light
The Works "【Fate/ha】晴れた午後に【腐向け・士弓】" includes tags such as "Fate/hollowataraxia", "衛宮士郎" and more.
【Fate/ha】晴れた午後に【腐向け・士弓】/Novel by 尚雪

【Fate/ha】晴れた午後に【腐向け・士弓】

3,881 character(s)7 mins

Fate/hollow ataraxiaの士弓ネタ。真名等ネタバレ全開注意。

1
white
horizontal

理論は分かっていても、解けない数式みたいなものだと思う。
順序があって、結果があって、答えが目の前に転がっていても、その過程が分からない。
だから俺はこいつが同じだなんてやっぱり納得いかなかった。


『いつもと同じ』日常の中で、そいつは暢気そうに昼寝なんかしていた。
つい『先日』俺のことを橋の上から狙撃して殺しかけたくせに。
いつもの外套を外し、黒いアンダーウェア姿であまりにもリラックスした体勢。何というか、ちょっと信じられない。
このアーチャーと呼ばれる男は遠坂の元・サーヴァントで、今は留守中の遠坂の代わりに冬木の街を守っている。そして、事ある毎に俺を殺そうとする危険人物だ。


9を守るために1を切り捨てる完全な『正義の味方』
俺はこの男が大嫌いだったし、こんな男には絶対ならないと思っていた。
非道い事を平気でやるし、シニカルな態度がものすごくむかついた。やった結果が正しくてもやる過程が正しくない。ずっとそう思っていた。
アーチャーはそんな俺を「頭が悪い」とか「子供の戯言だ」とか「理想を抱いて溺死しろ」とかさんざん言いまくって馬鹿にする。

だからこいつが「未来のエミヤシロウ」なのだと聞いたとき、正直納得いかなかった。

だって自分はこんな非道い大人になるつもりなんてなかったし、実際こんな歪んだ考えなんて持ったことがなかった。
綺麗な理想を胸に抱いて、真っ直ぐ自分の夢に向かって生きていくつもりだった。
だけどアーチャーはそんな俺を一瞥してそんなことは無駄だ、と切り捨てた。
理想を持てばきっとその理想に裏切られる。だからお前はそんな気持ちを持ったまま生きていけないと。
未来の自分に今の自分を否定されると言うことは、なんと苦しいことなのだろう。
アーチャーの言葉は俺の気持ちに酷い傷を負わせ続け、それでも立ち上がろうとする俺に冷ややかな視線を送る。
かつての自分に冷徹になるほか、彼に許された感情などなかったのだろう。
俺はそんなアーチャーの八つ当たりが本当に大嫌いで、やり場のない怒りに少しだけ同情した。


秋風が頬を撫でる。木々を揺らし木漏れ日がちらちらと舞う花びらのようにも見えた。
川縁の公園、いつもなら子供達がサッカーに興じる広場の一角で男は木の幹にもたれ掛かり一時の休息を取っている。
しゃがみ込んでアーチャーの顔を覗き込むと、寝てるはずなのに眉間に皺を寄せ気難しそうな顔をしていた。
浅黒い肌は投影のしすぎによる変色。銀の髪は色素が変わってしまった証拠。
鍛え上げられた肉体は『それしかなかった』故に、死に物狂いで手に入れた唯一の武器。

まじまじとアーチャーの体を観察して俺は小さく息を吐いた。
やっぱり似ていない。似てるとも思えない。自分のどこがこいつに似ているというのだろうか。
セイバーや桜は俺が少しずつアーチャーに似てきた、と言っていたけれど、とても俺はそんなことが実感できない。
この半年であまり身長も伸びていないし、顔だってこんな厳つくない。筋肉もここまでは付いていないし、第一性格が正反対だと思う。
大体、他の連中に評価させると大抵「アーチャーの方が格好いい」になるのが気にくわない。
俺は頭を掻いてぼやいた。
「そうだよ。もうこいつとは道を別った別人なんだから。俺がこいつになることはないんだし、うん」

目の前にいる男は未来の自分。理想を貫き通した自分。それでもそれが良くなかったと後悔し続けた自分。
どれだけの無念と絶望と怒りがあっただろう。懺悔し続けた先に何があっただろう。
アーチャーは俺だったけれど俺はアーチャーにはならない。
だから彼の苦悩を知るなんてきっと一生無い。
それが何となく寂しくて、とてつもなく悔しく感じる。
だって彼の孤独を知るものは、この世に誰一人として存在しないのだから。

風はさらさらと木々の葉を揺らす。俺はもう一度アーチャーの顔を覗き込んだ。
やはり彼は眉間を寄せ、何かに怒っているような、何か困らされているような、そんな微妙な表情を浮かべていた。
俺がそっと右手の人差し指を伸ばし、眉間の皺に当てる。
皺を伸ばすように上下に動かすと、アーチャーはくすぐったいのか「…う~ん」と小さく唸って見せた。俺が笑う。
長い睫が微かに震える。じっと見つめて思わず漏らす。
「…こいつ、睫も白いのか…」
年相応の精悍な顔立ちにどことなく幼さが残っているようにも思える。唇から僅かに漏れる寝息は規則正しく、そして妙に艶っぽさを感じた。
じっと顔を見つめる。やっぱり似ていない。どこをどうしたら似るだろう、そんなことをふと考えて、やめた。
胸元に手を添える。がっしりとした体に体重を預け、アーチャーの上に覆い被さるようにして顔を近づけた。

