自己被虐性愛
ぷらいべったーに上げていたものの中から倒錯的な雰囲気の士弓3作を多少修正して。
首絞めネタが好きなんです、先に謝っておきます。
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killing
ふうふうと息を切らして喉元を絞め上げようとしてくる男の顔は鬼気迫っていて、奴の身に宿る殺意が本物であることを理解する。この男の本来の臂力であれば俺の頸など片手で一捻りだろうに、奴の両手は細かくブルブルと震えるばかりで、俺の頸動脈を押さえることも気道を潰すことも出来ずにいる。
ーー同情なんかしないと誓ったのに。
殺されかかっているというのに、妙に頭は冷静だった。生きている人間であれば過呼吸になりそうなほど、醜く引きつった呼吸を過剰に繰り返す目の前の男を、哀れだと思いこそすれ憎む気が起きない。
俺のことを、自分のことを、殺したいほど憎んでいるくせに殺せない男。
自分の身を顧みないという自傷行為は身に染み付いているが、自分だけ楽になる自死という手段は取らない。否、取れない。どうせ死ねない身だと嘯いても、結局のところ根底はそこにあるのだ。苦しんで苦しみ抜いて生き続けることも、苦痛に苛まれながら死に続けることも、こいつにとっては同じことだ。
己の喉への拘束が緩まってくる。
かといって俺の首から手を離すことはできず、俯いて肩で呼吸をしている男の姿に、やはり悲哀を感じずにはいられない。
俺が生きているヒトである以上、理由と状況というお膳立てがなければ、殺すことすらできないなんて。
俺はこいつじゃない。俺はこいつにならない。
道を違えた我々は別物で、俺は大事な人たちから離れて行こうとしていない。橋の守護という題目もなければ、今は繰り返される四日間でもない。
己の激情と衝動のみでは、憎しい俺を犯すことも殺すこともできない、かわいそうな機械仕掛けの人間。
おそらく、この俺に憐憫を掛けられることそのものが、こいつにとっては憤死に値する動機になるに違いない。
手を伸ばして汗ばんだ額に落ちた前髪をかき上げると、絶望と憎悪に濡れた鉄色の瞳と視線がかち合った。殺せない男をことさら煽るように、慈愛に満ちた笑みを浮かべてやる。
これもいとしいという感情なんだろうか?
だとしたら何という皮肉なのだろう。
この想いに付ける名など知らないけれど、俺は俺の欲望のままに、悲嘆に暮れる男の喉元へと手を伸ばした。