アーチャーと一成①
hollow時空なんですが少し設定が変わっちゃってます
そういえばこの2人はhollowでも会ってないなあと思って
あ、でも今回は一成ほとんど出てきません
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―――ある晴れた日の午後。
穏やかな日差しが照らす衛宮家の縁側に、その男―――アーチャーは座っていた。
聖杯戦争時は赤い外套と、余裕ぶりながらも張りつめた殺気を身にまとっていたアーチャー(弓の騎士)も、今日は黒のシャツにデニムを見事に着こなし、その日差しのように穏やかな表情を浮かべながら同居人であるライダーから借りている一冊の文庫本をゆっくりと読んでいた。
(……ふむ、推理小説など小難しいものはオレには合わないと思っていたが、読んでみるとなかなか面白い。やはり食わず嫌いはするものではないな)
現在13時をまわったところ。読み始めたのが昼食後すぐだったので、もう既に1時間が経過していることになる。思っていたより早く時間がたっていたこと、そしてそれほどまでに自分が夢中になっていたことに少々驚きながらも、彼は読み進める。
今日は休日ではあるが、現在この家にはアーチャーしかいない。家主の衛宮士郎と本の持ち主であるライダーはアルバイト、間桐桜と藤村大河は弓道部の練習で外出しており、仕事も部活もない(というと本人は怒るのだが)セイバーも、今日は近所のサッカー小僧たちと大事な試合があるのだと張り切って出かけて行った。
「あの騎士王が子供たちとサッカーに興じる、か……平和になったものだな」
アーチャーがこの家に身を寄せたのはちょうど1月前。それまでは遠坂邸に住んでいたのだが、マスターである凛がロンドンへ旅立った後、藤村大河に半ば強引にこちらに住むよう誘われたのだ。
そもそも衛宮士郎以外の人間には基本的に温厚な彼だが、藤村大河にはなぜか特別甘い。断ることもせず現在の状況に至るわけである。
もちろん最初は戸惑いもしたが、ここでの生活は決して悪いものではなかった。間桐桜と2人並んで朝食を作ることもあった、それに嫉妬する衛宮士郎と料理対決をすることもあった。セイバーと手合わせで汗を流したり、ときには藤村大河と酒を酌み交わすこともあった。
口では皮肉めいたことをいいながらも、彼の心には充足があった。それは生前過ごしたこの家に落ち着きを感じているからか、守護者としての戦いから解放され、穏やかな日常に安らぎを感じているからか、それとも、自分が「エミヤシロウ」であったときに別れざるを得なかった大切な人間たちと再び送る生活に、懐かしさを感じているからか。
(もう、こんな生活を送ることはないと思っていた……このように穏やかで、あたたかく―――心地よい生活は)
この日常がいつ終わるのかはわからない。だが、それまでの間、彼はこの幸せに身を預けることに決めたのだ。
これは、そんな彼のなんてことはない、しかし彼にとっては特別なある日常の1コマである。
「さて、随分休んだ。そろそろ動くとするか……」
時刻は15時。ちょうど読み終えた本を本棚に戻し、洗濯物でも取り込もうかと彼は立ち上がる。
(今日の夕飯はなににしようか……卵が余っていたし洋食でもいいが、セイバーがサッカーで腹を空かせてくるだろう。ボリュームのある肉料理メインがいいだろうな。となると豚の生姜焼きがベストか……?)
主夫さながらに歩きながら献立を考えるアーチャー。
その時、不意にチャイムが鳴った。
「?」
まだ誰か帰ってくるには早い時間だ。全員そもそも鍵を持っているはず。
「訪問販売か、宅配便か?いずれにしてもこの時間には珍しい」
不思議に思いながら玄関の戸を開けるアーチャー。その目の前には、予想外の客人が立っていた。
「突然すまんなえみ、や......?」
戦いの中で記憶は摩耗していたはずだった。しかし、記憶の隅に彼は残っていた。覚えていたのだ。思わず、だがはっきりとアーチャーはその青年の名を口にした。
「柳洞、一成―――?」
衛宮士郎の親友、―――そして、過去の自分が生前この地で別れを告げ、もう二度と会うことのなかった大切な友人が、そこにいた。