息が掛かりそうなほど近づいてアーチャーを見つめる。
目を覚まさない。
ゆっくりと顔を近づける。
彼の寝息が耳に届く。

アーチャーの顔に手を添えた。思ったよりも彼の体温が低いことに気付き少し驚く。
唇に触れる。低い体温と漏れる息に僅かに動揺した。

ぐっと息を呑み俺が顔を近づける。そのまま彼の唇に口づけた。
アーチャーの唇はやっぱり体温が低い気がして、俺は何度か触れるような軽いキスをすると、ぐっと貪るように深く口づけた。
舌先で口腔を探り、深く吸い上げ息を漏らす。
手を添えた胸元をゆっくりとまさぐり、顔を上げて唇を離した。
アーチャーの口端から息が漏れる。
「―― っ、ぁ」
思わず体をのけぞらせ、アーチャーの体から離れた。アーチャーは小さく身動ぎをし、息を吐く。
俺は小さく息をして彼の様子を観察する。アーチャーは体を起こすことはなく、また規則正しい呼吸を始めた。
俺がほう、と小さく息を吐く。
その場に座り込んでぐしゃぐしゃと頭を掻き、何であんな事をしたのだろう、と考えた。

―― そうだ、なんだかアーチャーの体温が冷たくて、俺、暖めたくなったのかもしれない。それで ―――

「それで?」
声の方に顔を上げる。先ほどまで確かに眠り込んでいたアーチャーが冷笑を浮かべこちらを見つめていた。
木の幹に体を預け、先ほどの体勢と全く変わらず、ただ両目だけはしっかりと開けていて。
俺は思わずアーチャーを見つめ体を震わせた。
もしかしたらこいつ、今さっきも ―――
「ふむ…。屋外とは行儀が良くないな、衛宮士郎。さすがの私もそんな趣味は持ち合わせていなかったが。さて、誰の趣味だ?」
アーチャーがニヤニヤと笑いながら俺を見ている。言い返そうにもしてしまった事実がそこにある。俺は口をぱくぱくと動かして、何とか息を吸おうと喘いでいた。
「――― おま、お前っ!お、起きてたのかよっっ!!」
発した言葉のなんと間抜けなことか。俺がしまった、と言う表情を作る。
アーチャーは一瞬あっけにとられたような顔をして、それから耐えられん、とばかりに破顔した。
「は、はは、あははは!お前が気にするのはそこかボウス。それでよく凛と付き合おうなんて思うな、お前」
俺が何か言いたげに唇を動かす。しかしそれをアーチャーが右手を上げ制した。
「何を血迷ったか知らんし、知る気もない。頭がおかしくなったのならそれでも構わない。―― まぁ、無差別に発情しまくるというのなら世界の抑止力として多少は働かねばならんが ―― とうとうおかしくなったか?貴様」
思わず立ち上がりアーチャーを見下ろす。アーチャーは座ったまま俺を見上げた。
「ち、違う!!別にお前に欲情とかしないしするわけ無い!ただ、なんか、お前と俺が似てるかどうかって思って、それで、なんかお前の体温が低くて、それで、その…」
アーチャーがしれっと返す。
「当たり前だ。子供と同じ体温である訳が無かろう」
その言葉に言い返す術が見つからず、俺は頭を左右に振るとアーチャーに視線を合わせないで言った。
「お、お前、お前が悪いんだー!!!」
そのまま彼に背を向け走り出す。我ながらなんと情けない姿だろう。
だけどあのまま彼の前にいたら自分は何を言い出すか分からない。自分が悪いのは百も承知なのに高鳴った胸がそれを許さない。

エミヤシロウを衛宮士郎と認めないために、彼をあそこで犯していたかもしれない。

「だあああああ!!んな訳あるかーーー!!」
俺は俺自身を精一杯否定しながらただただ公園から逃げ出していった。


一人残されたアーチャーが、遠くなる衛宮士郎の後ろ姿をぼんやりと眺めていた。
彼が口づける直前で目覚めていたのだが、声を掛ける暇もなく口を塞がれた。
「…さて、どうしたものか」
独りごち、空を仰ぎ見る。木漏れ日がちらちらと降り注ぎ、風は心地よく吹いていた。
「中途半端にしていくな、馬鹿め」
息を吐く。怒りよりも呆れた気持ちがあったが、今それを言ってもどうしようもない。
「……欲求不満なのか?あいつ…」
だからといって自分に向けられても困るものだが。アーチャーはもう一度溜息をついて呟いた。
「こっちだって色々一杯なんだ、馬鹿」
今日も大橋の上で発散するしかないか。アーチャーは肩をすくませて立ち上がるとゆっくりと橋に向かって歩き出した。

Comments

There is no comment yet
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
Popular illust tags
Popular novel tags