社説
前途ある高校生の尊い命が失われる事故に言葉もない。それも学校の平和学習の機会にである。
沖縄県名護市辺野古沖で同志社国際高(京都府)の生徒18人と乗組員3人が分乗した小型船2隻が転覆し、高校生と船長の2人が死亡した。けがをした生徒も12人いる。
運航の安全管理に問題はなかったか。原因の徹底究明を求めたい。
現場海域では米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を移設する新基地建設に向け、政府が埋め立て工事を進めている。生徒は1年かけて学んだ沖縄の歴史と現状を直接知るために乗船していた。
第11管区海上保安本部は業務上過失致死傷などの容疑で船を運航した市民団体「ヘリ基地反対協議会」の事務所を家宅捜索した。
協議会によると、出航判断の基準は明文化しておらず、船長が出航当日の朝、風速約7~8メートルを目安に可否を決める運用になっていた。亡くなった船長は10年以上の乗船歴があり、現場海域の航行経験は豊富だったという。
事故当時は波浪注意報が出ており、海保が2隻の近くで注意を呼びかけていた。出航判断が適切だったかどうかが問われる。
2隻は移設工事の海上抗議活動に普段使われ、海上運送法に基づく事業登録をしていなかった。
旅客定員12人以下の非旅客船でも、求めに応じて運送する場合は有償、無償を問わず事業登録をする必要がある。登録時には安全管理規程を定め、出航の可否判断などの取り決めを国に提出しなければならない。それが外部のチェックにもつながる。
協議会は、平和学習の乗船はボランティアだったため登録しなかったと説明した。重大事故に至った以上、この判断の是非も見過ごせない。
同志社国際高は長年にわたり平和教育に積極的で、辺野古沖での乗船は2023年から続けてきた。
転覆した船には引率の教員が乗っていなかった。出航前に船長から波浪注意報への言及がなく「心配はなかった」という。安全管理を任せ切りにした批判は免れない。
学校側は外部有識者による第三者委員会を設置する方針だ。生徒や保護者が納得する検証をしてほしい。
ショックを受けている生徒もいるだろう。心のケアにも十分な目配りが必要だ。
移設工事の抗議に使う船に生徒を乗せたことに対し、疑問視する声が上がっている。生徒は抗議活動に参加したのではない。自身の目や耳で安全保障政策の最前線を学ぶために来たのである。
本土が経験しなかった地上戦を経て、米軍基地が過度に集中する沖縄の現実を生徒や学生が学ぶ意義は大きい。それを推進する教育への非難は筋違いだ。
沖縄での平和学習を後退させてはならない。