親近感がわいてきてアーチャーに笑いかけてみた。が、奴は俺とは逆に眉間にシワ寄せて、ものすごくイヤそうな顔をしていた。うわ、ひど。
「ということで私は忙しい。さっさと帰れ。……コラ! 魚が逃げるだろうが!」
アーチャーは冷たく言い放つと、俺に背を向けてロッドを握りまた釣りに没頭した。子供たちには受け答えするのに、後ろに立つ俺は完全黙殺して絶対こっちを見ようとしない。
俺は軽く肩を竦めてから、アーチャーが立つ側とは反対側、波消しブロックがゴロゴロ転がっている方に行き、堤防の縁に腰かけて釣りキチ弓兵の背中を眺めた。
いつもなら退屈だと言ってさっさと帰るが、今日はもう予定ないし、他に行くあてもない。今日の晩飯は桜が作ってくれる手筈になっているので、急いで帰らなくても大丈夫。――――ふっふっふ、アーチャーめ。無視するなら嫌がらせしてやる。俺のプレッシャーを背に受けてどこまでがんばれるか、勝負だ!